じゃしんに愛され過ぎて夜しか眠れない   作:ちゅーに菌

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ついに来た……全てはこの1枚のカードを手に入れるためだ!


至高のカード

 

キサラさんのことをペガサス会長に話したところ。

 

"それなら今すぐに海馬ボーイに会いに行きましょう。連絡はしておきマース"

 

と、言われたのでエジプトからペガサス会長のジェット機で日本に戻り、現在はヘリでKC本社を目指していた。

 

ヘリの中は俺の向かいに下を向きながら小さくなっているキサラさん、その隣にやり遂げた顔でドス黒いオーラに包まれている3枚のカードを眺めているペガサス会長という構図である。

 

あの3枚のヴェノミナーガさんと同じぐらい禍々しいカードは何なんですかねぇ…。

 

しかし、カード化早いなあ。前にペガサス会長が使ってたバトルドレスみたいな奴を持ってきてたのか。

 

俺の絶妙な表情を受け取ったのかヴェノミナーガさんが話し掛けてきた。

 

『ちなみにあのカードですが、対破滅の光用の最終兵器ですよ』

 

破滅の光ねぇ…昔、ヴェノミナーガが言ってたが確か、全てを滅ぼさんとする巨大な悪意の塊みたいなもんだったかな。

 

それに立ち向かうのがヴェノミナーガさんみたいな優しい闇の力を持った連中なんだよな。こんな胡散臭い話を普通に信じられる自分にビックリだが…。

 

『あの3体を世に送り出せば、破滅の光に立ち向かえるほど強く、また自分にとって居心地の良い闇の心を持つ者を探すことでしょう。まあ、それまでに死者が出ないとも限りませんが、その辺はコラテラルダメージでしょう。何時破滅の光に襲われても良いように戦力を増やしておくべきですからね。ペガサスさんも了承済みです』

 

そうか…まあ、地球のためなら仕方ないな。俺が死ぬまではいつも通りの世界であって欲しいしな。

 

ん?

 

「遊戯さんとか、海馬社長とか、馬の骨とかに渡せばいいんじゃないのか?」

 

そう言うとヴェノミナーガさんは呆れたような表情になった。

 

『マスターは自分と最も仲の悪い人の使用済みの上履きを使いたいですか? カードとはいえ選ぶ権利ぐらいあると思いますよ』

 

……ああ、なるほど。使えるけど使われたくないわけか。

 

『ちなみにマスターはあのカード欲しいですか? マスターなら使いこなせるとは思いますよ』

 

「でも御高いんでしょう?」

 

『いえ、多分、ペガサスさんに言えば貰えますよ? ただ、あのカード達は個性が過ぎるので、日常生活に1枚につき私が1人増えるような状態になると思いますが…』

 

ちょっと想像した…………ウボァ。

 

「…………俺はヴェノミナーガさん一人で十分です…」

 

『ウフフ、それは嬉しい』

 

ヴェノミナーガさんは優しい口調とは裏腹に全力でガッツポーズしながらそう言った。

 

『ところでマスター。1つ気になる事がありませんか?』

 

「なにが?」

 

『それはもちろん…』

 

ヴェノミナーガさんは腰に手を当てると、俺の目の前に胸が来るように屈んだ。

 

『私のスリーサイズです!』

 

(ヒップ)どこだよ」

 

『冗談ですよ! 冗談! ……3割ぐらい』

 

ほぼ本気じゃねぇか。

 

『残りは乙女の淡い期待です!』

 

「………………」

 

『そんな回らない寿司屋の水槽の魚を見るような顔をしないで下さいよ!? こほん…ペガサスさんの事ですよ』

 

ペガサス会長の?

 

『その顔はやっぱり、興味アリですか』

 

ヴェノミナーガさんはカードを何枚か取り出した。

 

どれも大したカードではないがなんだろうか?

 

『これらはペガサスさんが、石版を見て造ったカードなんですよ』

 

へー。

 

『これを見て不思議に思いませんか?』

 

「はい?」

 

別になんの変鉄もないカードだ。不思議? はて?

『答えは色です』

 

色…………? ああ!

