今周の予定は決まってる?   作:小沼高希

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高校一年生 第六幕間 七

「やったじゃん」

 

「何もやってないが……」

 

真山くんの言葉に、私は壁に立てかけられている運動用のマットに半ば埋もれるように体重をかけながら答える。たぶん腰とかによくないすわり方だ。

 

私の願いも虚しく我々のクラスは見事一回戦を突破し、私が試合に出ることになった。まあ途中で選手交代ってことで抜けさせてもらったけど。

 

その過程で、まあ、致命的な失敗はしないですんだと思う。一応私がやったサーブで点取れたし。これを得点カウントしていいのかは非常に怪しいけど。入ったか出たかギリギリのやつだったしな。

 

「そういう真山くんはどうなのさ」

 

「さっきまでリレー。次は昼休み明けにサッカー」

 

「リレーでは勝ったの?」

 

「なんとかね」

 

ちなみに体育館でやるバレーボールはクラス対抗なのに対して校庭でやっている競技は紅白対抗だ。でもサッカーはクラス対抗。複雑なものである。

 

「なんていうかさ、こういうのって授業でちゃんと教えられてないし、そこまで面白さを感じられないな……」

 

体育を思い出す。なんか練習ってことでボールを触って、特に説明もなく試合が始まる。一応四月に配られた副教材のファイルにバレーボールのやり方とか書かれていたけどさ、読んだところで身体は動かないのよ。

 

「……和乃さんは、そうかもね」

 

「違うの?」

 

「僕の場合だともともと動くのが嫌いじゃないし、基礎体力とかもたぶんあるから……」

 

確かに勉強とかはある程度できたり全体像を事前に俯瞰できたりしているから私が楽しめている可能性は高い。体育もそうだったらいいのに。せめてフィードバックをください。先生が仕事していないように見える教科として体育は上位に来るんじゃないか?

 

「きっかけとか、ないの?」

 

「……小学生の頃に、体育の授業がある日がループして」

 

「うわぁ」

 

「その時に走るタイムを計測していたから、色々と試してみたことがある」

 

「ああ、そういう成功体験」

 

羨ましいな。でもたとえ体力が回復するとしても、私はそういう方向の試みをすることはないだろう。純粋にモチベーションが生まれない。

 

「……うん」

 

「……運動系はともかく、人間関係についてはちょっと試してみようかな」

 

幸いなことに放課後に打ち上げがあって、ファミレスに行くらしい。そしてTシャツを作った私はなんか奢ってもらえるらしい。

 

「和乃さんは、たぶんうまくいくと思うよ」

 

「私に詳しい人に言われると言い返せないな……」

 

私が真山くんと過ごした記憶のある時間以上に、私と同じ性格の私たちと真山くんは時間を過ごしている。その真山くんが推すなら、まあなんとかなるのだろう。もし困ったら隣の彼に泣きつけばいいか。

 

「そういえばさ」

 

「ん?」

 

「この体育祭について面白いことを聞いたんだよ」

 

「ほう」

 

「もともと体育祭と球技大会が別々にあったんだけれども、数年前にくっついたらしい」

 

「ああ、確かにそういう気配がある」

 

なんていうか、イベントとしてちぐはぐな気はしていたんだよな。そう考えると色々と辻褄は合う。

 

「って話を先輩がしてた」

 

「どういう繋がり?」

 

「中学時代の先輩だった人」

 

「……そう」

 

そうか、すっかり忘れていたが真山くんにも過去があって、そこでできた人間関係はあるんだよな。私の場合はちょっと中学と高校の場所が離れているのもあって私の知っている人はおろか私を知っている人もいないんだけれども。

 

「……和乃さんってさ、どういう中学生だったの?」

 

「あまり話してないっけ?」

 

「……昔の話は、時々はぐらかされてる」

 

「そうかも」

 

ループ中か外かはわからないけど、まああまり言いたくはない時期ではあるよな。あと純粋に記憶が怪しい。そして話せるエピソードもない。

 

「今みたいに真面目だったの?」

 

「今が真面目みたいに言われてもな……」

 

「ちゃんと予習しているし」

 

「真山くんに引きずられているだけだよ、一人だったらまずやってない」

 

「僕も和乃さんがいなかったら夏休みに勉強ほとんどしていなかったと思うけどな……」

 

「……うん」

 

まあ私の動機のそれなりの割合が真山くんに会えるからってものだったからね、不純も不純である。真山くんの動機は知らないけど、私と同じぐらい高尚なんだろうなって察しはつきます。

 

「あ、負けてる」

 

いつの間にか始まっていた私たちのクラスの三回戦目はちょっと危うくなっていた。一応これに勝てば学年優勝である。そして二年生の優勝チームと三年生の優勝チームと当たるのだ。まあこれで勝てれば今日の打ち上げは楽しくなるだろうけれどもな。

 

「まだ勝てると思う」

 

「そうかなぁ」

 

とはいえまあ、応援ぐらいはしてやろう。なんか上から目線になってしまったな。見知った顔がコート脇にいるし、隣で見るぐらいなら大丈夫なはずだ。

 

一応今での頭の片隅ではなんでこんな残暑のある時期にろくに冷房も効かない体育館か日差しの痛い外で運動しなくちゃいけないんですかって思う部分もあるけど、まあある程度は青春だからって理由でごまかされておこう。

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