真剣で私に恋しなさい+ ~ある侍の新たなる人生~ 作:黒猫大佐
プロローグ1
「秘剣―――"燕返し"」
仮初の生にて巡り合った最高の宿敵"セイバー"に対し最後の勝負を仕掛けた。
繰り出すは我が至高の必殺剣"燕返し"。
同時に生じる三つの斬撃により作りだされた牢獄にて相手を閉じ込め、確実に葬り去る。
この斬撃の牢獄より抜けだすは不可能。
「(獲った!)」
私は勝利を確信した・・・・・が、
「!!」
なんとセイバーは私が作りだした斬撃の牢獄を突破した。
「はっ!!」
裂帛の気迫とともに繰り出されるセイバーの攻撃を目にし、私は己の敗北を悟った。
「(なぜだ?)」
たしかに、あの女狐は死に私は魔力の供給を受けていない。
しかし、今宵の私はまさに消える前の最後の蝋燭の炎であるかのように今までにない最高の状態でセイバーを迎え撃った。
そして、最初の夜のようなタイミングではない、正に必殺の瞬間に技を繰り出した。
なのになぜ?
そう思った時、私は己の愛刀に違和感を感じた。
「(そうか、セイバーの剣を受けた時に。)」
ここで初めて、私は刀の歪みに気付いた。
歪みに気付かずに燕返しを放ち、それにより生じたわずかな隙をセイバーに見抜かれたのだろう。
勝負に熱中し、己の一部である刀の状態にも気付けぬとは。
「(私もまだまだ精進が足りぬな。)」
――――――くくくっ
己の未熟さに笑いが漏れる。
こうして、私の最後の果た死合いの幕は閉じた。
役目を果たすべく走り去っていったセイバーはを見送り、私は己の体を見る。
蝋燭の炎はすでに燃え尽き、私は現に己の存在を保つことができず、体は薄れ徐々に消えてきている。
果たすべき己の役目があるにもかかわらず私との果た死合いに応じてくれたのだ。
セイバーには感謝の念しかない。
まったく、今この場で酒が飲めればまことにうまい酒であっただろうに。
私の体はほとんど消えかけている。
私は最後に月を見上げ、
「ふむ・・・此度の戦、最初は女狐に呼び出されこの山門に縛り付けられた時は、まことにつまらぬことになったと思ったが、最後の最後に良い思いをさせてもらったな。まったく。」
そう呟くとともに私の体は完全に消え去り、意識は闇に落ちた。