今周の予定は決まってる?   作:小沼高希

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高校一年生 五回目 二周目 三

鞄には通帳と着替えとタオル、充電器とスマホ二つ。早起きというぐらいの時間。親には一泊してくると言ったが、特に何も言われなかった。信頼されている娘なのかな。

 

「待った?」

 

真山くんは予定時間より少し早く着いた私より先に来ていた。ちょっと荷物が多めに入ったリュック。まあ、私と同じようにちょっとした旅をするのかなと言う格好だ。

 

「ううん、問題ない」

 

そう言ってすっとスマホをしまったってことは、それだけ時間を潰すぐらいの準備があったってことだよな。いや、とやかくは言わないけど。

 

「切符は昨日買っておいたよ」

 

そう言って私は裏が黒い水色のきっぷを見せる。これだけで五回分になって、帰りにも使える。

 

「ところで、それって三回分余らない?」

 

改札をくぐってはんこを二つ押されたきっぷは真山くんの手の中だ。私が持つよりも信頼できるので。駅員さんは無表情で淡々と仕事をしてくれた。高校生らしい男女が二人で一緒のきっぷ使うの、そう珍しくはないのかもしれない。

 

「一回じゃなくて?」

 

「今日で終わりでしょ?」

 

「ああ、そういう意味ね」

 

ちなみに余った一回は夏休みの間なら使えるのでちょっと遠出して博物館でも見に行こうかなって分である。真山くんと一緒には行かないよ、一人旅もそれはそれでいいものなので。

 

実際は隣でずっと展示品を見ながら喋り続ける人がいるとあまり楽しめないと思うからですけど、本当のことをあまり言う必要もないと思う。

 

「普通にICカードのほうが片道だけなら安くならない?」

 

「まあそれだったらホテルの割引入れてもマイナスだけどさ、一回使ってみたかったんだよ」

 

「……そうなんだ」

 

「もし私が楽しそうだったら、次は誘ってほしいな」

 

ええ、こういうのは誘うのも誘われる方も楽しいのですよ。どうせ残り少ない時間なのだ、精一杯楽しまないと。なんかこういうと心中みたいだな。警察呼ばれたりしませんよね?

 

電車に揺られ、乗り換えの駅でそばを朝食代わりに食べ、また電車に揺られる。

 

「……ヒマ」

 

「そう」

 

本を置いて私は息を吐く。ボックス席の窓側で向かい合う真山くんは私をじっと見るだけだ。何が楽しいんだよ。いやわからなくはないけど。

 

「何かする?」

 

「何を?」

 

「トランプとか?」

 

そう言って私はポケットからプラスチックカードを出す。

 

「二人で遊べるいいルールあったっけ」

 

「ババ抜きでいいんじゃない?」

 

「楽しいかな……」

 

「私は真山くんとするならただの運ゲーでも楽しめると思うよ」

 

ゲームというのはそこでの勝敗とか戦略とかも面白いけど、会話とか相手の思考パターンを見るとかも要素の一つですからね。

 

というわけで同じ数字の札を捨てていったら互いに手札の大半が消えてしまった。悲しい。それでもまあ同じぐらいの枚数になったからいいとするか。

 

「念のため確認。持ってる?」

 

「持ってるよ」

 

事前にジョーカーは一枚抜いていて、私が持っていないので真山くんが持っているのは間違いない。そして一枚引いたら二枚捨てられる。

 

改めて考えると、二人だけのババ抜きってゲームとしてそこまで面白くないな。大富豪とかのほうが良かったかもしれない。あっちのほうが戦略性出てきますしね。

 

「……これで」

 

ちょっとだけ外れているように見えたカードを引く。ジョーカーではなかったのでペアができてケースに二枚戻す。私からすっと真山くんが抜いて同様に戻す。

 

さてさて、ちょっとだけわかってきましたよ。一個前に引かれたのは3で、対応するカードは真山くんの手札の私から見て左側から引かれた。今引かれたJは右側から。

 

理札(リーふだ)をしてますね、たぶん。となるとジョーカーは端かそうじゃないかのどっちかだ。ただの排中律である。

 

「あっ」

 

まあそうやって真ん中ちょっと右寄りから引いたら当たってしまった。うーん。結局この回は私が抱えたまま負けました。

 

そんなことをしてお昼ちょっと前に目的地の街へ到着。その間は話したり寝たり小説を読んだりと、それなりに充実した時間を過ごしていた。

 

「それで、あまり詳しく聞いてないんだけれどもどうするの?」

 

「少し歩いて街とか見て、てきとうにぶらぶらしながらお昼食べて、あとはちょっと気になる記念館とか見て予約してあるホテルに行く」

 

「なるほど」

 

「ホテルは大浴場つきだよ、温泉じゃないのはごめんね」

 

「いいよ。……予算は大丈夫?」

 

「なんとかね」

 

予約の時にちょっといざこざがあったことは言わんでもいいか。親からの承諾状のフォーマットがあるとか云々言われても宿泊約款にも県の条例にも引っかかりませんし民法上の契約が取り消されるかもという危惧であればこれは私の可処分財産使うので問題ないですよ、それとも保健所に問い合わせますか?とかやったらいけた。

 

うん、これは良くないね。次に活かせるように真山くんに伝言は頼もう。ちなみに伝言ついでに思い出したが家のパソコンはつけっぱなしだ。メールを送れば自動で生成コードが帰ってくる。

 

「じゃあ、行こうか」

 

「そうだね」

 

私たちは電車を降りて、いつもの街よりも少し涼しいがそれはそれとして暑い空気に足を進めた。

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