ソードアートオンライン~過去からの転生者~   作:ヴトガルド

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※10月1日修正済み


第二層
ビーター


割れんばかりの喝采が湧き上がった。

デスゲームの第一層攻略中のこの2ヶ月間、誰もが一度は思ったであろうクリア不可能なんじゃないかという疑問。

確かにまだ一層だ。しかしクリア出来たという事はいつかはこのゲームそのものもクリア出来るだろうと思う事を、誰も責めたりはするまい。

 

 

 

「なんでだよ!?本来そこで讃えられるはずの人はディアベルさんだろ!?なんでよりにもよってディアベルさんを見殺しにしたそいつが讃えられてるんだ!!」

 

「・・・見殺し・・・?」

 

突如投げかけられた男ー俺の記憶では確かディアベルの仲間のリンドという名前だったはずだーの叫び声にキリトは呟くように疑問を吐き出す。

 

しかしそんなキリトの心情など関係なく罵声は投げかけられ続ける。

 

「そうだろ!?あんたボスのソードスキルを知ってたじゃないか!!それを皆に伝えていたらディアベルさんは死なずに済んだはずだ!!」

 

 

「おれ・・・おれ知ってる!こいつはβテスターだ!他にもいるんだろ!?βの卑怯者共・・・出てこいよ!!」

 

リンドのそばで金切り声を上げた男はキバオウ率いるE隊のメンバーだったと思う。名前はわからないが……。

 

やがて周りにもヒソヒソと話し声がしだした。

 

ソウダ・・・キットLAノタメニ・・・ネズミモグル・・・

 

そんな囁き声がする中、三人のプレイヤーが声を上げた。

 

「待って!β版での情報なら私たち全員が持っていたでしょう!?その上アルゴさんから変更点の可能性だって教えて貰っていた!」

 

「嬢ちゃんの言う通りだろう。実際攻略本の情報は今までも今回も偽りは無い。変更点も懸念されていた部分だしな。」

 

「そもそも彼は警告を発していたと記憶するが……しかも我々3人は救えなかったとは言えディアベル救出に動いていた。動きもしない者に言われる筋合いは無いだろう。」

 

アスナ、エギル、そして俺は正論を駆使して返してみせる。

これでこの場は収まる。……そう考えていた俺は甘かったらしい。

 

『しかしソードスキルを知っていた理由はβ故だろう。なのに攻略戦前には何もいわず、実際にLAを取っている。それは何が何でもLAを取りたかったからだろ。』

 

どこから聞こえたのかはわからないがその言葉は再度キリトに向けられ、徐々に不穏なものを場に含ませる。

 

「今言ったのは誰!?出てきなさい!!」

 

『あんた、いや……あんたらか……随分そいつを庇うな……ひょっとしてあんたらもβなんじゃないか……?』

 

養護する側の信用を落とす気か……。上手い手を使う奴だ。

これはまずいな……。

 

そう思っていると後ろから乾いた笑い声がフロアに響き渡る。

キリトだ。

 

「おいおいお前ら、あんまり懐くなよ。仲間だと思われるだろ?……これだからお人好し共は困る。自分達が利用されているとは全く疑わないんだからな。」

 

キリトはニヒルに笑いながらそう言い放ち、辺りを見渡してからさらに続けた。

 

「大体おまえ等もおまえ等だ。たった1000人、しかも抽選だったβテストに何人本物のMMOプレイヤーが居たと思ってるんだ?ほとんどがレベリングすら知らない素人連中だったよ。それこそ今のあんたらの方が遥かにマシだ。……だが俺は違う。俺は誰よりも上の層に登り、色々なことを知っている。……それこそ情報屋なんかメじゃないくらいにな。」

 

堂々としながら言い放つキリトは更にメニューを出して何かを探している。

そんなキリトに周りは色々な事をつぶやき続けていた。

ベータ、チーター、チート野郎等等・・・やがてそれらは混じり合って一つの言葉に変わる。

 

「ビーター・・・いい響きだな。それ。LAボーナスと共に俺がいただいた!」

 

キリトは漆黒のコートを羽織ると二層に向かい歩き出す。

その姿は日陰の道を歩く隠密に見え、俺は懐かしさと不甲斐なさを感じていた。

少なくともキリトの意図は理解できる。恐らく、βテスターとビギナーの関係を壊したくないのだろう。そのためにわざと挑発し、元βテスターと卑怯なビーターに分けたのだ。

 

 

そしてその行動をとらせた原因の一端には俺も入るのだろう。要は庇ったのだ。

俺達3人を。

 

やがて、アスナに伝言を頼むエギルとそこに頭を掻きながら加わる(意外だが)キバオウの姿が見える。

 

アスナは2人からの伝言を携え、先に行ったキリトを追いかけていった。

 

 

「不甲斐ないな。」

 

 

