糸使いは大抵強キャラ   作:色埴うえお

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0の頃は恐らく設定すらなかった京都校周り。
この頃は京都校のメンバーそんなに仲良くない気がしますが、所詮二次創作なので深く気にせずにいきます。
京都校にはねぇ、出したい人物が居るんですよ。

ここすきしていただけるだけでもモチベーションぐんぐん上がるので、気が向いたら是非。


そうだ、京都行こう(唐突)

「開己、今から京都行くよ」

「……嫌です」

 

 虚式って知ってる? 見せてあげるよ。昨日の夜、海のど真ん中に連れて行かれてその言葉を聞いた後の記憶が無い。

 一瞬死後の世界かと思ったが、絶対に死なない人が目の前に居るのでここは現世だろう。

 

 ふとベッド脇のテーブルを見れば、開封済みの転術糸の包装が3つ。

 

「家入さんには許可取ったんですか?」

「勿論」

 

 これはいつも通り嘘をついてる顔だ。これの数を揃えるために日夜家入さんがどれだけ苦労してると思っているんだこの人は。

 そんな転術糸をふんだんに使ったおかげだろう、俺の身体に違和感は無い。使う前がどんな状態だったかは知らないが。

 というか、虚式とやらを見せるのであれば俺に向かって撃つ必要はなかったのでは?

 

「今日は休日なので実家に顔を出す予定なんですけど」

「丁度良かったね、実家は今は京都でしょ?」

「そう言えばそうでした……」

 

 島根にあった葛陰の集落が焼かれた後、生き残りは五条家が管理している京都の土地に移った。

 今日は休日と言うことで、久々に皆に(しん)さん*1たちに会えると思っていたがそうはいかなそうだ。

 

「前から言おうと思ってたんだけどさ、そろそろ休日の縛りやめようか」

「……嫌です」

 

 五条先生の言う休日の縛りとは、俺が自身に課している『休日は呪力の出力を1割以下におさえ、術式は自分自身の為だけに使えるという縛りを課し、それ以外の日の術式効果を上げる』のことだ。

 元々は実家で毎日糸を紡がされるのが嫌で作った縛りだったが、余りにも長いこと縛っているので、解いた後の状態が予想できず、高専に来た以降もそのままにしている。

 それにこの縛りを解いたら最後、無限糸造り編が始まってしまいそうで二の足を踏んでいる。

 

 何度かそのタイミングでも五条先生主導での襲撃が行われているが、ちゃんと縛りに配慮して手加減してくれてるので、これまでは領域なしで何とか凌げている。縛りが無くなったら五条先生がどうなるか予想がつかない。

 今のところ、休日に急な任務が入っても三級術師に与えられるレベルならなんら問題ない。

 

「後悔は先に立たないよ」

「分かっています」

 

 自分に対して課す縛りは破ったときは得たものを失うだけだ。つまり、ヤバくなったらその場で解けばいい。

 そんな理由もあり、今日の休日は呪力出力1割で京都にお出掛けだ。……無意識で五条先生に従ってしまっている自分に気づいて嫌になる。

 

「準備して10分後に正面入口ね」

「あそこまで(ここ)から徒歩15分ですけど」

 

 高専の敷地は無駄に広い。

 

 

 

 

 

 

 東京駅から新幹線に乗ってはるばるやってきた京都。京都駅から更に車で移動すること2時間弱、連れてこられたのは呪術高専京都校。

 

「なんか東京校とは雰囲気違いますね」

「こっちの方がボロっちいよね~」

 

 東京校とは建物の佇まいも、結界の結びもかなり違う。時間が有ったら解析したい。

 

「で、今日は何で連れてこられたんですか。そろそろ教えて下さい」

 

 この質問は本日3回目だ。

 道中はあのお土産食べたことあるか、とか。あそこのお店が美味しいから機会が有ったら行くといいよ、とか。本当に休日に京都旅行しに行くような雰囲気の雑談しか出来なかった。

 楽しかったけども、このところずっと襲われてるせいで五条先生に横に居られると落ち着かないんだよな。

 普通新幹線内で襲ってくるわけ無いと思うが、普通じゃないんだよ、この人。

 

