真剣で私に恋しなさい+ ~ある侍の新たなる人生~ 作:黒猫大佐
―――SIDE:小次郎
私は原っぱから街中らしき場所へと移動してきた。
「――――――素晴らしい!!」
そこには生前には見たことのない建物が多数並んでいた。
(小次郎はラ・チッタに来ています)
今はこのような建物が普通であるとは知識として知っていたが、やはり実際に目にすると心が震える。
はやる気持ちを抑え、私は自分の興味を満たすためにしばらく街中をあちこち散策していると
「(・・・ん?)」
なにやら視線を感じる。
周りを見ると私を見て話をしている者が何人かいる。
「まったく。こちらを指さし話をするなど、無粋であるな」
そして、こちらを見て何人かで話をしていた者は何やら妙に納得をした表情をして私から視線を外す。
「何なのだ?」
私はこれ以上は気にしないことにし、視界に入る未知の文化を十分に堪能し次の場所へと移動することにした。
今度は甘味処など私にとっても懐かしいと感じる建物が並ぶ場所へとやってきた。
(今度は仲見世通りに移動してきました)
久しぶりに団子などが食べたいなどと考えたが、
「ぬ!」
ここで私は漸く思い至った。
「(そういえば、私は金など持っておらぬな。)」
そうなのだ。
私は無一文である。
しかも、当然住む場所などもない。
私は草木の知識を持ち合わせており、また魚獲りも得意であったため生前は野宿などもよくしていた。
しかし、これからずっと野宿をして過ごすのはいささか大変であると言えるだろう。
「さて、どうしたものか」と思い悩む。
そこで、ふとあることに気付いた。
「・・・・ん?この先からずいぶんと強い気配が感じられるな」
私は先ほどまで思い悩んでいたことなど頭から抜け落ち、気配の正体が気になりそちらの方へ歩いていく。
「ふむ。気配はこの寺院の中から感じられるな」
気配のする方へと移動してきてみれば、そこには確かな威厳が感じられる寺院が建っていた。
―――SIDE OUT
―――SIDE:ルー
ワタシが川神院に戻ってくると、何やら子供が中を覗き込んでいタ。
「どうしたネ。川神院に何か用があるのかネ?」
声をかけるとその子供がこちらに気付き、体を向けてきタ。
「!」
ワタシはとても驚いタ。
まずその格好に目が向いたネ。
その子は金糸の刺繍が施された紫の陣羽織を着ており、羽織の下には着物と袴を着込み、足には足袋と草鞋を履いていタ。
顔立ちも非常に整っており、長髪をポニーテールに纏めているのがとても似合っていタ。
しかし、それは今の世の中において、普通の子供が身につけているには余りにも不自然極まる出で立ちだが、
この子供は違和感無く、全く自然にそれら全てを着こなしていネ。
次に気付いたことだが、体を向けたときの動作がとても自然な事にワタシは驚いタ。
あれは、まさに武術をやっている者のそれだったネ。
しかも、それを自然と行えるぐらいに体に染み込ませる程に鍛錬した者ノ。
刀こそその腰に帯びてはいないものの
―――侍。なぜかその子供を、そう呼ぶに相応しい存在だとワタシは思ってしまっタ。
「ふむ。ここの寺院の方ですかな?」
なにやら大人びたしゃべり方をする子だネ。
「そうだヨ。ここ川神院で川神流の師範代をしているルー・イーとゆうネ」
ワタシが名乗ると
「なんと!師範代の方であったか。いや、これは失礼をした」
そう謝罪してきタ。
「なに、この寺院から強い気配が感じられたのでね。気になり、無粋にも中を覗き込んでしまったのです」
強い気配?ふむ、きっと鉄心様と百代のことだネ。
しかし、この歳で気配を感じることができるとは、やはりかなりの腕を持っているようだネ。
ワタシはますますこの子供に興味を持っタ。
―――SIDE OUT
―――SIDE:小次郎
「どうしたネ。川神院に何か用があるのかネ?」
寺院の中を覗き込んでいると、私に声をかけてくる者がいた。
体をそちらの方に向けると、そこにもかなり強い気配を持っている御仁がいた。
これほどの気配を持つ者が近づいてくるのに気が付かぬとは。
どうやら、寺院の中の気配が強すぎてこの御仁の接近に気付かなかったようだ。
「!」
なにやら私を見て驚いているようだ。
とりあえず私はこの御仁に問うてみることにした。
「ふむ。ここの寺院の方ですかな?」
私の問いに、この御仁は
「そうだヨ。ここ川神院で川神流の師範代をしているルー・イーとゆうネ」
そう答えてきた。
ふむ、ルー殿であるか。しかし
「なんと!師範代の方であったか。いや、これは失礼をした」
やはり、それ相応の御仁だったようだ。
私は覗き込んでいた理由を正直にルー殿へと話した。
「なに、この寺院から強い気配が感じられたのでね。気になり、無粋にも中を覗き込んでしまったのです」
私の疑問にルー殿が答えをくれた。
「君が感じた気配は、この川神院の総代とその孫のものだネ」
なるほど。この強い気配はこの寺院の総代とその孫のものだとルー殿は言う。
ふむ、これだけの気配を発する御仁たちにも会ってみたいものだ。
「興味があるなら会ってみるかネ?」
「・・・よいのですか?」
その提案は私にとってまさに願ったり叶ったりである。
「大丈夫だヨ。じゃあ、ワタシの後に連いてくるといいネ」
「忝い。ではお言葉に甘えるとしよう」
そうして私はルー殿に連れられて川神院の中へと入って行くのだった。
周りの人たちは初めは物珍しさと不振な感じで小次郎の話をしていましたが、川神院の関係者だろうと納得していますw
次回は小次郎が百代と邂逅いたします。