ソードアートオンライン~過去からの転生者~   作:ヴトガルド

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間が開いてしまい申し訳ありません。
25層後編となります。


クォーター・ポイント 後編

当初、血盟騎士団が指揮するはずだった25ボス戦は異例となる血盟騎士団、アインクラッド解放隊の2つのギルドがそれぞれを指揮する形となった。

 

部隊編成時、当初の予定では血盟騎士団が2レイド共に指揮する予定だったが、パーティメンバーの1人がPKされてしまうという非常事態が生じたのだ。

目撃者の話からPKを行ったであろう人物はPoHとジョニー、そしてモルテであろうと推測される。

 

何故最前線に居たのか、何故血盟騎士団のメンバーが1人になった所を狙えたのか等、疑問は多く残るが、結果として血盟騎士団のみの構成のパーティは1パーティ、そして5人の血盟騎士団のパーティにはキリトを加えることになり、レイドの指揮の半分をアインクラッド解放隊へと委ねる事になったのだ。

 

 

そもそもにして血盟騎士団、アインクラッド解放隊、そして聖竜連合がローテーションで戦陣指揮を取っていたのは2パーティ以上の参加が可能だったからだ。

今回も血盟騎士団が戦闘メンバーを補充すればそうなった筈だが珍しく団長であるヒースクリフがメンバー補充に反対した。

安全マージンの取れていないプレーヤーをボス戦に入れるのならば指揮権を1レイド分で良いとまで言い放つ程の強硬姿勢を見せ、結果、アインクラッド解放隊が片側のレイドの指揮権を手にするに至った。

 

第一レイド

血盟騎士団二部隊とキリト

御庭番衆

風林火山

聖竜連合二部隊

エギル隊

小パーティ混合部隊

 

第二レイド

アインクラッド解放隊五部隊

アインクラッド解放隊小パーティ混合部隊

聖竜連合

小パーティ混合部隊一部隊

 

という2つのフルレイドが今ボス部屋に突入していた。

そして時間は現在へと進む。

 

 

「それぞれの隊のタンク部隊は1分、戦線を維持してください!アタッカー部隊はそれぞれ背面からアタック!但し、深追いは厳禁です!」

 

 

現在、2つのレイドの内、血盟騎士団が率いる第一レイドが戦線を維持している。

現在、25層フロアボス“ザ・アル・メイサ・メルクーリ”は一段目を黄色に染めた所で、偵察戦同様の猛攻が始まっていた。

 

安全マージンを取っている純タンクビルドのプレーヤーですら攻撃を受け続ければ恐らく三分保たずにそのHPを全損してしまうだろう。

 

「タンク隊はローテーション重視、アタッカー隊は全力ソードスキル一本でスイッチしてください!」

 

アスナの指示に従い第一レイド隊は戦闘をしていく。

現在、一本目のバーが間もなく消えるところだ。 

 

「ユキナ!コタロー!俺に続け!」

 

即座に敵に肉薄し、過去、そして現在も使用し続けている技を撃ち込む。

 

御庭番式小太刀二刀流

“回転剣舞・六連”

 

黒き光を放つ一瞬六斬の斬撃が巨龍人の背中を深く斬り裂き、斬撃が終わるか終わらないかでコタローが追撃を放つ。

 

 

短剣ソードスキル

“ファッドエッジ”

 

そして更に御庭番衆最高の攻撃力を誇るユキナがソードスキルを放った。

 

雪霞狼固有ソードスキル上位技

“雪霞繚乱ーセイクリッド・ハウリング”

 

 

重槍に分類される雪霞狼による刃と柄を使った連撃は一撃あたりの威力こそ重槍にしては低いが20もの連撃で一気に巨龍人のライフを削り取る。

 

「パターン変わります!注意してください!」

 

一気にHPの減った巨龍人は一段目のバーを使い切り、二段目も4分の1が消失していた。

アスナのレイド全体に届いたであろう鋭い叫びが響き、全員が身構える。

……しかし、身構えてい第一レイド隊が見たのは急に視界から消えた巨龍人と数名のみが反応した声だった。

 