「9月に予定してる姉妹校交流会に関しての軽い打合せだよ。繁忙期に入ったらそれどころじゃないし」

 

 姉妹校交流会、初耳だなぁ。

 

「俺いる意味あります?」

「あるよ。会場に張る結界は開己に頼むつもりだからね」

「はあ……」

 

 交流会で何故結界を? 要人でも来るんだろうか。

 そうして京都校の敷地を歩いていると正面から巫女服を着た長髪の女性が大股で歩いて来た。

 めちゃくちゃキレてる。間違いなく五条先生の知り合いだ。

 

「や、歌姫。楽巌寺のおじいちゃんどこ?」

「アポなしでいきなり来んな! 楽巌寺校長は総会で今日は居ないわよ!」

「行くよってちゃんと連絡したでしょ。折角この子も連れてきたのに不在って酷いなぁ」

「到着5分前の電話はアポとは言わないんだよ!」

 

 全面的に五条先生(こちら)が悪い。

 ちょっと待て、そもそも打合せは予定されていないのか?

 

「その子は?」

「申し遅れました。東京校1年、三級術師の葛陰開己です。本日は急な訪問で申し訳ありません」

「スゴい、五条の教え子とは思えない礼儀正しさ。君はこんな風になっちゃダメだからね」

「はい、反面教師として日々見習ってます」

 

 この方も五条先生に苦労させられてるんだろうな、と既に親近感を抱いている。

 

「こほん、自己紹介が遅れたわね。京都校で教師をやっている庵歌姫よ。よろしく」

「庵先生、よろしくお願いします」

 

 顔に大きな傷が有るものの、それが気にならない爽やかな笑顔を浮かべる庵先生は光って見える。

 こういう教師が良かったな。

 

「ま、歌姫でいいや。交流会に向けて話が有るから、話せる場所に案内してよ」

「……わかったわ、ついて来なさい」

 

 歌姫“で”ってどう意味だ、要件はそれか、そんな言葉を飲み込んだ様子の庵先生は僕らを連れて京都校の校舎へと向かって行った。

 

 

 

 

 

 

 その後、姉妹校交流戦で使用する会場への結界の敷設を開己が当主を務める葛陰家に依頼する方向で話を進める事が決まった。

 開己は大きな仕事を一族に与えられる事が決まり、気合いを漲らせているようだった。

 

「後は大人同士で話が有るから、開己はその辺ぶらぶらしててね」

「この部屋を出て右手に真っすぐ行けば休憩コーナーに自販機とかあるわよ。お腹空いてるならその先に食堂もあるから」

「ありがとうございます。では、失礼します」

 

 深々とお辞儀をして開己は応接室を後にする。呪術師にあるまじき礼儀正しさに歌姫は何であの子が京都校の生徒じゃないのかと少し残念に思う。

 遠ざかっていく足音を聞きながら、歌姫は冷めたお茶で喉を潤し五条に目配せする。

 

「ここって安全?」

「防諜はしてあるわ。視れば分かるでしょ」

 

 そして、今日の本題に入る。

 

「で、今日は何の用?」

「はいこれ、近い内に公表するつもりの新製品」

「何これ? えっと、転術…糸?」

 

 五条が机に置いたのは、転術糸と織り込まれているスマホくらいの大きさの小さな袋だ。

 手に取ると非常に軽く、裏には幾つか注意書きが記されている。

 

「門外不出、破ったものには罰則……5本入り、鎮痛用1本、治療用3本、多用途1本……使用方法、負傷箇所周辺に針先を刺す……待って転術って反転術式ってこと?」

 

 注意書きを読み上げている内にこの転術糸が一体何なのか歌姫には見当が付いた。

 そして反転術式による治療と言えば思い当たる人物が1人。

 

「硝子も関わってるのよね?」

「うん。硝子と開己の合作だよ。現在絶賛量産中」

「量産……それに開己って、さっきのあの子?」

 

 さっきまで居た開己も関係者だと言う。その為に連れてきたのかと理解したが、気がかりがひとつ。

 

「三級術師って言ってたわよね」

 

 開己の等級は三級、補助監督になる人間もいる程度の境界線上の才能の持ち主に与えられる評価だ。

 概要を読んだだけで歌姫は転術糸(これ)がこれまでの常識が覆る大発明だと確信した。きっと誰もがこれと、その製造法を求めるはず。開己の安全を考えるなら、誰にも存在を知られない場所で過ごすのが最も安全であると呪術師としての歌姫はそう思った。

 

(あの子を、糸を吐くだけの(家畜)のように……?)

