じゃしんに愛され過ぎて夜しか眠れない   作:ちゅーに菌

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作者……明日から追試なんだ…。

多分、暫く更新が止まります。すいませんね。


ゴミ処理

冬、俺は朝の冷たさで目を醒ました。

 

時計を見ると未だ5時半だった。

 

『マスター……好きです…むにゃむにゃ…』

 

「……………………」

 

『ほげっ!?』

 

冷てえんだよこの変温動物。

 

という念を込めながら俺に抱きつくヴェノミナーガさんをベッドから蹴り落とすのが日課になっているのである。

 

『いつもヒドイじゃないですか~』

 

「いつもいつも死ぬって言ってんだろ!?」

 

『だったら暖房タイマーにしなければ良いじゃないですかー』

 

してねぇよ! エアコンも日本製だな。と思って、寝静まったのを感知してエアコンが勝手に切れるというエコな機能の付いてる奴を買ったらそれが裏目に出てんだよ!

 

そんなことを思っているとヴェノミナーガさんが全身をくねられながら俺に巻き付いて来た。

 

今度は蹴れないようにぐるぐる巻きにされている。

 

『すぴー…すぴー…』

 

そしてまた寝息を立て始めた。

 

つ、冷たい…せめてエアコンを付けなければ…。

 

俺は唯一動く片手でリモコンがあった方へ手を伸ばした。

 

 

"ふにょん"

 

 

掌にどう考えても可笑しい感触が伝わってきた。

 

明らかに可笑しいと思い、そちらを見ると、誰かが寝そべってこちらを見ていた。

 

俺は彼女の胸を触れていたらしい…。

 

それは最近出てくるようになった人型の女性の精霊だった。

 

魔女らしい帽子。

 

魔法使いらしい衣。

 

澄んだ緑の眼。

 

そして、壁の隅に立て掛けてある魔道具が彼女の何よりもの証拠だろう。

 

俺の新しい精霊。その名は……。

 

 

 

 

 

 

 

 

"砂の魔女(サンド・ウィッチ)"である。

 

 

 

 

 

 

 

 

いつぞや、作っていると言った防御に定評のある岩石族デッキの主軸モンスターだ。

 

能力値はこんなん。

 

 

砂の魔女

融合モンスター

星6/地属性/岩石族/攻2100/守1700

「岩石の巨兵」+「エンシェント・エルフ」

 

 

効果? 何それ美味しいの?

 

え? デス・ガーディウスを攻撃表示で置いて置いた方がよっぽど防御になる?

 

イヤダナー、ソンナワケナイジャナイデスカー。

 

ブラック・マジシャン・ガール? 知らない娘ですね。

 

…………本当のところ言うと、デッキを作ろうとはしている。

 

だが、かの有名なデュエルキングのせいで魔法使い族サポートカード、さらにとある社長のせいでドラゴン族サポートカードが異常に高いのだ。

 

プロデュエリストでファイトマネーはかなり入るが…それでも暫くはお預けだ。

 

それはそうと砂の魔女さん?

 

なんで胸に置いた手を離してくれないの?

 

リモコンでエアコン付けて温度を上げないとヴェノミナーガさんのせいで俺の命が…。

 

こちらをじっと見ている砂の魔女は胸に置かれた俺の手の上に両手を重ねると、こちらににこりと笑いかけた。

 

いつもそんなに表情を変えない彼女の突然のギャップに俺は少し、戸惑った。

 

そして、砂の魔女はゆっくりとそのまま目を瞑り…。

 

 

 

『…すー…すー…………』

 

 

 

寝た。

 

「………………」

 

片手は砂の魔女に持たれ、首以外はヴェノミナーガさんに絡め取られている。

 

この場合の俺の取るべき行動は……。

 

俺は息を吸い込み言葉を張り上げた。

 

「助けてデス・ガーディウス!」

 

『ゲッゲッゲ…』

 

ああ、持つべきモノは人型以外の精霊だな…。

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

『電気ヒーターを買いましょう!』

 

今朝、デス・ガーディウスにぶん殴られたヴェノミナーガさんは、いつものように家の炬燵の70%程を占領するだけに留まらず、炬燵の板をバシバシ叩き、そんなことを言い出した。

