今周の予定は決まってる?   作:小沼高希

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高校一年生 五回目 二周目 四

「つっかれた……」

 

スプリングがしっかりしていたベッドに、ホテル備え付けの部屋着をまとった私は倒れ込むように吸い込まれる。

 

「起きてなくていいの?」

 

「……次の周では少し動く量を調整して」

 

「……ごめん」

 

「すごい楽しかったし、満喫したのは間違いなんだけれども、それはそれとして身体がいたいよ……」

 

スマホの万歩計を見たら十キロちょっと歩いていた。えっそんなに?

 

「揉もうか?」

 

「慣れてるの?」

 

「……親のを揉んだりしてたからさ」

 

「……ちょっとまってね」

 

全身に回っている血液を頭に回すように頑張るがうまく行かない。ええと落ち着け?同級生の男子に疲れた身体触ってもらうの、ありなのでは?

 

「いやダメだ、不健全」

 

「えぇ……」

 

「さすがに刑法に触れたくない……」

 

一応真摯な交際って言っていい範囲ギリギリではあると思うけれどもさ、誘惑したところはあるし心身の未成熟についてはどっちもあるし性的欲望がないわけじゃないので条例に引っかかる。アウト。

 

「……なら、そうする」

 

一応ツインを取ってあるので一緒のベッドで寝なくてもいいのだ。いやまあそういうことになる可能性は考慮してますし、経験自体はあるのでそれなりに楽しめるとは思うんですが、まあそれはそれです。

 

「ええと、具体的にいつ終わるかってわかってないんだっけ」

 

「そういえばそう」

 

「なら、待つ?」

 

私は重い身体を持ち上げる。少しだけ横になって全身に血液がちゃんと回ったのか、少しだけ眠気が楽になっていた。

 

「……徹夜になるかも」

 

「私には明日がないんだよ」

 

そう言って私はベッドを移る。ちょっと動きにくいな。

 

「……だからさ」

 

私は真山くんに顔を近づける。

 

「私の方の後腐れは気にしないでいいよ」

 

「……たぶん、僕のほうが悩むからやめて」

 

「ごめんなさい」

 

真面目なやつ。まあ、ここまでしっかりしているならまず問題はないだろう。

 

「ええと、前回は今ぐらいの時間まで起きてたんだっけ?」

 

「そのはず」

 

「じゃあコードを今作ってしまうか。時間帯覚えておいてもらえる?」

 

「うん」

 

私はスマートフォンを触ってコードを送る。進展は1でいいか。基本的に次の私にしか伝わらないわけで、真山くんは素直に私と旅をしたことを話すだろう。だから、その意味は伝わるはずだ。

 

「……できた。このコードを次に持って行ってほしい」

 

「わかった」

 

「……と言っても、前回とも前々回とも違って切り替えがいつ起こるかわからないから辛くない?」

 

「たまに唱え直せばいいから」

 

そういって私の古いスマホの画面を撮影した真山くんは唇を動かしてコードを声を出さずに唱える。

 

「……うん、よさそう」

 

「ならいいけど。夜の暇つぶし、どうする?」

 

「なにしよう……」

 

「なんだかんだで夕食もしっかり食べたしね」

 

「朝食もここはあるんだっけ」

 

「バイキング形式だったはず。食べられないけど」

 

「……結衣(ユイ)さんはさ、いつも怯えを出さないよね」

 

「……名前で呼んだの、かなり珍しいよね」

 

「和乃さんが僕のことをくん付けで呼ぶのも僕が覚えている限り初めてだったよ」

 

「えっ、言った?」

 

一応私は真山くんとは対等の友人でいようってことでさんって呼んでいるつもりなんだけどな。脳内では違うけど。

 

「電車の中で言ってくれた」

 

「……言ったんだ」

 

記憶にない。今周のはずなのに。

 

「うん。聞いて、意外なぐらいに胸がドキドキした」

 

「好きな相手に親密な呼び方されるの、いいよね……」

 

「そうなんだよ……」

 

互いに理解をしている感じを出しているが、少なくとも私の方は恥ずかしい思考にたどり着かないように脇道に思考をそらしているだけである。

 

「ええと、翔太(ショウタ)さん?」

 

「やめて」

 

「はい」

 

「そういうふうにかしこまって名前で呼ばれるの、怒られるときぐらいだから……」

 

確かにそうか。じゃあ呼び捨てでいいのか?一気に進み過ぎじゃないか?一緒のホテルに泊まっておいて何だと思ってるんだ?

 

「そっか。ごめんなさい」

 

「……僕の言い方も、嫌だったら言ってね」

 

「うーん、たぶん私は大丈夫なはず。誰のことか少しわからなくなるかもしれないけど」

 

一人っ子で家に両親が揃っていることがあまりないのもあって名前で呼ばれることは少ない。だから、そのせいでワンテンポ反応が遅れたりそもそも気が付かなかったりということもありそうだ。

 

「……わかった」

 

真山くんが頷いたのを確認して、私は一気に襲ってきた眠気を感じる。

 

「……ちょっと横になっていい?」

 

「いいけど」

 

「うん」

 

私は丸まるようになって、真山くんの近くに頭を寄せる。

 

「……寝てもいいよ」

 

「頑張って起きる。真山くんだけに負担かけても良くないし」

 

「……そもそも眠れる?」

 

「面倒なことを考えられるほどの体力は残っていないよ」

 

「……よかった」

 

「次の周も考える余裕がなくなるぐらい疲れさせてもいいよ」

 

そう言って目を閉じると、真山くんの手が私の頭に乗せられた。柔らかく、髪に沿って手が動いている。

 

呼吸を深くしながら、私は安心して徐々に意識を手放していく。

 

[二周目終了]

 

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