「後方だ!」

 

「第二レイド隊!そちらに飛んだぞ!」

 

巨龍人は一息に20メートル近くを跳び越え、後方に待機していた第二レイド隊の最後尾に降り立ったのだ。

 

「ガードや!すぐに振り向くんや!!」

 

第二レイド隊指揮官であるキバオウの叫びとほぼ同時に振り向いた第二レイド隊だったが、最後尾に位置していたアインクラッド解放隊のマージン不足の人間で組まれたパーティは反応が遅れ、無防備な背中に大剣と槍の連続攻撃を受ける。

 

三発目の攻撃を受けた所でどうにか他の隊が間に入ったがそれと同時に6つのポリゴンが砕ける音が鳴り響いた。

 

「嘘や……ソードスキルでも無い通常攻撃やで!?……各隊防御に専念や!ワイらA部隊がアタックしたる!!」

 

どうにか形だけでも立て直した第二レイド隊を見て第一レイド隊は速やかに回復ポーションを飲み、レイド間でのスイッチに備える。

巨龍人は細かく跳びながら第二レイド隊を翻弄し、まとまったダメージこそ与えられてはいないが、流石にボス攻略戦の経験が高いアインクラッド解放隊は互いにフォローをしながらどうにか対応していく。

 

「コーバッツ!ハルバートで奴の額の宝石をぶち割ったれ!!」

 

「はっ!」

 

コーバッツと呼ばれたプレイヤーはハルバートと呼ばれる重槍を構え、その槍に赤い光を灯して巨龍人を狙い撃った。

跳躍し、コーバッツのそばに着地した巨龍人の額に的確にソードスキルがたたき込まれる。

 

甲高い破砕音と共に宝石が砕け散り巨龍人の全身がひび割れる。

それと同時にコーバッツに青い光を纏った大剣が襲いかかった。

 

瞬時に全身を丸めたコーバッツは一気に吹き飛び、第一レイド隊へと突っ込む。

 

「無事か!?これを飲め!」

 

「あ、あり得ない……。」

 

一撃でHPを赤に染めたコーバッツはそう呟きながらキリトの手からハイポーションを引ったくり一気に飲み干す。

 

「キバオウ!コーバッツは無事だ!HPが回復するまではこちらにいさせるぞ!」

 

アオシが叫ぶとキバオウからは一声返事が有るのみで再度巨龍人へとアタックしている。

 

ここまでに与えたダメージで巨龍人のHPは遂に二段目が消えようとしていたが、二段目が黄色に変わった所から……いや、正確には額にあった宝石を破壊された所から使い始めたソードスキルの威力は、今までのローテーションではこちらのHPが半分を下回る事が起き始める程強力だった。

 

「くっ!A~C隊は後退や!D~F隊は前進!奴を跳ばせるなや!」

 

キバオウは後退部隊と共に後退すると回復ポーションを一気に飲んでいく。

そこに第一レイド隊の指揮官であるアスナが近づいていく。

 

「キバオウさん。此方は全員全快しました。そろそろレイド間スイッチしましょう。」

 

「まだワイらはいけるわ!あんたらは黙って待機しときや!もう一段位スイッチ無しでもいけるわい!」

 

「でも……いえ、分かりました。ですが危険と判断したら割り込みますのでそのつもりで居て下さい。」

 

「わぁーとるわ!……G隊、隙を見つつソードスキル一本や!交互に放ちぃや!!」

 

G隊のメンバーのソードスキルが全て撃ち終わると同時に巨龍人のHPは一段消え、再度一際大きな咆哮がフロアを包んだ。

 

巨龍人はその背から翼を生やし、飛翔すると眩い閃光がD~F隊を包み込む。

 

雷属性のブレス攻撃だ。事前にアルゴの情報から予測を立て、対策は各自しっかりと取ってはいるが、高レベルのブレス攻撃を完全に防ぐ手段は無い。

 

頭上から奇襲のような形でブレス攻撃を受けた18人のうち4人が麻痺に、3人が一時停止へと追いやられ、更に追撃の獄炎のブレス攻撃が襲いかかる。

 

