茅場晶彦がこのゲームをデスゲームとしスタートさせてから1ヶ月、死者は1000人程になっていた。
一度、始まりの街に行ってみたがコペルが頑張っているようで、模擬戦を行っている者や鍛冶屋、調合屋などの生産職を始めて頑張っているプレイヤーがそこそこ見受けられた。
しかし、攻略そのものはいまだに第一層をクリア出来ないでいる。
俺は今、青髪の青年が率いているパーティーに入れてもらっている。
以前迷宮区にソロで潜ったときは、ほんの10体のモンスターを倒しただけで装備していた曲刀の耐久値が危うくなってしまった。
原因は圧倒的火力不足による攻撃回数の増加だろう。
いまだにソードスキルを使用せず、通常攻撃のみで戦っているのだが、今のレベル、11までのステータスの八割を敏捷力に振っているのも原因だと思われる。
剣速自体はかなり上がったが初期のソードスキル程の剣速にすら至っていないのだ。
稀に威力が二倍程になるクリティカルは出ることもあるが、それを毎回やるには曲刀のブレが大きく難しい。またクリティカルしても一割程度しか削れない。
それ故に今はこのパーティに参加させてもらっている。火力不足を補いつつ攻略を行っている人間の人となりを観察し、更に確認したいこともあるのだ。
このパーティに参加しているメンバーは、ほとんどが最初のうちから組んでいたそうだが、俺の他にもう一人、最近参加したメンバーが居る。名前はロキというメイス使いだが正直俺には胡散臭さを感じる。
特に問題ある行動をとっている訳ではないがどこか裏があるように感じるのだ。
「アオシさん、とりあえず今日はボス部屋も見つけたことだし、探索を終わりにしようと思うんだけど構わないかな?」
爽やかな笑顔で話し掛けてきた青髪の青年、ディアベルはこちらに意見を求めてきている。しかしその表情からは出来ればボスを一目見ておきたいと読み取れた。
恐らく、攻撃力不足な俺を一応気遣いつつも許可が欲しいのだろう。
「偵察戦まで行っても構わん。攻撃力はともかく防御に関しては支障ないのでな。」
そう言うとディアベルは一瞬嬉しそうな顔をしたが、すぐに表情を引き締め俺に念を押した。俺が頷くとボス部屋の扉に手をかけそのまま開ける。
ボス部屋の内部は、奥行き100メートル、幅も同じくらいは有りそうな大部屋だった。
内部に居たボスはイルファング・ザ・コボルトロードと取り巻きのルインセンチネル・トルーパーが三匹。
俺はトールバーナで受けられるクエストである程度の情報を得られていた為、ボスの名前や武器、そこから放たれるソードスキルの種類も知っている。
唯一、クエスト情報で不明な点があり、体力が減ると行うという武器の交換の種類だけは分からなかったのだ。
出来ればそれを確認したくてこのパーティに参加し、偵察戦へと誘導したのだが……。
「よし、とりあえず装備とトルーパーの数は確認出来た!囲まれないように全力で警戒しつつ後退!」
確認する時間もなくディアベルの号令が響き、パーティメンバーは後退を始める。
アオシは本来の目的である副武装の確認を行いたかったが、ディアベルの指示に背くのは戦線の混乱を招くだろうと考え、歯噛みしつつもパーティの最後尾について後退した。
迷宮区を出た後、ディアベルは先程まで俺が把握していた情報を既に入手していたことを明かし、更に俺が知りたかった副武装の情報も教えてくれた。
コボルト王の副武装はタワールという武器で、ソードスキルも威力は増すが大振りになるため避けやすいらしい。
俺が何故それを知っているのか聞くと、情報屋から買ったと言い放ち、明日の夕方トールバーナの街で第1回攻略会議を開く旨を伝えられてフィールドで分かれた。
俺はディアベルからの情報に対して若干の違和感を覚えたが、まずは自分の火力不足を補う方が先決と考え、鍛冶屋に向かう。
新調したばかりの曲刀、アイアンカトラスを強化するためだ。ここ二週間で手には入った素材をすべて使い+6の最大値に上げ、火力不足を補うために鋭さを4に、丈夫さを2に強化する。
恐らくこれならば迷宮区でも5~6回の攻撃で済むだろう。
