誰か私に6Vメタモンを下さい(威圧)。
色違いメタモンなんていらないんですよ…。
上陸
日が傾き始めた頃。
俺は船着き場の船に紐を括り付けるゴルフのヘッドみたいな奴に座っていた。
本来、お昼頃にここへ来る予定だったのだが少々嬉しい誤算があったからだ。
なんとヴェノミナーガさんの次元断ルーラにここが登録されてたのである。
そのため、諸々を経由した上で連絡船やらヘリやらで来る必要などが無くなったのだ。浮いた時間で島の散策でもするとしよう。
「それにしてもヴェノミナーガさんはここに来たことがあるんですね」
『ほにゃ? ありませんよ?』
え……?
『ほら、私が前に憑依した人いるでしょう?』
ああ、藤原 雪乃ね…そういやアイツもここに入学してるんだっけか。
たまにメール寄越してくるんだよな。自撮りの写メとか。
『彼女の中に私の欠片が残っているので彼女が来た場所にも行けるんです!』
そうヴェノミナーガさんは誇らしげに言った。
変なところでボス補整みたいなの使うの止めてくれませんかねぇ…。まあ、使わせて貰ってる手前口には出さないが。
『お、第一村人発見ですよ!』
ヴェノミナーガさんの指した方向を見ると灯台の近くでオシリスレッドの赤い服を着た生徒が波消しブロックの上で何かしているのが見えた。
ふむ…折角だしデュエルアカデミア本館の場所でも聴くか。
『でも個人的には私の移動より、ボードに乗ってイヤッッホォォォオオォオウ!とか言いながらカーゴボブから飛び降りたら楽しかったと思いますよ?』
「誰がやるんだそんなアホなこと…」
そう言えば最近、エド・フェニックスとかいう名前の新人ランカーの後輩が出来たんだ。
俺の友人に占い師がいてソイツの友人のプロ入りを手伝ってほしいとのことで企業や審査会等に色々と……まあ、色々と手を回し、
ちなみにその占い師なのだが、俺の未来だけは全く見えないらしい。
俺からするとペテン師か何かに見えんでもないが他者からの評判が良いことと妹が可愛いから多分本物なんだろう。うん。
なぜか未来が見えない俺を偉く気に入ったらしく、それから交流があるのだ。
まあ、ヴェノミナーガさんはあまりエドの事を気に入ってないらしく…。
"ただの独り善がりの
と散々な評価である。 まあ、ヴェノミナーガさんは腐っても神様だし何か見えているんだろうな。
そんなことをしている内に数百m移動し、生徒の後ろへ移動した。
「おーい! 翔ー! どこだー!」
しかし、その少年は波消しブロックの隙間に声を張り上げることに夢中でこちらに気が付いていないようだ。
翔とはフナムシか何かなのだろうか? と思いながら光景をどうしたものかと見ているとオシリスレッドの生徒がふと振り向き、俺と目線を交えた。
「へ…?」
だが、生徒は間の抜けたような声を上げ、目線をさらに俺の斜め上へと移動させる。
そして指を指しながら歯をガチガチと鳴らしながら目を見開いた。
「な、な、な…………」
そして次の瞬間…。
「なんじゃこりゃあぁぁ!!!?」
絶叫が木霊した。
『ほへー、見える人ですねー』
「そうだな」
それを聞き流しながら感心したような言葉を吐くヴェノミナーガさんと、それに条件反射のような素っ気ない相槌を打つ俺。
最近、極稀に起こるこの反応に慣れてきた自分が悲しい。
『慣れていくのね…自分でもわかる…』
軟弱者!!
