透き通るような死の線を 作:ゲマトリア「曇らせ」
まあ出会うぐらいならしても本筋に差異は生まれないだろうし誤差みたいなもんだと思います。
箸休め回です。多分。
まったく、なんだってこんなことになったのか。
ベージュ色なお嬢様を俺は抱えてヘルメット団から逃げつつ、そう思考する。
「アイツどこ行きやがった! 探せ探せ! アビドスの一員なら高くつくぞ!」
「──相も変わらず隠しもしねえの。アホなのかアイツら。いやアホだから不良やってんのか……」
やれやれ、と肩を竦めて物陰に身を潜めて一息つく。
報酬が出る、とかカイザーと繋がってますよ、って言ってるようなもんなんだよなぁ。
「あ、あの……」
「し〜ぃ……お嬢さん、今はお静かに。息を潜めて?」
バレる訳には行かないからね。と声をかけてきた極めて薄い黄色の髪をした少女の口許に指を当てる。
顔を赤くしながら少女はこくり、と頷く。
「うん、いい子だ。連中が去ったらとりあえず安全なところまで移動しようか。それまでは此処で待機。いいかな?」
「……っ……はい」
頷く彼女に満足しつつ、俺は笑う。うん、物分りのいい子だ。
しっかし、見た目はどう見てもいいとこ育ちのお嬢様。──多分、トリニティとかそっち在住の子か? なんだってこんなところに来てんだろうな。と思わず彼女をまじまじと見つめてしまう。
「……?」
そんな視線に気付いたのか、少女がキョトンとした顔でこちらを見つめてくる。
おっと、いけないいけない。今はそっちに意識を割くべきじゃなかったな。
彼女のことを考えるのあと。とりあえず今は、ユメ先輩とホシノのモモトークに女の子拾ってヘルメット団に追われてるって報告だけして──
「…………よし、足音は聞こえなくなった。気配もしない」
そうこうしてる内に、ヘルメット団の連中の気配も声もしなくなった。
どうやらここじゃない場所に当たりをつけた。と見てよさそうだ。
移動するなら今だな。と俺は立ち上がって、彼女に手を差し伸べる。
「それじゃあお嬢様、行きましょうか?」
「……っ……」
少し恥ずかしげに俺の手を取る彼女に笑みが零れた。可愛い子だなぁ。
────
「はー、じゃあノノミちゃんはネフティスグループのご令嬢なのか。
マジかぁ……とんでもないVIP様じゃん」
お嬢様、というのはなんとなく雰囲気やその見た目から察してはいたけど……まさかアビドスにも通ってる鉄道の企業、セイント・ネフティスのご令嬢だとは思わなかった。やべえ、俺今めちゃくちゃやばい立場じゃん。
護衛失敗したら俺ごとアビドス滅びるのでは?? え、なにこの新手の罰ゲーム。
「はい……その、わざわざ助けていただいてもらって……ありがとうございます」
「いいっていいって。礼は要らないよ。たまたま通りかかった身だったけど……放っておけるほど人でなしにも俺はなれないしさ。それに、俺としては謝罪しなきゃダメな立場だし?」
おろおろとさ迷ってたお嬢様を手助けしたはずが……偶然ばったりと遭遇してしまったヘルメット団に追いかけ回され、彼女を連れ回す羽目になったのだから非があるとするなら、こちらだろう。
「い、いえ……それこそ私も余計な手間をかけさせてしまう原因になってしまいましたし……」
これならお忍びとはいえ、武装のひとつでもしておけばよかったですね……。なんて呟く彼女に苦笑する。
それはそうなのだ。このキヴォトスでは銃を持ってないやつは金品どころか身ぐるみ剥がしてくださいと言っているようなもので……幾らお忍びだったとしても護身用の武器のひとつぐらいは持っておくべきだったのだろう。
「あー……じゃあ、これ持っとく?」
「! よろしいのですか?」
「ん、まあ……さすがに身を守る護身用の銃は持っておくべきでしょ?」
俺は彼女に自前の拳銃を手渡しながら苦笑する。
対人戦で俺が背負ってるスナイパーライフルは圧倒的に不利なんだけど……まあ、最悪俺にはコッチがあるし……と、
『眼』を使うつもりはないけど、ある程度俺もなんか異名みたいなの知れ渡ってきてるみたいだし? 威圧にはなるでしょ。多分。
なんか「砂漠の切り裂き魔」とかそういう名前がいつの間にか俺にはついていた。
切り裂き魔て、否定はしないけども。実際めちゃくちゃ暴れたしなぁ。
「ありがとうございますっ、この御恩は必ずお返ししますっ」
「大袈裟だって……」
銃を受け取りながらそういう彼女に思わず苦笑してしまう。なんというか凄く上の身分の人だから発言が大きいよなぁ……
「それにしても、なんでわざわざアビドスなんかにお忍びで?