 

その炬燵にはヴェノミナーガさんの尻尾を押し退けながら俺と砂の魔女も入っている。

 

外を見れば軽く雪が降っており、10cmほど積もっているようだ。

 

「そんな金はない」

 

『嘘つきー! 人でなしー! ペットを飼うならちゃんと餌代や、ヒーターなどのことも考えてから飼わなきゃいけないんですよ!』

 

「なら外に捨ててやろうか?」

 

『ヒドイ!? 越冬するはめになるじゃないですか!?』

 

ヴェノミナーガさんはブーイングを始め、砂の魔女はお茶請けの海苔煎餅を1枚掴むと小さな口でポリポリ食べていた。

 

『そもそも"エアコンは日本製に限る"とかマスターが言い出したのがイケないんじゃないですか。今、日本製に対してどう思ってるか言ってみて下さいよ!』

 

「日本人はすぐに機械を複雑にしやがって…」

 

『ほら、そうじゃないですか』

 

「ぐぬぬ……」

 

仕方ない…電気ヒーター買って来るか…。

 

 

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

 

『いやー、冬場の電気ヒーターって中々、無いモノですね』

 

「そりゃなぁ…」

 

4店舗ぐらい梯子してやっと見つけて買ってきたのである。

 

時間はもう夕方、空は黄昏色に染まり、人通りも無くなっていた。

 

「デュエッ! デュエッ! デュエッ、ゴキボール♪」

 

『んー?』

 

俺が若干デュエルに飢えながらゴキボールの歌を歌っていると、ヴェノミナーガさんがどこかを見詰めながら首を傾げた。

 

『マスター、いつものアレです』

 

「アレか…」

 

それを聞いた俺はほくそ笑むと、より人気の無い方へ移動していった。

 

 

 

 

 

 

10分ほど歩き、とあるそれなりの大きさの廃工場の内部の中心にいた。

 

そこでデュエルディスクにいつものデス・ガーディウスのデッキ……ではなくヴェノミナーガさんのデッキを取り出し、差し込んだ。

 

『ヒャッホーイ!』

 

なんだがテンションが急上昇したヴェノミナーガさんをほっておき、適当に声を掛けた。

 

「出て来いよ。俺のカードが欲しいんだろ?」

 

そう言うとかなり背の高い、筋肉質の男性が現れた。

 

ああ、やっぱりカード強盗ね…。

 

プロデュエリストになってからというものこういう輩が結構増えたのだ。

 

まあ…律儀にデュエルを挑んで来る強盗を強盗と呼べるのかはわからんが…。

 

まあ、もし実力行使に及んできたらデス・ガーディウスか、ヴェノミナーガさんにぶっ殺されるだけなのだがな。

 

「ほう、わかっていながらデュエルで方を付けるか…」

 

「その代わり俺が勝てばお前のデッキは頂く、ついでに警察に突き出す。OK?」

 

『ホント、どっちが強盗だかわかりませんね…』

 

何言ってるんだ。デッキとデッキを掛けた正しいアンティデュエルじゃないか。

 

そんなことを思いながらデュエルディスクを構えた。

 

「よかろう。私はドクター・コレクター! 行くぞ!」

 

 

 

「「デュエル!」」

 

リック

LP4000

 

ドクター・コレクター

LP4000

 

 

 

「俺の先攻、ドロー」

 

手札5→6

 

『ドクター・コレクター? ああ、テレビでよく特集されているIQ200の天才指名手配犯じゃないですか』

 

「ふーん、少しは楽しめそうだな」

 

「なに?」

 

「いや、こっちの話。俺はモンスターをセット、更にカードを3枚伏せ、フィールド魔法、"ヴェノム・スワンプ"を発動」

 

フィールドの床が毒々しい色をした沼へと変わった。

 

「なんだそれは……お前のデッキにそんなカードは…」

 

「 フィールド魔法、"ヴェノム・スワンプ"はお互いのターンのエンドフェイズ毎に、フィールド上に表側表示で存在する"ヴェノム"と名のついたモンスター以外の表側表示で存在する全てのモンスターにヴェノムカウンターを1つ置く。ヴェノムカウンター1つにつき、攻撃力は500ポイントダウンする。この効果で攻撃力が0になったモンスターは破壊される」