◇◆◇◆◇◆
「いやー、スマン! お前の精霊だったんだな!」
「気にするな。よく言われる」
オシリスレッドの生徒……もとい遊城 十代は頭を掻きながらそう言ってきた。
今のところ目に見える範囲で憑いている精霊はハネクリボーのようだが……デュエルディスクに付いているデッキを見る限り数だけで言えば俺より多そうだ。
そうだな…アニメはDM以外見ていない俺でもわかる。
コイツ……主人公だな。
名前に遊が入ってるし、既にうろ覚えだがCMなどで顔はみたような気がする。
やったぜ。これでコイツの周りにいればどんな闇の~とか、デュエリスト集団の~とか、破滅の光の~とかの生命に関わる問題が起ころうと最終的には助かるのが約束されたようなもんだ。
そんなことを考えているとハネクリボーを抱きながら撫でているヴェノミナーガさんが目に入った。
何だかんだ言ってもデュエルモンスターズの神様の一柱なんだな。他の弱いモンスターには優し…。
『おー、中々上物の毛玉ですねー』
『クリクリ~♪』
前言撤回。クリちゃんアカン、ソイツお前をカシミアのセーターとかを見るのと同じ目で見てるぞ…。
「うおっ!?」
俺は突如、後ろへ軽く20m程ジャンプし、遊城から距離を取った。
ははは、無駄な身体能力の高さに驚いてるな。でも闇のデュエリストならこれぐらい最低限度の標準装備だぞ? 身体強くなけりゃあんなデュエルやってられん。
「スゲー…何食ったらそんなの出来るんだ?」
「煮干し…?」
あれ美味いよね。安いし。でも1日にあんまりボリボリ食べてると砂の魔女が"食べ過ぎはめっ…"って言って袋取り上げて来るんだよな…解せぬ。
「それなら俺にも出来そうだぜ」
「まあ、なんだ…折角だしここはひとつ…」
俺はデュエルディスクを開いた。
いつも思うが俺のデュエルディスクは開くと言うより、伸ばすが正しいよな。
「デュエルでもどうだ?」
『いや、なんでそうなるんですか』
ふわふわ浮いているヴェノミナーガさんがそんなことを言ってきた。
何を言っている。ポケモントレーナー同士の目線が交差するとバトルになるのと同じように、デュエリスト同士が出会ったらデュエルになるのはこの世の真理だろう。
『いや、そのりくつはおかしい』
良いんだよ。ポケモントレーナーと違ってもう自己紹介は済ませたし、勝っても金は巻き上げないし、動物愛護団体が出て来そうなこともしてないしな。
『あの子が了承しないで…』
「おう! いいぜ!」
遊城は即答でデュエルディスクを展開した。
『ちょ…』
ヴェノミナーガさんを無視し、俺はその言葉を吐いた。
「「デュエル!」」
リック・ベネット
LP4000
遊城 十代
LP4000
「へへへ、先攻は貰うぜ!」
マジかよぉ。
「ドロー!」
手札5→6
「俺は"E・HERO フェザーマン"を召喚!」
E・HERO フェザーマン
星3/風属性/戦士族/攻1000/守1000
風を操り空を舞う翼をもったE・HERO。天空からの一撃、フェザーブレイクで悪を裁く。
フェザーブレイクで裁ける悪は少ないため、E・HEROらしく融合するのが基本となる緑色の翼男が召喚された。
E・HERO フェザーマン
ATK1000
ああ、E・HEROデッキか…まあ、この世界の人間なら引きの強さだけで回せるんだろうな。俺も言えたものではないが。
「ターンエンドだ!」
遊城 十代
手札5
モンスター1
魔法・罠0
『はぁ…』
世界最高ランクのデュエリストでもあるヴェノミナーガさんが溜め息を付いていた。
まあ、この世界ではそう珍しくもないプレイングなのだが……どうもデュエリストの皆さんは事故ってもないのに1ターン目にモンスター1体を攻撃表示で素出ししてそのままターンを終わらせたがるのだ。
4000しかないLPに無駄なダメージを喰らって何が楽しいのかわからんが……まあ、俺がその行為を理解することは一生ないだろう。
まあ、今はデュエルを通して遊城が学べばそれはそれでいいか。
「俺のターン、ドロー」
手札5→6
「俺は"火炎地獄"を発動。相手ライフに1000ポイントダメージを与え、自分は500ポイントダメージを受ける」
「あっち!?」
カードから出た業火がフィールドを覆い尽くし、二人にダメージを与えた。
十代
LP4000→3000
リック
LP4000→3500
「俺は"ダーク・エルフ"を召喚」
ダーク・エルフ
星4/闇属性/魔法使い族/攻2000/守 800
このカードは1000ライフポイント払わなければ攻撃できない。
フィールド場にホーリー・エルフの容姿を褐色肌に薄紫の髪色にしたような魔法使いが現れた。
要はホーリー・エルフの2Pカラーである。
「ダーク・エルフ…?」
む? なんだその目を輝かせながらもなにそのカードと言いたげな顔は?
