大晦日まで残りわずか数日だというこの日、コナンは車に乗って長野まで向かっていた。
運転席では無精ひげを生やし、天然パーマ気味の髪を雑に後ろで縛った隻眼の男、大和勘助警部が運転している。
「急に呼び出して悪いな」
「別に構いませんよ。一人暮らしなんてしてると、この時期になってもやることなんて特にありませんから」
大和警部の謝罪に対して、窓際で頬杖を着いたコナンはぶっきらぼうに答えた。
事の始まりはコナンの新しい住居に大和警部が突然訪問してきたことから始まる。なんでも長野の大学で不審な火災事件が発生したから捜査していたらしい。そこへ、長野県警の元にもコナンが隣の県である愛知へ潜伏しているという話が届いたらしく、急遽知恵を借りたいと思い立ったとのことだった。
「東京のあのずくなしのところまで迎えにいくとなりゃ骨が折れるが、隣の県に迎えに行くくらいなら朝飯前よ」
「いんですか、警部ともあろう方が捜査で民間人を頼りにするなんてことがあって」
「なぁに、前にもやったんだ。それにお前さんとは久しぶりだしな、顔が見たかったってのもある……それより気になるのは」
運転をしているため視線を外すわけにはいかなかったが、大和警部はチラリと後部座席を気にする素振りだけ顔でする。
何が言いたいのかはコナンもすぐに分かっている。後部座席には大和警部からすれば予想外の"お荷物"が二つも乗っているのだから。
「私たちまでお邪魔しちゃってすみません……」
「どうしても川中島の戦いの聖地を見に行きたくて……」
乗っているお荷物とは、二乃と三玖のことであった。
話は少し前まで遡る。
師走のこの時期、町には言い表せない独特な雰囲気が漂っているのは誰もが感じていることだろう。
おめでたい雰囲気に浮かれたいような、翌年に積み残しをしたくないような焦燥感や、そんな二つの気持ちが入り混じった感覚だ。
中野家も例に漏れず、年の瀬のそんな熱に浮かされてか、キッチンでは二乃が鼻歌交じりにおせちを作っていた。
「五人分を一人でって、毎年のことだけど大変ねぇ……」
中野家が一般家庭がおせちを作り始めるのは一般家庭より一日、二日早いのだ。
その上、例年であれば調理担当が二乃一人に集中してしまうため、食材の買い出しなどは体力のある四葉や、おせちを最も楽しみにしている五月が出かけるのだが、その二人が風邪でダウンしているのであった。
というのも先日、クリスマスイブの日に風太郎を迎えに行った時に五つ子全員で冬の川へ飛び込んでしまい、二人は風邪をひいてしまったのだった。
やむを得ず、残りのメンツで新年の準備をしているのだが、実際のところ一花は看病に駆り出されてしまっており、二乃と三玖の二人体制になっていた。
三玖は一部の食材が足りていなかったため買い出しに出ていた。
そろそろ帰ってくる頃だろうと考えていた時、勢いよく玄関の戸が開かれる音と駆けこんでくる音がしてきた。
廊下を走ってきたのは三玖であった。
ほんの数メートルだが急なダッシュで息を切らし始めている三玖。
「た、大変……コナンが、コナンのところにヤクザみたいな人が……!」
「ヤ、ヤクザ!?」
二乃は顔色を変えるとコンロの火を止めた。
続けて三玖の横をすり抜けると自分が玄関へと向かう。三玖の言う人物がどんなやつか一目見ておこうかと思っているのだ。
靴に履き替えてドアノブに手をかけた時だった。
逆に外側からノックがされた。
「ひっ……!」
思わず一歩退いた。
考えても見ればこのアパートの壁は薄い。そして隣の部屋の玄関の距離だって近いのだ。先ほどの三玖の飛び込みで向こうも自分が見られたことに気が付いたのだろう。
こちらに来た理由は何か。見られたことがまずかったのか。口止めをするつもりか。もしかして押し込んでくるつもりか。様々な危険の可能性が脳内を駆け巡った。
部屋の奥には姉妹全員がいる。しかも体力に自信がある四葉に至っては風邪をひいてしまっているから一人逃げてもらって助けを呼んでもらうことも難しい。
どうする。開けるべきか、鍵を閉めて別の場所から逃げ出すか。
直後、二乃の考えを妨げるように扉を二度、ドンドンと強い音で叩かれる。
『おい! いるのは分かってんだ! 大人しく出てきやがれ!』
聞こえてくるのは男性の野太い怒鳴り声だった。
奥では三玖がカーテンの隙間から外の様子を伺っていたが、やはり強面の男のようだった。
(どうしよう! どうしよう! どうしよう!?)
『そんな言い方じゃ出てくるもんも出てこないですよ、大和警部』
(えっ……?)
万事休すかと諦めかけていた時、扉の奥からコナンの声がした。
『しかしよう坊主、警察の顔見て一目散に逃げたのはあっちだぜ』
(警察……?)
