透き通るような死の線を   作:ゲマトリア「曇らせ」

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壁越えしたりコーラル燃やしにいってたので遅れました。
ヘリコプター強いね……今からでもいいからCAPC○M製のヘリに買い換えない?

いい加減畳み掛けに行くかー、と思うこの頃。
本作は15話以内で完結させる予定です。多分。

後、今日は月姫2周年らしいです。めでたい限り。


6話 やり方

「あれから、調子は如何ですか? 七織 シキさん?」

 

「おかげさまで気持ち悪いぐらいには快適だよ畜生」

 

『黒服』の言葉に嫌味ったらしく俺は答える。

 コイツに与えられた眼鏡、『魔眼殺し』は間違いなく効果覿面だった。線も点も見えない。故に、気を張りつめる必要もなく……おかげさまですこぶる快適だった。最近は寝不足にもなってないしな。

 

「クックックッ……それは良かったです。効果がない、では『契約』において不義理に当たりますからね」

 

 正当な報酬を与えられない、というのは私のポリシーにも反しますので。なんて告げる男に、どの口が言ってんだてめえ。と睨みつける。脅しみたいな交渉しやがったくせに。

 ……いま、俺がいるのはコイツ曰く『工房』らしい。神秘や恐怖とやらを実験するための場所だという。

 その中でもかなり特異なところらしく、ここを知る者は殆ど居ないと言っていた。何処まで信じればいいかは分からないが……少なくともこれに関しては疑うつもりはない。

 

「というか、思ってたんだが」

 

「なんでしょうか」

 

「……目の検査とかだけでいいのかよ。実験とかしないのか?」

 

 そう、コイツの工房とやらに呼ばれるのはいい。そこは俺も別に文句は言えないし言わないつもりだ。──そこで行われるのが『眼』の検査。……というか視力検査みたいなものなんだから不気味にぐらい思うだろう。

 

「ええ、これに関しては必要ない……と言うよりもできないのですよ」

 

「……できない?」

 

 黒服の言葉に疑問符が浮かぶ。できない、というのはどういうことだろうか。

 俺の眼にまるで制約があるような、言い方だ。

 

「貴方の『眼』が『死』と『色彩』に繋がっている、というのは以前話しましたね」

 

「ああ、言われたな。正直な話クソほどどうでもいいんだが」

 

「それは()()()()()()()()()()()()()()()

 

「……? いや、だからそれならそれこそ俺の眼を抉りとって使えばいいんじゃないのか?」

 

 抉りとって利用するぐらいならこの工房の設備なら出来そうなもんだが。

 そうやって使い潰すぐらいはコイツならしてのけると思っていた。

 

「できるなら、そうしていたかもしれませんね。ですが、不可能なのです」

 

「……どういうことだ?」

 

「簡潔に言ってしまえば、貴方の『眼』の力は貴方の『脳』と直結しています。『眼』と『脳』があってはじめて機能するのです」

 

「つまり?」

 

「クックックッ……眼を抉る前提なら貴方の生きた脳と生きた『眼』、どちらも必要なのですよ。脳移植と眼の移植を同時に行い、かつ一度も切り離してはいけない、ということです」

 

 ああ、それは──

 

「───無理だな」

 

「はい、そういうことです。そこまでの医療技術はこのキヴォトスでも完成していませんからね。……倫理を無視すればそこまで急速に発展はできるやもしれませんが、そこまで手間をかけても、貴方の眼を私が使えるようになる保証はありませんからね」

 

 色彩に備えるためにもできる限り、リスクは避けたいのですよ。と黒服は笑った。

 

「それに、臓器移植はかなりの賭けですからね。聞いたことはありませんか? 臓器を移植された患者に、臓器提供者の性格や好みなど……何かしらが反映されてしまったという事例を」

 

「つまりあれか、アンタは俺の影響を受けるのは困るってことか」

 

「そういうことです」

 

 堂々と言うなコイツ。いや、俺もコイツに影響与えるとか死んでもごめんだけど。

 