 

『そう、博物館でも見た通り、石版に色はついていません。エジプトなら砂岩単色ですね。にも関わらずペガサスさんはなぜ的確に精霊の色通りのカードを作ることが出来るのでしょうか?』

 

確かに……精霊には初めから色ついてるもんな。

 

『先に種を明かすと、ペガサスさんには精霊を見る能力は無くとも、精霊を描く能力があるということです。正にクリエーターの鏡ですね』

 

「なるほど…」

 

『まあ、私が言いたかった事は人が持つデュエルモンスターズに纏わる能力にも色々あるということですよ。例えばマスターは精霊の健在化と、破壊が特に得意ですよね?』

 

「ああ」

 

ヴェノミナーガさん曰く、俺が精霊のカードを所有しているだけで精霊は自分の力を一切使わずに具現化出来るらしい。

 

まあ、モウヤンのカレーを具現化して傷を癒したりも出来るけどな。

 

あ、どうでもいいけどモウヤンのカレーって相手か自分を選択して回復出来るんだぜ? マジでどうでもいいけどな。

 

『まあ、この世にはブルーアイズを宿している女性もいましたから今更驚く事でもありませんか』

 

ヴェノミナーガさんがチラリとキサラさんを見た。

 

俺もつられてそっちを見る。

 

キサラさんは顔を上げて俺とヴェノミナーガさんとの話を聞いていたようで、それがバレた事に気付いたのか身を震わせると慌てて視線を下に向けた。

 

…………なるほど…。

 

『マスター? 社長が惚れるのもわかるとか思いませんでした?』

 

「エスパーか」

 

『残念、女の勘です』

 

そっちも充分怖いと思うがな。

 

『ところでマスター?』

 

「ん?」

 

『いい加減、そのカードを見つめながらニヤニヤするの止めたらどうですか? キサラさん若干怖がってますよ?』

 

「だってお前…」

 

俺はずっと手元にあるカードを何度目かわからないがヴェノミナーガさんに見せた。

 

王家の神殿

永続魔法

このカードのコントローラーは、罠カードをセットしたターンでも発動できる。

また、自分のフィールド上のこのカードと「聖獣セルケト」を墓地へ送る事で、

手札・デッキ・融合デッキからモンスターカードを1枚選択し、特殊召喚できる。

 

圧倒的、王家の神殿である。

 

しかも、ただの王家の神殿ではない。

 

デッキケースで、デッキと状況に応じてデッキに入れるカードの仕切り板代わりにされていたセルケトを見たマリクさんから貰った王家の神殿である。

 

ぶっちゃけ、BMGよりよっぽどうれしい。

 

『…………ダメだこりゃ…』

 

そんなやり取りをしながらふと、窓の外を見ると遠くに独特な形をしたビルが見えてきた。

 

 

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

 

 

とあるビルの一室。そこで片手に持つ小型端末を見ながら表情を歪めている人物がいた。

 

「ペガサスめ…」

 

それはデュエルディスク技術を世に広め、自身もデュエリストである海馬 瀬人その人だった。

 

彼の視線は小型端末に送られてきたメールに注がれている。

 

その内容はこうだ。

 

"海馬ボーイにプレゼントがありマース。きっと気に入りマース"

 

要領を得ないどころの話ではない。一切の詳細が謎である。一応、下の方に直接届けるので指定の時間に本社ビルで待っていてほしいなどと書いてはあったが。

 

問題はそのプレゼントとやらの差出人がペガサスな事だ。

 

社と社で提携に限りなく近い状態だとしても、ペガサス自体に海馬社長が快く思うかと言えば微妙なところである。

 

そのペガサスからのサプライズプレゼント。素直に受け取る気になれないのは当たり前に近いだろう。

 

時刻は間も無く指定の時間。

 

するとデスクの上の固定電話に内線のサインが出たため、スイッチを押した。

 

『I2社のヘリが到着しました』

 

「通せ」

 

一言だけ呟き、電話を切った。

 

「つまらん内容なら承知しないぞ…」

 

そう呟くと社長は背もたれに体重を掛け、天井を見つめながらその時を待った。

 

そして凡そ5分ほどたち、入り口の扉が開いた。

 

が、誰も入ってこない。

 

代わりにバタバタと紐で上半身をぐるぐる巻きにされた小柄な人間が暴れるような音が響いた。

 

『たくっ…往生際が悪いってんですよ。大人しく愛しの彼に養われなさい!』

 

「こ、心の準…」

 

『知るかボケぇー! 女は度胸です! そもそもこの期に及んでもじもじしてるのがいけないんでしょうが! 中には彼しかいませんよ? さあ、入って私の教えた言葉を言いなさい!』

 

「あ、あんなの恥ずかしい…」

 

『ああん? その中途半端な胸にはいったい何が詰まってるんですか!? ああ、中途半端だから今まで中途半端な引き籠りだったんですね! 私納得!』

 

「ち、違っ…」

 

ドアの横の廊下で女性が二人言い争っているのが聞こえてきた。

 

片方が凄くうるさい、さらに下品である。

 