 

「なんと強力なダウンカード…」

 

まあな。

 

「ターンエンド」

 

リック

モンスター1

魔法・罠4

手札1

 

 

 

「私のターン。ドロー!」

 

手札5→6

 

「永続罠カード発動、"サモンリミッター"。このカードがフィールド上に存在する限り、お互いのプレイヤーは1ターンに合計2回までしかモンスターを召喚・反転召喚・特殊召喚できない」

 

「"サモンリミッター"だと!?」

 

おや、相性の悪いデッキかな?

 

「……"マジシャンズ・ヴァルキリア"を召喚」

 

マジシャンズ・ヴァルキリア

星4/光属性/魔法使い族/攻1600/守1800

このカードがフィールド上に表側表示で存在する限り、相手は他の魔法使い族モンスターを攻撃対象に選択できない。

 

ブラック・マジシャン・ガールの親戚っぽい魔法使いが召喚された。

 

マジシャンズ・ヴァルキリア

ATK1600

 

『マスター! 高額魔法使いですよ!』

 

やったぜ。

 

「更に"二重召喚"発動。このターン通常召喚をもう一度行う。"マジシャンズ・ヴァルキリア"をもう1体召喚」

マジシャンズ・ヴァルキリア

ATK1600

 

「バトル! "マジシャンズ・ヴァルキリア"でセットモンスターを攻撃!」

 

マジシャンズ・ヴァルキリアが俺の伏せモンスターに魔弾を放ち、伏せモンスターがその姿を現す。

 

アルカナフォース0-THE FOOL

DEF0

 

アルカナフォース0-THE FOOL

星1/光属性/天使族/攻 0/守 0

このカードは戦闘では破壊されず、表示形式を守備表示に変更できない。このカードが召喚・反転召喚・特殊召喚に成功した時、コイントスを1回行い、その裏表によって以下の効果を得る。

●表:このカードを対象にする自分のカードの効果を無効にし破壊する。

●裏:このカードを対象にする相手のカードの効果を無効にし破壊する。

 

アルカナフォース0-THE FOOLは瞬間移動し、マジシャンズ・ヴァルキリアの魔弾をいとも容易く避けた。

 

ケーシィかお前は。

 

「"アルカナフォース0-THE FOOL"は戦闘によって破壊されない。本来なら他にも効果があるがそれは召喚・反転召喚・特殊召喚に成功した時に発動するため、今はただの戦闘によって破壊されないモンスターだ」

 

ヴェノム・フール、蛇使いフールなど散々な言われようのフールさんである。

 

「くっ……ターンエンド」

 

…………いつも思うんだがこの世界の住人は4000という少ないライフを過信し過ぎだと思うんだよな。まあ、ヴァルキリアロックは掛かっているが。

 

それとも単に事故ったか?

 

「この瞬間、"ヴェノム・スワンプ"の効果発動。"ヴェノム"以外のモンスター全てにヴェノム・カウンターを1つ置く」

 

全てのモンスターに毒沼から飛ぶように現れた水色の小さな蛇が巻き付き、毒を注入した。

 

苦痛に声を上げるマジシャンズ・ヴァルキリア達、そしてアルカナフォース0-THE FOOLは巻き付いているヴェノム・カウンターを無言で撫でていた。

 

マジシャンズ・ヴァルキリア0→1

 

マジシャンズ・ヴァルキリア0→1

 

アルカナフォース0-THE FOOL0→1

 

「それにより、攻撃力500ポイントダウン」

 

マジシャンズ・ヴァルキリア

ATK1600→1100

 

マジシャンズ・ヴァルキリア

ATK1600→1100

 

「"アルカナフォース0-THE FOOL"の攻撃力は元から0のため、変動しない。よって"ヴェノム・スワンプ"で破壊されることはない」

 

ドクター・コレクター

モンスター2

魔法・罠0

手札3

 

 

 

「ドロー」

 

手札1→2

 

「"ヴェノム・スワンプ"の効果発動」

 

