透き通るような死の線を 作:ゲマトリア「曇らせ」
でも描写としてはそんなにないよ!
一昨日に日間ランキング上位にいたようです、ありがたい限り。
……ルビコン行ってたからあんまり執筆してなかったんですけどね。
「いきなりデートとか言われた時は普通にびっくりしたんだが」
「だって、そうでも言わないとユメ先輩も誘うでしょ」
「さすがにしな──いや、するかもしれない……」
どういう組み合わせ……というよりも、どうしてこうなってるんだ? と俺は思いつつ、ホシノの隣を歩く。
デート、デートかぁ……付き合ってもない異性とデートって何だ……?
というより、お前俺の事嫌いじゃなかったっけ……? ってこれ何回目だよ言うの。
「……デートが建前なのは事実だけど」
「あ、やっぱそこは建前なのか」
「ちょっと付き合って欲しいことがあって……」
「はあ……まあ、いいけども」
別に忙しいわけでもなかったしな。どちらかと言えば暇を持て余して……はないか、最近は黒服のところに行ったりしてたし。
「…………ユメ先輩にさ、何かプレゼントしようと思って」
「あー……お詫びかねてか?」
大方その辺だろう、と当たりをつけて俺はホシノに問いかける。
「……うん。言い過ぎちゃった自覚はその……あるし……」
「その辺りはユメ先輩も理解してくれてると思うけどな」
「分かってるけど……やっぱり、誠意は見せないと」
「変なとこ律儀だなお前……」
だがそういう誠実さがホシノの美徳ではある。彼女らしさ、と言ってもいいのかもしれない。
「いいでしょ、別に……」
「否定はしてないっての。ホシノのそういう所は嫌いじゃないしな」
「ッ───! ばか! ほんっとばか!」
「なんでだよ」
毎回だがなんでこうも罵倒されてるんだ俺……理不尽だ。
うーん、こういうところはやっぱり分からん。ホシノ、というか乙女心か……難しいもんだな。褒めすぎるとダメなんだろうか……
「……そういえば」
「……うん?」
あーでもないこーでもない、と悩んでいると隣でホシノがふと、何かを思い出したように声を漏らす。
「私、ユメ先輩の好みとか……知らない……」
「…………いや、それ先に聞いとけよ」
思わずなにしてんの? なんてホシノに言ってしまう。プレゼント買うならそういうの先に聞いとくべきですよねェ!?
「だ、だってユメ先輩……そういうの何でも喜んじゃいそうだったし……」
「あー……言われてみれば確かにそういう人だけども、あの人」
貰ったものはなんでも嬉しそうにする人ではあった。ぽわぽわとした彼女のイメージらしい部分ではあるが……なるほど確かに、そう言われてしまうと難しい。ユメ先輩の好みに合う代物、となるとイメージが湧かないものだろう。
っていうかそれさ……
「本人に直接聞けばいいんじゃ」
「わ、私から言うの気まずいし……そういうのって露骨すぎるでしょ……」
「…………不器用だよなぁ、お前ホント」
その辺で意気地無しになるというか、ヘタってしまうホシノを見て思わず苦笑いを浮かべてしまう。律儀すぎる分、こういう所で損な立ち回りをしてしまう、それもホシノらしさではあると思うが……ちょっと改善した方がいいと俺的には思う。
「うるさいっ……! だったらシキが聞いてっ……!」
「えー……いや、それぐらいならいいけどさ」
めんどくせー、と零しつつ……ユメ先輩のモモトークに『先輩って好みのぬいぐるみとかってあります?』とだけ送っておいた。
ちょっと露骨すぎたかもしれないけど、まあ俺のことじゃないし良いだろう。
「ど、どう……? なにか教えてくれた……?」
「……すぐには返信こないっての。基本ユメ先輩、返信は早い方だけどさ」
そういうの聞かれたら悩んだりするタイプだよあの人。すぐには返信も──
「……珍しいな」
ユメ先輩のことだ、返信は早くなくても既読ぐらいはいつもすぐにつけてくる。だというのに、今日は珍しく既読すらつかない。