……君みたいなお嬢様なら、それこそトリニティとかそっちに見学に行ってるもんだと思ったんだけど」
「──それ、は……」
「……あー……企業秘密ってやつかな? だとしたらごめん。詮索は無用だね。今のは聞かなかったことに」
言い淀む彼女を見て、あ、やべ。墓穴掘った。と感じた俺は即座に話題を逸らす。
言い淀む顔があまりにも罪悪感に苛まれていたから、というのもあるけど。
「…………ごめんなさい」
「いいよいいよ、会社のことを赤の他人に漏らすわけにはいかないでしょ?」
そういう意図での謝罪ではないんだろうな、と直感的に思いはしたが……さすがにここでそこら辺を追及するほど俺は鬼じゃない。
だから、社外秘は仕方ないよね、とわざとらしく肩を竦めた。
「そういや、お嬢様の目的地は何処? このルートだとアビドス高校一直線だけど」
「……! はい! アビドス高等学校でお願いします!」
「あ、アビドスでいいのか。分かった、それじゃあ着いてきて。頼もしい──かは分からないけど、一応護衛は務めさせてもらうからさ」
「色々とご迷惑をお掛けしてすみません……シキさん」
「いいって、気にしない気にしない。俺が好きでやってる事だし」
そうして十六夜 ノノミちゃんとの奇妙な珍道中が始まった。
「──シキさん! あれはなんですか!?」
「ああ、あれはアビドス砂祭りのポスターだね。砂漠化が進んで過疎った結果……ここ数年はいっさい行われてないんだけどさ」
「──……そう、なんですか……」
「あー、まあ……いつか? 必ずアビドスを復興して砂祭りも開催してみせるよ。だから残念がらないでくれ、ノノミちゃん」
「──はいっ」
なんて、道中でそんな雑談をしたり。
「いたぞ! 追え!! 切り裂き魔もいるぞ!」
「報酬は私たちのもんだー!!」
「ヒャッハー!!」
「だからお前ら世紀末すぎるっての!!!」
「シキさん!! じ、自分で走れますから降ろしてください……っ!」
「無理無理無理! 今降ろしたら俺がやられる! というかお嬢様怪我させたら俺の首が物理的に飛ぶでしょ絶対!! そんなデメリット抱えてまで走らせませんよ俺は!!」
ヘルメット団に再び見つかって、ノノミちゃんをお姫様抱っこしながらうおおおおお!! っと全力疾走したり。
「うへぇ……やっぱこの辺は砂煙がひでえな……ノノミちゃん、大丈夫?」
「な、なんとか……!」
「……そういや、この辺りの鉄道って……ネフティスグループの支援だっけ」
「ぁ……はい……そう、ですね……あ、あの……怒らないんですか……?」
「なんで? 廃線になったのは残念だけどさ……使いものにならなくなったわけじゃないし、復興したらまたいっぱいお客さん乗せれるでしょ? ネフティスグループはめちゃくちゃいい投資したと思うよ?」
「───」
なんて、彼女がちょっと不安がってたところをフォローしてみたり。
──そんなことをしていたら、アビドスに到着した。
「はい、というわけでここがアビドス高等学校です。廃校寸前だけどネ!」
「……ここ、が……アビドス……!」
「ノノミちゃんって、あんまり校舎見たことない?」
「実は……あまり……」
「うへぇ……さすがお嬢様……」
これが格差か……と思わず驚いてしまった。というか後光が差してみえる……。
「で、いまここにいるのは二桁程度で……その中でも、やっぱり今もこうして此処に来てる変わり者は……」
「シキ───────!」
「おーい、シキくーん!!」
「お、噂をすれば」
こちらへ走ってくるホシノとユメ先輩の姿を確認して、くすっと笑う。
あの顔はアレだな。めちゃくちゃ心配してる時のヤツ。前見たぞ。
「シキっ……!」
「うおっと……! さすがにもう慣れたぞホシノ」
思いっきり抱きついてきたホシノを受け止める。最近はよくこうしてコイツは抱きついてくるもんだから、慣れてしまったものだ。
「怪我はしてない……!? 大丈夫……!?」
──俺が戦う度になんかこういう心配してくるようになったんだよなぁ。さすがに信頼がないにも程があるのでは?