 

 歌姫は開己と今さっき出会ったばかりだ、しかしこれまでの短い時間だけで、開己の為人(ひととなり)はある程度分かった。真っ当な(術師らしくない)感性を持つ正しい道に導くべき生徒だと、教師としての歌姫は開己をすでにそう分類している。

 これを狙っていたのかと、五条の卑劣な策略に、歌姫は思わず歯噛みする。

 歌姫はもう開己に対して冷酷な(正しい)判断を下せない。

 

 だからこそ、五条悟を知る人間として、そうしなかった理由が甘い考えでだけではないことに察しがついた。上層部が把握していない等級以上の何かが彼にはあるのだろう。

 

「アンタの見立ては?」

「ん? ああ、そうだね……卒業までには特級(僕と同じ)かな」

「とっ…!?」

 

 歌姫は思わず立ち上がった。

 他のことはともかく、六眼を持つ五条が呪術に関する見立てを間違うことはまずない。だが、それでも特級とはそんな軽々しくつけられる等級ではない事は歌姫は勿論五条だって百も承知のはずだ。

 

「頭が痛いわ……」

「お、転術糸使ってみる? 頭痛にも効くよ。お値段700万円だけど」

 

 単独での国家転覆。それが特級術師として評価されるための条件だ。歌姫が知っているのは3人。いや、最近1人東京校に増えたと聞かされた。

 同学年に2人の特級、嫌でも思い出される。目の前の五条悟と――――いや、今はそれは関係無い。

 

「アンタにそこまで言わしめる何かが有るのよね……」

 

 戦闘中では無いので正確ではないが、今日見た開己が纏っている呪力は一般的な術師(自分)と比較しても弱々しく見えた。

 確かに操作は緻密で優れているように見えたが、密度や質から予測される呪力出力は高くない。歌姫の教え子であれば、一級を目指すのは諦めるように言うかもしれない。

 どんな優れた術式も呪力が無ければ意味が無く、呪力量は先天的な才能が10割とまで言われる伸ばせぬ資質だ。間違いなく何らかの縛りで出力を絞っている。

 術式は、転術糸(これ)を見るに、葛陰家の相伝術式である紡糸繰術。真依(教え子)と似たような直接戦闘向けでは決してない術式だ。

 

「ま、本当の実力は交流会(9月)をお楽しみにって事で」

「?」

 

 思考に割り込んできた五条の言葉に歌姫は特大の疑問符を浮かべる。

 交流会で実力が表沙汰になり、昇級する例は非常に多い。五条が言ってるのはそう言う事なのだろうが、そこには問題がある。

 

「いや、運営に携わるんだから葛陰くんの参加は無理よ。何言ってるの?」

 

 既に競技内容と会場の見取り図を見せている以上、公平性を保つ為に開己の参加は許されない。

 あーあー聞こえないー。と、いつもの調子でふざけ始めた五条に歌姫はただただ呆れるしかなかった。

 

(絶対ねじ込んでくるわね、コイツ)

 

 五条に気に入られてしまった開己に同情していた。

 

 

 

 

 

 

 庵先生に聞いた案内通りに校舎を進むと幾つかのベンチと自販機が置かれている一角が有った。

 地域限定の目新しい飲み物なんかは置いてなかったので、しじみのみそ汁と迷って緑茶を買ってポケットからスマホを取り出したところ、クラスのチャットが盛り上がっていた。

 

 

パンダ

『変な味の生八ツ橋』 14:06

 

『明太子』 14:06

 

真希

『生八ツ橋、変な味買ってきたら殺す』 14:09

 

憂太

『近江牛』 14:21

 

憂太

『違う、すまほとられ』 14:22

 

憂太

『1頭丸々』 14:22

 

 

「近江牛、了解っと」

 