「どうしたの?」
「……いや、大したことじゃない。珍しくユメ先輩のモモトークに既読がつかないなって思っただけだ」
──妙な違和感。
「それは確かに珍しいか……なにかあったり……?」
「大方あの人のことだし、寝てたりとかスマホを家に忘れたとかそういうのじゃね?」
「……ありそう。というかそれ昔ユメ先輩がやった前科でしょ」
「そうとも言う」
実際1回やらかしたことあると、人ってそのやらかしする前提の認識になるからな。こういうのが1度失った信頼は取り戻すのが難しいと言われる所以なのだろうか。
────酷い違和感。
「まあ、返信待ってても仕方ないし……適当に見繕ったもの買って帰るぐらいでいいんじゃないか?」
「……やっぱりそれが無難か。ごめん、シキにわざわざ連絡入れてもらったのに」
「いいっていいって、とりあえずユメ先輩が喜びそうな代物売ってそうなところ片っ端から回るぞ」
「うん」
決めつけてしまうのはユメ先輩には申し訳ないけど、返信を待ってから行くよりはそれなりに候補を絞って置く方が有意義だろう。と俺とホシノはそのままプレゼントを買いに向かうことにした。
────今日に限った話では無いのに、何故か酷く違和感が拭えなかった。
「…………」
「……決めるなら早くしろよ、ホシノ」
「分かってるからちょっと黙ってて……!」
ぬいぐるみか、それとも必需品とも言える筆記用具や日用品にするか。とホシノは店の前で悩む。
……多分、個人的には日用品とかを買うべきだとは思ってるけど、プレゼントだしぬいぐるみの方が……と悩んでるんだろうなぁ、と予想ぐらいはつく。
「……どっちも買えばいいんじゃないの」
「そんなに買えないでしょ、ただでさえウチは借金でカツカツなのに……!」
「うへえ、これ以上ない正論」
俺の意見は問答無用の正論で黙らされてしまった。借金でカツカツのやつが贅沢する訳にはいかない。それはその通りである。
「なら、ホシノが日用品買えばいいだろ。俺がぬいぐるみ買うし」
「え、いや……でも……これは、あくまで私の問題であってシキにそこまで負担かけるわけには……」
「買い物に付き合わされてる時点で今更だ。こっちで勝手にぬいぐるみとかは見繕うから、日用品買ってこいよ」
「…………ごめん、ありがとう」
ホシノが頭を下げ、そのまま日用品を買いに行くのを見届けつつ……ぬいぐるみ等のグッズが売っている店に俺は入ることにする。
……さて、何を買おうか。あんな風に言った手前変なセンスで買い物する訳にはいかないし……うーん、悩むなこれは。無難なものがいいのか、可愛いもの……いや、かっこいいものか……? ちょっと面白いものとかも……? なんか良いの……
「お?」
ふと、俺の視界に入ったのはモモフレンズと呼ばれるとあるキャラクターグッズ一覧のぬいぐるみの中で一際際立っていた白い鳥のような、珍妙な顔をしたぬいぐるみ。
「これは、中々に……」
ふむ……面白い顔をしてる。意外とユメ先輩ってこういうの気に入りそう……いや、でも……さすがにセンスが独特すぎるか? 尖ってる気もしてきたな。
「うーむ……」
「あ、あの……!」
んー、この……ペロロ……? なんか名前も面白いなコイツ。先輩の前に俺が気に入りそう。なんか妙な既視感というか愛着感がある。なんというか、鳥なのにネコを思わせるような……ナマモノというか、この程よいSD感……むむむ……
「あのっ!!」
「ぬおうっ!?」
後ろから掛けられた声に思わず驚き、振り向いてしまう。
そこには誰も……ではなく、下に視線を向けると少し小柄に見えるツインテールのクリーム色の髪をした少女が立っていた。
「貴方もペロロ様がお好きなんですか!?」
「え?」
その第一声に思わず困惑する。様、様付け?
彼女の制服の校章、十字架に丸が3つという特徴を見るにトリニティ傘下の学生のようだ。トリニティの制服ではないところを見るに中学生か?