「ヒール隊!ヒール!」

 

キバオウの声掛けと同時に18人のプレイヤーが一斉に回復結晶を使用し、攻撃を受けた18人を回復していく。

 

結果、獄炎のブレスで吹き飛びはしたものの、全員がHP全損まではいかなかった。

 

「D~F隊は後退や!A~C隊、それにG隊は奴を飛ばせるんやないで!」

 

着地した巨龍人を全員が取り囲み、一斉に足へと剣や槍、斧を突き刺していく。

更に他の装備へと変更したプレイヤーから順にソードスキルを撃ち込んでいく。

 

色とりどりのソードスキルが飛び交う中、一際大きな咆哮と共に反撃の獄炎のブレスが正面にいたB隊へと襲いかかった。 

至近距離から放たれた獄炎は正面にいたB隊を吹き飛ばし、パーティ内にいたマージン不足のプレーヤー2人をポリゴン片へと変え、更に両側面に居たパーティを大剣と槍を使って吹き飛ばす。

 

「第一レイド隊!第二レイド隊とスイッチ!獄炎のブレスはダメが高いから回避を最優先に!挙動見逃さないで!」

 

背面に残るキバオウは憎々しい表情を浮かべたが素直に後退し第二レイド隊を集結させて回復作業に取りかかった。

 

「ユキナ、さっきの技は使うな。あれは隙が大きすぎる。」

 

「……了解しました。……アオシさん、ブレスに対しては何か対策は有りますか?」

 

「現状ではブレス一撃目前には咆哮、更に胸部肥大だ。回避には後方に回ればいいが……時間的な余裕は無い。挙動には細心の注意を払え。」

 

「A~D隊、ボスを取り囲んでください!」

 

アスナの号令と共に一斉に各隊が取り囲み、隙の少ないソードスキルを叩き込んでいく。

 

唯一例外的にアオシのみが回転剣舞・六連などの高威力ソードスキルを叩き込んでいるがボスのHPはいまだに三本目が半分になっただけである。

 

「……ブレス、来ます!総員回避!」

 

ブレスの種類はわからないまでも範囲の大凡はキバオウ率いる第二レイド隊が実際に受けることで把握できている。

タイミングとしてはシビアではあるものの第一レイド隊のほぼ全員が側面や背後へと素早く回った。

 

「全力ソードスキル一本!硬直短めで!」

 

回避に成功し、ボスに近いメンバーが一挙に色とりどりのソードスキルを放ちHPを削る。

アスナの指示通り硬直の短い単発から2~3撃までのソードスキルではあったが三本目のバーを赤に染める程度にはダメージが通った。

 

しかし、その一瞬の間の時間で巨龍人はその翼を羽ばたかせて空へと舞ってしまう。

更に空中から再度ブレスを吐き出し、後方へと降り立った。

 

「E~H隊!スイッチだ!敵をA~D隊から引き離せ!」

 

もう一つの血盟騎士団のパーティ、ヒースクリフ率いるH隊が先頭に立ち、一気にボスのヘイトを稼ぐとA~D隊は後退し回復ポーションを飲み始める。

 

「キリト君!ここは私達が食い止めよう!君は一気に削りたまえ!」

 

「了解した。フォロー頼む。」

 

キリトは一気に巨龍人へと肉薄し、鮮やかな青の光を纏わせた黒剣を四度振るう。

 

片手直剣スキル

“バーチカル・スクエア”

 

四本の剣撃はボスのHPを視認できる程には削り、残り少しでラスト一本へといくところまで削れた。

 

途端に巨龍人は思い切り跳び、脚に突き刺さった剣や斧、槍を一気に引き抜く。

レイド隊の中央、その上空から雷のブレスが放たれた。

威力こそ高くはないものの、麻痺の追加効果、そして何よりも光の速度に達するその攻撃速度は中央に位置していたプレイヤーに回避の時間を与えず、数名に麻痺者を生み出していた。

 

第二レイド隊と同じように回避に成功したほかのプレイヤーが回復結晶を使用し、一気に態勢を立て直しにかかるのとほぼ同時に麻痺したプレイヤーへと獄炎のブレスが襲いかかる。