「大丈夫だって、そんな簡単にくたばるほど俺は弱くないっての、いや、耐久面はめちゃくちゃ弱いけども」
「シキくん! 大丈夫だった!?」
「ええ、まあ。何度か危ない場面はありましたけど。この通り無事ですよ」
ぺたぺた、と俺の顔を触ってくるユメ先輩に怪我なく帰ってきたことをアピールする。先輩も最近なんかスキンシップ増えたよなぁ。なんか。
「──って、あれ……? シキくん、その子は……?」
ふと、ユメ先輩の視界にノノミちゃんの顔が入ったのだろう。
きょとんとした様子で俺に聞いてくる。
「ああ、そうだった。すみません。彼女が一応モモトークに送った時に言ってた女の子です。十六夜 ノノミさん。……ネフティスグループのご令嬢とかいう超VIPですよ」
「うぇっ!? ネフティスグループ!?!?」
耳打ちすると、さすがにとんでもないビックネームが出てきたことにとてつもなく大声で驚いていた。隣にいたホシノも目を丸くしていたし、やっぱりお嬢様って格がちげえわ……。
「で、ノノミちゃん、こっちのおっとりしてそうな水色の髪の人が道中で言ってたアビドス生徒会の会長。ユメ先輩。で、さっき俺に抱きついてきたピンクの髪でいかにもツンケンしてる真面目ちゃんが副会長のホシノだ」
「ご紹介に預かりました。十六夜 ノノミと申します。このアビドスまでシキさんには護衛をしてもらいまして──」
「こ、これはご丁寧に……それで、ノノミちゃんはどうしてここに……?」
「……それは、その……アビドスの校舎を一度見てみたかった、というのもあるのですが……」
ちらり、と俺とホシノの顔をノノミちゃんは見つめる。
───ああ、これは俺とホシノはお邪魔ってやつだな。多分。
「よーし、ホシノ。ちょっと付き合え」
「は? ちょ、いきなりなにをっ……!」
「いいからいいから。おじゃま虫は撤退するので、あとはユメ先輩とノノミちゃんでごゆっくり〜」
「ちょっと、離してってば……! さすがに自分で歩くから服引っ張らないで! 伸びるでしょ!?」
ずるずる、と俺はホシノを引きずりながらユメ先輩とノノミの前から撤退するのであった。
───
「で、あれはどういうこと?」
「どういうこと、とは?」
「……なんで拾ってすぐにあんなに仲良くなってるの! しかも! ネフティスグループのご令嬢と!!」
「なんで、と言われましても……」
歳下の女の子だったし、お嬢様だとはいえ下手に困らせたらいけないかなぁ……と思ってのことだったし……というか、それホシノには関係なくない……?