『ここに住んでる子達は、僕も顔見知りの普通の女の子たちですよ。きっと彼女が逃げたのは、大和警部が警察だからじゃなくて、人相が悪かったからじゃないですかね』
というわけで、とコナンが言った後、三度トビラがノックされた。今度は過去二回のものよりも優しい音だった。
二乃はそのノックに応じてゆっくりと扉を開けた。外にはコナンと男性、おそらく大和警部と呼ばれた人が立っていた。
およそ警察の人間とは思えず、初めに三玖が言っていた通りヤクザだと紹介された方が納得が行きそうな見た目であった。
その大和警部と目があった。
「あんただよな。さっき俺の顔を見るなり血相変えて家に飛び込んだ嬢ちゃんは」
「あ、いえ私じゃ」
「違いますよ大和警部。さっき部屋へ飛び込んだのは三女の三玖ですよ」
「三女だぁ?」
振り返った大和警部に、コナンが説明をする。もはや五つ子と初対面する人にはお決まりの五つ子説明だ。
話の途中でそれまで様子を見ていた三玖も廊下から出てきた。
「驚いたな。ほんとにそっくりじゃねえか」
「まあ、私たちを見分けられる人なんてほんの一握りですから……それで、刑事さんはコナンのところに何の用だったんですか?」
質問したのは三玖だ。
「ああ、うちのシマ……長野市の大学で火事があってな。ちょっと隣の坊主に協力してもらいにきたんだよ」
「そうでしたか」
話を聞いた限りだとコナンはこれから長野へと出かけるのだろう。隣の件とはいえ結構な遠出だ。
「コナン君はいつごろ返ってくるつもりなの?」
「さあ、ちょっと確認してくるだけだから日帰りか、遅くとも明日くらいじゃねえかな」
二乃はそう、と短く返事をした。気にしていたのは年越しをコナンも交えて姉妹達と一緒に過ごす予定だったので、おせちの量に変更が出ないかだったかが、問題なさそうだ。
「それ、私も行けませんか?」
「はぁ?」
同行を申し出たのは三玖であった。いったいどういうつもりなのか。
「まあ別に構わないっちゃ構わないが……現場には入れられないぞ?」
「大丈夫です」
大和警部の念押しにも問題ないと三玖は頷く。
事件が関係ないとすると、いったい何が目的で三玖はついて行きたいなどと言い出したのか先ほどまでの会話を振り返ると、一つ思い当たることがあった。
思わず二乃は呆れ顔になって三玖を見た。
「あんた……警察の人を観光ガイドにするつもり……?」
「長野市は川中島の戦いになった場所……つまり聖地……!」
フンッ、と鼻息を荒くして言う三玖に対して、残る三人も二乃と同じく呆れながらも三玖は同行することになった。ついでに、三玖が一人でフラフラしないよう二乃までお目付け役に任命されてしまった。
そんな、奇妙な一行での行脚となってしまい、今度こそはミスを犯すまいと状況を整理しているコナンの横では、三玖と大和警部が全く別の話で盛り上がっていた。
「それでね、数の上では絶対勝てないはずだったところを、信長は自分が先陣を切って今川陣営に突撃していった、義元の首を跳ねたんだよ……!」
「ああ、織田信長が一気に名を世に轟かせた戦だな」
どうやら今は桶狭間の戦いで盛り上がっているらしい。
元々三玖は戦国武将好きで、大和警部も歴史の知識はかなり深くもっていることからさっきから二人だけの世界が展開されている。
座席の位置は前にコナンと大和警部、後部座席は運転席側に三玖と反対に二乃という形で座っており、三玖はずっと後ろから大和警部の方へ顔を覗かせている。
大和警部が三玖に自己紹介をした時などは、長野出身でかつ、武田信玄の宰相、山本勘助と近い名前だということだけでも大分目を輝かせていた。
ちらりとサイドミラー越しに二乃の様子を見れば、心底つまらなさそうな顔をしている二乃と目が合った。
目が合った瞬間、口パクでこちらに何かを伝えてくる。読唇術など使えるわけでもないが、言ってることはわかる。
『な ん と か し ろ』
(何とかしろって、どうしろっつーんだ)
むしろ先ほどまで話題もなくひたすら沈黙が続く中で高速をひたすら走るだけだったのだ。楽しくないよりはマシだろと思った。
コナンが何かしようという気がないことを向こうも理解すると、一つ溜息をつくとスマホを弄り始めた。帰りまでバッテリーが切れないことだけ祈っておいてやることにする。
大学に到着した一行は、火災があったという建物とは別の建物へと案内された。
話を聞くとこの大学は先日、風太郎と四葉のデートに居合わせた時に遭遇した事件の容疑者の一人が依頼を受けたという大学とのことだ。
県内ではそこそこ大きな敷地を持つ大学らしく、案内される途中で遠くの方に全焼した建物が見えた。
しかし、例の火災があった建物とは別の建物を入ろうとしたにも関わらず、入り口まで来ると何人もの警官が慌ただしく出入りしていた。