武器の出来に満足し、その日は宿屋に戻る。
次の日、俺は迷宮区の入り口近くの場所で新しい曲刀アイアンカトラス+6を振るっていた。
思っていたよりも前に使っていたブロンズカトラス+4に比べ威力が高く、またブレも若干収まり、クリティカルも10回に1回は出るようになった。
予想よりも少ない4~5回の攻撃で倒せることに満足しつつ、迷宮区を出ようと思ったとき、奥からプレイヤーが2人出てきた。
カーソルの位置がおかしく、1人は倒れているように見える。
やがて目視できる位置に来るとそのプレイヤーは見知った顔の剣士、キリトだった。
どうやら他のプレイヤーを布に乗せて運んで居るようだったので手を貸し、近場のフィールドの安全エリアへと運んだ。
「久しぶりだな。アオシに最後にあったのは一週間位前だったかな?助かったよ。」
「礼はいらん。それよりも一体何があった?」
キリトいわく今日はボス部屋捜索のために迷宮区にマッピングに来て19階を探索しているところ、このプレイヤーに会ったらしい。
最初見たときは凄まじい完成度の初級ソードスキル“リニアー”を見て相当な手練れのβテスターだと思ったらしいが、その割に戦術が稚拙でオーバーキルしていることが気になり声を掛けたらしい。
そのプレイヤーの話では4日近く潜りっぱなしだったらしく、結果キルトと話している最中に気を失い、どうにか運んで来たらしい。
「相変わらずのお人好しだな。」
「そんなことはないさ。実際アオシも手伝ってくれたじゃないか。」
「……まぁいい。それよりもボス部屋ならば昨日ディアベル率いるパーティが発見した。今日の夕方、トールバーナの広場で攻略会議を開くそうだ。キリトも参加するだろう?」
俺の言葉に若干驚きを見せるもキリトは参加すると答えた。
キリトは倒れたプレイヤーが目を覚ますまで、この場に残るそうなので俺は再度迷宮区に潜り夕方までにギリギリでどうにかレベルを12に上げ、そのポイントを筋力に振って攻撃力を底上げしてからトールバーナの広場におもむいた。
そこには既に45人もの人が集まっていた。
正直ボス戦には今の人数の半分も来ないのでは……と思っていたため内心驚く。
やがてディアベルが噴水の前に立ち、昨日手に入れた情報を皆に伝える。
既に偵察戦もこなし、昨日から出回っているアルゴの攻略本(第一層ボス編)を復習しているときにそれは起きた。
トンガリ頭に片手剣、ジャラジャラしたスケイルメイルを装備した男はキバオウと名乗り、この場に居るであろうβテスターに謝罪と賠償を求めていた。
……最も誰も出てくるわけもなく逆にβテスターではない人間に正論で論破されキバオウはすぐに引っ込んだ。
論破したのはエギルという逞しい体系の外国人のような男だった。
ちなみに俺は一言のみキバオウに告げた。
「おまえは残る全ての元テスター達に死ねとでも言う気か?」
と。元テスター達から金もアイテムも全てとるつもりならそれは殺人に近いのだから。
集まる他の人間も正論のみで論破された男に賛同するわけもなく、キバオウは大人しく引っ込んだ。その表情をみる限りでは面白くないと思ってはいるようだが……。
そしてディアベルは6人パーティを組むように指示を出し、俺も前回組んでいたディアベルのパーティに入れてもらおうと思ったが、どうやら既にパーティ上限まで組んでいるようで入ることは出来なかった。
どこか他のパーティーを探すも殆どのプレイヤーがフルパーティを組んでいるようだ。
さて……どうしたものかと思っていると端の方にまだフルパーティになっていない2人組を見つける。
パーティメンバーはキリトと先程キリトと運んだフードケープのプレイヤーだった。
2人とパーティ登録を済ませ、現れた名前に驚いた。
asuna アスナ
キリトと同じくこの世界で昔(幕末)を生き抜けるだろうと思える2人と組めるのはありがたかった。
これならばボス戦の準備は万端だ。アオシは内心でそう思い明日のボス戦をイメージしていた。
作者はキリアスが好きです。
この作品はそうなる予定なのでそのつもりでよろしくお願いします。