高校に入って最初の中間試験のテストを改めて確認しながら、私は少し笑みを浮かべる。
「
そういう声が聞こえて返却された解答用紙から目を上げると、同級生である
「……私に?」
「うん」
なんだろう。全く心当たりがない。というかそもそも真山くんとちゃんと話したことすらない。スポーツはできて、授業中のやり取りから勉強もできるらしい雰囲気は感じるけど。
「なに?」
「ここだとあれだから、ちょっと廊下で」
「……わかった」
正直なところ、それなりに警戒している。とはいえ人当たりがいいというか、話していて楽というか。悪いやつではないとは感じる。自分の勘はあてにならないけどさ。
「タイムリープって、読んだことある?」
「筒井康隆の時をかける少女。高畑京一郎のタイム・リープ あしたはきのう。漫画だと三部けいの僕だけがいない街。そういうやつでいい?」
「……うん」
「で、そういうジャンルが好きなの?それとも私にまた話しに来たの?」
「……どちらでもなくて、終わったことを伝えに来た」
「おめでとう。お疲れ様。で、どうだった?」
面白い冗談を言うやつだ、ということを前提に思考を回す。そうじゃないと、ちょっと非現実すぎやしないだろうか。意識だけの過去遡行というのはちょっと脳科学と物理法則に喧嘩を売っている。
「証明のために、和乃さんが秘密を教えてくれた」
「へえ、どんな?」
「小学三年生の時、本を盗んだことがあるって」
前言撤回。これは本当だ。これは私にとって第三級の秘密で、それを知っている相手は嫌でも信用しなくちゃいけない。少なくとも、その秘密を言いふらしたりする前には。
「詳しく。どこまで聞いた?」
「万引きして、本を植木のところに隠したって」
「……私は、あなたのタイムリープの中でどういう役割を果たした?」
「話し相手になってもらった。助かったけど、ループを出てしまったからもう証明はできない」
「ループ内ではなにか証明する時に使った?」
「和乃さんのスマートフォンのアプリで、ワンタイムパスワードというのを見せてもらった」
なるほど、私ならそうする。確かに矛盾はない。秘密を知っていて、私との会話に話すことに一方的に慣れている。騙すつもりでもそれだけの動機が無い。
「……信じるよ。それで、何をしてほしいの?」
「……ごめん、嘘なんだ」
私は思わず彼の襟元を掴んでしまう。自分の顔ぐらいの高さの布地はまだこなれていないのか固かった。
「じゃあどうして知った?なんで私に話しかける?理由を言って」
一瞬だけ遅れて、この苛立ちは自分が立てた完璧にも見える仮説が崩されたことに対するものだと気がつく。
「……ごめん、取り乱した。許してもらえると嬉しいけど、あなたには私を許さない権利もあることを忘れないで」
「あの、僕が先に嘘をついたんだけれども」
「理由があるんでしょう?何?」
ただ面白がって、七年も前の、私ですらここしばらく思い出そうともしてこなかったことを言い当てたとしたらそれは異常なのだ。読心か、過去視か、ともかくその手の何かがある。あるいは私はずっと監視されていたとか。
「僕は今、タイムリープしている」
「……ああ、なるほど。出たあとのリハーサルか」
納得した。そうか、確かにループが続くなら出た時の事を考えた方がいい。私と最初に話したループを出たあと、私がどこまで彼を信頼して協力者として動けるかは私でもわからない。よく知らない人だしね。
「すごいね、一瞬でわかったんだ」
「いや、どうにも私が考えそうだなって」
なんていうか、とても行動に馴染みがあるというかしっくり来るのだ。昔自分が書いた作品に稚拙なところがあってもどこか芯が面白いと感じるようなもの。
「そう。これは前の和乃さんが試してって言ってた」
「わかった。……もしそういうこと言い出した私がいたら、一発ぐらい頭叩いてもいいよ」
「痛いでしょ」
「私からの当然の報いだよ。なんなら私に叩かれた分の復讐ってことにしていいけど」
そう言って私は背伸びをして、ぺちりと彼の髪を叩く。思ってたよりふわふわしてた。
「……いいの?」
「今の私がいいって言った。もしそのせいで叩かれたとしたら、今のうちに復讐しておいたほうがいいよ」
「……それじゃあ」
真山くんも私の頭にぽふりと手を置く。おっきい。
「で、結論。私は信じるよ。ただ、ループ内であればワンタイムパスワードを見せればほぼ確実。ああでも覚えておくの大変?」
「大丈夫。そういうのには慣れてる」
慣れるほどタイムリープを経験しているのか。いや、これタイムリープでループしている回数自体が多いのか、まとまったループを何回か繰り返しているのか、どっちなんだ?
「何度も聞くことになるかもだけれどもごめん、何周もしてるの?それとも、何度もloopsを経験してるの?」
複数形のsを気持ち強めに発音する。
「どっちも。今はちょうど十周目で、こういうのは高校に入って三回目」
「……いつでもとは言わないけど、頼っていいよ。たぶん私にそれなりに付き合わされるし、付き合わされていると思うから、言うまでもないかもだけど」
「そうしている。いつもありが