 にしても……ホントに調べるだけで済まされてるのが気味が悪くて仕方ない。

 もっと酷いことになると思ってたんだけどな。

 

「……そういや、お前……他に仲間がいるみたいなこと言ってたよな」

 

「ええ、言いましたね。我々はかつて存在していたゲマトリアという組織を再編成するような形で結成し、そこで色彩打倒の為に様々な実験や研究……或いは製作、或いは政治を行っていますから」

 

 手段は様々……いや、どれかひとつでもたどり着けばいいのか。この口振りは。

 黒服がたどり着いてもいい、他の連中がたどり着いてもいい。色彩を殺す手段を見つけることができるのなら。そういうところか? 

 

 とはいえ──

 

「……お前みたいなのがもっといるのか」

 

「クックックッ……お望みとあらば、対面する機会を作りましょうか?」

 

「却下。お前みたいなのと縁ができるとか勘弁して欲しいわ。

 それに──」

 

 そこに触れたら俺は本当にお前らの手から逃れられなくなりそうだしな。

 

「クックックッ……嫌われたものですね」

 

「嫌うだろそりゃ。脅すような交渉して、俺が断ればホシノを狙うみたいな言い方するヤツを好きになれるわけないっての」

 

「ふむ、一理ありますね」

 

「百理ぐらいあるわクソが」

 

 コイツ一々癪に障る言い方しやがって……殺してやろうかほんとに。

 

「ああ、そうそう。殺すと言えば貴方の『眼』に関してなのですが……」

 

「……なんだよ」

 

「いつまで近接戦闘に拘っているので?」

 

「──は?」

 

 なんのことだ。そんな当たり前のことを言われても些か困る。

 ──あの線も、点も触れなきゃダメだ。なら、近接戦以外できるわけないだろ。

 

「……ふむ……どうやら認識に違い……いえ、この場合は先入観ですか。

 クックックッ……思い込み、というのは困ったものですね」

 

「……どういう意味だよ」

 

 思い込み? まるで、俺の認識が()()()()()()()()()()()()()()──

 そこまで考えて、顔を顰めた。コイツの言いたいことを理解してしまったから。

 

「……違うのかよ」

 

「ええ、シキさんはおそらく『触れること』を意識しすぎているのでは?」

 

「……そりゃそうだろ、視えたものに触れなきゃそもそも発動しないんだ。

 触れる以外にどうやって── おい、まさか」

 

 触れた、と自分が認識できればなんでもいいとか言わないよな……? 

 

「クックックッ……そのまさか、というやつですよ。つまりこれは『認識』、或いは『解釈』の仕方です。『線』もしくは『点』に『触れれば良い』、とは即ち……」

 

 ──()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「────」

 

 黒服はそう言って、笑った。

 

 

────

 

 

「大変だよ大変〜!!」

 

「うるさいですよユメ先輩、もう少し静かに入ってきてください。あと、校内は走らない」

 

「あ、ごめんなさい……じゃなくて!! 大変なのホシノちゃん! シキくん!!」

 

「なにがですか、言ってくれなきゃ何も分かりませんよ……」

 

 確かに。ドタドタ、と焦ってきたのであろうことは分かるが……どういう理由で焦ってるのかさっぱりわからん。

 うんうん、とホシノの言葉に後ろで俺は頷いた。

 

「借金がね! すっごく減ってたの!!」

 

「……………………はい?」

 

 ホシノがユメ先輩の言葉に疑うような顔を浮かべる。

 ま、そうなるわな。──心当たりがある俺は、驚いたフリをするわけだが。

 

「だから! 借金が!! すっごく減ってたんだよ!!!」

 

「いやいやいやいや、待ってください。どういうことですか!? ユメ先輩がいつもみたいに計算間違ったとかじゃないんですか!?」

 

「私そんなにポンコツじゃないよ!?!?」

 

 すげえなホシノ。今しれっとユメ先輩のことアホの子扱いしたぞ。

 さすがにそれにはユメ先輩も抗議していた。そりゃまあ……心外だよな。

 