「あー……えーっと、君はいったい……?」
「あ、す、すみません! 私は
「ああ、これはご丁寧にどうも……」
自己紹介をして頭を下げるヒフミと名乗った彼女に思わずこちらも頭を下げる。
いや、じゃなくて。
「……もしかして、これを買いに来た感じかな?」
「は、はい! そう、なんですけど……あはは……それが最後のひとつみたいで……その……」
「…………あー」
俺が手に取ってマジマジと見つめてたから、もし俺が買うなら諦めるしかなくてどうしようか悩んだ末に声をかけたってところか。だとすると少し申し訳ない。
買うかどうか、までは決めていないのだ。ちょっといいなー、とは思いはしたが……
「いいよ、まだ悩んでただけだったし。本当に欲しいなら君が買う方がいいと思うし」
「え、で……でも」
「はは、大丈夫大丈夫。プレゼントになにかぬいぐるみ買おうかなーって考えてただけだったから気にしないでくれ」
申し訳なさそうにする彼女に少しばかり苦笑いをしながら気にするな。と伝えてそのペロロ様とやらを渡すことにした。
結構独特のデザインしてるし、これをユメ先輩が気に入るかと言われるとちょっと分からないところだしな。
「あ、ありがとうございます……! あ、あの……その校章……アビドスの人ですよね……?」
「ん? ああ、そうだね。俺は七織 シキ。アビドス高等学校の生徒会書記で1年生……になるのかな、廃校寸前のヤツだからそのうち自称になるかもしれないけど」
「あ、あはは……」
笑みを引き攣らせた彼女を見て、言い方ミスったな。とちょっと後悔する。
これはアレだ、良くない自虐ネタしてしまったな。身内のノリならやれるけど他校から見たら笑えん話だったわ。反省反省。
「うへぇ……こんな話他校の子にするものじゃなかったな。ごめん」
「あ、いえ……そんな……こちらこそ余計なことを聞いてしまってごめんなさい、七織先輩」
「いやいや、こちらこそ。……お互い様かな?」
「あはは……そうですね」
振った方も悪いし、そこに便乗して自虐ネタをした方も悪いってことでここはひとつ。とヒフミちゃんと話をつける。
「──へー、じゃあわざわざ遠路はるばるこっちの方でペロロのグッズ探してたんだ」
「はい……トリニティの敷地にあるお店は一通り巡ったんですけど、見つからなくて……」
「まあ、確かに……そういう時は他の場所探すしかないよなぁ」
その後、彼女から話を聞いたがどうやらペロロのグッズを探してアビドス方面のこのショッピングモールまで訪れたらしい。ここはアビドスの敷地に近い……が、いわば中立の地域だ。トリニティはもちろん、ゲヘナやミレニアムなんかの学生もよく訪れている。とはいえ、中々に遠い場所ではあるし、中学生の身でここまで来るのは大変だっただろうに。
「七織先輩はどうしてここへ?」
「ん? あー、付き添い。友達が先輩にプレゼントを贈りたいらしくて。
……そうだ、ヒフミちゃんに聞きたいんだけど、もしヒフミちゃんが尊敬してる先輩とか友達に贈りたいぬいぐるみがあった時はどういうの贈る?」
「え!? わ、私ですか!? ……そう、ですね……うーん……私が尊敬してる人に贈るとするなら……」
悩む様子を見せてくれるヒフミちゃんを見て、少しだけ申し訳なくなる。関係ないのに聞いちゃったのはちょっとまずかったかなぁ。
「その人って……どんな方なんですか?」
「先輩? うへぇ……そうだなぁ……普段はおっとりしてるというかぽわぽわしてるんだけど……いざって時は、しっかりしてて頼りになる……そういう人かなぁ」
ヒフミちゃんの質問に、俺はそんな風に答える。
ユメ先輩は、そういう人だ。いざって時は、誰よりも頑張るし……誰よりも一生懸命で、だからこそ頼れる人だし、俺もホシノも彼女についていけるのだろう。
「……なるほど……それなら、七織先輩が良いと思ったモノをプレゼントしてみるとか、どうでしょうか?」
「……俺が気に入ったやつ?」
「はい! その、会ったこともない私が言うのも失礼なことかもしれませんけど……そういう人はきっと、大切な人から贈って貰えたモノなら凄く嬉しくなると思います」
「……そういうもん?」
「はい! きっとそういうものです! 贈り物って、難しく考えすぎない方が良いのかな、って私は思うんです。だって、私は誰かにペロロ様グッズを貰えるだけでも嬉しいですから!」
「…………なんかそれは違う気がするけど……そうだなぁ。ちょっと難しく考えすぎてたのかも。ありがとな、ヒフミちゃん」
プレゼントはもっと簡単でいい。か、なるほど確かにその通りなのかもしれない。ヒフミちゃんの言葉でモヤがかかったような思考が一気に広がった感じがした。
とはいえ、まあ男のセンスって噛み合うかと言われたら難しいし……
「それにしても、意外でした」
「うん? なにが?」
「アビドスの中でもかなり有名な七織先輩も、意外と普通なんだなーって」
「えっ、俺って有名人なの?」
「そうですよ? やっぱりヘイローがない学生っていうのが基本的に有り得ないですから。そういう意味ではトリニティでも結構注目の人物ではありますね」
「うへー……」
知らなかった。でも、確かにその通りなのかもしれない。ヘイローなしの学生が居るってだけでも珍しいもんだしな。
「その上でヘイローがないのに凄く強い……みたいな噂はトリニティでも流れてきたりしますね」
「参考までにだけどどういう噂か聞いてもいい?」
「え? そうですね……銃弾を斬り伏せるとか……戦車の砲弾はもちろん戦車ごと斬ってみせた、とか相手取ったヘルメット団を全員ねじ伏せたり……だとか、ですね……なんというかこうして出会った七織先輩を見ると、そうは思えないですけど」
「ははははっ」
彼女の言葉に思わず誤魔化すように笑うしか無かった。
やっべえ、全部心当たりある。俺がやらかしたというかやってのけたことじゃん。え、要警戒対象だったりするの俺??