放たれたブレスは麻痺者を丸々包み込みHPを一気に削ったがHP全損には至らずギリギリの所で持ちこたえる事が出来た。

 

「第一レイド隊、第二レイド隊と交代!ダメージが少ないものは交代迄の時間を稼いでください!」

 

アスナの指示の元、血盟騎士団2隊と御庭番衆、エギルのパーティが宙より落ちてきた巨龍人へと猛攻を仕掛け、タゲを取り、どうにか残り一本までそのHPを減らした所でキバオウ率いる第二レイド隊へと交代した。

 

「ええか!奴で警戒すべきは獄炎のブレスや!後は空にさえ逃がさなけりゃ何とかなんで!根性魅したれや!」

 

キバオウの激を受け一気に巨龍人の脚を攻撃しまたもや縫いつけていく。

しかし、武器を貫通させているにも関わらず巨龍人は抵抗らしい抵抗を見せなかった。

 

「キバオウ殿!両翼の付け根の中心にあの宝玉が見えたぞ!私に再度攻撃許可を!」

 

「よっしゃ!やったれや、コーバッツ!」

 

丸まる巨龍人の翼の付け根、最初の逆鱗が有った場所へとコーバッツのハルバートが再度赤い光を纏って振り下ろされた。

 

 

「待て!三回目は!!」

 

第一レイド隊より叫ばれた声はフロアを破壊するのではないかと思うほどの咆哮を上げる巨龍人、ザ・アル・メイサ・メルクーリの変異によってかき消された。

地に降り立っていた脚が消え、まるで二頭の蛇龍が尻尾を絡ませているかのような姿へと変わり、二頭の背についた翼で常時飛行している。

 

この世界、SAOの中には基本的には剣のみで戦う世界だ。

確かに中には投擲武器も存在するが、精々牽制程度のダメージのものが殆どで、総じてダメージ量はメインとなる武器には劣る。

レイド内唯一のメイン武器がチャクラムのナーザでさえ、一撃の威力としては短剣の単発ソードスキル並みの威力しかないのだ。

 

「……なんやねん!あんなんチートやないか!!あないな位置に居続ける敵なんぞ、どう攻撃せえっちゅうんや!」

 

地面から約4メートル。

剣や斧、短剣等では攻撃が通常届かないであろう位置に居続ける双頭の蛇龍にキバオウが悪態を付く。

確かに残りのHPはラスト一本の三割程度。

もし蛇龍が地上に居るならば慎重に事を運んでも10分~15分も有れば削り切れただろう。

 

「……先ずは様子見や。投擲武器持ちは奴にぶちかましたれ!」

 

キバオウの号令と共に第二レイド隊の投擲武器持ちプレイヤー12人がナイフを放った。

特に防ぐ様子もない蛇龍はその12本のナイフを受けてライフを数ドット程度減らす。

 

「……嫌な予感がする。アスナ、一度第二レイド隊を後退させた方が良いのではないか?」

 

「でも……現状では後退する理由が無いわ。彼がそんな事を了承するとは思えない。」

 

「私もアオシ君の意見に賛成だ。君もボス情報は覚えているだろう?恐らくはあの状態がそうなのだろう。マージン不足のプレイヤーが多く居る第二レイド隊では、下手をすれば多数の死者が出る可能性がアル。」

 

「団長がそう言うなら……キバオウさん!いやな予感がします!一度後退してください!」

 

アスナは声を張り上げ、キバオウへと呼びかけた。

距離もあり、その上、間には沢山のプレイヤーの居る現状ではそうする以外には連絡の取りようもない。

 

「だぁほ!大方ボスの残りHP見てLAでも欲しいんやろ!後退なんかするかい!第二レイド隊!奴は動かへん!突進系ソードスキルでトドメ刺したれや!」

 

キバオウの号令と共に第二レイド隊のアインクラッド解放隊が一斉に雄叫びを上げて突っ込んでいく。

確かに通れば蛇龍のHPは0になるだろう。

しかし、本来ボス戦において残りHPの少なさはそのまま危険度へと繋がる。

キバオウとてそれを知らないわけではない。

 