「ほら! これみて! 私だって何回も確認したんだよ!!?」

 

「…………っ……ほんとだ、どうしてこんな……しかも、一気に5億……? いったい誰がどういう意図で……」

 

 ユメ先輩に書類を手渡されたホシノはそれを確認して、どんどんと険しい顔になる。

 …………まあ、俺も同じ立場だったらきっと疑ってただろう。

 

「私たちの努力が結ばれた時がきたんだね……ついに……!」

 

「もしかして……彼女が……?」

 

 ホシノは心当たりがある、といった様子でネフティスグループの令嬢のことを思い出す。

 だが、彼女は違う。彼女では無い。

 

「それは私も聞いたんだけど……心当たりはないって。だから、カイザーコーポレーションの方に問い合わせたんだけど……名前は出せない、無銘のパトロンからの支援金だ、感謝しろって── もしかしてカイザーコーポレーションの株主のうちの誰かが感銘を受けて融資してくれたのかな!? ね、シキくん!!」

 

「──えっ、ああ。まあ……そうですね。親切なあしながおじさんもいたもんですよね」

 

 そう言いながら心の内では、あの黒服の顔が過って笑みが引き攣りそうになる。

 アイツがあしながおじさんとかないない。絶対ない。むしろ借金利用しようとしてた側だしアイツ。融資したのもアイツだけど、俺との契約で支払っただけだし。

 

「…………いや、だとしても。さすがに都合が良すぎますよ。

 第一、こんな廃れた学校に融資する理由がないです」

 

「あ、ホシノちゃん今のシキくんっぽい」

 

「っ……今は関係ないでしょう!? こんなの、明らかな罠じゃないですか!? 

 これで餌を撒いて……その後足下を掬うみたいな策でしょう!?」

 

 耳が痛い。俺がやったことのようなものだ。

 ──それが結局、ホシノを疑心暗鬼にさせてしまったのだとしたら。それは本当に罪悪感が湧いてしまう。

 

「えーそうかなー? ただ単純に融資してくれただけな気もするけど……」

 

「ユメ先輩は楽観的すぎです!! もうちょっとしっかりと考えて──」

 

「考えてるよ」

 

「っ……!」

 

「考えてるから、信じたいの。融資してくれた人のこと」

 

 ユメ先輩のその言葉に、気圧されたのか。それとも、疑ってしまった自分への罪悪感か。

 

「ユメ先輩は……ッ……! もう、いいです……!!」

 

 少し子供のように癇癪を起こして、教室から出ていってしまった。

 ──俺には2人の喧嘩を止める権利はなかった。

 俺が招いたことなのだから、尚更だろう。

 

「……あー……ちょっと、言い過ぎちゃったかな?」

 

「んな事はないですよ。ホシノだって信じたいんですよ。信じたいけどここに来てから、大人にいっぱい騙されてきました。裏切られてきました。……だから、俺やユメ先輩の分までアイツは疑おうとして、ああやって強く言って……それで申し訳なくなったんだと思います」

 

 だから、せめてフォローぐらいはしよう。そう思って、ユメ先輩に助け舟を出す。

 

「さすがシキくん。よく見てるね」

 

「……同級生で、友人ですからね。なんとなくそういう所は分かりますよ。アイツ不器用で、頭も固いし」

 

「あはは、言うねーシキくん……」

 

「でも、馬鹿じゃないですし……頭ではわかってますよ。多分。

 だから……整理つける時間がいるんじゃないですかね」

 

「──うん、そうだね。ホシノちゃんは、すごい子だもん」

 

「そうですね、俺なんかじゃ敵わないぐらい。すごいヤツですから」

 

 本当に。小鳥遊 ホシノはすごいヤツなのだ。

 最初にあったのは、尊敬だった。アイツへの、憧れとかそういうの。

 同い歳のくせに、めちゃくちゃ優秀なアイツがちょっと羨ましくもあったっけ。

 ──まあそりゃ、2人だけの新入生だったんだ。ちょっとぐらい意識はする。俺だって。

 

