真剣で私に恋しなさい+ ~ある侍の新たなる人生~   作:黒猫大佐

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第4話 新たな人生での初勝負!

 

 

 

「そこまで言うんだったら私と勝負しろ!!」

 

 

 

 

 

 

 

―――SIDE:小次郎

 

「うむ。ワシがここ川神院の総代をやっとる川神鉄心じゃ。そして、こっちが孫の・・・」

 

「川神百代だ!よろしくな」

 

なるほど、鉄心殿に百代殿か・・・。

 

実際に相対してみて確信した。

 

 

――――――この者たちは強い――――――

 

 

クク。新しき生でさっそくこのような強者達に出会えるとは、まことに嬉しきことだ。

 

・・・だが、

 

「して、小僧。お前さんは何というんじゃ?」

 

ふと、私があることを思ったときに『お前は誰だ』と言う意志を込めた目をした鉄心殿が私の目をしかと見て聞いてくる。

 

クク。そうか私は今、名を聞かれたのだな。

 

「そうでしたな。そういえばまだ名乗っていませんでしたな。いやはや、これは失礼をした。」

 

口の端が吊り上がる。名を聞かれ、それに答えられることの何と喜ばしきことか。

 

「私の名は――――――」

 

さあ。新しき生での初めての名乗りである。

 

「佐々木小次郎」

 

口にした途端、喜びに体が震える。

 

この名が、あの仮初の生で与えられた偽りの物であろうと、

 

私はこの名を持ったまま新しき生を始めた。

 

今の我が名はこれ以外にない。

 

嗚呼、私は今、確かにここに存在し、名乗りを上げている。

 

「ほっほっほ。それはまた大層な名前じゃの」

 

「それは本名かネ?」

 

ふむ。やはりこの名を聴き知っている者が聴けば斯様な態度を示すのが普通であるか。

 

「さよう。生憎とこれ以外名乗る名は持ってはいないのでな」

 

そうこうしているうちに、ふとある気配に気づき百代殿の方へと向き直る。

 

百代殿が私に突きを放ってきた。・・・・・早い!!

 

 

――――――――――――ピタッ!

 

 

私に当たる寸前で拳が止まる。

 

「・・・何で避けようとしなかったんだ?」

 

「クク。なに、当てる気がないと解ったのでね」

 

百代殿の問いに私は事もなげにそう言った。

 

百代殿の気配から私の力量を見るために当てる気がない事は解ったので私はその場から動きもしなかった。

 

いやしかし、今ので先ほどの疑問がはっきりとした。

 

ガン!!!

 

百代殿が鉄心殿にゲンコツを貰い文句を言っている。

 

「すまんの。孫が失礼をした」

 

「いやいや。よいのですよ鉄心殿」

 

「そうかの。そう言ってもらえると助かるわい」

 

「ええ。いやしかし、百代殿はこの歳でとてつもない強さですな」

 

先ほどの突きから実力の程がうかがえる。

 

「しかし・・・」

 

私は笑みを浮かべ、先ほど気付いたことを口にしていた。

 

「クク。いやなに、百代殿はまだまだ自分の才に振り回されているようですな」

 

「ほっ!なんと!分かるか御主にも」

 

やはり鉄心殿も解っているようだ。

 

たしかに、とてつもない才を持っており相応の鍛練もしてきたのだろう。

 

この歳ですでに達人と呼べる実力を持っている。これは驚嘆すべきことだ。

 

だが、少々その才と力に頼りすぎているようだ。技の錬度が甘い。

 

と、黙っていた百代殿が私に言い放ってきた。

 

「そこまで言うんだったら私と勝負しろ!!」

 

 

 

 

 

――――――――――――ほう

 

新たな生になっても私の性は変わらないらしい。

 

ただの花であれば愛でるのが常であるが、

 

すでに百代殿の纏う空気は真の武士(もののふ)のそれだ。

 

やはり強者との勝負は心が躍る。

 

「クク。私は構わんが・・・」

 

私は『よいのか?』と確認を込めて鉄心殿の方を見る。

 

「よいじゃろう。試合いを許可する」

 

「それは重畳。しかし、私は無手では大したことができぬのだが・・・」

 