「そこからとって『アビドスの
「誰だよそれ言ったやつ」
「あはは……私も噂で聞いただけですから出処はちょっと……」
くっそだせえ二つ名広めてんじゃないよ、あと誰が霧の街の殺人鬼だこら。前より酷くなってないか俺の呼称。
「まあ、俺の二つ名を広めたやつは後々特定して抗議するとして……
相談に乗ってもらってありがとう、ヒフミちゃん」
「あ、いえ! こちらこそペロロ様のぬいぐるみ……譲ってもらってありがとうございました!」
「いやいや、気にしないで大丈夫だって。そういうのは本当に欲しい子の手に渡るのが1番いいんだから。それと……道中気を付けてね、この辺りは中立区画みたいなもんだし安全だけど……全域がそうってわけじゃないから、ペロロが燃やされないように」
「はい! わざわざありがとうございました〜!」
手をブンブンと振りながら別れを告げるヒフミちゃんを見送って、再びぬいぐるみのコーナーに戻る。
……さて、コレとコレを買うか。
俺はぬいぐるみを2つ手に取って、それを買うことにした。
「……ペンと……あとは……うん、これかな」
シキと別れてすぐ、私は日用品を色々と見て回っていた。
……やっぱり変に悩みそうなぬいぐるみとかよりは、こっちの方が選びやすい。
ボールペンや、シャーペン……あとは、メモ帳辺りがあれば無難なところだろうか、と私はそれらを手に取って買うことに決める。
ふと、銃火器等を売っているコーナーに視線が向く。
そういえば……と、シキの武器に関して、思い出したことがあった。
ここ最近は控えていたけど、シキは近接主体で戦うことも増えてきている。
……どういう手品か知らないけど、彼はカッターナイフ1本で銃弾どころか戦車の砲弾や戦車そのものを斬り裂いてしまう。
そんな戦法をとるなら、なおのこと……カッターナイフなんかより、サバイバルナイフや短刀の方がいいんじゃないか、と思ったのだ。
「……せっかく、来てるんだし……やっぱり付き合ってもらったお礼ぐらいはしておいた方がいいよね」
そんなちょっと言い訳じみた理由を口に出しつつ武器コーナーで、じっくりとナイフや短刀を見る。決してシキの趣味が刃物収集だったことを思い出したわけじゃない、決して。
さすがに種類が豊富だ。これってシキにやっぱり聞いた方がいいのだろうか、と思っていた時……一際目に入る短刀があった。
……見て分かるぐらい、値打ちモノ、というか名刀のように思えた。
なのに……
「ジャンク品扱い……?」
まるで誰も買わないから、と言わんばかりに売れ残りセール行きになっていた。
「店長さん、これ……」
「ん? ああ、その短刀かい? 嬢ちゃん、それが欲しいのか? やめた方がいいと思うけどねぇ」
渋るような顔を浮かべる店主を見て私は首を傾げる。
「……やめた方がいい、って? 見たところ、すごく良い短刀だと思うんですけど」
「あー、品質はな。そこは保証できるンだが……なにせ、いわく付きってやつでね、そいつ」
「いわく付き……?」
こんな見事な短刀が……? 思わず信じられないと、その短刀を見つめ直す。素人と言ってもいい私でもなんとなく凄さが分かるのに、それがいわく付きだなんて、中々思えない。
「見ての通り飛び出しナイフの構造になってンだが……ああ、まあそれはいいか。暗殺用ナイフなんざこのキヴォトスじゃただのナイフ同然だしな。問題はそこじゃねえ、なんでも使ったヤツに幻覚や幻聴を患わせるらしいんだよ」
「幻覚……」
おかげで何度も返品されちまって商売上がったりだ。とため息を吐く店主を横目にじっくりと見る。この短刀にそんないわく付きの要素は感じないような……そう思って、短刀に触れた時───
「ッ……!?」
ぞくり、と何かが脈打ったような。……今……見えたのは幻覚……?
