真剣で私に恋しなさい+ ~ある侍の新たなる人生~ 作:黒猫大佐
第1話 新たな人生の始まりは原っぱから
「ここは?」
気が付くと私は原っぱの真ん中に立っていた。
どうやらここから私の新しい人生が始まるらしい。
あたりを見回していると、ふと違和感を感じた。
「(ん?やけに視線が低く感じるがどうゆうことだ?)」
私は自分の体を見て絶句した。
「(なっ?!これはどういうことだ!!)」
私は完全に受肉した状態で存在していた。
いやそれはいい。何しろ新しい人生を歩むのだ。受肉していた方が色々と便利であろう。
しかし、一番の問題があった。
なんと、我が愛刀である備中青江以外で私が身につけている物を含め小僧と呼べるくらいまで体が縮んでいた。
一度冷静になり考えを巡らせる。
あの声は私に第二の人生をくれると言った。
つまり、小僧からもう一度人生をやり直せということか。
もう一度自分の体を確認する。
「ふむ、これは大体"十"くらいの頃というところか。」
赤子まで戻すのではなく、これくらいの歳で始めるということは何か意味があるのだろう。
今の体には重く感じる愛刀を地面に置き、私はそこらに落ちていた丁度自分の背丈ほどの枝を拾い自身の動きの確認を行う。
初めに精神の統一を行う。
そして、今まで只管に繰り返してきた刀の軌道を思い出しその軌道をなぞるように振るう。
私の剣は我流故、己が唯只管積み上げてきたものが型と言ってもよい。
しばしの間、枝を刀に見立てて只管に振るう。
「ふむ、技や動きは体が覚えているようだな。だが、やはり力の方は落ちているようだ。」
自分自身の確認を終えた後、私はもう一度あたりを見回した。
どうやら、ここは冬木の土地ではないようだ。
「さて、これからどうしたものか。」
とりあえず私はあたりを散策してみることにした。
「む。その前にこれをなんとかせねばならんか。」
何とかしなければならない物。そうそれは、我が愛刀のことである。
生前からの知識。そして、聖杯戦争時の聖杯からの知識は残っているらしく、私はあることに気付いた。
そう、今の世には"じゅうとうほういはん"なる"ほうりつ"というものがあり、刀を持ち歩いてはいけないそうだ。
これを破ると、どこからともなく"けいさつ"という者達が山のように現れ、簀巻きにされるらしい。
しかも、今はこの姿である。面倒事が起きるのは間違いない。
私の新しい人生が始まるというのだ。そのような面倒事には巻き込まれたくない。
仕方なく、私は原っぱの奥に見える林の中に刀を隠すことにした。
刀を隠し終えた私は、漸く新たな人生の一歩を踏み出しその足を町の方へと向けるのだった。
小次郎の知識が若干おかしなことになっています。
ちなみにこの原っぱは皆さんが知っているあの原っぱです。