「…………シキくん」

 

「……なんです?」

 

「ううん、なんでもない」

 

「? ……そうですか?」

 

 彼女がなぜ俺の名前を呼んだのか分からなくて、少しだけ首を傾げる。

 ──何か、言いたげだったような。

 

「……シキくん、ホシノちゃんのところに行ってあげて?」

 

「え、いや……なんか行きにくいんですけど……」

 

 めちゃくちゃ恥ずかしいこと言わせた上で行かせるとかどういう神経してんですか。新手の拷問ですよこれ。

 しかも、今の俺の立場考えたら尚更行き辛いんですけど!! 

 

「いいからいいから!」

 

「いや、俺がよくない──ちょ、先輩!? 力強っ!? そんな無理矢理押してまでホシノの所に行かせようとしないでもいいですって!? 行きます! 行きますから!!」

 

 あれよあれよと、ユメ先輩に押されてしまい……渋々と、ホシノもとに向かうことにした。

 

ごめんね、シキくん

 

 そのとき、ユメ先輩が……何かを言っていたような。聞きそびれてしまった。

 

────

 

「……あー……もう、最悪……」

 

 別の教室で、しゃがみこみながら、私は自分に悪態をつく。

 一言で表すなら自己嫌悪。それが今の私が抱いたものだった。

 あそこまでキツく言うつもりじゃなかった。……怪しいから警戒はしておきましょう、程度に留めるつもりだった。

 だけど、先輩のあの表情を見ていると、どうしても現実が見えていないように思えてしまって……気付けばあんな風に強い言葉になってしまっていた。

 

「ちゃんと……治さないと……」

 

 この悪癖といっていい私の癖。どうしても、こうやって口が悪くなってしまう。

 ──いつか、これで後悔しそうな気がして。だから、治さなきゃ……と思ってしまう。考えてしまう。

 

「ほれ」

 

「ひゃあっ!?」

 

 ピタッと、何か冷たいものが首に当た……って冷たっ!? いきなり誰──

 首筋に迸った寒気に思わずその冷たいものが当たった方向に振り向けば……

 

「く……くくっ……ひゃあ……って……ふ、ふっ……!」

 

 お腹を押えて、缶ジュース片手にぷるぷると震えるシキの姿があった。

 こいつ……私が悩んでるのに、イタズラなんて……!

 

「ははははっ! 悪い悪い。ついな。……ほら、飲めよ、糖分足りてないんじゃないか?」

 

「うるさい。それはちゃんと取ってる……でも、貰っとく……」

 

 シキに缶ジュースを手渡され、それを開けてごくり、と飲む。

 ……ほんのりと酸っぱくて、甘い。オレンジジュース。

 

「……その様子なら、反省はしてたんだな」

 

「っ……余計なお世話……」

 

 またそうやって……人の気も知らないで、ズカズカと踏み込んでくる。

 

「隣、いいか?」

 

「……好きにすれば」

 

「おーけー、じゃあ好きにするわ」

 

 よっこいせ、なんて言いながら私の隣にシキは座り込んだ。

 ……長く感じる沈黙。会話ができない。

 

 ──今の私に、何か言う資格なんてあるのかな。と、思ってしまう。

 

「……めちゃくちゃ深刻そうに悩むなお前」

 

「──うるさい、分かってるでしょ。私の悪癖ぐらい」

 

「まあ、そうだなぁ……目付きは悪いし、すぐ怒るし、先輩は敬ってないし、戦略は攻撃的で脳筋的だし。……たまにこうしていじらしくなる」

 

「───ッ」

 

 めちゃくちゃに言うじゃないか。もうちょっと慰めてくれたっていいのに。なんて思って……何を期待してるんだ、とまた自己嫌悪に至る。

 悪いのは私なのに、慰められる権利なんてないのに。なんてわがまま、傲慢だろう。

 

「……まあ、でも、そこがホシノの魅力でもあるんじゃないか?」

 

「──は?」

 

 何を言って──

 