「……私のことは入学してからつい最近までずっと苗字呼びだった癖に」
「……ホシノ?」
「──ッなんでもない」
ぷい、と顔を赤くしながらホシノは目を逸らす。
……うーん、乙女心は分からん。とくにホシノはよく分からん。
俺の事嫌いじゃなかったっけ君。……なんか、明らかに最近の態度はそれと真逆な気がしてるんだけど……気のせいか?
「……まあ、ホシノも薄々は察しがついてるだろ。わざわざネフティスグループのお嬢様がこんなところに、護衛もなしでお忍びで来てるんだしな」
「それは……まあ、分かるけど……」
おそらく、俺もホシノも……見当はついている。彼女が此処に来た大凡の理由は……罪悪感だろう。
とくに、これに関しては俺も直近で経験したから少しは気持ちが理解出来る。
──だから、それとなく彼女が目に見えて落ち込んだ時はフォローを入れたりしたわけだけど。
「……別に、彼女が悪いわけじゃないのに」
「そうだな。あくまでここから離れたのは住んでた人の選択だし……ネフティスグループは良かれと思って手を貸してくれてたんだ。ユメ先輩もそうだろうけど、俺も恨んじゃいないしな。ホシノもだろ?」
「当たり前でしょ。……恨むとするなら不当な利子をつけたカイザーだけ。他を恨むのはお門違いだし」
「だから、下手に出るよりは……ああしてちょっとでも絆されるぐらいに先輩面した方がよかったんだよ。その方が、あんまり罪悪感も抱かないだろ」
「…………ほんっと……この、女の敵は」
「待て、なんでそうなる。俺がいつ女の敵になったと?」
そんなプレイボーイみたいな発言とかしたつもりはないんですけど?
「───バカ」
「解せねぇ……」
何故罵倒されねばならんのだ。これは横暴というやつなのでは? 起訴も辞さない。
「なにか言った?」
「いえ、なにも?」
──悔しいが、俺は力でも知恵でもホシノには基本的に勝てないのである。
起訴する前から敗北してたわ! ちくしょう!!
ギロリ、と睨まれたところで怖くはないけどな! ほんとに怖くはないぞ!!
……むしろ可愛い……コホン、なんでもない。
「ねえ、シキ」
「んだよ?」
「最近、無理してない?」
「────」
「……なんというか、気のせいならいいんだけど……ここ最近のシキは、空回りしてる、っていうか……無理に取り繕ってる感じがして」
──なんというか、コイツは本当に勘が鋭い。元々の聡明さもあってか、人の仮面を見抜くのが異様に上手いのかもしれない。
……だとしても、打ち明けるわけにはいかないし……バラすつもりもない。これは、俺の問題であって……ホシノやユメ先輩には関係ないことだ。
……そうでなくてはいけない、そうじゃなきゃいけないのだ。
だから──
「気のせいだろ。無理もしてないし無茶もしてないよ。また泣き疲れたあとで腹にいいパンチ食らいたくないしな」
「あ、あれは悪かったってば……!」
「はははは、冗談だよ。まあ、無理してないのはホントだよ。
そもそもそういう柄じゃないしな。いや、まあ説得力ないのは否定しないけど」
──そうやって、からかいながら平然と嘘をついた。
「……まあ、たしかに。シキは無茶はするけど無理はしないし」
「よく分かってるじゃん。俺のこと見すぎでしょ」
「──なっ、べ、別にシキのことばっかり見てたわけ……──ッ!」
へー、ほー、ふーん……別に見てたわけじゃないと? ふーん?