ヴェノムカウンターがマジシャンズ・ヴァルキリアを襲う。

 

マジシャンズ・ヴァルキリア1→2

ATK1100→600

 

マジシャンズ・ヴァルキリア1→2

ATK1100→600

 

アルカナフォース0-THE FOOL1→2

 

「ターンエンド」

 

リック

モンスター1

魔法・罠4

手札2

 

 

 

「私のターン…」

 

「スタンバイフェイズに永続罠、"聖なる輝き"発動。このカードがフィールド上に存在する限り、モンスターをセットする事はできない。また、モンスターをセットする場合は表側守備表示にしなければならない」

 

「くっ…」

 

こちらがヴェノム・スワンプに無理矢理掛けようとしている事を理解したのだろう。表情が歪んだ。

 

「ドロー! よし!」

 

手札3→4

 

ドローしたカードを見たドクター・コレクターは声を上げた。

 

「私は"大嵐"を発動! 魔法・罠カードゾーンのカード全てを破壊する!」

 

「 手札の"ヴェノム"と名のついたモンスターカード1枚を相手に見せて発動。俺は"ヴェノム・サーペント"を見せる。そしてカウンター罠、"蛇神の勅命"を発動。相手の魔法カードの発動と効果を無効にし、それを破壊する」

 

ヴェノム・サーペントが跳んでいき、大嵐を破壊した。

 

「ぐ…ならば…"マジシャンズ・ヴァルキリア"2体を生け贄に捧げ、"コスモクイーン"を守備表示で召喚…」

 

大きな冠を被り、ローブを纏った黒髪の女性モンスターが現れた。

 

コスモクイーン

星8/闇属性/魔法使い族/攻2900/守2450

宇宙に存在する、全ての星を統治しているという女王。

 

コスモクイーン

DEF2450

 

こりゃまたレアな。トライホーンの親戚だな。

 

「ターンエンド…」

 

最早、ヴェノム・スワンプを言う必要も無いだろう。

 

コスモクイーン0→1

ATK2900→2400

 

アルカナフォース0-THE FOOL2→3

 

ドクター・コレクター

モンスター1

魔法・罠0

手札2

 

 

 

「ドロー」

 

手札2→3

 

「俺はカードを2枚伏せターンエンド」

 

リック

モンスター1

魔法・罠5

手札1

 

コスモクイーン1→2

ATK2400→1900

 

アルカナフォース0-THE FOOL3→4

 

「ドロー…!」

 

手札2→3

 

「"次元の裂け目"発動! 墓地に送られるモンスターは…」

 

「手札の"ヴェノム・サーペント"を相手に見せ、"蛇神の勅命"発動」

 

「くそぉぉぉ!?」

 

「悔しいでしょうねぇ」

 

そりゃ、このデッキのコンセプトはじわじわ絞め殺すだからな。ククク…。

 

「ターンエンド…」

 

コスモクイーン2→3

ATK1900→1400

 

アルカナフォース0-THE FOOL4→5

 

フールはヴェノムカウンター5個を丸めて器用にお手玉を始めた。おい、ジェスター・ロードみたいだぞ。

 

ドクター・コレクター

モンスター1

魔法・罠0

手札2

 

 

 

「ドロー」

 

手札1→2

 

「ん? これは…」

 

俺はヴェノミナーガさんを見た。

 

『そろそろ詰ませましょうか』

 

「ククク…そうですね…」

 

「何と話している…?」

 

「俺の神様」

 

「神だと…?」

 

「見せてやるよ。神をさぁ…」

 

『いえーい!』

 

「俺は魔法カード、"命削りの宝札"を発動。手札が5枚になるようにドロー。このカードが発動してから5ターン目のスタンバイフェイズ時、自分の手札を全て捨てる」

 

手札1→5

 

「手札から"スネーク・レイン"を発動。手札を1枚捨て、デッキから爬虫類族モンスターを4体墓地へ送る」

 

これで5体…。

 

「罠カード発動。"リビングデッドの呼び声"。墓地の"毒蛇王ヴェノミノン"を特殊召喚」

 

赤紫色の毒の中から全身から蛇の生えた男のようなモンスターが現れた。

 

