今周の予定は決まってる?   作:小沼高希

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高校一年生 第七幕間
高校一年生 第七幕間 一


結局、私の体調不良らしきものはしっかり寝たら回復した。もしかして夜更かしによる睡眠不足とかが原因だったのかもしれないが、そもそもなんか目が冴えて眠れなかったんだよね。

 

あからさまに体調リズムみたいなやつが狂っている。というわけで、私にとってはいつもの、真山くんにとっては久しぶりの学校生活が始まる。

 

「で、どうだった?」

 

登校後に自分の机に鞄を置いて、机越しに真山くんの正面に立って私は声をかける。

 

「……終わって、よかったなって思った」

 

「結局今回は五十三周。累計では一日と八時間半。昨日は言えなかったけれども、お疲れ様」

 

ちょっと小声で言う。たしかあの後ごたごたして、結局話せなかったんだよね。なおペットボトルは授業後に捨てました。

 

「……結局、昨日実験は大丈夫だったの?」

 

「まあそういうの得意だし……」

 

事前に教科書を読んでおけば何をやればいいのかはわかるのだ。手を動かすのは好きだしね。

 

「よかった」

 

「あと元気になったよ」

 

「……本当に、よかった」

 

まあしばらくは真山くんの精神のリカバリーに努めるとしよう。私から話しかけても問題ないはずだ。

 

「あと何か伝えることってある?」

 

「和乃さんの持ってる本は二冊読んだよ」

 

「英語のやつを読んでないのね」

 

「……うん」

 

おっとしまった、やり取りを省略する話し方をしてしまった。真山くんにとってたぶん必要なのはゆったりとした時間に追われない無駄話だろう。

 

せっかちな私には苦手なやつだが、まあ真山くんのためだ。頑張りますとも。

 

とは言っても、授業というのがあるせいで私と真山くんの楽しい学園生活は引き裂かれてしまう。いや学園生活なんだから授業がメインだろ。

 

そんなわけで今日も今日とてお勉強。ノートに数式を書き、教科書をめくり、タブレット端末で課題を提出。

 

そういうわけで昼休みだ。さて、ここで問題がある。

 

学食のある食堂では、別にお弁当を持っていって食べてもそう怒られはしない。なので一緒に過ごす時間を伸ばしたいなら、今ここでお弁当を開けようとしている真山くんに声をかけるべきなのだ。

 

理解はしていますとも。真山くんにはループから出れたことに対するご褒美ぐらい受け取る権利があるんですよ。

 

でも、私はどうにも動けなくて、食堂に行くべく廊下を出るときに、真山くんの隣を通るぐらいしかできなかった。

 

「お昼食べに行くの?」

 

そして声をかけられる。言ってしまえば楽なのにね。でも言うのが怖いんだもの。

 

「ん、そうだよ」

 

「……おすすめのスポーツドリンクがある」

 

「へぇ」

 

「奢るよ」

 

「……いいよ、戻らないんだから」

 

「……そっか」

 

親切には甘えるべきだと考える自分と、私が奢ったのは最後の一回だけだと考える自分がいる。いや一回分は奢り返してもらってもいいか?

 

でも、結局のところ私は真山くんを誘うこともできず、自動販売機で一人ペットボトルを買って学食に行くのだ。

 

いつも頼んでいるような定食を頼み、いつもなら取るコップを取らずに席につく。ざわめき声のなか、一人で小さく手を合わせてお昼ごはんを始めよう。

 

基本的に、ここで昼食を食べるときには一人だ。別に向かいの席は空いているのだが、誰も座らない。座る必要もないぐらいには席にも余裕があるんだけれども。

 

結局のところ、私と真山くんはどこまで進展したのだろう。これを冗談交じりで聞くのは、さすがに色々とまずいことぐらいは見当がつく。

 

かといって真面目過ぎるトーンで話すと重くなりすぎるかもしれないしな。バランスが難しい。

 

面倒なことを考えているとご飯が美味しくなくなるので、頭を切り替えることにしよう。

 

おかずの鯖の味噌煮。ごはん。いつもついてくるキャベツ。味噌汁。適当に食べていく。やっぱり育ち盛りだからかそれなりにお腹が空くのだ。

 

少しでも食べることから気を逸らすと、面倒なことを考えてしまう。なので食べ続ける。ちょっと入っていた骨を口から取り出して、口の中をさっぱりさせようとスポーツドリンクを開けようとする。

 

開かない。手が滑ってしまうのもあるけど、全然掴めている感じがない。ああ、だから昨日真山くんが開けてくれたのか。

 

「ほら、貸して」

 

そう思っていると、真山くんの声がした。

 

「……どうして?」

 

「もし和乃さんが買ったなら、開けれてないかもなって思って」

 

「……ありがとう」

 

一応開けられないわけじゃないからね!たまに飲むりんごジュースとかはしばらく挑戦すれば開けられるんだよ!

 

さくっと真山くんは開けてくれた。手には弁当箱。

 

「……話しに来たの?」

 

「嫌だった?」

 

「そんなことないよ。……でも、どうして?」

 

「ループの時に和乃さんに学食を端から食べる話をされてさ」

 

「……あったね、そういう案も」

 

「たぶんその時は、僕のお弁当を和乃さんが食べるつもりだったんだろうなって」

 

「……そうなるね」

 

毎回同じものを食べるというのも飽きるだろう。私だって毎日定食だけど、定食の内容は日替わりなのだ。

 

「和乃さんがどういうふうに食べるかも知りたくて」

 

「……そう」

 

「ここ、座っていい?」

 

真山くんは向かいの空いている席を指した。私は頷いた。

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