「なんだぁ、ずいぶん騒がしいじゃねえか」
大和警部が出入りする警官を見ながら言った。
「あ、大和警部。おかえりなさい」
そう言って出迎えてきたのは、これまたコナンも顔を知っている女性だった。しかし、事情からしてうかつなことを二乃達の前で言われないようにと、先制してコナンから挨拶した。
「上原刑事。お久しぶりです」
「え……ああ! コナン君! 久しぶりね」
一瞬、工藤新一、あるいは見知らぬ青年から突然声をかけられた凛々しい顔立ちをした女性刑事、上原由衣刑事は戸惑ったような素振りを見せたが、即座に元の姿に戻ったコナンであることを理解するとこちらに合わせてくれた。
上原刑事はこちらの一行の前まで来ると立ち止まる。
「突然呼んじゃってごめんね。堪ちゃんの車つもかったでしょ」
「いえ、安全運転で快適でしたよ。あ、後すみません。今日は僕だけじゃなくてこっちの二人も一緒に連れてくることになってしまいまして……」
そういってコナンは二乃と三玖を紹介した。
「あら、コナン君のガールフレンドかしら?」
「違いますよ!」
「コナンにはもう東京に彼女がいます」
「そうね、時々話を聞かされるけど、もう胸が焼けそうで」
話に便乗してくる二乃と三玖に対して、上原刑事は口元に手を当てるとニヤリと笑った。
「冗談よ。あの子とも随分と仲がいいようで」
「ほっといてくださいよ。それで、この人の出入りはどうしたんですか? 火事があったのは昨日でしょう?」
そう問いかけると、上原刑事は顔をしかめた。
どうやら大和警部も事情を知らないようで、上原刑事に対して「どうしたんだ?」と追撃の質問をした。
「堪ちゃんは昨日からコナン君を迎えに行ってたから知らないでしょうけど、実は昨晩、県警に通報があったのよ。この大学で二度目の火事があったって」
「なんだと!?」
大和警部も初耳のようで驚いた顔をしていた。
上原刑事が説明を続ける。
「しかも今回はたちの悪いことに、被害者まで出てるの。死亡者とけが人が一人ずつ。それで、急遽私たちも諸伏警部も現場に駆り出されたのよ」
「しかし二日連続での火事とはな。こりゃ、嬢ちゃんたちの観光案内をする時間は作ってやれねえかもしれねえな」
そう言って大和警部は二人へと顔を向けると、対する二乃達は残念そうな顔を浮かべた。
大和警部は元々、一件目の火災現場を担当していたためその場でわかれると、コナン達は先に二件目の火災現場へと上原刑事に連れられて訪れた。
案内された場所はコの字型になっている研究棟の三階で、建物を上から見ると丁度コの字の上側の先端に当たる位置だった。
「諸伏警部、江戸川君をお連れしました」
「おや、来ましたか。白眉の少年」
「お久しぶりです。諸伏警部」
どうやら二件目の火事はボヤだったらしく、火元の部屋は黒く焦げているものの室外まではそれほど燃え広がっていなかった。
そんな室内の中で、諸伏警部と呼ばれた八の字に髭を蓄えた男性が捜査を行っていた。
コナンは大和警部や上原刑事同様、先制して自らが元の姿に戻ったコナンであることを示しつつ、久しぶりの再会の挨拶をした。
続けて二乃達の紹介もすると、礼儀正しい諸伏警部は二人の前に立つと自分からも自己紹介をした。
「初めまして、お嬢さん方。今コナン君にご紹介された通り、性は諸伏、名は高明と申します。親しい方からは音読みでコウメイなどと呼んでくれることもあります。以後お見知りおきを」
「ご丁寧にどうも。中野二乃です」
「妹の三玖です……あの、コウメイって」
三玖の問いかけに対して、諸伏警部は「おや?」と反応すると、薄く微笑んだ。
「ご想像の通り、私のコウメイというあだ名はかの三国志の知将、諸葛亮孔明にちなんだものですよ」
「やっぱり……!」
三玖の目が大和警部と初めて会った時と同じように輝いた。
しかし、それを横で見ていた二乃は何のことか分からないという顔をしていたため、コナンが横から補足をいれた。
「諸葛孔明っていう、三国志に出てくる中国の武将だよ。世界史の授業で出ただろ」
「そんなの覚えてないわよ! ……というか三玖、あんたは戦国時代が好きだったんじゃなかったんだっけ?」
「確かに一番はそう。でもフータローに社会全般をいろいろ教えてもらってるうちに、三国志も少し覚えた。戦国時代に似てて少し面白いかもってちょうど思ってたところ」
「なるほど、お嬢さんの専門は日本史ですか。それなら勘助君とは実に話が合うことでしょうね」
「ええ、おかげさまでこっちは聞きたくもない話を延々と聞かされる羽目になったわ」
二乃が社内での苦労を思い出しのようで苦い顔をした。
話はそこそこに、コナンは現場を見ることとした。
