あべこべ世界で性別隠しながら無双したかった 作:バグった魔法使い
「はぁ…はぁ…今日だけでどれだけ魔力消費したんだ…」
転移魔法を使えると言えど、ルインの魔力は無限ではない。
日に日に少しづつ増えているものの、その量は自分の母親からすれば『うーん、今の私を200としたら、今でやっと0.5くらいじゃない?』との事。
比べる相手が相手とは言え、そんじゃそこらの魔法使いよりはルインの魔力量は多い。
それでも転移魔法を乱発すれば、この通り。ほぼガス欠状態だ。
「はぁ…目的地なんて決めずに飛んだけど…ここ何処の洞窟だ…?」
ルインは辺りを見渡す。
洞窟の岩壁には氷が張り付き、洞窟内はひんやりしている。
「基本的に、魔物ならテリトリーに分かりやすい傷とか残すけど…それは見当たらないな」
ペタペタと凍った岩壁を触るも、特に何もなくただひんやりしていた。
「しかし、氷を生み出す魔物なんて早々居ないと思うが…」
洞窟の奥を見れば、少しづつ凍った岩壁から氷柱が生えており、奥へ行くのを拒んでいる。
「うーん、こんな奥に行かせないようにするなんて氷竜でも住んでるのかここは」
そう呟くと、洞窟の奥の方からパキリパキリと氷を踏む音がする。
「主を起こしたか?早く出ないとまずいな」
幸いにも出口はすぐそこな為、さっさと出ようとしたが
バキバキバキッ!
唯一の出口を塞ぐように、氷が急成長して蓋をする。
「っ…と…もう少し手を引っ込めるの遅れたら自分も凍り付けになったかもしれないな」
そう思っている間に、パキリパキリと足音が近づいてくる。
その速度は徐々に上がり、バキバキと氷柱を砕きながら近寄って来ている。
「
ルインは即座に炎の槍を魔法で生成し、構える。
それとほぼ同時に、洞窟の奥から主が現れる
「しんにゅうしゃ…かー!」
元気な声を上げながら、主は獲物を振り下ろす。
「あっぶな!?」
ギリギリの所で避けるも、振り下ろされた獲物は地面にヒビを入れる。
「あれぇ?ニンゲンだぁ…もしかして捧げ物かぁ?」
獲物をひょいと軽く持ち上げて、主はジロジロとルインを見る。
その姿は、まだ幼い少女だった。
青い髪は足元に届く程長く、クリクリした瞳は鮮やかな水色で
その額にはちょこんと小さなツノが2本生えていた。
「お前、知らない匂いがする…すんすん」
その主はルインに近寄るとそのまま匂いを嗅ぐ
「美味そうな匂い、お前、本当に人間か?」
「いや、魔族と人間のハーフ」
「そうなのか!すごいな!」
目をキラキラと輝かせてルインを見つめる洞窟の主
「あ、自己紹介がまだだったな!私はセッカ!雪の華って書いて、セッカって読むぞ!」
「僕はルイン、旅してる魔法使いだよ」
「魔法使いなのか!ちょうど良かったぞ」
そう言うとセッカが洞窟の奥へと引っ張る。
「魔法使いのお前に、どーしてもやって欲しい事がある!」
そう言ってセッカはグイグイとルインを引っ張りながら床を滑る。
「うわっ…と…」
セッカに引っ張られながらルインは何とかコケないようにバランスを取る
「ん?慣れないか?これはなー、慣れると楽なんだぞ!歩いたり走ったりするよりもずっと早いし、何より疲れないからな!」
そう言ってセッカはニッと笑う
そのまま引っ張られ続け、洞窟の最奥に辿り着いたルインは、最奥に鎮座している物を見て驚く。
最奥に鎮座していたのは、巨大な氷の塊だった。
「お前にやって欲しいのはこの氷を溶かす事だ。私じゃ溶かさないし、叩いても壊れないからな!」
「これを溶かすのか…」
巨大な氷の塊を見上げ、若干引きながら、ルインはガス欠気味な魔力を練り上げて、魔法を唱える
「『暗い暗い、地の底に眠る炎よ。我が力を喰らいて今一度、その炎の一端をお貸し頂く《
ズキリと魔力を絞り出し過ぎて頭が痛むが、何とか抑える。
そして手から溢れた小さな黒い炎が、巨大な氷の塊に触れる。
黒い炎は即座に燃え上がり、巨大な氷の塊を溶かし尽くす
「お、おお!?なんか凄い炎で溶けてるー!」
「く…ぉ…ぁ」
魔力を絞り出し過ぎたルインはその場で倒れる
霞む視界の中でルインが見たのは、燃え盛る黒い炎とそれを見て嬉しそうにはしゃぐセッカの姿だった。