「……たしかに良くないところではある。けど、ユメ先輩が危なっかしいから怒るんだし、辛辣になる。実力があって、それに裏打ちされた確かな自信があるからこそそういう戦略が取れる。……いじらしくなるのは、自分の非を認めて、反省してるからだ。違うか?」

 

「それは……」

 

「ならそれでいいんじゃないのか。別に完璧な人間なんていないんだし。

 ちょっとぐらい欠点があった方が可愛げがあるって」

 

「─────」

 

 ……なんだ、それは。意味がわからない。なのに、どうしてか……胸の奥に響いた気がする。

 欠点がある方がいい、なんてそんなこと初めて言われた。

 

「…………正直に言うとさ、俺はお前に嫉妬してたよ。ホシノ」

 

「…………ぇ」

 

 シキの言葉に思わず耳を疑った。嫉妬……? 誰が? シキが……? 誰に? 私に……? 信じられなかった。そんな素振りをシキは見せたことすらなかったし、むしろ……いっさい気にしていないように思っていたから。

 

「そりゃお前……するだろ、嫉妬。俺だって人間だぞ? 横に自分のほぼ完全上位互換居たらそれぐらい思うって」

 

「…………そうなの?」

 

 本当に、意外だった。シキが、そんなこと考えていたなんて……私は知らなかった。

 

「そうですー、俺だって嫉妬ぐらいはするわ。……でもまあ、毎日お前とやり取りしててさ、すごいヤツだけど、それ以上に……完璧なヤツじゃないんだなって分かった」

 

「……当たり前でしょ。完璧な人間なんていないって今シキが言ったばかりだし」

 

「ははは、たしかに」

 

「……でも、そっか……完璧な人間はいない、か……うん。ありがとう、シキ。ちょっとは気が軽くなった」

 

 ……罪悪感が拭えたわけじゃないけど、それでも気持ちは少し軽くなった。

 

「そりゃ良かった。俺もフォローした甲斐があるな」

 

「───」

 

 心の底から嬉しそうに笑うシキを見て、やっぱり私はドキッとしてしまう。

 ───ああ、やっぱり。この顔は嫌いになれない。

 眩しいぐらいに明るくて、底抜けに他人事の癖に嬉しそうに笑うその顔に、気付いたら魅入ってしまう。

 

「…………」

 

「……ん? どうした、人の顔ジロジロ見て」

 

「ッ……な、なんでもない」

 

 頬が思わず熱くなって、視線を逸らす。……視線には敏感な癖に、人から向けられる感情に関しては疎いのはずるいと思う。本当に。

 

 敵は多い……ユメ先輩に、あのノノミという少女。

 ──多分、これからもシキなら色んな人を虜にするんだろうな。って思って……ああ、嫌だなぁ。って考えてしまう。あの笑顔を独り占めしたい。声も、体温も……全部独占したい。

 

 だから、少し悩むようにオレンジジュースの缶を手の上で弄ぶように動かしてから……勇気を出して、1歩だけ踏み込むことにした。

 

「…………ねえ、シキ」

 

「どうした?」

 

「明日……デートに行かない?」

 

 ああ、言ってしまった。顔がもっと熱くなった気がする。

 

「─────え?」

 

 多分、この時の今まで見たこともないようなシキの素っ頓狂な顔は……この先も忘れないんだろうな。とその気の抜けたような顔に思わず笑みを零しながら、そう思った。




七織 シキ

黒服の居る場所に定期的に行ってる。
迎えはカイザーの傭兵がやってるらしい。
なんだかんだ、ホシノすげえなーと思ってる。


黒服

いつものゲマトリア。
手緩いやり方なのは、七織 シキを手放したくない故に。
「荒いやり方をして敵対されては困りますので」


ユメ先輩

気付いている。気付いているから、触れない。
気付いているから、彼女は罪悪感を抱えている。


小鳥遊 ホシノ

気付いていない。でも、自分の気持ちは気付いている。
──だから、1歩だけでも彼に近付くことを決めた。

例え、その先で全てを失うのだとしても



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