今周の予定は決まってる?   作:小沼高希

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高校一年生 第六幕間 五

食券をちょっと戸惑いながら買って、バイトらしき店員さんに迎えられてテーブルにつく。

 

「チェーンなのかな」

 

「調べてみる?」

 

「いや、私がやるよ」

 

そう言ってスマホを取り出してサクっと調べるとここらへんの地域に何店か出しているところだった。チェーンなのか暖簾分けなのかは知らない。

 

「……何回来ても、慣れないな」

 

真山くんが呟く。

 

「初めてじゃないの?」

 

「和乃さんと一緒にどこかに行くのは、ってこと」

 

「そういうものなんだ」

 

ちなみに私の視点だと結構久しぶりのはずだ。

 

そうやって、無言の時間が過ぎる。話す内容がないとこうなっちゃうんだよ。互いにスマホを弄っている感じ。

 

「何見てるの?」

 

「今度の模試の予定」

 

「……あー、なんか言ってたな」

 

ホームルームでそろそろ受けてみたらどうかみたいなことが言っていたやつ。

 

「どんな感じなの?」

 

「申し込みすると、会場が指定されてそこまで行けばいいらしい」

 

「面倒くさそう……」

 

「でも、実力を知るにはいい機会だよ?」

 

「そうかもしれないけどさ……」

 

喉が渇いたので小さめのコップから氷水を一口。夏はまだ続いている。

 

「でもこれから色々あるから、忙しくなるよ」

 

「ええと、体育祭があって、文化祭があって?」

 

「まあそんな感じのやつ」

 

「忙しいよね、というかそういう予定の話って進んでいるの?」

 

頭の中で学年暦を思い浮かべる。体育祭が十月頭で、文化祭が十一月末。一応夏休み前から体育祭実行委員とやらがわちゃわちゃしていたけれどもよく知らない。

 

「みたいだよ」

 

「楽しそうだよね」

 

「……和乃さんは、そういうのに興味ないの?」

 

「……一年目はそんなに頑張らなくていいかな、って」

 

「そう。でも、時間ってすぐ過ぎてしまうよ?」

 

「真山くんが言うと説得力が違うな……」

 

なにせ私よりいっぱい時間を抱えていて、たぶん私以上に有意義に使っているのだ。それだけに言葉の意味が重い。

 

そんな話をしていると学生用にそこそこお安くなっているラーメンが来た。なお真山くんはちょっとトッピングをしていた。

 

「いただきます」

 

「……いただきます」

 

ちゃんと手を合わせる真山くんは真面目だぁと思う。悪いことではないし評価としてはプラスなんだけれどもね。私もぱきりと割り箸を割って食べ始める。

 

丁寧に冷まして、一口。濃いめの鶏ガラにしっかりと歯ごたえのある麺。ゆで卵をどのタイミングで食べるのかって難しいよな。

 

「どう?」

 

真山くんが聞いてきたがまだ口の中に麺が残っているので頷くだけにする。

 

「おいしいね」

 

値段を考えるとかなり良いんじゃないだろうか。なお比較対象はそれ以外のメニューです。相場をよく知らないからね。

 

「ここを教えてくれた人、結構色々なお店に行っているらしいけどその中でもおすすめだって」

 

「誰?」

 

私の質問に真山くんは答えてくれたが、辛うじて顔が思い浮かぶかどうかな感じだった。まあ夏休みの間に会った同級生は真山くんぐらいだしな。

 

「……話したこと、ないな」

 

「面白い人だよ。文化祭の実行委員だし」

 

「へぇ」

 

クラスメイトと関わっていく必要もあるのかな、と考えてしまう。あまり知らない人と話すこと自体が好きじゃないのだ。

 

ちょっと見ると、真山くんのゆで卵が齧られていた。あ、中が半熟なんだ。いいですね。

 

「和乃さんって、トッピングとかは後から食べる人?」

 

「……食べる機会を逃しただけ」

 

そういってちょっとだけふにゃりとしてしまった海苔を食べる。脂っぽいところがあるスープに対して海苔ってちゃんと考えられているんだな。

 

「……真山くんは、さ」

 

「なに?」

 

「もし私が、他の同級生とか学校の人達と楽しそうにしていたら、どう思う?」

 

「……和乃さんが楽しいのは、いいことでしょ?」

 

「本心?」

 

「……ちょっとだけ、嫉妬する」

 

「よかった」

 

こういうふうに思うのって別に悪いことじゃないですよね。行動を縛られたくはないけれども、まあある程度の線引きみたいなものは必要なわけで。たぶん私はしばらくは真山くん以外にハグを許すことはないだろうな、みたいな。

 

「でも、それ以上に和乃さんは他の人と話したほうがいいと思うよ?」

 

「……はい」

 

わかってはいるんですよ、わかっているからといって行動できたら苦労しないのですけれども。

 

「……和乃さんがそういうの苦手なのはわかっているから、無理はしなくてもいいけどね」

 

「いや必要なら無理させてよ。その時は恨むかもしれないけど」

 

「……わかった。和乃さんに恨まれるのは慣れてる」

 

「何やってきたのさ」

 

私は真山くんを恨んだことはあまりない。たぶん。ということはタイムリープの過程で会った私たちの話だろう。

 

「……色々と、嘘をついたり、たぶんうまく行かなかったりしたことがあって、その時の和乃さんからはたぶん恨まれていたと思う」

 

「……そう」

 

ここで別にこの私が覚えていないからいいんだよ、とかループのおかげで恨みは消えているんだから別に気にする必要はないよ、とか言うのが間違っているのは知っている。

 

でもかわりになんて言うべきかはわからなかった。残っていたトッピングのゆで卵をまるごと食べようとしたら熱かったので、急いで氷の溶けたお冷を飲んだ。

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