今周の予定は決まってる?   作:小沼高希

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高校一年生 第七幕間 四

「……なに?」

 

自習室で問題集を選んでいたら、真山くんが後ろから抱きしめてきた。私は腕を押さえられた状態でどこまで攻撃できるかな、とか考えながら正面を向いたまま口を開く。

 

「……いや、なんでもない」

 

そう言って、真山くんは少しだけ腕を緩めた。

 

「……何周目?」

 

「ループでもない」

 

「わぉ」

 

真山くんがここまで積極的な行動をしてくるとは思っていなかった。なお何周回ったかは知らないが私の頭は比較的冷静であった。これっていいのかな。本来ならロマンチックな感じにするべきじゃなかろうか。

 

「……嫌?」

 

「変なところ触られても今はそういう気分じゃないとしか言えないな……」

 

そう言うと真山くんはすっと離してくれた。なんだよ。その気にさせるぐらい試してみろよ。でも暖かかったな。そろそろ暖房をつけたほうがいいかもしれない。

 

「なんか、その」

 

「ん?」

 

「駄目な、触り方だった?」

 

「いや特にそうじゃなかったよ」

 

ちょっと早口になってしまったかなと言いながら考えて、平静を保つために参考書から問題を選ぶ。中間試験は明日からなので今更頑張ってもどこまで意味があるのかはわからないが。

 

「……今度は、一言声をかけてからにするよ」

 

「そうして。今回は良かったけど、もしかしたら驚いて大声を出してしまってあらぬ疑いが真山くんにかかるかもしれない」

 

「……はい」

 

まあ、そんな話は置いておいて今日のうちに確認しなければならない範囲を確認していく。クラスの共有フォルダには私がコツコツ作っておいた試験範囲をまとめたファイルがあるのだ。閲覧数は少ないけど。

 

「抜けはありそう?」

 

「……大丈夫なはず」

 

「まあ今更じたばたしてもそう点数伸びるとは思えないからねぇ」

 

特に英単語なんかは日頃からどれだけコツコツ単語帳を読んでいるか、あるいは英文を読んでいるかだ。真山くんは前者。私は後者。おかげで私は語彙が偏っている。

 

「和乃さんの得意な教科、最初の日に固まってない?」

 

「嫌だなぁ」

 

「嫌なの?」

 

「私は得意なのを最後に回したい派だから」

 

特に勉強をしているわけでもないこの時間はとてもいいものだ。たぶんこの学校でも指折りの青春を送っている自信がある。それが真山くんのループとかいうあまり得にならない現象に依存していると考えるとちょっと複雑な気分にはなるが。

 

「……試験終わったら、文化祭だね」

 

「それなりに時間がない?」

 

まるまる一ヶ月ほどある。まあ一ヶ月がすぐに過ぎるのは夏休みが終わってすぐな気がすることを考えればそうおかしくはないな。

 

「……そっか、次のループは文化祭の前あたりか」

 

「ああそうだ、ループとループの間の期間もまだ良くわかっていないんだよな……」

 

一応ループの期間と回数の関係性については仮説は立っているのだが、これが正しいかどうかは正直わからない。一応計算は合う、ぐらいのもの。次のループがあれば検証はできるはず。

 

「だいたい一ヶ月か少し長いぐらいのはずだけど」

 

「まあでも、私に色々しやすくなった分ループも少し気楽になったんじゃないの?」

 

「……そうかもしれないけどさ」

 

「ループは大変なんだから、適度に息抜きしなよ?」

 

「そういうふうに和乃さんを扱うのはちょっと……」

 

「真面目だ……」

 

そう、真山くんはなんとも真面目な少年なのだ。実はこっそり若さ故の過ちみたいなものをどこかのループでしていませんか?いやしていたら私に話してそうだな。まあ真山くんの口から私を殺したことがあるとか言われたらちょっと興味は出ますが十中八九聞けないよな。

 

「……あと、そういうのは、ゆっくりやりたい」

 

「まあ、私は真山くんのペースに合わせることに問題はないけど」

 

定期的にちょっと手を出してしまおうかなとか私も思わないわけではないですよ。ただ、それを自制するぐらいはできます。できているといいな。できますように。

 

「……いいの?」

 

「私は自分のペースでやって失敗したからね、どうせ失敗するなら別の方法が良い」

 

「……失敗すると、思う?」

 

「完璧な関係はできないでしょ。問題は失敗から何を学んで、どう行動するか」

 

そう考えると私はあまりよくなかったな。行動を起こさなかったので、教訓を自分の中でまとめるまでに一年ぐらいかかってしまった。まあ、それ以外の選択肢が自分に取れたかというと今考えてもわからないが。

 

「もしさ、間違っているって思ったら言ってね」

 

「……頑張る」

 

そういうのを自分で抱え込んでしまうところが私にはあるし、たぶん真山くんにもある。それはいいことではあるのかもしれないけど、二人でやっていると気がついた時には致命的なまでに歪んでしまうとかあるやつだ。そういうのが好きな人が昔ネットの知り合いの創作系にいた。

 

「……そろそろ下校時間じゃない?」

 

「そんなに?」

 

時計を確認すると六時半ちょっと過ぎ。うん、よくないね。

 

「帰る?」

 

「そうだね、そろそろ準備しないと」

 

私は外套と鞄を持って、本棚から抜き出していた問題集をまとめた。

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