今周の予定は決まってる?   作:小沼高希

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高校一年生 五回目 二周目 二

今となっては古くなった地理Aの教科書とか地図帳も引っ張り出し、候補地の選定は終わった。

 

「こんなにあるの?」

 

「そっちは日帰りプラン。一泊プランもあるよ」

 

夏休みの間だけ使える乗り放題切符を使えば、文字通り半日ほど電車に揺られてかなり遠くまで行ける。まあこの案は時間使い過ぎだから実際は新幹線使いたいが高いわけで、あちらを立てればこちらが立たず。資金がないのが悪い。

 

「帰らないこと前提?」

 

「もしループが終わってしまったらすごすごと帰るよ。もしそうじゃなかったら便利だしね」

 

「……後払いの宿とかなら安くならないかな」

 

「なんて邪悪な発想だ、私では到底できないよ」

 

「和乃さんのアイデアだよ?」

 

「えっ」

 

言ってからこれは確かに前回のループでの最終周の私が言った内容とだいたい同じであることに気がついた。なおこの時は食い逃げできなかったんだよな。

 

「……違ったっけ」

 

「いやあってる。私だよそれ。まったくなんてことを真山さんに吹き込むんだ私は……」

 

頭を抱えながら、それで予算が減らせるかどうかを少し考える。

 

「いや、結局終わったときのことを考える必要があるからそんな使い切ることはできない」

 

「そっか」

 

「まあ、もっと簡単にするなら近場のスーパー銭湯だったか健康ランドに行ってもいいけど」

 

子供の頃にたまに行った場所だ。なお幼い私は大きなお風呂って言っていたのであの施設がどの区分に入るのかは知らないしたぶんバスに乗ってしばらく揺られないと行けない場所にある。

 

「……それは、まあ、悪くない気がするけど」

 

「どうせならちゃんとした温泉まで行こうよ、時間はあるんだし」

 

私はちょっとため息を吐く。真山くんの声に色気とか下心とかはあまり感じられなかった。もう少し出せよ。いやそういう感情を向けるのを嫌がっているなら別に無理にとは言いませんけど。

 

「……でも、ゆったりするのはいいね」

 

「あまり深夜に出歩きすぎると条例に引っかかるけどね」

 

調べておいたメモを見る。ここらへんは正直面倒だ。まあ何かあったら夏休みの宿題で深夜の天体観測をしてたとでも言えばいいか。特別の事情ってやつは結構融通が利くのだよ。

 

「そういうのもあるんだ」

 

「知らないの?」

 

「カラオケに貼ってあった注意書きみたいなもの、それかな」

 

「たぶんそう」

 

夜更かし少年少女に街は厳しいのだ。なお宿泊もアウトになるとか。面倒くさい。

 

「……案外、高校生だけでの旅って大変なのでは?」

 

「そうなんだよね」

 

色々調べていく度に、一応未成年である私たちは色々と制約がかかって動きにくくなることが明らかになっていったのを思い出す。まあでも、結構努力義務とかなので雑と言えば雑なのだが。

 

「なにか回避できる方法はないの?」

 

「昔の民法だったら結婚すれば成人扱いされていたからなぁ」

 

「成人じゃないと結婚できなくない?」

 

「当時は女性だけ十六歳で結婚できたんだって」

 

まあこんなまるで古代の風習みたいなことを言っているが実はそう古くもない。

 

「……そう」

 

「ま、もしダメだったら次の周で活かせるでしょ?」

 

「ないかもよ?」

 

「何周まであるかと周の長さにはたぶん強い関係がある。私が処分を許されている財産ぐらいなら賭けてもいいよ」

 

とはいえ、これは実質真山くんの経験に賭けているようなものなんだけどね。そうだとしても賭けることに変化はないけれども。

 

まあ負けてもバイト生活が始まるだけだ。ちゃんと夏休みの間に予習はしておいたからね。ちょっとやそっとでは成績は落ちないでしょう。

 

「……なら、いいけど」

 

「それでどうする?明日一日かけてどこか行くもよし、今夜からでかけてもよし、今周は特に何もせず、明日も私と自習室で時間を過ごすもよし」

 

「別にどれでも構わないけど」

 

「……そう」

 

まあ別に私だってどれでもいいな。終わるまでの時間の中で真山くんといられる時間が増えるわけだし。

 

「じゃあ、明日ここに行く?」

 

「じゃあって何?いや、ごめん。行こうか」

 

一瞬だけ真山くんが投げやりな判断でもしたのかと思ってしまったが違うな。そもそも投げやり性なら私のほうが上だ。決定しただけ真山くんのほうが偉い。

 

ルーズリーフのリストで指されるのは観光で有名な地方都市。温泉宿とかあるかな。お値段がお手頃であることを願う。まあ大浴場とかでも構わない。久しぶりの大きなお風呂だ。

 

「わかった。準備するね」

 

「……日帰りにする?」

 

「いや、泊まる」

 

交通費はそこまでかからないし、これならいいか。頭の中で予算を計算するが、大丈夫な範囲に収まるはずだ。真山くんの予算については事前に聞いてますし、こっちも範囲内。

 

「わかった。じゃあ準備は私の方ですればいい?」

 

「お願い」

 

「よっし」

 

最初のお泊りだ!なお日付を越せるかはわからない。真山くんは早寝早起きなのでループ終了のタイミングがつかみにくいのだ。

 

予約ページを開く。ああ、自分の行為が別に何も残さないってわかっていると気分が楽だな。普通はこういうのは手が重くなるのだが、今はさくさくと指が動く。

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