全く…最近の若いもんはこのカードも知らんのか…。
強い(確信)、重い(対価)、可愛い(重要)の三拍子揃った素晴らしいカードだぞ。
「手札から"巨大化"を装備。効果により俺のLPがお前のLPを上回っているため、元々の攻撃力を半減する」
ポンッと音が立ち、煙が上がったかと思うとダーク・エルフを小学生ほどに縮めたような少女が立っていた。
ダーク・エルフ
ATK2000→1000
ダーク・エルフ(ロリ)は俺をにらみつけるでこうげき。俺のぼうぎょりょくはさがった。
うるさい。そんな目で見るな。
大体、女性型のモンスターは他のデス・ガーディウスとかと違ってサイズが半減、倍増するのではなく、半減=ロリ化、倍化=サイヤ人化するのがいけないんだ。
それが楽しくてほぼ全てのデッキに巨大化を入れているという事実無根の事実は一切無い。
「バトル、"ダーク・エルフ"で攻撃」
「態々、同じ攻撃力に下げて攻撃?」
ダーク・エルフが動く前にフェザーマンが動き、ナイフのような羽を放つフェザー・ブレイクをした。
それをモロに受けたダーク・エルフが1歩後退する。
ダーク・エルフは渋い顔をすると瞬間移動し、俺の背後に現れた。
ここまで精霊たちによるただの演出である。
うん、やっぱり精霊の力どうしがぶつかるとソリッドビジョンとは一味違うな。
「この瞬間、"ダーク・エルフ"の効果発動。このカードが攻撃するためには1000のLPを払わなければならない」
背後に立つダーク・エルフは俺の首筋へジャンプするとなんの躊躇もなく噛み付いてきた。
あ、ちょ…痛い痛い! マジで1000ポイント分のマナを吸おうとするな!
リック
LP3500→2500
俺からマナを吸ったダーク・エルフがフィールド場に戻ると、その姿はカードに描かれた元の身体に戻り、さらに全身から黒いオーラを放っていた。
「俺のLPがお前を下回ったことにより、"巨大化"の効果が変化。よって"ダーク・エルフ"の攻撃力は倍になる」
ダーク・エルフ
ATK1000→4000
「攻撃力4000!?」
あ、やべ…手加減忘れてたけど別にいいや。
ダーク・エルフが掌をくいくいと曲げ、フェザーマンを挑発するとフェザーマンはダーク・エルフへもう一度、ナイフのような羽……ではなくダーク・エルフへ接近して拳を突き立てた。
が、通るハズもなくダーク・エルフにより優しく手で止められた。こちらからは見えないがダーク・エルフはさぞナメ切った目をしているに違いない。
それを見たフェザーマンは距離を開けると翼を大きく羽ばたかせ、強力な風と羽の刃を放った。
しかし、今度は全身から放たれている黒いオーラにより全て止められてしまった。
「"ダーク・エルフ"の攻撃。ワード・オブ・ソウルスティール」
ダーク・エルフが向けた片手が黒く光り、フェザーマンの全身が黒い光に包まれると身体から緑色の魂のようなものが吐き出され、それはダーク・エルフの手に吸い込まれてしまった。
フェザーマンは膝をつき、ゆっくりと地面に倒れると一言呟いた。
『フェザーブレイクが完全に入ったのに…』
次の瞬間、フェザーマンが爆発し、デュエル終了のブザーが鳴った。
「フェザーマン!!?」
ブザーの音よりも遊城の悲痛な叫び声が頭に残った。その気持ちはわかる。
遊城
LP3000→0
『いやー、実に面白味の無い戦いでしたねー』
「俺、カード3枚しか使ってないものな」
終了後、俺、ヴェノミナーガさん、遊城、ハネクリボー。
それと俺のマナを吸い上げたために実体化しているダーク・エルフが話し込んでいた。
どうやらコイツはまだ精霊が見えてから日が浅いらしく、精霊などについてなんも知らなかったので情報交換をしている。
代わりに俺はデュエルアカデミアの情報を得ているからWin×Winだ。
ちなみにヴェノミナーガさん曰く、俺のマナはLP100程で1週間サーヴァントを普通に使役出来るぐらいの力があるらしい。序でに総量も半端ないんだとか。
例えが意味わからねぇ……まず、サーヴァントにどれだけ魔力が必要なんだ…。
「それにしてもスゲーなリック! あんなに高い攻撃力のモンスターを1ターンで作るなんて…」
ちなみに遊城がリックと呼んでいるのは馴れ馴れしく呼んでいるわけではなく、俺がリックと呼べと言ったからである。べネットなんて呼ばせません。
「なあ? ところでなんかどっかで見たことある気がするんだが…気のせいか?」
………………。
「さあ? 他人の空似だろう」
「そうかぁ?」
人間というものは単純で鈍感な生き物で目で見た者だけでは中々断定しようとしない。最低、2~3つぐらいの根拠が必要だ。
例えば目の前からアロハ姿の大統領がセブンのコンビニ袋を手に下げながら歩いてきたとして、顔や背丈に覚えがあるからというだけでそれを即座に大統領だと認識し、握手でも求めに行けるだろうか?