私の言葉に百代殿は、

 

「私は相手が武器を持ていようが全然構わない!!」

 

「左様であるか。ならば、刀を用意してもらいたいのだが」

 

「刀かの?わかったわい。ルー、模造刀(レプリカ)を持ってこい」

 

「承知しましタ」

 

ルー殿が鉄心殿の言葉とともに修行場を出ていく。

 

 

 

 

 

模造刀を持ってルー殿が戻ってくる。

 

「これでいいかネ?」

 

「忝い」

 

刀を受け取り、具合を確かめる。

 

「(ふむ。普通の長さの刀を扱うのは久方ぶりであるがなんとかなるだろう。)」

 

私は鉄心殿に頷き、試合の場へと向かう。

 

さて、では幕を開けようか。

 

 

―――SIDE OUT

 

 

 

 

―――SIDE:鉄心

 

「左様であるか。ならば、刀を用意してもらいたいのだが」

 

「刀かの?わかったわい。ルー、模造刀(レプリカ)を持ってこい」

 

「承知しましタ」

 

ルーへ指示を出し、模造刀を持ってくるように言う。

 

ワシが許可し、モモと佐々木小次郎と名乗った小僧が試合をすることとなった。

 

それにしても、モモの実力を見抜くとはなかなかやりおるのこの小僧は。

 

しかし、小次郎に言われて刀を与えたが、

 

いやいや、初めに思ったことじゃが刀を手にしていよいよ侍と呼ぶに相応しいいでたちとなったの。

 

さて、それではこの小さき侍の実力を見せてもらうとするかの。

 

 

―――SIDE OUT

 

 

 

 

鉄心が前に進み出て声を発する。

 

「準備はよいかの」

 

「いつでも!」「・・・」

 

百代は早く始めろとばかりに声をあげ、小次郎は口元に笑みを浮かべ黙ってうなずく。

 

「それでは2人とも、前へ出て名乗りをあげるが良い!」

 

「川神流 川神百代!」

 

百代の姿勢が沈む。全身に気を巡らせて、戦いの準備を完了させる。

 

「我流剣士 佐々木小次郎」

 

刀を右手に持ち、ダラリと両手を下げた自然体に構えを取る。(刀はすでに抜き放っており、鞘は修行場の隅に置いてある。)

 

隙だらけにしか見えないが、小次郎の気配から全く真逆のものとなっている。

 

視線は涼やかに鋭くそして優雅に・・・しかし、しかと百代を捕らえている。

 

「勝負がつくまでは、何があっても止めぬ。良いな?」

 

「ああ!」

 

「承知した!」

 

「いざ尋常に、――――――はじめいっ!!!!!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁっ!!!!!」

 

開始の合図とともに百代が一気に小次郎へと距離を詰める。

 

「川神流 無双正拳突き!」

 

普通の者が目で追えないほどの速さで拳が放たれる。

 

数瞬の間に小次郎が動き、刀で拳を受ける。

 

しかし、百代は気にせずに刀ごとへし折るつもりで拳を振りぬく。

 

だが小次郎は滑らかに拳を受け流す。

 

「なっ!」

 

百代の顔に驚愕の色が浮かぶ。

 

「フッ!」

 

体勢を崩した百代へ小次郎は返した刀で銀線を走らせる。

 

「くっ」

 

すぐに体勢を立て直し、小次郎の攻撃をかわしてガラ空きとなった鳩尾に突きを放つ。

 

だが、それよりも小次郎は速く刀を振りぬいた姿勢のまま一歩後退し、百代の反撃をかわす。

 

そして次の瞬間には、鋭く軌道を反転させた小次郎の刀が無防備となった百代に、高速で空気を裂いて迫る。

 

その攻防一体の動きに驚きを感じつつ、後ろへと飛び刃をかわしつつ百代は後退する。

 

距離が開き、刹那の静寂が落ちる。

 

小次郎の攻撃は急所を狙って放たれていた。

 

かわすのが遅れるくれていたら――――そう思うと。

 

「―――――ははは!」

 

百代が嬉しさに思わず声をあげた。

 

「―――――クク。」

 