毒蛇王ヴェノミノン

星8/闇属性/爬虫類族/攻 0/守 0

このカードはこのカード以外の効果モンスターの効果では特殊召喚できない。このカードの攻撃力は、自分の墓地の爬虫類族モンスターの数×500ポイントアップする。このカードはフィールド上に表側表示で存在する限り"ヴェノム・スワンプ"の効果を受けない。このカードが戦闘によって破壊され墓地へ送られた時、このカード以外の自分の墓地の爬虫類族モンスター1体をゲームから除外する事で、このカードを特殊召喚する。

 

毒蛇王ヴェノミノン

ATK0

 

「攻撃力0だと…」

 

「もちろん、効果がある。"毒蛇王ヴェノミノン"は墓地の爬虫類族モンスター1体につき、500ポイント上昇する。墓地の爬虫類族モンスターは4体。つまりは2000ポイント」

 

毒蛇王ヴェノミノン

ATK0→2000

 

「だが、コスモクイーンの守備力2450には届かん!」

 

「そうだな。カードを2枚伏せてターンエンド。ちなみに"毒蛇王ヴェノミノン"は"ヴェノム・スワンプ"の効果を受けない」

 

コスモクイーン3→4

ATK1400→900

 

アルカナフォース0-THE FOOL5→6

 

リック

モンスター2

魔法・罠6

手札1

 

 

 

「ドロー!」

 

手札2→3

 

引いた瞬間、再び目が輝きを取り戻した。

 

「神を見せると言ったわりには大したことはないな! 私は"次元の裂け目"を発動!」

 

「罠カード発動。"毒蛇の供物"。自分フィールド上の爬虫類族モンスター1体と相手フィールド上のカード2枚を選択して破壊する」

 

「なん…だと…」

 

「"毒蛇王ヴェノミノン"、"コスモクイーン"、"次元の裂け目"を選択。沈め…」

 

毒蛇王ヴェノミノンとコスモクイーンと次元の裂け目が、ヴェノム・スワンプの毒沼から生えた大量の蛇のような黒い触手に巻き付かれ、溺れるように飲み込まれて行った。

 

ただ、ヴェノミノンはそれに歓喜するように高笑いの声を上げており、そのまま沈んで行った。

 

「な、なんだというのだ…」

 

異様な事態に動揺するドクター・コレクター。だが、これは始まりだ。

 

「罠カード…"蛇神降臨"」

 

毒沼の水面に波紋が拡がり、それに合わせるように建物の廃工場全体が揺れた。

 

それに耐えきれず廃工場内部の各地で外壁が崩れ、あらゆる古びた機材が吹き飛び、建物の倒壊が進んでいた。

 

「うぉぉ!?」

 

それにより天井が崩れ、巨大なトタンや、煙突や、コンクリート壁が俺らの真上に降ってきた。

 

だが、それらは降ってくる途中でヴェノム・スワンプから出た触手に掴まれ、外側に放り捨てられるため、チリ1つ落ちてくる事は無かった。

 

 

 

「"毒蛇神ヴェノミナーガ"……特殊召喚」

 

 

 

『ヒャッハー☆』

 

ヴェノミナーガさんは妙な声を上げながらヴェノム・スワンプから浮上した。

 

『ひっさ、びさの舞台だぜー!!!!』

 

毒蛇神ヴェノミナーガ

ATK0

 

ヴェノミナーガさんが出た頃には廃工場は半壊していた。

 

「自分フィールド上に表側表示で存在する。"毒蛇王ヴェノミノン"が破壊された時に発動できる。手札・デッキから"毒蛇神ヴェノミナーガ"1体を特殊召喚する」

 

原作効果って……素敵ね…。

 

「"毒蛇神ヴェノミナーガ"の攻撃力は"毒蛇王ヴェノミノン"と同じく墓地にある爬虫類族モンスター1体につき、500ポイントアップ」

 

毒蛇神ヴェノミナーガ

ATK0→2500

 

「ば、バカな……こんな…」

 

「なにもしないならターンエンドと見なすぞ? まあ、"次元の裂け目"を狙い続けた所から見て片方は"次元融合"。もう片方はモンスターを墓地へ送るカードか?」

 