「な、なに?」
「……いや、俺のこと好きなのかお前」
「────ッ! うるさい! 嫌いだって言ってるでしょこのバカ!」
「ウゴォッ……!? 」
は、はは……からかいすぎたぜ……また……いいパンチ……はいっ……ぐふっ……
「あっ、し、シキ……!? ごめんっ!?」
コイツに気を失わされるの何度目だっけなぁ……なんて、薄れていく意識の中、そんなくだらないことを考えてしまった。
────
「色々とお世話になりました」
ぺこり、とノノミちゃんが頭を下げる。
俺が気絶している間に、ユメ先輩とノノミちゃんのお話は終わったようで……目を覚ましすぐぐらいに、ネフティスグループの人と連絡を取って彼女の迎えに来てもらっていた。
「とりあえず怪我なく無事帰すことができそうでなによりだよ」
「だね〜、ネフティスグループの護衛さんたちも無事に到着したし!」
「本当にありがとうございます。この御恩は必ずお返ししますので」
「恩を売ったつもりはないよ。だから、本当に気にしないでいいって」
ノノミちゃんの言葉に、俺は苦笑いを浮かべる。
本当に恩を売ったつもりはない。偶然通りすがったところに彼女がいて、それを放っておけなかったから助けただけ。本当にそれだけなのだから。
「ふふ、シキさんは優しいんですね」
「さて、どうだろうな。ただ寝覚めが悪くなるからってだけかもしれないぞ?」
彼女の言葉に、否定も肯定もせずにとぼけるように肩を竦めた。
優しいか、と言われたら別にそんなことないしな、俺。アビドス高等学校見捨てようとしてた側だし?
「……ユメさん。……あの話、本当によろしいのですか?」
「うん、いいんだよ。ノノミちゃん。色々と私たちの為に考えてくれたのかもしれないけど……それは私たちアビドスで解決しなきゃいけないことだから」
「……そう、ですか……分かりました。ユメさんが、そう仰るのでしたら。……健闘をお祈りします」
「ありがとう、ノノミちゃん♪」
2人の会話を聞いて、借金周りのことだろうな、とは思いはしたが……そこでキッパリと断っていたであろうところはなんともまあ、ユメ先輩らしい。
──まあ、余計なことに巻き込めないよな。とくに、あの『黒服』が関わっているのなら尚のこと。
これに関して、知っているのは俺だけだ。ユメ先輩にも、ホシノにも話していない。
──この『魔眼殺し』の眼鏡はあくまで視力が悪くなったから買ったものだと、偽ったし……ユメ先輩とホシノが狙われる可能性を考えるなら、この方がいいのだろう。
勿論、俺が借金の半分を黒服に負担してもらったことは2人には隠している。
黒服にそういう風に話を通させた。あくまで出資者は不明のままにする。と。
いずれバレるかもしれないが……それでも今知られるよりは都合がいい。
……それから黒服と交渉し、この先……俺の『眼』を研究する度に借金返済を手伝うように要求したが、それもすんなり通ったしな。
そういう所も含めて何を考えているか分からない男だが、それでも知識や金銭周りだけはある程度信用はできる。信頼はできないが。
「──キ、シキくんっ! ノノミちゃんが何か言いたいことまだあるみたいだよ?」
「えっ? ──ああ、すみません。ちょっとボーッとしてました。どうした、ノノミちゃん」
「あ、いえ……大したことではないんですが……拳銃、ありがとうございました」
「あー……」
彼女に手渡された拳銃をみてそういえばそんなの渡してたわ、と思い出す。
「あんまり使う機会なく済ませられたのは良かったよ。下手にドンパチに巻き込むのは良くなかったしな」
「ふふ、そうですね。改めて護衛ありがとうございました。報酬に関してやはりお話を──」
「だからいいよそれ!? なんか俺が金目的で君を助けたみたいになっちゃうから!? ここはただの気紛れで善行しただけの人間で済まさせて!?」
お金にがめつい人みたいになっちゃうじゃん俺!
