今周の予定は決まってる?   作:小沼高希

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高校一年生 三回目 九周目

高校に入って最初の中間試験のテストを改めて確認しながら、私は少し笑みを浮かべる。

 

和乃(カズノ)さん、伝えることがあるから廊下に来て」

 

そういう声が聞こえて返却された解答用紙から目を上げると、同級生である真山(サナヤマ)くんがいた。

 

「……なに?」

 

いきなり彼に呼び出される心当たりはない。まあどうせ他愛もないことでしょう。掃除とかなんかそういうやつ。

 

「不随意のタイムリープを起こしてる。証拠は二つ」

 

小声の彼が廊下に向かう私の隣で囁く。身長差って10センチメートルぐらいかな。

 

「へえ」

 

不随意だなんて。つまり起こる時は起こるものだってわかってるわけで、何度も経験してるってことだ。

 

「まず一つ、小学三年生の時に和乃さんが何かを盗んだって前の和乃さんが言っていた」

 

「……これ以上があるの?」

 

「ワンタイムパスワード」

 

「賢いな、前の私は」

 

そう言いながら確認用にスマホを取り出す。今までの流れは、かなり馴染んだものだった。もちろん真山くんとあまり話した記憶はないが、なんていうかノリが近いと話しやすい、みたいな感じ。

 

合わせてくれたのか、そもそもそういうやつなのか。後者だといいな、と思う。いや前者でもわざわざそうしてくれているっていう意味ではありがたい話ではあるんだけれどもね?

 

「僕もそう思う」

 

「慣れた?」

 

慣れてるの?なんて聞かない。差し出された紙に書かれた文字列が一致したことを確認。それなりの回数を私と過ごしている。

 

「うん。あと、特に急いでいないから落ち着いていいよ」

 

「わかった」

 

深呼吸をゆっくりと一回。いやまだダメだな、躁っぽい状態になっている。まあ物語の中でしか見たことないものを実際に見たとなればそうなるか。

 

「……それで?」

 

「考えたんだけれども、もし和乃さんと話してない時にループが終わったら信じてもらえないんじゃないかと思って」

 

「ちょっと待って」

 

私が彼がタイムリープしていると信じた理由はいくつかある。もちろん秘密を知っていて、それにワンタイムパスワードを示せたことは十分なものになる。しかし別に必要というわけではない。

 

もしワンタイムパスワードなしに、かつてループしていたことを証明しなければならないとしたら?まあ、もっと強い秘密を教えるのが妥当か。

 

いやでも、まずは今の情報をしっかり固めたほうがいいか。第三級の秘密の詳しい点を教えてしまおう。

 

「ねえ、真山さん」

 

「ん?」

 

私の勘は彼がそれなりに誠実で、信じられそうな人間だと言っている。理性と心にまだ残る傷が外見を信じるなと言っている。なんでまだ消えてないんだよ。というかそれが秘密なんだよ。

 

「私が話す内容が、私の隠したいことだって理解してる?」

 

「……そうじゃないと、僕が信用されないから」

 

「まあそうなんだけど、もしこれを安易に言いふらすようなことをしたら以降私は協力しない。これはどのループの周でも同じ」

 

「わかってる。僕もいつ終わるかわかっていないから、言わないよ」

 

「ところで、真山さんがタイムリープをしているって知っている人はいるの?」

 

「……昔少しだけ言ったことがある人がいるけど、嘘だって思われたし、僕も嘘ってことにした」

 

ああ、ちょっと面倒なやつだ。確かに私も確固たる証拠なしには信じないだろう。私個人に関する秘密と面倒な暗号を同時に解くためには、私のストーカーであってもまだ足りない。私ですら思い出そうとしない限りめったに記憶に浮上しないのだ。

 

「そう。じゃあ、私は信じたほうがいいね」

 

誰にも言えない秘密と、信じてもらえないことを信じてもらうこと。まあ取引としてはいいだろう。別の周の私には嫌な記憶を引っかき出されてもらおう。かわりに物理法則に喧嘩を売っている同級生と仲良くなれる。

 

「……そうしてくれると、凄い嬉しい」

 

「小学生の頃、低学年向けの児童書を本屋で万引きして、お店を出たところの植え込みの陰に隠した。これを第三者が知っていたとしても、私に言うタイミングってものがあるはず」

 

「……そのことって、今まで誰かに話した?」

 

「ううん、私一人だけで抱え込んでいたもの」

 

口に出して、少しだけ楽になった。やっぱり懺悔というのは意味があることなのかもしれない。

 

「僕が聞いてよかったの?」

 

「私を頼りたいんでしょ?そのくらいは共有させてよ」

 

なにか論理がしっちゃかめっちゃかな気もするな。話していて楽しくて気が合ってしまったのかもしれない。ここまで話して楽しいなら、別に彼がストーカーでも構わないか。

 

「わかった。誰にも言わない」

 

「あとはまあ、タイムリープの思い出話と……って、そうだ。試せるのか」

 

私は少し邪悪なことに気がつく。まあどうせ犠牲になるのは私だ。安易な自己犠牲というか自傷行為はどうかと思うけど気にしない。

 

「どういうこと?」

 

「次の周で、私がそれで信じるかを確かめて。ワンタイムパスワードなしに信じたら成功。もし駄目だったらもう一度私と相談しよう」

 

「……わかった。和乃さんがいいなら、そうする」

 

少し辛そうな顔をする真山くん。なんとも善良なやつである。いいことではあるんだけれどもね。

 

「よろしく。あと謝らなくていいよ」

 

「どうして?」

 

「その謝罪は今周の私じゃなくて、騙された私にしてほしいか

 

[九周目終了]

 

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