ペガサスはいったい何を持ち込んできたのだと頭が痛くなりそうな海馬社長だったが、その声の片方が妙に懐かしいという不思議な感情が涌き出ていた。

 

「や、止め…」

 

『むしろひん剥いてやりましょうか? 色仕掛けならイチコロですよ! ゲヘヘ…ボブァ!?』

 

『ゲヒャヒャヒャ!!』

 

かと思えば鈍い音と共に何かが吹き飛び壁に当たる音が聞こえた。

 

「きゃっ!?」

 

その弾みでか、部屋の中に体勢を崩した1人の女性が入り込み、部屋のほぼ中央で倒れこんだ。

 

海馬社長はその女性を見て目を見開いた。

 

それは白銀の髪に白魚のような肌をし、白い薄手の服にカーディガンを羽織り、青いスカートを履いた女性だった。

 

その女性が顔を上げると、深い青色の瞳が海馬社長を射ぬいた。

 

「な…!?」

 

「あ……」

 

互いの思考が完全に停止し、永遠とも言える一瞬の時間が流れた。

 

どこかの蛇神が壁にぶち当たっていなければ目と目が合う~などと歌い出しそうな光景である。

 

「わ…わた…私…」

 

先に動いたのは意外にも女性の方だった。

 

そして、一度呼吸を整え、しっかりと海馬社長を見据えた。

 

そして、頬を真っ赤に染めると目をぎゅっと瞑りながら口を開いた。

 

 

 

 

「わ、私がプレゼントです!!!!」

 

 

 

 

海馬社長がアテムにマインドクラッシュを受けた時のような衝撃を受けたのは言うまでもない。

 

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

 

生暖かい目で一部始終を見ていた俺とペガサス会長はドアを閉めると2人で歩き出した。

 

「そう言えばこの辺りには美味しい日本料理店がありマース。行きませんかリックボーイ?」

 

「賛成です」

 

俺は前が見えねぇ…とか言っているヴェノミナーガさんの手を引きながら童実野町へと足を進めた。

 

ビルの外に出た辺りでペガサス会長が口を開いた。

 

「それにしてもリックボーイ」

 

「はい?」

 

「本当に1枚も必要ないのですか? リックボーイらがこのカードたちの発見の最大の功労者デース」

 

ペガサス会長は懐から丸っこい図形だけが描かれたようなカードを取り出すと俺に向けてきた。

 

よりにもよってチョイスするか…。

 

というか、だいたいヴェノミナーガさんの手柄な気がするのだが…。

 

まあ、大発見だというのはわかる。

 

三幻神がアテムと共に古代エジプトに帰った今、破滅の光とやらに対抗する最終手段が1度に3つも見つかったのだからな。

 

邪神が最後の希望とは実に遊戯王らしいじゃないか。

 

「いりません。だってほら…」

 

『にょろーん!』

 

ペガサス会長には見えないだろうが、現在俺に絡み付いているヴェノミナーガさんを見つめながら言った。

 

「俺の神様はコイツだけですから」

 

「そうですか…」

 

「でしたら何かカードを1枚贈呈しましょう! 何でも構いまセーン!」

 

そう言ってペガサス会長は両手を広げ、俺に向けた。

 

ん? 今、何でも構わないって言ったよね?

 

ってことは……アレでも良いってことか…?

 

『何ですかその顔? 何か欲しいカードでもあるんですか?』

 

ひとつある。間違いなくペガサス会長にしか出来ない頼みで、唯一のカードが。

 

初めて見て、度肝を抜かれたもんだ。

 

まさか、まだ残ってるとはな…ダメ元で聞いてみるか…。

 

『………………まさか…』

 

ヴェノミナーガさんは俺の欲しているカードに気がついたのか表情を引き攣らせた。

 

「なら……」

 

俺はしっかりとペガサス会長の目を見つめながら呟いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「"ラーの翼神竜"のコピーカードをください」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




研究用に唯一残るラーの翼神竜のコピーカード。つまり、ヲー。※GX85話参照

ぶっちゃけ、大会を経てI2社をスポンサーにした理由はこのカードが欲しかったからだったりします。

しかし、このカードの凄まじいところはラーの翼神竜のコピーカードだからというわけではありません。このヲーじゃなきゃ、ダメなんです。

古代神官文字を唱える必要もなく、ゴッドフェニックスモードは全体効果。墓地から特殊召喚された時ではなく、普通に効果を発動出来るというまさかの本家の完全上位交換のヲー。コピーってどういう意味なんでしょう? ホムンクルスかな?

ぶっちゃけ本物の方が遥かに弱ry)。


『俺の神様はコイツだけですから(神様のコピーカードを使わないとは言っていない)』

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