室内はボヤで消されていたことから燃え残りも多かったが、上原刑事からの補足を聞くと一時間程度は燃え続けていたらしくほぼ全焼と言って差し支えなかった。
その代わり、上下左右の教室や廊下にはそれほど焦げ跡はなく、室内だけがひどく燃えたということだった。
そのような燃え広がり方をしたのには理由があり、この研究室は壁一面に本棚と、そこに貯蔵されている本が敷き詰められていたことから火が燃え広がりやすかったとのことだ。
そのような室内で、周りの部屋に炎が燃え広がらなかったのは、むしろこの建物の防火対策がしっかりしていると褒めるべきなのだろう。
通報までの流れはこうだ。始め、警察に通報があった内容としては何者かに襲われた、という今回の事件の被害者からのよるもので、しばらくして現場に到着した警察によってけが人の方の被害者は保護された。
どこに犯人がいるかもわからないため、建物の外で話をしたいという被害者の要望でパトカーの中で事情聴取をしていたところ、今度はこの部屋から出火したということだ。
「部下からの報告によると、火元はあちらの本棚のようです」
諸伏警部が指さしたのは、入り口とは反対側の部屋の隅にある本棚だった。
コナンは近寄って見て見ると、確かにここだけ壁の焦げ跡の色が他よりも一層黒くなっていた。
周辺の床を観察してみると、ある一点に気が付いた。妙なものが落ちていたのだ。
「なんで本棚の近くにこんなものが落ちているんですか?」
コナンが見つけたのはアルコールランプだった。熱で容器のガラスは割れており、中のアルコールも蒸発している。けれど、そもそもこんな可燃性のものが多くある中で不用心に置かれているのは不自然であった。
コナンの疑問に対して、上原刑事が捜査記録を見ながら答えた。
「部屋全体が荒れていたのよ。どうもこの研究室では被害者と犯人が揉めたようで、他にもいろんなところにいろんなものが落ちていたのよ」
言われてコナンが部屋中を見渡すと、確かに様々なものが床に散乱していた。
コナンはたった今上原刑事が言っていた被害者のことを聞こうと、その場を離れようとした時、視界の端で光った物を見つけた。
もう一度アルコールランプへとしゃがみ込むと、割れたアルコールランプの容器の火の点け口に妙な砂が付着していることに気が付いた。
つるりと指を表面をなぞってみると、指先に着いたその砂には炭化しているものだけでなく、時々日の光に反射して光るものが混じっていることに気が付いた。
(ただの炭じゃない……?)
コナンは鑑識へそのことを伝えると、すぐに検査することとなった。
続けてコナンは被害者の詳細を聞いた。どうやらこの現場では人が亡くなっているとのことだった。
「うそ……ここで人が……?」
そこで始めて今自分がいる現場が死傷者が出ているということを聞かされた二乃が気分が悪そうな顔をする。
その様子に目ざとく気が付いた諸伏警部が心配げに声をかけた。
「大丈夫ですか? お辛いようでしたら妹さんとご一緒に別室で休まれても構いませんが」
「私は大丈夫です」
諸伏警部の気遣いに対して即答をしたのは三玖の方であった。
三玖もやや表情は歪んでいたが、考えて見れば事件に関わるのはこれで二度目だ。二乃よりも耐性ができているのかもしれない。
その様子を見てか、二乃も一つ深呼吸をすると、そこには普段通りの表情が戻っていた。
「私も大丈夫です。ちょっと慣れない話に驚いただけですので」
「分かりました。ですが、我慢できないようでしたらいつでも仰ってくださいね」
「ありがとうございます」
二人は諸伏警部へと頭を下げた。
念のため、コナンはその横で諸伏警部に対して三玖の経歴を説明しておいた。以前に毛利小五郎と一緒に病院で起きた事件を解決したことがるというものだった。
「なるほど。毛利さんとご一緒にというのはさておき、君の指示で捜査を行った経験があるとなれば、私たちには気づけない何かに気づく可能性もありますね」
「買いかぶり過ぎですよ」
話を仕切り直すと、この現場で亡くなった方の情報を上原刑事が説明してくれた。
「被害者の名前は長尾俊樹さん。32歳。この大学の在籍の助教授の方で、死因は頭部を殴打されたことによる脳挫傷と考えられます。おそらく、火災に巻き込まれる前に既に亡くなっていたものと思われます」
「誰かに襲われたってことですか?」
コナンは質問した。
「ええ。証拠品として押収されてしまってるけど、火災後の現場から凶器と思われるバットも見つかってるわ。何とか燃え切らずに済んでいて、長尾さんともう一人のけが人の被害者の方二人の血液が付着されていることを確認されたわ」
「ということは二人の被害者を襲った犯人は同一人物の可能性が高いですね」