そう。本来ならばボス戦では敵が動かないなど有り得ないのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ほんの数瞬だった。それでアインクラッド解放隊の攻撃を仕掛けたプレイヤー全員がそのまま消えた。

なにが起きたのかは第一レイド隊、攻撃を仕掛けなかったプレイヤー、ほんの1パーティ残ったアインクラッド解放隊のメンバーにしか解らない。

消えてしまったプレイヤー達は皆、一度に呑み込まれたのだ。

まるで二頭の顎が壁のように広がり突進したプレイヤー達全員の身体を一呑み……いや、フロアボスの床の表面すらも消えている事から呑み込んだのではなく消し去ったのだろう。

 

《三度の怒りに触れし者は刹那の内に消滅の顎をその身に受けるだろう》

 

 

情報には確かにそう書いてはあった。しかし、一撃死扱いの攻撃などこの世界にあるとは考えない。……いや、考えたくなかったのだ。

その甘えの代償は余りにも大きかった。

 

「て、撤退や!転移!ローウェル!」

 

キバオウを台頭に戦意を喪失したプレイヤー達は一挙に転移結晶を使用し始める。指揮官が真っ先に消えたせいで残る聖龍連合のパーティが孤立して残されてしまうという最悪の事態を産み出してしまった。

 

第一レイド隊には残りのHPは見えない。しかし、誰が指示を出すでもなく、双頭の蛇龍に飛び出す影が何人も居た。

 

いや、彼らは第二レイド隊の壊滅的崩壊を見た瞬間から既に動いていたのだろう。

 

光のような速度で放たれた二本の矢……いや、プレイヤーは第二レイド隊最後のパーティである聖龍連合……リンド隊に向けられていた顎を鼻先から串刺しにした。

 

光の矢となったプレイヤー、アスナとユキナはそれぞれキリト、エギルに撃ち出されるように宙高く舞い、突進系ソードスキル“エアロ・ペネトレイター”と“アロー・ストライク”を放ったのだ。

 

更に下からは1コンマ速くアオシがこの世界に来てから編み出した、跳躍しながら二刀を身体ごと回転させて斬り抜ける技、新御庭番式二刀流“回転剣舞・飛龍”を放っている。

 

更に投げ出した直後にキリトもまた片手剣ソードスキル“ソニック・リープ”を放つことでザ・アル・メイサ・メルクーリの注意を宙から逸らしていたのだ。

 

無論タイミングがズレたら……いや、思惑が外れればどちらか2人は確実に消滅していただろう。

 

「第一レイド隊、アスナ君とユキナ君に続きたまえ!彼女達が口を封じている間に倒しきるのだ!」

 

雄叫びを上げて各々が突進系ソードスキルを放つ。

4人の攻撃では0.5割も削れなかった双頭の蛇龍では有ったが30回にも及ぶソードスキルの嵐には耐えきれずその身をポリゴン片へと変えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ……はぁ……はぁ……。何やねん……なんでわいらアインクラッド解放隊しか転移してこないんや……。」

 

 

一方その頃、街へと撤退したキバオウ達は他のレイド隊、第一、第二の生き残りが現れない事に不安と焦りを覚えていた。

 

「全滅……したんか……?」

 

「キバさん、様子見に行きましょうよ。まだ生き残りが居るかも……。」

 

「そんならまずは回復アイテムの補充や……。わいらアインクラッド解放隊はもうここにいる人数しかおらへん……無茶は出来ん……。」

 

キバオウ達がアイテムを買い揃え、町を出て迷宮区へと向かおうとした時だった。

街中が一斉に湧き上がり、そこかしこで歓声が上がる。

それはフロアボス討伐、そして26層の解放を意味していた。

 

「キ、キバさん……これって……。」

 

「倒した……ちゅうことやろな……。なら……26層に行って生き残りに詫びなあかんな……。きっともう……大した人数おらへんやろし……。」

 

 