小次郎も笑う。

 

「楽しいな小次郎!!まさかここまでやるとは思わなかった」

 

「そう言う百代殿こそやはり大した腕ではないか。

娘子でありながらそれほどの高みに立てるとは…………いや、その才にはまことに感服する」

 

優雅に片目を閉じて口の端を吊り上げながら余裕気に評価をする小次郎。

 

「なら、さっきの言葉を取り消す気になったか?」

 

「いやいや、むしろ先ほどの言葉にさらに確信が出てきた」

 

「む。ならここからは本気だ!!お前を倒して撤回させてやる」

 

「クク。こちらも大体理解した故、相応の力をもって迎え撃とう!!」

 

「私の実力でも理解したか?」

 

「いや、理解したのは・・・・間合い!」

 

小次郎が踏み込み、先ほどよりさらに早く刀を振るう。

 

「せやっ!」

 

「はっ!」

 

再び、剣と拳が交差する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――ふむ、なかなかやりおるのう」

 

二人の戦いを見て、髭を撫でながら鉄心が呟く。

 

先ほどは小次郎の言葉に同意はしたが、同時に鉄心は百代の実力も熟知している。

 

それ故、百代と渡り合っている小次郎の実力を冷静に判断する。

 

「そうですネ。彼の実力は少なく見積もっても師範代候補クラスと見て間違いないですネ」

 

鉄心の隣に立っていたルーも、その意見に同意している。

 

実力はあるだろうとは思っていたが正直ここまでとは思っていなかったようだ。

 

「いや、師範代候補クラスどころの話ではないかもしれんのう」

 

「え?」

 

二人は先ほどよりも激しくなる戦いに注目する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

先ほどの踏み込みを上回る速度で小次郎に迫る。

 

しかし、今度は先ほどの間合いを理解した言う言葉どうりに、小次郎は百代を間合いの内に易々と受け入れはしない。

 

だが、百代も幾つものフェイントを織り交ぜ、また、拳で刀の腹を叩いて軌道をずらし、そこに体を滑り込ませ小次郎の間合いに踏み込む。

 

「無双正拳突き!」

 

全力で放たれる拳。

 

しかし、いつの間にかそこにある刀で拳を捌かれる。

 

「そうれ!」

 

そして、返す刀で再び攻撃される。

 

「くっ―――はあぁぁぁぁ!」

 

百代もすかさず反撃する。

 

幾度も打ち合わされる拳と刀。

 

しかし、百代が放つ攻撃はことごとく捌き、いなされる。

 

小次郎がその一撃を容易く受け流し、疾風の太刀で急所を狙う。

 

 

 

 

 

百代が再び小次郎から後退し距離をとる。

 

「―――ふむ」

 

「はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・」

 

涼しい顔で、息一つ乱していない小次郎に対し百代は呼吸が乱れている。

 

(くっ。どうゆうことなんだ。私の方が絶対に早く、力も上のはずなのに)

 

相対する百代に感じられることだが小次郎には理解できない早さがある。

 

そう考えていると、

 

「―――興が乗ってきたところだが、もう良い頃合であろう。次の攻撃にて終いとする。」

 

小次郎がそう告げる。

 

その表情と声に普段の優雅さは無く、唯その目に必殺の意思がうかがえる。

 

そして、この戦いが始まってより初めて、小次郎が刀を構えた。

 

小次郎が取った構えは、背は百代に向けられ顔が左肩越しに向けらる。

 

刀は目と水平に構えられている。一見隙だらけにしか見えない構えだが、その実一分の隙も見せてはいない。

 

 

 

 

 

 

―――――――――圧倒的な殺気が小次郎より解き放たれる―――――――――

 

 

 

 

 

 

「「「!」」」

 

その凝縮された刀の切っ先のような濃密な殺気にその場にいた全員が息を飲む。

 

次の瞬間、小次郎がその名を口にする。

 

 

 

 

「秘剣――――――"燕返し"」

 

 

 

 

「なっ?!」

 

同時に生じる三つの斬撃により作りだされた牢獄にて百代は閉じ込められ、

 

「がっ!!!」

 

斬撃を浴びた百代はそこで意識を失った。

 

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