シキのような後ろ姿が見えた気がする。
もう一度、短刀に触れると今度は何も起こらなかった。
……何の変哲もないただの短刀だ。やっぱり気の所為だったのだろうか。
ただ、何故だろうか……コレを、シキに渡すべきだと思っていた。理由は分からない。けれど、コレはシキに必要なんじゃないか……ってそう思ったら──
「店長、この短刀買ってもいいですか?」
「おん? まあ構わねェが……いわく付きだぜ?」
「はい、こういう短刀の扱いに詳しい人が友人なので」
「ははーん? ま、そういうことなら構わねエよ。はい、900クレジットね」
「ほんとに安いですね!?!?」
提示された値段に思わずそう突っ込んでしまった。
厄介払いができるならタダでも構わねえんだけどな! なんて店主も言うんだから思わず苦笑いを浮かべてしまった。
どれだけいわく付きだったの、これ……
──それにしてもあの幻覚はなんだったのだろう。
血に濡れた、殺人鬼とも言うべき人物の後ろ姿。シキのようで、シキでないような……飛び出しナイフなんだから以前持ってた人の姿とかなのだろうか……?
視線を買った短刀に向けるとその刃がまるでこちらの考えに応えるように、怪しく光った気がした。
「……考えても仕方ないか。早くシキと合流しておこう。下手に1人にさせるとすぐ女の子引っ掛けてくるし……」
そんなことよりやっぱりシキ優先だ。うん。
……なんとなくだけどまた女の子を引っ掛けてるような気がしてるし。
いい加減あの八方美人な性格を矯正させた方がいい気がしてきた。
でも、そういうところが魅力といえば魅力だし……悩ましい。
「よ、その様子だと買えたみたいだな?」
「……とりあえず、だけどね。……そっちこそ、そんな大きな紙袋って何買ったの」
ホシノが俺の持つ紙袋に視線を向けて問いかける。
確かに、些か大きさが目立つか。まあ、二つぬいぐるみ買ったらそうもなるんだけども。
「いやー、色々悩んだんだけどな。結局お店で偶然知り合った子にアドバイスもらって無難なものにするか、って感じで決めたんだよ」
「…………あっそ……やっぱりまた知らないうちに女の子引っ掛けてる……」
……あれ、なんか態度が冷たい。え、今俺なんか失言したのか?
ホシノの不機嫌そうな顔を見て困惑する。定期的にこういう感じになるけどホントになんなんだ……?
「…………まあ、今に始まったことじゃないしいいか。あとこれ。今日のお詫び」
「……え?」
ポン、と胸元に梱包された箱を向けられる。
……え? いや、うん……え?
「なに、私がシキにプレゼント買ったら悪いの?」
「あ、いや、そういうわけじゃないけども……むしろ、その……良いのか?」
あんなに、節約しなきゃ。みたいなこと言ってたのに、俺なんかのために。
「……なんかじゃない。シキにはいつも助けて貰ってるし……それに……マフラーのお礼、してなかったから」
「────」
意外、ってわけじゃないけど……本当に律儀だな。と思う。
……あの時お礼は良いって言ったのに、ずっと考えてくれてたのか。なんというか、凄く嬉しい。
「……開けてもいいか?」
「……うん。というか、実用的なのにしたから……ここで開けてもらった方がいいかも」
「……実用的?」
はて? と首を傾げつつ梱包を丁寧にとって箱を開ける。するとそこには──
「……短刀?」
「……シキ、近接戦闘ばっかり最近してるでしょ。だから、護身用にでもって思って。カッターナイフじゃ限界があるでしょ」
耐久性能とか、と告げるホシノの言葉を耳に入れつつその短刀を見る。
……業物だ。刃物収集なんて物騒な趣味を持っている俺が思うんだから多分、間違いない。コイツはかなりの値段をしてもおかしくない代物だった。
「高かったんじゃないのか、こいつ」
「……ホントならね。ちょっとワケありみたいで安くなってた」
「へぇ、ワケありね……」
普通ならワケあり品を送り付けるなんてどういう神経してんだ、とか思うかもしれないけど……こういう代物はワケありの方がいい。どの道使い捨てかねない代物だ。安く済むならそれが1番いいし。
ホシノらしいチョイスだな、とも思う。無駄遣いしない程度に抑えるところとか。