バットから二人の被害者の血液反応が出たということは、犯人はバットを使って二人へ襲い掛かったのは間違いないだろう。
そうなると、次に思い浮かぶ疑問は何故、被害者の片方は助かったのかという点だが、それに関しては実際に現場を見て見ないとわからないとコナンは考えた。
続けてコナンはもう一つの事件現場へ向かった。
もう一つの部屋は長尾さんの部屋とはちょうど反対の位置にあり、コの字でいうところの下側の先端の位置していた。
次の部屋へ向かう途中、廊下にも三か所ほど血痕が落ちている場所があった。上原刑事の補足では、次の部屋で会う被害者の血液だということだ。
次の部屋は中本という男性の研究室だった。
眼鏡をかけた細身の男性で、頭には包帯を巻いていた。
「中本さん、何度もすみません。こちらの少年にも話を聞かせたいので、もう一度お話を伺ってもよろしいですか」
部屋に一行が入ってきたことに気が付いた中本に対して、諸伏警部は言った。
話を始める前に、上原刑事が中本の紹介をしてくれる。
「中本晴信さん。32歳。亡くなった長尾さんとは同期で友人だったらしいの。昨日の晩は長尾さんと同じく、中本さんも自分の研究室に泊まり込みをしていたのだけど、廊下で犯人と鉢合わせてしまったらしく凶器で暴行を受けて負傷、その後自分の研究室へ逃げ込もうとしている間も追い付かれる度に暴行を受けて、最後は自分の研究室に辿り着いたものの一瞬気を失ってしまい、すぐ目を覚ました後で通報された、ということですよね? 中本さん」
「え、ええ。そうです」
中本は頷いて肯定した。
「中本さんは襲われた時、犯人の顔は見なかったんですか?」
中本へコナンは訊いた。
「顔をマスクで隠していたから、見てないです……」
話を聞く限りでは中本は偶然犯人と鉢合わせてしまったせいで巻き込まれてしまったようだとコナンは考える。
結果的な状況と、犯人の狙いから推測するとおそらく、本当の目的は長尾さん自身の命、あるいは室内にあるものの抹消であるため長尾さんを殺害する必要まであったが、中本に対しては偶然出会ってしまい、顔を見られた心配もないため気絶させるだけに留めたと考えるべきだろう。
そうなると時系列に並べ直すと、第一に犯人は長尾さんを殺害、その後部屋へと火をつけた。逃げようとしたところで中本さんと遭遇してしまい、通報されるまでの時間稼ぎとしてやむなく襲ったのだろうと推測する。諸伏警部に考えを伝えると、警察も事件のシナリオとしては同じように考えているとのことだった。
(ということは、出火の時間から逆算すると中本さんが襲われた後で目を覚まして、警察に保護されるまでの間、犯人は長尾さんの部屋にいたと思われる。そんな長い時間何をやっていたんだ? しかも最終的に放火をしたことを考えると、何かを探していたが結局見つからなかったため、火事を起こして自分の痕跡を消そうと考えたということか……)
そうして考えていると、コナンの後ろから声がした。
「あの、ごめんなさい。やっぱり少し休ませてもらってもいいですか? ここに来るまでの間も血の跡だったり事件の話を聞いてたりしたら、ちょっと具合が悪くなっちゃって」
二乃だった。振り返ってみれば確かに顔色があまりよくなく、額に手を当てていた。
「あ、それなら部屋の奥に休憩スペースがあるから使ってください」
それに反応したのは中本であった。中本が指さした先、研究室の隅には宿泊することを想定してか、冷蔵庫や給茶機などが置かれた小スペースがあった。
二乃は軽く会釈をすると、三玖に付き添われながら歩いて行った。
「すみません諸伏警部。ちょっと俺も心配なんで、二人について行ってもいいですか?」
「構いませんよ」
許可をもらってからコナンも二乃達の方へと向かった。
考えてみれば二乃は事件に関わるのは今回が初めてだ。三玖のように実際に現場に立ち会うのではなく徐々に状況を知っていくような関わり方でもなければ、四葉のように元々メンタルが強いわけでもない。具合を悪くしてしまうのもおかしくはなった。
二人の元へ行くと、二人はテーブルに付いており二乃は給茶機で汲んだと思われるお茶を手にしていた。
未だに青い顔をしている。
「大丈夫かよ」
「悪いわね。勝手についてきたのに迷惑までかけちゃって」
「んなこと気にすんなよ。事件現場でけが人まで見てるんだ。むしろそれが普通の反応なんだよ……少し付き合ってやっから、早く元気になれよ」
そう言ってコナンは自分も飲み物を用意しようと冷蔵庫を開いた。しかし、中はほぼほぼ空っぽで、飲み物の類は入っていなかった。
(まあ給茶機も用意してるんだし、そりゃそうか)
一応冷凍庫も開けると、やはり中身はほぼ空だった。強いて言えば、中本の夜食用なのか冷凍食品が入っているくらいだった。
(あれ……?)