それを指摘するとドクター・コレクターは手札を落とした。

 

それはやはり、次元融合と天使の施しだった。

 

「やはりか…芸が無いな。ってそのカードも俺のモノになるんだから汚すなよ」

 

アルカナフォース0-THE FOOL6→7

 

ドクター・コレクター

モンスター0

魔法・罠0

手札2

 

 

 

「ドロー」

 

手札1→2

 

「"強欲な壺"発動。カードを2枚ドロー」

 

手札1→3

 

「俺は"スネーク・レイン"を発動。効果はわかるな? これで手札から落としたカード含め、5枚また落ちた」

 

毒蛇神ヴェノミナーガ

ATK2500→5000

 

「ありえない……」

 

「まだまだ終わらないよ? "ソウル・チャージ"発動。自分の墓地のモンスターを任意の数特殊召喚できるが、この効果で特殊召喚したモンスターはそのターン攻撃できず、特殊召喚するモンスターの数×500ポイントのライフを払う必要がある。俺は"毒蛇王ヴェノミノン"3体を特殊召喚」

 

ビバ、アニメ効果。

 

毒沼から3体のヴェノミノンが浮上した。

 

毒蛇王ヴェノミノン

ATK3500

 

毒蛇王ヴェノミノン

ATK3500

 

毒蛇王ヴェノミノン

ATK3500

 

リック

LP4000→2500

 

「これにより"毒蛇神ヴェノミナーガ"の攻撃力は3500にダウン」

 

毒蛇神ヴェノミナーガ

ATK5000→3500

 

「当たり前だが、"毒蛇神ヴェノミナーガ"は"ソウル・チャージ"で蘇生した"毒蛇王ヴェノミノン"と違い、問題なく攻撃出来る。アブソリュート・ヴェノム」

 

『アークエネミー! ウロボロス!』

 

ヴェノミナーガさんが手の口を開けるとその中から舌ではなく、細い1本の蛇が伸び、そのままドクター・コレクターを貫き、そのまま持ち上げて地面に叩き付けた。

 

ドクター・コレクター

LP4000→500

 

「な…なんだこれは…い、痛い…貫かれた痛みが…なぜ…」

 

ドクター・コレクターが俺を見る目は怯え切っていた。

 

そりゃ、最初から闇のデュエルだったからな。

 

「う……うぁぁぁ…!!」

 

そして、ドクター・コレクターはデュエルを放棄して、逃げ出そうとした。

 

『させるわけねぇです♪』

 

ヴェノミナーガさんがそう言うとヴェノム・スワンプから生えた蛇状の触手がドクター・コレクターの足を掴み、無理矢理デュエルの場に引き摺り戻した。

 

「放せ! 放せぇ!」

 

「ちなみにヴェノミナーガさんの効果は……って聞いてないか。なら俺のターン」

俺が手を上に掲げるとヴェノミナーガさんと、3体のヴェノミノンが全ての蛇を向けた。

 

「た、助けてくれ! 金なら好きなだけやる! カードもだ! なんだってする!どんなカードも入手する! だから…」

 

「俺はね。人には慈悲を向けるよ。"情けは人のためならず"が性分だし」

 

「なら……!」

 

「でもさぁ…」

 

俺はドクター・コレクターに笑いかけた。

 

 

 

「"生ゴミに情けを掛ける変態的な趣味はしてないんだよねぇ"!」

 

 

 

そして、俺は手を下ろした。

 

それと同時にヴェノミノンの蛇から発射された毒液の雨と、ヴェノミナーガさんの細い蛇がドクター・コレクターを襲った。

 

「ぐあぁぁぁぁぁ!!!!?」

 

ドクター・コレクター

LP500→0

 

 

 

 




ちなみにヴェノミナーガさんは格ゲーのキャラの性能で言うとユウキ=テルミとλ―11を足して10で掛けた程度の性能をしています。

ちなみにヴェノミナーガさんのデッキはロックヴェノムでした。作者の6つのヴェノミナーガさんのデッキの中で最もめんどくさいデッキです。

え? ドクター・コレクター? 生きてるんじゃないですか? 警察に突き出すとか言ってましたし(震え声)

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