あべこべ世界で性別隠しながら無双したかった 作:バグった魔法使い
「グギャァァ!」
空を飛ぶワイバーンがその顎を開いて炎を溜め込む。
「ブレスが来るよっ!」
軽装に身を包んだ盗賊の少女が声を上げる
「任せろ!
白銀の鎧に身を包んだ騎士の女性が叫びながら大楯を構える。
「グルルァァ!!」
放たれたブレスは大楯から展開された巨大な防壁に阻まれる
「ワイバーンの息が切れた、今だ!」
そう叫ぶ女性は、後ろにたつ
「了解、
中性的な声からぽつりと呟く程度に紡がれた言葉は、即座に天候を変えた。
一瞬にして黒雲が空を覆い、ゴロゴロと音が鳴る。
「グルッ!?」
流石のワイバーンもこの変化に驚き、即座に逃げ出そうと翼を羽ばたかせて方向転換する
「もう逃げれない、落ちろ」
その言葉と共に、大量の雷がワイバーンへと落ちる。
雷で黒焦げになったワイバーンはそのまま地面に地響きを立てて落下した。
「討伐完了だな」
騎士の女性が近寄り、絶命したのを確認する。
「じゃ、素材の剥ぎ取りはまっかせて!」
そう言う盗賊の少女がナイフを構えてウキウキした顔でワイバーンを捌き始めた。
そんな二人を見る、外套で身を隠したその者は
(本当にバレなくてよかった)
この貞操観念逆転世界で、何度目か分からない溜息を静かに吐く。
「素材剥ぎ取り終わったよー!」
血で自らを汚しながら、盗賊の少女が血の滲んだ麻袋を背負う。
「そうか、では帰るぞ」
「りょーかい!」
「了解」
騎士の女性がそう言えば、残りの二人は後に続いてその場を去る。
☆☆☆
「いやー、今日もがっぽり稼げたね!」
「ワイバーン1匹の素材で金貨15枚とは…素材不足の影響か」
そんな二人から遠くもなく近くもない距離で椅子に座っている外套に身を包んだ
「いやー、それにしても強いよね」
「そうだな、天候を変えて落雷を落とす魔法は何度見ても慣れない」
じっと二人して見つめて来る
「ねー…もう何回もパーティ組んでるしさ。そろそろ正式にパーティ組まない?」
盗賊の少女は椅子から立ち上がって近寄る。
そのまま腕に触れようとしたので、スッと自然に腕を引っ込めて避ける
「むー…本当にボディタッチ嫌うよね
「全ての女性がボディタッチが好きな訳ではないんだぞ、ルディ」
ルディと呼ばれた盗賊の少女は頬を膨らませて不満を言う
「それでもさぁ、1ヶ月も臨時パーティ組むのに遠出して泊まる時は別室、風が吹いても外套は微塵も靡かないしフードも取れない、フードから顔覗こうとしても強力過ぎる認識阻害の魔法で分かりもしないんだよ!?そろそろ私達の事信用して顔を晒してくれてもいいでしょ!」
「…私の顔は醜悪だから」
その言葉に、何度言ったかも分からない理由を言う
「自分の顔を醜悪だと君は言うが、私もルディも美醜で人を決め付けない。それに…私は、君の顔がどんなに醜くても…仲間として受け入れたいと思っている。君が居てくれるお陰で今回のワイバーンや私達だけでは到底勝てないような魔物にも勝てているんだ。
後は…君のその強さが冒険者達の中では結構有名なんだ、一月もパーティを組んでいたら、
そう言ってふっと同性の女性さえ落としかねない笑顔をこちらに向ける。
それを見たルディは大袈裟に顔を覆う
「うぴゃー!流石は『麗しの騎士』って呼ばれるリュール。男だと思っちゃうくらいイケメンだよねぇ」
「ははは、こんな綺麗な子として産んで育ててくれた両親に感謝だよ」
そう言って笑った後、真っ直ぐとリュールはこちらを見つめる
「…どうかな?勿論、君がパーティに入ってくれるなら…私も君のしたい事を…その…貯蓄を少し崩してもいいくらいには叶えてあげたいと思うが…」
そう言って少し頬を染めてリュールは言う。
「もー…はっきり言いなよー、一緒に娼館行こうってさー」
ルディが椅子に座り直しながら机に肘を付けて言う
「んなっ…わ、私は娼館に誘ってなど…!」
「えー、いっつも変装してこっそり娼館に入ろうとしても決心付かずにウロウロしてるの知ってるよ?」
「…もう殺してくれ」
真っ赤な顔を両手で覆って顔を伏せるリュールに、ルディは続けて言う。
「あーあ、せっかく見た目も性格も良いのに…こんな人に寄って来る男がロクなの居ないのって不憫だよねぇ…」
「うぐぅ…」
その言葉にリュールはうめく
「ね、この騎士様こんなんだからさ…私と一緒に守ろ?」
そう言って再びボディタッチしようとしてくるルディを避ける。
「むー…」
「…すまない、もう少しだけ考えさせてくれ」
そう言ってそそくさと二人から離れ、自分の部屋のある宿へと向かった。
「あーあ、また避けられちゃった」
机に上半身を投げ出してルディは呟く
「せっかくリュールの秘密バラしたのに損じゃん」
その言葉にリュールはガバッと顔を上げて涙目のまま言う
「私へのダメージが大き過ぎるが!?」
「いいじゃん、減る物ないでしょ?」
「彼女からの信頼が減る!」
そう言ってボロボロ涙を流すリュールに、ルディは『
「ねー、思ったんだけどさ。もしかしたら男って可能性ないかな?」
その呟きに、リュールは涙を拭いて反論する。
「ルインが男だって?有り得ない。『戦いの素質を男は持たない』…幼子だって知っている、世界の当たり前だぞ」
「でもさー、もしかしたらってあるじゃん?それに男なら、今までの事にも説明つくし…」
「もしかしたら、私のように男と思われて女性に言い寄られ…私はそうならなかったが…『酷い目』に遭って恐れているだけかもしれないだろう」
「まー、そうだよねぇ。リュールや私がある意味例外なだけで…」
チラリとルディが外を見れば
「えー、ボク可愛いね?お姉さんと一緒に『イイこと』しよ?」
「うぁ、離して…!!」
「大丈夫大丈夫、お姉さんが手取り足取り教えてあげるからぁ…」
嫌がる少年を引きずって路地に行く女性が居た。
「普通の女性ってあんなんだし」
「…そうだな」
その光景を呆れた顔でリュールは見る。
「…無理やりなんて、嫌われてしまうだろう」
そう呟くリュールにルディは呟く
「あーあ、本当にルインが男だったらなぁ…」
その呟きは真実なのだが、二人には知る由もない事だった。