しかし、そこで一点気になることがあった。
氷がまったくなかったのだ。冬場のこの時期であれば、わざわざ隣の給茶機で汲んだお茶に氷を入れて飲むこともないだろうが、先ほど冷蔵庫の方でみた光景を思い出した。
この冷蔵庫は見たところ、自動で製氷がされるタイプであった。そしてコナンが見た限りだと、冷蔵庫スペースにある製氷用の給水タンクにはまだ水滴がついていた気がした。もう一度冷蔵庫を開けて確認すると、やはり合っていた。
給水タンクは空であったが、普通しばらく使わないのであれば水の腐敗を防ぐため、タンク内の水滴を拭き取るくらいしそうなものだとコナンは思う。
(妙だな……)
不審に思いながらも、冷凍庫を占めると今度こそ給茶機から自分の分の飲み物を注ぐ。
そうして席へと戻ると、一口お茶を啜った。
「ねえコナン」
呼びかけてきたのは三玖だ。
「なんだ?」
「どう、事件の方はわかった?」
「おい、事件の話で疲れちまったから二乃はここへ休みに来たんだろ? いいのかよ蒸し返しちまって」
「あたしは大丈夫よ。座ってたら少しは落ち着いてきたし」
「……そうか。正直言って微妙だな。気になる点は結構あるけど、いまいち決め手にかける。なんつーか、根本的なところを見落としているような感じだ。そういう三玖、おめえはどうなんだ? 二度目の事件なんだ、何か気になったところとかないか?」
「私は……」
三玖が考える素振りを見せる。目を閉じてしばらく唸った後、お手上げというように天を仰いだ。
「全然。強いていうなら、この階のいろんなところで中本さんや長尾さんは被害者に襲われてるなってくらい」
「ああ、そういえば二人の研究室の他にも、廊下に三か所くらい犯人に襲われた跡があったな」
「全部で五か所。まるで川中島の戦いみたいだな、なんて思ったりもしたけど今回は謙信と信玄が戦ってるわけでもないし、全然関係ないよね……」
三玖がそう言った直後、コナンの脳裏でひらめくものがあった。
(それだ……!)
コナンは自分自身でも感じていた重要な見落としていた部分に気が付いた。
それと同時に、先ほどまでの捜査で引っかかっていた点が全て繋がっていくことを感じる。
「サンキューな三玖。お前を連れてきて正解だったぜ」
コナンは急いで立ち上がると、そう言い残して警察たちの方へと戻っていった。
諸伏警部と合流する前に、鑑識に先ほど調査をお願いした件を聞くと、やはりコナンの読み通りアルコールランプに付着していたのは石灰とアルミ粉だということも確認が取れた。
「諸伏警部」
「戻りましたか、コナン君。今ちょうど、これ以上の捜査の進展は見込めないかと思い、中本さんを病院へお運びしようとしていたところです」
「それはちょっと待ってください。中本さんにはこの場を離れる前に聞いていただきたいことがあります。そう、貴方が長尾さんを殺害したという、事件の真相をね」
コナンが言った直後、上原刑事と中本の二人が目を見開いた。ただ一人、諸伏警部だけは顎に手を当てると、フッと笑みを零した。
「先ほどまでの君はまるで事件の糸口を掴めないという様子でしたが、どうやらこの短時間で君の中で起きたようですね。青天の霹靂が」
「ええ、今回の件は中本さんが被害者側の人間であると思わせてしまう二つの証拠品によって、ずいぶんと真相にたどり着くまでに苦労させられました。その二つの証拠というのは、長尾さんと中本さん二人の血液が付着した凶器のバットと、中本さんが警察に保護されて事情聴取を受けている間に火災が発生したという現象そのものです」
「一見すれば、どちらも、特に後者の火事については警察の目という最も信用できるものが中本さんの無実を裏付けてしまっているため、不可能のように思えますね。しかし、前者である被害者二名の血液が付着した凶器については、貴方が言う通り中本さんが犯人だとすれば一つの可能性が浮上する。ヒントは、そう」
コナンと諸伏警部が同時に言った。
「「川中島の戦い」」
「そんな昔の出来事が、なんだっていうんですか……?」
したり顔の二人に対して、中本が不安げな表情を浮かべながら問いかけてくる。コナンは応えた。
「長尾さんと中本さんの研究室、そして廊下にある三か所の血痕は全て、二人を第三者である犯人が襲った痕跡などというわけではなく、お二人自身が互いに争い合ったことによってできたものだったんですよ」
「!!」
「おそらく事件当時の実際の流れはこうです。まず初めに、長尾さんは凶器のバットを持って中本さんの研究室へと押し入った。そこで一度目の暴行を受けた中本さんは外へ逃げようと廊下に出た。しかし二度、三度と追い付かれて暴行を受けるうちにこのままでは逃げ切れないと判断した中本さんは反撃に出た」