「……ごめん、やっぱりワケあり品なんてダメだよね。別のもの買って──」
「いや、すげえ嬉しいよ、ホシノ。ありがとう。……それに、よく馴染む」
手に取って、軽く振ってみるとよく分かる。軽いだけじゃない、かなり俺向きだ。
……まるで、俺のために設計されたと勘違いしそうなぐらい馴染む。そういう短刀だ。
「……そ、っか。うん……なら、良かった」
「ありがとな、ホシノ。お前からプレゼントなんて滅多にないから実はめちゃくちゃ嬉しい」
「──ぅ……そ、そっか……うへへ……」
可愛いなこいつ。いつもならなんかこの辺で罵倒のひとつでも飛んでくるんだけど。……珍しくそういうのもなく頬を綻ばせて喜んでいる。
なんというか、新鮮だ。ホシノのこういう顔って、滅多に見ないし。
「……それじゃあ、俺もコイツをプレゼントだな」
「え……?」
お返し、と俺は紙袋の中から取り出したクジラのぬいぐるみを渡す。枕にできるぐらいには大きいサイズだ。
「な、なんで……? 私、プレゼント貰うようなことしてたっけ……?」
困惑しながらぬいぐるみを手に、こちらを見つめるホシノ。
なんというか、鈍いもんだな。ホシノって。
「いやそりゃ、するだろ。…………あー……デートなんだろ、これ。一応って言葉がつくけどさ」
「────ッ」
ぬいぐるみにホシノは顔を埋めてそっぽを向く。……そっぽ向かれたんですけど。
やっぱこれ俺のセンスで行くんじゃなかったか? クソ、これならヒフミちゃんにもうちょっとアドバイス貰っておけば良かったかなァ!
「……ばか……ほんとばか……無駄遣いしちゃって……」
「うぐ……いいだろ……別に、俺の金で買ったんだし……」
そこを突かれるとちょっと耳が痛い。だいぶいいお値段したのは否定できないしなぁ。
「…………でも、嬉しい……ありがとう、シキ」
「────」
彼女のその笑顔に見惚れてしまった。本当に明るい、太陽のような……青空のような澄んだ笑顔。思わずこちらが恥ずかしくなって、視線を逸らしてしまうほどに綺麗で可愛かった。
「……ま、まあ。うん……気に入ってくれたなら、なによりだ。うん……ど、どういたしまして……」
「……これ、絶対に大事にするから」
「……そ、そうか」
気まずい沈黙。いやなんだこれ公開処刑か? めっちゃ恥ずかしいし頬が熱いんですけど? ええい、プレゼント買って渡しただけでなんでこんなに気まずくならなきゃならんのだ!!
「…………とりあえず帰るか」
「うん……」
何もこの後のこと考えてなかったけど。とりあえず、帰って……うん、それから色々考えよう。
……さすがにここまでの反応されて、分からないわけじゃない。
俺の気持ちにも整理をつけて、改めて……ホシノに聞かなきゃいけないことができたな、と隣で本当に大事そうにクジラのぬいぐるみを抱えて歩く小柄な少女の姿を見ながら考える。
「…………シキ? どうしたの?」
「いや……なんでもない」
ああ、でもそうすると……この『眼』のことも打ち明けなきゃか。
それはちょっと、嫌だなぁ。怪物だとか、化け物だとか……ホシノにそう思われてしまったら、きっと俺は悲しくなるし。
……でも、避けられない以上。向き合わなきゃか。
そう覚悟を決めた。
────決めていた。
だけど、運命というのは時に残酷で。
『……ごめんなさい。後のことは二人に任せます』
『結論から言いましょう。───カイザーPMC理事が先走りました。
ですので、私から連絡をした次第です』
非情な現実を投げかける。
───それが、当たり前の日々の終わりで、俺の終わりの始まりの合図だった。
七織 シキ
──いずれ来たる終わりは近い。
小鳥遊 ホシノ
──当たり前の日々は唐突に終わりを告げた。
ユメ先輩
──終わりの始まりのきっかけ。だがそれでも、それは彼女の善意だった。
阿慈谷 ヒフミ
ゲスト出演。拙作においては本編で持ってるペロロ様人形はシキくんがこの時渡したものという設定になっております。
声帯的にはやっぱり月姫要素多めの拙作では出しておきたかった。
感想、評価よろしくお願いいたします。
モチベに繋がるので感想はどんどんください。