あべこべ世界で性別隠しながら無双したかった 作:バグった魔法使い
「はぁ…はぁ…」
ルインは実家にある自室で、息を整えていた。
そんな自室の扉を勢いよく開いて現れたのは
「おかえり我が息子よー!」
「お帰りなさい可愛い我が子ー!!」
両親だった。
ガッチリとルインを掴み、すりすりと頬すりする両親をルインは剥がす。
「帰ってきて早々に引っ付かないでよ…」
「だが、ルインが心配で…」
「ええそうよ…ルインが冒険者ギルドに行ってから、何回冒険者ギルド滅ぼそっかなって思った事か…」
ルインの両親は変わっている。
どれくらい変わっているかと言うと
「しかし、無事に帰ってきてくれてよかった」
人々から『魔王を鎮めた勇者』と呼ばれた父親に
「ええ、ええ…本当によかったわ」
その人々から強さを恐れられ『魔王』と呼ばれた母親だ。
しかし、この両親どうくっ付いたんだろうとルインは毎回思うが
母親から何度も聞かされた話が真実だとするならば…
自分の親から早く子供見せてくれとせがまれて荒んでいた自分がむしゃくしゃして魔物の住むダンジョン一つを消滅させた時に
その力を見て恐れる人々が居る中で、彼が自分の方へと近寄りこう言ったという。
『心が荒みその力を乱暴に振るう貴女より、穏やかな貴女をみたい。どうか許してくれるのなら、私が貴女のその心を癒そう』
自分に近寄る男なんて居ないと思っていた母親はその言葉に即堕ちして持ち帰り。
そのまま三日三晩ずっと満たして貰い、お互いに身も心も完全に依存してそのまま結婚。
そしてその数週間後に身籠り、産まれたのがルインだ。
因みに、ルインは俗に言うハーフであり。
父親が人間、母親が魔族だ。
しかし血としては母親から多くを引き継いだ為に、父親の要素が何処に残ってるかと言えば…引き締まった筋肉と、美形の顔、そして女子を蕩けさせてしまうフェロモンと、デメリットが強過ぎるものが引き継がれた。
「それにしてもどうした?いきなり帰って来るのはもう驚かないが…そんなに息を荒げて」
「何かあったのよね?お母さんに言ってみなさい?どんな奴でもこの世から消してあげるから」
父親は純粋に息子を心配し、母親はその直感から笑顔で息子を撫でながらも何かしたと思われる相手に殺意を向ける。
「パーティメンバーに男なのがバレた」
「」
「」
両親は固まった。
即座に再起動した母親が、ルインの体をペタペタ触る
「何かされてないわよね?何も奪われてないわよね?」
「いや、何もされてないから…ちょっとスライムに服とか全部溶かされただけで」
「あら、そうなの」
そう言うと母親は指をパチンと鳴らす。
その音で静まり返った部屋に、母親はケロリと言う
「今この世界で発生してたスライムクイーンを全部消滅させたわ」
「えっ」
驚くルイン、頭を抑える父親
「なぁ、流石にスライムクイーンになるスライムまでは消してないよな?」
「ええ、生活の要ですもの、消しませんよ」
ふふん、とたわわな胸を張って母親はドヤる。
そんな母親を横目に父親はルインに問いかける
「ルイン。バレたのなら暫くここに住むよな?」
「そうなるね、また別の国に行って冒険者はやるつもりだけど」
「そうか…」
冒険者を辞めない息子に、父親は溜息を吐く
「俺はな、ルインが心配なんだ」
「どう心配なの?父さん」
「ああ、夢に見るんだよ…お前が各国に冒険者として活動していくに比例して、お前に惚れ込んだ女達がお前を追いかけるのを…」
「嫌に具体的な夢ですね」
既にそうなってる事をルインは知らない。
「だが、同時に思うんだ。お前は冒険者としても、男としてもすごい事をやると」
「あはは、ナイナイ」
☆
その頃のリュール達は宿の一室に集まっていた。
「ルインのあの姿、思い当たるのは親は一組だけだ」
真面目な顔で椅子に座っているリュールはそう言って『魔王と勇者、衝撃の結婚!』とデカい見出しが書かれた当時の新聞記事を出す
「え?あの魔王と勇者の夫婦!?」
それを見てルディは驚き
「え?あの癇癪起こしたら超絶イケメンとイチャラブしまくってそのまま結婚まで行ったあの!?」
リルは若干嫉妬が篭った顔で記事を見つめ
「でもその息子ならあり得る」
ルナは冷静な顔のまま頷く
「ただあの人達が両親だとするなら最大の壁は母親である魔王だぞ…」
その言葉に、他の三人も口を閉じる
「あの人が魔王と恐れられたのはその強さだ、突然変異と言えるほどの魔力量に、凄まじい身体能力。指を鳴らせば世界が変わる…そう言われたあの魔王だ…納得して頂こうにもその力で私達の存在そのものを消しかねない」
「つまり、ルインが欲しいのなら…あの人を納得させる強さを持つ必要があるって事?」
ルディはリュールに問いかける
「そうなるな」
大真面目にリュールは頷く
その言葉に、リルとルナは立ち上がる。
「じゃあ、私達四人で武者修行しないとですね!」
「せめて、力を合わせたらあの魔王に届く程度にならないと、ルインの花嫁になれない」
その言葉に、リュールとルディも頷く
「そうだな、私達が強くないと、他の女にルインを取られる」
「それは嫌だし、頑張ろっかな!」
こうして立ち上がった四人は最近発生したというダンジョンに向かい
初めて潜ったというのに、そのダンジョンを踏破した。
☆
そんな、すんごい事が起きてるをルインは知らない。
「別の国ねぇ、何処へ行くの?」
息子の自主性を尊重して、母親はルインに次に行く国を訪ねる
「世界樹が生えてるえr」
「「エルフには会わせない」」
真顔で両親から入国拒否を言い渡された。
「じゃあ、珍しい鉱石が取れるって噂の」
「「ドワーフもダメ」」
真顔で拒否られた。
「じゃあ今行ってる国から少し先の精霊信仰のある国で…」
「「……よし」」
やっと入国許可を取れた。
「それじゃあ僕は旅の支度をするから」
「出て行く時は言いなさいね?お母さんお守り持たせたいから」
そう言って母親は黒々とした石を持って何処かへ行った。
「ねぇ父さん、母さん何持ってたのアレ」
その質問に父親は思い出しながら答えた。
「ああ、アレか?あれは今では数少ない『魔鉱石』だ。父さんもよくは知らないが、魔族の間では『魔鉱石は祈りの石、込められた祈りを叶えるお守り』って言われてるそうだぞ」
「へー、そんな石に母さんが祈りを込めるんだよね」
「そうだな」
「父さん、世界破滅したりしないよね?」
その言葉に、父親は若干目を逸らす
「……多分な」
その言葉にルインは遠い目になり
「父さん、お守り貰うの怖くなってきた」
そう言うルインに父親も遠い目になり
「母さんの事だから手放しても手元に戻って来るぞ」
父親のその言葉に、ルインはただ
「わぁ安心設計」
と言うしかなかった。
そのまま夜になり、父親の振る舞う料理に舌鼓を打ちながらルインは久々に実家で眠った。
そして翌日、再びルインを止めようと引っ付く両親を引き剥がして精霊信仰のある国に向けて、ルインは旅立つ。
首にドス黒い石が付けられたネックレスをかけて