 京都に行くと連絡を入れておいたらこのザマだ。明太子は博多土産だろうが。

 まあ、お土産に関して言えば五条悟セレクションに従えば多分大丈夫だろう。他に明太子味の生八ツ橋があるかどうかだけ調べておこう。

 

「見ない顔、誰かの知り合い?」

「いえ、私は知らないです」

「制服着てるってことは高専生よね」

 

 チョコミント味の生八ツ橋があったので真希の分はこれにしようと決めていたら通りがかった人影が何やら俺の方を見て話しているようだ。

 チラリと目を向けるとそこには金髪の独特な髪型をした小柄な少女と、青い長髪のTシャツジーパンの女の子、そして――――

 

「え、真希…?」

 

 眼鏡を掛けていないボブヘアの真希が立っていた。

 

「ハァ?」

 

 そして、その発言が取り返しのつかないものだったと、突きつけられた銃口を見ながら後悔した。

 え、京都って拳銃の携帯OKなんだ。

 

 

 

 

「西宮先輩やりすぎですよ」

「大事な後輩泣かされてるんだから、これでも優しいくらいよ」

「すみませんでした……」

 

 数分後、主に西宮先輩と呼ばれた金髪の女性にボコボコにされた俺は許しを乞うために土下座していた。いや、目薬点してましたよね大事な後輩さん。

 なんなら今では乾いた目で写真撮ってますし。

 

「で、アンタ何者?」

「東京校1年の葛陰です」

 

 学生証を出しながら名乗る。そろそろ許してくれないだろうか。

 

「東京校1年、真希の同級生なのね」

「この人も言ってましたよね、真希って、真依の知り合いですか?」

「真希は私の双子よ」

「なるほど、それで見間違えたと」

「似てないわよ、あんなのとは」

「えぇ……」

 

 眼鏡の有無だけで顔立ちは似てると思うけどなぁ。

 そもそも、双子居るなら教えてくれよ真希。双子なんだから見間違えられる事くらいあるでしょ。というか、仲良くしといてくれよ。

 で、俺は何時まで土下座してればいいんですか。

 

「そろそろ許してもらえませんか」

「反省の色が見えない」

「涙を流したせいかしら、なんだか喉渇いてきちゃったわ」

「カツアゲは流石にマズいですよ……」

 

 いや、手に持ってる銃をぶっ放されるよりは全然マシです。

 サッと財布から千円札を取り出し献上すると、西宮先輩はノータイムで横の自販機に突っ込んだ。遠慮とかないんだ。

 

「三輪何にするの?」

「えっ、いやホントに買っちゃうんですか」

「何でも良いならしじみ210個分にするけど」

「そんな。では、普通のお茶でお願いします」

 

 三輪さん、共犯者になっちゃったよ。

 残り2人はそれぞれ紅茶とコーヒーを買ってお釣りは帰って来なかった。シンプルにカツアゲだろ。

 

「で、東京校の1年が何しに来たの?」

「交流会の打合せに五条先生の付き添いで」

「えっ、五条先生ってあの五条悟ですか!」

「そう、()()五条悟です」

 

 五条先生の名前を聞いた途端目を輝かせる三輪さん。ミーハーなのかこの子。

 それに対して眉間にシワを寄せた西宮先輩が続ける

 

「交流会の打ち合わせ、随分早くない? 3カ月も先でしょ?」

「俺…僕も今日いきなり連れて来られたんで、よく分からないです」

「んなわけ無いでしょバカじゃないの?」

 

 俺もバカじゃないのって思います。

 

「で、その肝心の五条先生の姿は見えないけど、先生を放り出してこんな所で遊んでていいの?」

「多分まだ応接室に、庵先生と話が有るから時間潰してろと言われて」

「そういう時って、部屋の前で普通人払いするものじゃないかしら……いえ、私の常識を押し付けるのは良くないわよね、ごめんなさい」

 

 真希と違って言葉の刃だけで攻撃してくるタイプなのね、ベクトルが違うだけで攻撃性は似てるな。流石双子と言うべきか。

 というか、遊んでると言うより、遊ばれてるんですよね。俺は何時までこうして地面に座ってれば良いのだろうか。

 