考えて見れば、出口に近い人間がわざわざ外ではなく自分の部屋へ逃げ込もうとするのにも違和感はあったのだ。
「中本さんにバットを奪われてしまった長尾さんは反撃に転じられてしまい、今度は逃げる側となる。しかも直前まで中本さん自身、逃げようとしていたため外へ逃げるには既に凶器を手にしている中本さんの横をすり抜けなければならない。やむを得ず長尾さんは自分の部屋まで逃げようとした。しかし、部屋の前まで来たところで急いで扉を開けることに手こずってしまった長尾さんは追い付かれ、一撃で殺害されてしまった。自分を守るためだったとはいえ、あなたはこう思ったはずです。このままでは過剰防衛で自分が罪に問われるのではないかと。そこで、この事件を第三者によるものとするため、あるトリックを使うことによって時間差で長尾さんの部屋を放火することで自分のアリバイを作ろうとした」
「そこですね。私も気になった点は。中本さんはどのようにして自らが建物の外にいる状況で、火をつけたのでしょうか」
どうやらここまでは諸伏警部も推理を立てられていたらしいが、中本の冷蔵庫を確認していない諸伏警部では想像がつかないようだった。
「放火に使われたのは火災現場に落ちていた、あのアルコールランプですよ」
「アルコールランプ?」
「そうです。最初中本さんは、出火の原因を悟らせないために部屋の中を荒らした後で、アルコールランプを本棚に置き、ある仕掛けをしたんです。それはランプの紐とその周りに、石灰とアルミ粉を塗布しておいたんですよ」
「……先ほど君の指示によって、ランプの周りにそのようなものが付着していたという報告は部下から聞きました」
「石灰は水に触れると化学反応を起こして水酸化カルシウムへと変質します。この時、石灰は熱を発生させますが、まだ100度には及ばない程度です。しかしそこへアルミ粉も混ぜておくと変質した水酸化カルシウムとアルミ粉で二重の化学反応を起こし、更に高温の熱を発生させるんです。それこそ、アルコールランプに火をつけるほどにね」
「ですが、水なんてどのようにして用意したというのですか?」
「火の点いていないアルコールランプを本棚に置いた後、中本さんは更に追加の仕掛けをしたんです。あの本棚は背面に板が取り付けられてないタイプでした。だから、ランプが置かれている段より一段上の長い布のようなものを巻き付けたんです。こう、ハンモックのようにしてね」
そう言ってコナンは中本の部屋にある本棚を使ってジェスチャーでも示した。
本棚の段を囲うようにして上の段で布を結び、下の段にぶら下がるようにする。
「そして、ハンモック上になった布の上に、大量の氷を置いたんですよ」
「氷ですか?」
コナンは中本の部屋にあった冷凍庫の状況を諸伏警部へ補足した。
つい最近まで製氷を行われていた痕跡があるにも関わらず、氷がまったくなければ給水タンクにも水は入っておらず新しく作っている様子もなかったと。
「氷を常温でそのまま放置しておけば、非常にゆっくりですが当然解けていきます。そして溶けだした氷は水となり布へと染み込んでいき、やがて吸収しきれなくなった水は布を通して水滴となって下に置かれているアルコールランプへと落ちるという仕掛けです。こうすることで、中本さんは仕掛けをしてから出火するまでにかなりの時間を稼ぐことができたんです。そして火が着いたアルコールランプは布を徐々に乾かしていき、乾ききった布は逆にランプによって燃やされて家事の火元となる。科学者である貴方だったら、このくらいの仕掛けくらい朝飯前ですよね」
さあ中本さん、とコナンは一度話を区切ってから中本へと向き直る。
「今僕が説明した内容は全て推測。物的証拠も残念ながらありません。しかし、あの冷凍庫のおかしな状況や、同期の長尾さんが宿泊しているのも関わらず助けを求めなかったことや、わざわざ外で警察と話をしようとした点など、貴方が起こしたいくつものおかしな行動の全てに説明をしてもらえるのなら、お聞かせいただけますか?」
そこまで説明した後、中本はしばらくうつむいたままの後、自分の犯行を認めた。
その後、中本の話から長尾が自分を襲ってきた理由はハッキリしないが、おそらく一昨日の火事で自分たちの研究室を失ったことが原因だと思われるとのことだった。
なんでも元々、長尾と中本は一回目の火事で焼失した建物の中にも別の研究室を持っていたらしい。しかしそれが使えなくなってしまい、殺人事件が起こる日の前の晩に残った建物内の施設の使用権を巡って口論になったそうだ。
まさか中本も自分が殺されかけるとまでは思わなかったそうだった。
中本が諸伏警部、上原刑事に連行された後、コナン達は当初の予定通り一回目の火災現場へと大和警部と共に訪れた。
長尾の研究室の火災などとは比べ物にならないほどの燃えようで、ほとんどのものが炭になっていた。