俺なら絶対できないな。まず、目を疑い、他人の空似だろうと結論付け何事もなく通り過ぎる。
それが大多数だというのが俺調べの結果だ。
と、言うわけで目の前の遊城も何か引っ掛かってはいるようだが、それ以上は踏み込まなかった。
「それより今度は守備表示に出しとくか魔法・罠張らないとダメだぞ?」
「そうだな……くそっ…なんか悔しいな。もう一回やろうぜ!」
そう言ってデュエルディスクを構えてくる遊城。
ほう…今度はBMGを見せてやろう…。
そう思いながらデュエルディスクを再度構えようとしたところでさっきの事が気になった。
「なあ、お前はここで何をしてたんだ?」
「へ?………………ああ!」
そう言うと遊城は暫く止まってから口を大きく開いたので耳を軽く塞いだ。
「そうだぁぁ! 翔ぉぉ!」
そう吐き叫ぶと俺にから離れ、内陸方面へ全力で走って行ったが、途中で止まり、こちらに振り向いた。
「ごめんな! 今、翔探してるからまたデュエルしような!」
それだけ言うと遊城は今度こそ走り去っていった。
俺は翔とはフナムシかアザラシの仲間なのだろうか? などと思いながらその背中に向けて小さく手を振っていることしか出来なかった。
『…………そう言えば
ヴェノミナーガさんの何気無い問いに俺は振っていた手をグーにし、人差し指を空に突き立てるように上げると言葉を吐いた。
「ん? ああ、アイツらね。アイツらは多分、今頃…」
◇◆◇◆◇◆
「あらあら、子連れのシングルマザーが暫く、アルバイトに来るって聞いてたけどこんなに可愛らしい娘たちだったのね~」
「私とラーちゃんをよろしくお願いします…トメさん…(ラーちゃんも…挨拶…)」
「よ、よろしくお願いするぞ…(納得いかないぞ…なぜこのあたしが娘…)」
「あら~、若いのに大変だろうけど頑張ってね!」
「がんばります…(ラーちゃんをこの島に連れて来るには…これしかないの…)」
「ぐすん…(もう…好きにせい…)」
◆◇◆◇◆◇
「ってな精霊同士の念話を交えた会話が本館の購買部辺りで行われているんじゃないか?」
『バイトさせてるんですか!?』
と言うか砂の魔女を学生はいくらなんでも無理だろ。それとは逆だが、同じ理由でラーも無理だ。
「前々からしたいとは砂の魔女が言っていたんだが……
『過保護ですねー。ああ見えてあの娘たちは敵対者に容赦ありませんよ?』
「それが問題だ。強盗犯とか万引き犯を一々、石化させて砂にしたり、限界ギリギリまで炭化焼した死体にしたら捕まるだろ」
『ああ…』
まあ、ラーちゃんは一人で家に残しといたら寂しさで本当に死にそうだからだがな。
ちなみにウサギは寂しさでは死なん。というか野性動物が孤独で死ぬわけがない。
死ぬとすれば人間だって狭い牢に幽閉され、そのまま誰とも会話もコミュニケーションも出来ずにただ生きる屍のように生かされたら生きる活力を失って結果的に死ぬだろう? つまりはそう言うことだ。
寂しさでは死なないからってペットはケージから出して遊んでやれよ? 生きてるんだから。
『その優しさを半分でも私に下さいよ!?』
「神様は生き物じゃない」
『ぐぬぬ…』
そう言い放ちながら俺はデュエルアカデミア校舎へ向けて歩き出した。
ちなみにこのごく普通のデュエルが発生した理由は勿論、本戦で十代くんがフェザーマンを攻撃表示で召喚! ターンエンド! なんてことを考えないようにするためです。