「ですが、それではやはり私の気が……」
「あー……だったらさ」
「え、ちょっと」
ひょい、とホシノをノノミちゃんの前に引っ張ってくる。
「……もし、アビドスにまた来るようなことがあったら。ホシノのこと支えてやって欲しい」
「は? ちょ、シキ。いきなり何を──」
「いや、さ! ユメ先輩が卒業した後、俺1人じゃ絶対ホシノのこと御しきれないだろうから! そういう意味じゃ頼りになる後輩ちゃんが欲しいなーって思って!」
ほら、コイツ基本的にツンケンしてるし俺の事嫌いらしいから! なんて付け加えながら、ノノミちゃんに少しの嘘を混じえてそう告げる。
「はあ???」
「──ふ、ふふっ……!」
どういう意味だこら、とでも言いそうな顔でこちらを睨みつけるホシノに対し、思わず笑みを零すノノミちゃん。
「はい、その時は必ず……♪ 約束致します♪」
「マジか。ありがとう、ノノミちゃん!」
「ちょっと、シキ。どういう意味で言ったのか小一時間ぐらい問い詰めてもいい??」
「はっはっはっはっはっ」
「笑って誤魔化そうとするな!?」
ああ、良かった。──これでもし、俺が居なくなったとしても……ホシノは大丈夫だろう。彼女が来てくれるなら、きっと心強い。
うっすらと覚えてる景色、その中に『彼女に似た誰か』が居た。きっと……彼女はここに来るのだろう。そしてホシノを助けてくれるのだろう。だから、俺は……安心して彼女にホシノを任せられると思った。
「───また、お会いしましょう。シキ
「はは、その時はよろしくね。ノノミちゃん」
なんでそこで手を握ってきたのかとか、耳許で言ったのかとか聞きたいことはあるけどまあいいか。横から冷たい視線を感じるし!
「ユメ
──負けませんからね?」
「「…………っ!!」」
そうして、彼女が本来の護衛役と共に、アビドスから去るのを見送り……奇妙なお嬢様との出会いと交流は終わりを告げたのである。
「──シキ、ちょっと話しがある」
「あ、ホシノちゃん。私もそれ参加してもいい?」
「……まあ、ユメ先輩は特別にいいです」
「はい? いや、あのちょっと……なんでそんな冷たい目線を送ってるんですかね。というかユメ先輩、怖い。怖いですって。満面の笑みでこっち来ないで??」
「え〜? 私別に怒ってないよ〜?」
「いやそれ怒ってる人の言い方ですよねェ!?」
「──シキ、その女誑しっぷり。やっぱり折檻した方が良さそうね」
「待って? いやほんと待って? 女誑しとか言われても知らんが?? 何時どこで俺がモテたんだよ!?」
心当たりがひとつもないんですけど!?
「容疑者はいつだってそう言うの。心当たりがない、覚えがありませんって」
「やった前提で話進めないでくれませんかね!?」
ダメだこれ! しばらく話通じないやつだ!! ここはあれだ──
「うおおおお!! 戦略的撤退ィ!!」
「あ、こら! 逃げるな!!」
「シキくん! 逃がさないからね!!」
「いや逃げるに決まってるでしょ!?」
しばらく俺はユメ先輩、ホシノからの逃走劇を繰り広げるのだった。
──ちなみにこの後普通に捕まりました。キヴォトス人には勝てなかったぜ……俺もヘイローあったらなぁ!! 畜生!!
七織 シキ
男性観破壊装置と書いて男性観ブレイカー。
ノノミの初恋とか諸々全部奪っていった。
黒服からもらった眼鏡を最近かけ始めたり、若干空元気気味だったりする。
†砂漠の切り裂き魔†なんて二つ名がついた。
だっっっっさ。と本人は思ってるらしい。
小鳥遊 ホシノ
素直になれない過去おじさん。
ちなみにここで好きだって認めてたらホシノ√直行だった。
まあ直行できないんですけどね。
ユメ先輩
なんだかんだいつも頼りになるししっかりしてる人。
また女の子口説いてる……とシキくんにちょっとジト目向けてたり向けてなかったり。
十六夜 ノノミ
我慢できずに出番ができちゃったお嬢様。
この世界ではシキの影響でアビドスに入ることを決めている。
男性観はたった一日でシキにぐちゃぐちゃにされた可哀想な子。
ガトリング砲は出番ナシ。
貰うだけでモチベが上がるので
感想、評価よろしくお願いします。