俺はエギルが隣に来たのも構わずにそうつぶやいていた。

 

「アンタも理解しているようだな。ヤツの狙いを……っと、鼠の奴からか。」

 

エギルは俺の言葉に返事をしつつもメッセージを見てニヤニヤと笑い始める。

 

「おい、ついてこい。鼠からの依頼だ。」

 

エギルは可視化したメッセージ画面を俺に見せると、俺の腕を持ち階段を登り始める。

 

メッセージ内容は……

『キー坊とアーちゃんの会話の情報を売ってくレ。5000コル支払う』

だ。

 

正直、俺にはあまりの興味の無い内容だがエギルはかなり楽しそうだ。

この斧戦士ともパイプを作っておいても損はあるまい。

そう考え、俺は前を歩く斧戦士エギルと歩き出す。

 

 

やがて第二層の入り口に着くと出てすぐの所で2人を見つけた。

俺達は出口の扉に隠し、聞き耳を立てる。

 

2人は切り立った崖で会話をしているようだ。

 

「あなた、ボス戦の時、名前を呼んだでしょう?どこで知ったのよ。私、一度も教えてないんだけど。」

 

「あぁ……そういえばパーティーを組んだのは初なんだったな。……ほら、この辺に自分のもの以外のバーがあるだろ?一応パーティーリーダーは俺だから二つ目のバーが俺のだ。そこに何か書いてあるだろ?」

 

アスナはそれを聞き、そちらを見ようと顔を動かした。しかしそれをキリトが頬に手を当てて抑える。

 

「ほら、顔を動かすとバーも動いちゃうよ。視線だけを向けるんだ。」

 

「ああ……こんな所に書いてあったのね。キ……リ……ト……。キリト……君?」

 

「あぁ……。そうだよ。」

 

2人は数秒見つめ合うと顔色を紅くしてすごい勢いで顔を逸らす。

 

「……俺はそろそろ先に行くな。アスナ、先に行ってる。」

 

「えぇ。すぐに追い付いてみせるわ。」

 

2人の様子を見ていた俺はエギルの腕を引き下がろうとしたが、流石の斧戦士、びくともしそうにない。

そして予想の通りに戻ってきたアスナに見つかってしまった。

 

「エ、エギルさん!?それにアオシ君まで!?い、一体いつから見てたんですか!?」

 

「いや、これは鼠に頼まれて仕方なく……えー……あー……許せ!Hava a heart」

 

そう言いながら階段を駆け出すエギルに追随して俺も走る。

 

「ちょ、エギルさん、アオシ君待って!一体いくらで売るんです!?倍払いますから言っちゃダメー!!」

 

追いかけながらそう言うアスナを見ながら俺はメニューを開き、メッセージを送る。

 

「ちょ、アオシ君!?まさか売ったの!?ねぇ!?ちょっとってば!」

 

「いや、アルゴに口止めに倍払うと言っている旨を伝えただけだ。」

 

ちなみにメッセージを送った所で俺もエギルもアスナに捕まってしまった。

 

「アルゴさんの出す報酬以上払います。だからさっき見たことは忘れなさい!」

 

アスナは、少し涙目ながらも俺の胸ぐらを掴み、凛とした声色でまっすぐこちらを見据えてくる。

 

ちなみにエギルは既にギブアップしたようだ。

 

「ふむ……しかしアルゴはこの額を提示しているが……。」

 

メッセージ内容は破格の5万コル。それを見たアスナは一瞬戸惑うも言葉を発した。

 

「例え分割でも払います!だから言っちゃダメー!!!」

 

とりあえず俺はアルゴに無理筋だと伝える。……アスナの要請(脅迫?)でメニューを可視化した上でだが……。

 

そうして返ってきたメッセージ内容は

 

 

《そうカ、そこまで価値のある会話だったとは思わなかったヨ。情報はキー坊から買うことにするかナ。アー坊、協力ありがとウ。》

 

 

それを見たアスナはガクリとその場でへたり込んだ。

……なんとなくこの場に居ると面倒ごとに巻き込まれる。

そう直感した俺はこの場を離れようと一歩動いた瞬間、閃光のような速度で腕をアスナに捕まれてしまった。

 

ちなみにエギルはその間に逃げたらしい。

 

「ふ、ふふふ……アオシ君、あなた確か私の情報をアルゴさんから買ってたわよね?マナー違反をしたんだから私に付き合いなさい!アルゴさんかキリト君、どちらかを捕まえて直接口止めするわよ!!」

 

「いや、しかし……」

 

そこで俺な言葉は途切れた。アスナが良い笑顔だ。しかもいつの間にか目の前に細剣が突きつけられている。

 

俺は溜め息と共にうなずく以外に方法は残されていなかった。




次話少し原作からはずれます。

お気に入り件数増えていて嬉しいです。
ありがとうございます。

※9月5日修正済
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