「騒がしいが、何をやってるんだ西宮」

「あ、加茂くん。東京校の1年が真依ちゃんに狼藉を働いたから躾をね」

「そ、そうか……程々にな」

 

 通りすがりの男性が西宮先輩に親しげに声を掛けた。加茂くんと呼んでいたし、多分同級生だろうか。止めない辺りこういうのは日常的に起きてるんだろう。うん、こっちも呪術師だらけだ。

 

「彼は?」

「葛陰…かいこって読むのかな。三級だってさ」

「葛陰……? あの葛陰開己か!」

「知り合い?」

 

 加茂先輩はどうやら俺の事を知っているらしい。いや加茂って…主要取引先(御三家)じゃねぇか!

 

「知らないのか、葛陰家は呪糸製作の旧家で、彼は葛陰家の現当主だぞ」

「マジ……?」

「現当主って、え、そんな人にお二人はカツアゲしてたんですか!?」

「三輪!」

「アンタも共犯よ」

「ええーっ!」

「お前たち……」

 

 真依さんの言う通り、残念ながら三輪さんも共犯者だよ。

 

「ウチの生徒がとんだ無礼を、本当に申し訳ない」

「いえ、学生同士のおふざけですから気にしてませんよ。それに、こういうのは慣れてますから」

「それはそれで問題だと思うが……」

 

 加茂先輩の手を借りて立ち上がる。良識の有る人間が居てくれて良かった。

 東西問わず呪術師のチンピラ率が高すぎる。

 

「申し遅れました、僕は東京校1年葛陰開己です」

「私は加茂憲紀、京都校2年だ」

 

 のりとし……聞き覚えがある。少し前に頭に叩き込んだ御三家の重要人物リストにその名があったはずだ。

 たしか、嫡男にして次期当主候補。未来のお得意様だ。

 

「次期当主と名高い加茂のりとしさんでしたか! お会い出来て光栄です」

「そんな畏まらなくとも、今は一介の学生で何の権限もないただの子供だよ」

 

 相伝術式を身に宿し、礼儀正しい。こんな人が当主になれば、加茂家の未来は明るいだろう。

 是非ともこの機会にお近付きにならなくては。

 

「加茂先輩、良ければ連絡先を交換しませんか? 呪糸・呪布・その他諸々、葛陰の製品がご入用でしたらご用意致しますよ、グヘヘ」

「悪徳商人みたいになったけど、疑ったほうがいいわよ加茂くん」

「西宮……願ってもない申し出だ、私個人としても是非お願いしたい」

 

 スマホを取り出し、連絡先を交換する。憲紀(これ)でのりとしと読むのか。

 いきなりカツアゲされたが、まさかの次期当主様と繋がりを持てるとは、来て良かった京都。

 

「ありがとうございます。これはお近付きの印……」

 

 術式を起動しようとして、違和感に気付く、そう言えば縛りで今日は術式を他人の為に使えないんだった。

 いや、これは先行投資で俺の為の使用だから『他人の為には使えない縛り』には抵触しない。問題ない。

 

 いつもより弱い呪力出力で術式を起動し、最近お気に入りの呪力蓄積ミサンガを構築する。

 

「お近付きの印にこちらをお納めください。これは、今後売り出そうとしている製品の呪力蓄積ミサンガです。身に付けておくと呪力を少しずつ蓄積し、いざというときは外付けの呪力タンクとして使うことが出来ます。或いは一般的な(非術師の)ミサンガのように願掛けをし、十分な呪力を溜めた状態で千切れると、その願いを実現する助力となります」

「これを今作ったのか?」

「ええ、僕の術式で。是非お使いいただいて、使用感など教えて頂けると助かります」

「分かった、有り難く使わせて貰うよ」

 

 いい機会だし、ついでに西宮先輩たち3人にも配っておくか。レビュアーは多いほうがいい。

 あと口止め料だ、旧家の当主がカツアゲされて土下座したなんて醜聞を広められたら困る。旧家の当主にカツアゲしたのか、この人たち。

 