キバオウ達は足取り重く転移門へと向かった。

転移門は程なくしてアクティベートされ、一気に多数のプレイヤーが雪崩込んでいった。

 

 

そこでキバオウが見た物は自分達アインクラッド解放隊を除いた離脱時点での攻略レイド隊の面々だった。

皆に持て囃され、賛辞を受ける攻略組の面々。

よく見れば何名かの顔が見当たらないが相方が笑っているのに死んだわけはないだろう。

 

「(何でや……わいらアインクラッド解放隊かてあの場に居てもええやないか……。

そもそもわいらの犠牲なくしてあのボスは倒せなかったはずや……。

……いや、わいらやないか……。

あいつらや……。

皆気のええ奴らやったのに……。

わいの……わいのせいであいつらは死んでもうたんや……。)」

 

「……キバさん、合流しましょう。俺らにだってあの場に立つ権利くらいは……。」

 

「……あかん。あそこに居てええんは死の恐怖と正面から向き合ったもんだけや。わいらは……出直さな。死んでったあいつらに顔向け出来るように……もう一度ボスと立ち向かえるように……。」

 

キバオウがそう言いその場を離れていく。他のメンバーもまた戸惑いながらもその後を着いていった。

人々の喧騒を抜け、転移門へと近付くキバオウ達は転移門の前に立っていた2人の男に気付いた。

 

「……なんや。あざ笑いにでも来たんか?……わいらアインクラッド解放隊は第一線を退かせて貰うで。そもそも今の人数じゃボス攻略戦も大して戦えんのやからな。」

 

「……そうか。そう決めたと言うのならば俺からは何も言うまい。」

 

答えたのは2人の男の1人、白のコートに黒の服を着た長身の少年。

闇夜に紛れてPKを討伐して来た忍として名を馳せる、通称“闇の忍”アオシだった。

 

「一個だけ聞きたいことがあったわ。……わいらは……いや、死んでしもうたALSの皆は討伐の役に立ったんか……?」

 

「ああ。彼等が居なければきっと奴には勝てなかったよ。……キバオウ、本当に攻略組を抜けるのか?」

 

もう1人の男。全身黒ずくめの装束にSAO最強の噂が流れた事で新たについた二つ名を持つ少年。“黒の剣士”キリトはそう答えると逆にキバオウへと問い掛けた。

 

「さよか。……わいらは第一線を退くゆうたけどなぁ、別に攻略を諦めるなんて一言もゆっとらんで。第一層にはまだまだくすぶっとる奴らがおんねん。そいつら鍛えて最大最強のギルドにして戻ったる!みとけ!……せやから……勝手に死ぬんやないで!」

 

鼻息荒くまくしたてたキバオウは、そのまま転移門をくぐり抜け、始まりの街へと戻っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さて……キリト、悪いが一つ依頼を頼まれてもらえないか?」

 

「内容にもよるな。まぁアオシの事だからそんなに変な内容じゃ無いだろうとは思うけど……。」

 

「今、うちのヤヒコとシリカが5層程下の層で中層プレイヤーの育成をしているのだが……そのうちの一つのギルドで槍使いが盾持ち片手剣に転向しようとしているそうでな。ヤヒコには荷が勝ちすぎているようなのだ。」

 

「……それ、俺にも充分荷が勝ちすぎていないか?そもそもアオシが行くんじゃ無かったのか?それ……。」

 

「アインクラッド解放隊の攻略組脱退についてギルド間で協議する必要がある。2日ほどで合流する予定だがな。悪いが頼む。」

 

「まぁアオシには結構世話になってるしな。……上手くできるかは保証しないけどさ。所でその中層プレイヤーの名前は?」

 

「あぁ……すまないな。月夜の黒猫団というギルドだ。転向するプレイヤーの名前は聞いていないがヤヒコに伝えておこう。」

 

「月夜の黒猫団ね……。了解。」

 

 

 




次話は月夜の黒猫団編となります。
……あれは何層になるんでしょうね……。
三話構成にする予定ですので次話はほのぼのした感じに書けたらなと思っています。
結末は変えようか変えまいか悩んでいますが……。

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