ここまで酷い惨状だと、床だって抜けてもおかしくないと判断したコナンは二乃と三玖の二人を建物の外へと待たせることにした。
そのため、室内には今、コナンと大和警部の二人だけがいる状況だった。
火災現場の惨状を見ながらコナンはぼやいた。
「大和警部、こんな状況で捜査なんて流石に無理ですよ。証拠品だって欠片も残ってないんですから」
「実を言うとな、ここにお前さんを呼んだのは事件を捜査してほしいからじゃねえんだ」
「え?」
どういうことだと思い振り返ると、大和警部がこちらへ手招きをしていた。
近寄ってみると、炭になった机の上には同じく黒焦げになっている紙が置かれていた。
「これを俺たちが発見した時、お上の連中がお前にこれを見せるようにって指示を出してきたんだよ」
「俺にわざわざ……? なんで……なっ!?」
コナンが紙を見ると、ほとんどの文章は読めなかったが、ところどころで単語らしきものだけが目に入った。
その内容とは、こうであった。
『
備 録
2017/11/25
MI
APTX4869
工藤新一
服役 ジン、そして組織
Apera
』
コナンの背筋に冷たいものが走った。
目に飛び込んでくる単語は多くが、かつて自分が対峙してきた宿敵を指す言葉であったからだ。
「お前が去年相手にしてたっていう組織の存在は俺も聞いてる。ここに書かれてるジンって野郎もまだ塀の中にぶち込まれたままなのも確認済みだ。だが」
「ここに書かれてる日付はどう考えても、俺が潜伏を始めた後の日付だ……!」
つまり、組織のことを知っていて、意図的にこの火災を起こした人物。そう、まるで例の組織のやり口のように証拠を何一つ残さないやり方をしようとした人物がいるということだ。
断片的すぎる情報の中で、特にコナンの目を引いたのは最後の単語であった。
Apera(アペラ)、コナンの記憶ではこれも酒、確かワインの名前だ。しかし、やつらの中でこのコードネームを使う人間に心当たりはなかった。
黒の組織は全員、ある程度のエージェントになると酒の名前を関するコードネームを与えられる。ジン、ウォッカ、ラムなど多種多様だ。
多くのやつらと相対してきたコナンであったが、思い当たらない名前が更に出てくるとは思わず、懐からスマホを取り出すと灰原へとコールした。
数コールの内に灰原は電話に出た。
『何?』
「なあ灰原、お前、やつらの中でアペラってコードネームに心当たりあるか?」
『何よ急に……あるといえば、あるわね』
「本当か!? どんな奴だ!?」
『そんなコードネームの仲間はいなかった、っていうことだけは心当たりがあるだけよ』
「いなかった? どういうことだよ?」
『はぁ? 貴方がそんなことも知らないわけ……待って、そんなことを聞いてくるってことはもしかして』
電話先の灰原の声色が変わる。どうやらこの現状に思い当たったらしい。
コナンは簡潔に、組織壊滅後に書かれたと思われる組織の人間、あるいは残党のメモが見つかったことを伝えた。
「そんな」という絞り出した声がして数秒、灰原は黙った後で、冷静さを取り戻したのか再び話始める。
『ねえ、もしかして貴方がいる場所って、どこかの研究室だったりする?』
「ああ、その通りだぜ。一昨日火事で全部燃えちまった、元研究室に今いるよ」
『だとしたら、非常にやっかいな相手よ』
「だからどういうことだって聞いてんだよ。お前さっきはアペラなんてコードネームのやつはいないっつってたじゃねえか」
『当り前よ。そんな紛らわしい名前を付けたら組織の中でも混乱させかねないもの。いい? 分かってないようだから教えてあげるわ。貴方は探偵としてのために酒の知識も得ているようだけど、アペラっていうのは元々は別の名前の酒だったのよ』
「別の名前?」
『そう、アペラって名前が使われ始めたのは2008年ごろ。だから貴方がお得意のホームズや昔の推理小説にこの酒の名前が出ないのは当然よ。そしてアペラは元々スペイン南西部にあるアンダルシア地方で作られたワインにしか使用することを許されていなかった酒の名前を、オーストラリア風ワインとして名付けて売っていたから、変えることになったのよ』
「スペイン南西部のアンダルシア地方で作られてるワインっつったら、お前……」
『だから聞いたのよ、貴方が今いるのが、研究所なんじゃないかって』
電話越しに灰原は一つ間を置いて、呼吸をした。
『アペラの名前が意味するところ、それは"偽物のシェリー"。おそらく、私が組織を抜けた後、私の後任に付けられた科学者のコードネームよ』
時間かかった割に今回は中々厳しいところがあるのは認識しております・・・
たまに謎に難産な回が出てくる・・・
ちなみに帰りも大和警部の運転だったものの、二乃のスマホのバッテリーは帰りの途中で力尽きたとか