「御三方も、折角の機会なので試していただけませんか? 何なら受け取るだけでもいいので」

「良いんですか!」

「三輪……。カツアゲした相手から呪具渡されるの滅茶苦茶抵抗あるんだけど」

「そんなセコい真似しないですよ。抵抗あるなら無理強いはしませんが」

「それなら私は遠慮させてもらうわ」

 

 三輪さんはカツアゲした意識がないらしく、受け取る気満々。西宮先輩は警戒しているが、加茂先輩が受け取った事である程度の信頼もしている、それに恐らくこの呪具の市場価値に見当がついている。呪具使いかな。

 禪院さん…真依さんが苦虫を噛み潰した様な表情なのは何故かは分からないが、やめておいた方が良さそうな気配。とは言え1人だけに渡さないのは角が立つ。

 とりあえずそれぞれの髪色と同じ色のミサンガを紡ぐ。色だけとはいえ、自身と共通点があると呪具としての効果が高くなる傾向がある。

 

「ではとりあえず3本お渡ししますね。どの色にするかは皆さんで決めてください」

「何度でも言うわ。私は要らないから」

「というか、色選べるなら赤がいいんだけど」

「……今変えます」

「どうせならお揃いとかどうです!?」

 

 盗っ人猛々しいって言葉が思い浮かんだよ。凄いな西宮先輩。

 1本を赤地に白の差し色のものに作り替えて他2本も同じ色の差し色を加えた。安直に髪色と同じ色のミサンガは良くなかったかな。

 要らなきゃ売るか捨てるかしてもらえばいいので、3本纏めて三輪さんに預けた……他の二人は噛みつかれそうで怖いので。感想は3カ月後の交流会でかな。

 

「どうやら五条先生の用も済んだみたいなのでそろそろ失礼します。色々とお騒がせしました」

 

 曲がり角から満面の笑みでこちらを見ている白髪の大男に視線を飛ばしながらそう言った。

 もしかしたら結構前からあそこに居たのかもしれない。

 

「うわ、本物の五条悟だ……!」

「あの人はあんな所で何してるんだ」

 

 目をキラキラさせている三輪さんと、困惑する加茂先輩。加茂先輩、暇してる時のあの人は理解しようとしちゃダメです。

 こちらの視線に気付いたのか、五条先生は曲がり角から姿を現し、ゆっくりとこちらに向かって歩いてくる。

 

「生五条悟だぁ〜!」

「ゴメンね、邪魔しちゃったかな?」

「いえ、そろそろそちらに行こうとしてたところです」

「写真とかお願いしたら失礼ですかね……」

「三輪」

 

 西宮先輩が三輪さんを小突く、真依さんは相変わらず気難しそうな表情を浮かべている。たまに真希もこんな感じなるし、やっぱり双子って似るもんだな。

 状況をよく分かってない五条先生はニコニコしたまま黙っている。

 

「こちらの三輪さんは五条先生のファンみたいなんで、ツーショットとか撮ってあげたらどうです?」

「えっ!」

「あ、いいよ。こんな感じ?」

「ええっ!!?」

 

 ピースしてる五条先生と面白い顔で硬直してる三輪さんを西宮先輩がすかさず撮影した。後で送ってあげたりするのかな。京都校の女子はちゃんと女子してて新鮮だな。

 

「それじゃあ僕たちはそろそろお暇するから。行くよ、開己」

「はい。では皆さん、お騒がせしました。次会うのは9月の交流会ですかね」

「楽しみにしている。大した饗しも出来ず悪かった。次来るときは是非連絡をくれ」

「はい!」

 

 加茂先輩、良い先輩だな。いつか相性の良い呪具とか作ろう。グヘヘ、次期当主を葛陰製品の虜にすればいい稼ぎになるぞ。

 相伝である赤血操術に合いそうな呪具と、それによって齎される利益を皮算用しながら五条先生の後をついていく。

 

「楽しそうだね、開己」

「ええ、いい出会いにも恵まれましたし、来て良かったです」

「ん、それは良かった」

*1
本作オリジナルキャラ。主人公の世話役




真依ちゃん、途中から覇気無かったけどどうしたん? もしかしてあの日?

オリ主がオリキャラと旧交を温めるシーンなんかカットだ、カット。
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