ヴェノミナーガ
諸悪の根源。元を辿ればコイツのせいなど、何かにつけてだいたいコイツが絡んでいる。神のカードのクセに全く威厳がない。ポテチは箸で食べる派。
仮面魔獣デス・ガーディウス
どんな環境においてもキャラのブレない程度の能力を持つ精霊。意外にも音楽鑑賞が趣味でジャンルは問わない。
砂の魔女
土より軽い砂の名を冠し、砂塵を自在に操れたらいいなと考える家政婦。趣味は部屋の緑化。
ラーの翼神竜
ラーの翼神竜……のコピーカード。そのため、正確にはヲー辺りの名前が妥当。好きなテレビ番組は月曜から夜更かし。
インセクト女王
デス・ガーディウス同様マスターに忠実な精霊。身体の柔らかい部分が人をダメにするソファー並の破壊力があるらしい。
制裁タッグ……もとい制裁デュエルが終了した夜。
オベリスクブルー寮の天井の高いホールでは白いテーブルクロスの掛かった丸テーブルが並んでおり、オベリスクブルー寮生は飲み物や食事を手に取り、何故か立ち食いで晩餐会のようなモノを楽しんでいるようだ。
食事は壁に沿うようにビュッフェスタイルで並んでおり、学生と言えば食堂と食券な俺のイメージを粉々に破壊してくれている。
生憎だが、俺の感性は極めて庶民的なのだ。何より場違いなようで息が詰まる。そもそも立ち食いってお前…。
『今日が特別なんじゃないですか? 普通に食堂はありましたよ』
まあ、そうだよな。こんなに手間の掛かりそうな食事をいつもはやらないだろう。ホグワーツじゃあるまいし。
『マスターなら間違いなく……スリザリン!』
「うるせえバジリスク」
俺はと言えば主賓席と思われる場所で、無駄にふかふかの椅子に座って食事を取っている。
ちなみに隣に置かれた椅子に常人にはフルステルスのヴェノミナーガさんが座っており、横から次々と俺が運んできた食べ物を手の口でかっ拐っていく。お陰で俺がフードファイターのような速度で量を喰っているように見えるが、もう慣れたものである。
その昔、ヴェノミナーガさんを一食抜きにしてみたらいつの間にか厨房に忍び込んで料理人に催眠を掛け、料理を作らせて食べていた事があったのである。
そういや、アタック・フェロモンのカードでヴェノミナーガさんがそんなことをやっていた気がしないでもないが、そんなことの為にイチイチ洗脳される料理人の方々が不憫で仕方がないのでちゃんと食事を取らせているのだ。
「ん?」
『む?』
大きなローストビーフの一枚肉が、ヴェノミナーガさんの手と俺のフォークで両端から押さえ付けるように引っ張られる。更に互いに一歩も譲らずにカタカタと肉の乗った皿が悲鳴を上げ始めた。
この通り、要するにヴェノミナーガさんは1日三食おやつ付きを常に要求してくる非常に傍迷惑な神様なのだ。オラリオでファミリアでも開いて社会貢献でもしやがれ。
ちなみに割りと普通にヴェノミナーガさんと小声で会話をしている理由は俺の席の半径10m程に人が居ないからである。
テーブルは用意されているが、流石にほぼ初対面の俺の側に寄ってまで食事をする神経のある人間は一人もいないらしい。その代わり更に十数m程の半円形の人のいない地帯が出来上がり、その外に人がいるといった様子だ。
実にいい傾向だな。人間は好奇心だけでは身を滅ぼす一方、それがなければ何も始まらない。
とは言え、"触らぬ神に祟りなし"。俺以上にこの言葉を長年噛み締めている者はいないだろう。だからいい加減その意地汚い手を放せや。
『食事は戦場です。蛇は鼠を狩るのにも全力を尽くすのです!』
「ビュッフェに戦場も何もあるか」
『だったらまた取ってくればいいじゃないですかー!』
ちきしょうコイツを崇めてたのはいったいどこの部族だ…? お前らの供物が足りなかったからこんなに残念に育っちゃったんじゃないのか!?
「あ……」
『まうまう♪』
健闘虚しく蛇神に肉を持っていかれてしまった。また取ってくるか……。
「随分楽しそうね」
敗北に若干放心していると隣から声が掛けられる。見ればそこには容姿だけは超一級品の紫色のツインテールが何処かから持ってきた椅子に座り、あたかも最初から俺の隣にいたかのような驚異の神経の図太さで食事を取っていた。
その様子には外野の生徒達からも小さな歓声が上がる程である。
「おま…」
「コレあげるわ。少し多く取り過ぎてしまったみたい」
俺が何か口を開く直前に藤原の皿のひとつから俺の皿に大きなローストビーフが移動して来た。
…………………………。
表現全般が湾曲していて、性格が微妙な方向に捻れ狂っている事を除けばいい奴なんだよな。
『チョロいな、かくしん』
うるせえチョロヘビ。
『ニホンカナヘビはトカゲですよ…』
「ん…?」
藤原が隣に来たため、何と無く外野の生徒を確認しているとその中でチラチラとこちらを見ているピンク髪の女子生徒が目に入った。
………………………………。
…………………………。
……………………。
………………。
…………。
……。
オウフ。
完全に彼女の存在が頭から抜けていた…俺が真っ先に話さなきゃならないのって彼女じゃないか。
俺は若干焦りながら席を立った。
◆◇◆◇◆◇
「うぅ……」
食事の席の一角で生徒同士の声にすら掻き消されてしまうような不安げで小さな声が上がる。
見ればオベリスクブルー女子のひとり、ツァン・ディレから放たれたモノであった。
彼女の人となりを知る者が見れば一目で異常だと判断するだろう。それほどまでに今の彼女は弱々しい。
そんな彼女の視線はこの晩餐会の主賓とも呼べるような存在である現役プロデュエリストかつこの学園の同級生、にして彼女の友人でもあるリック・ベネットに注がれていた。
ツァン・ディレとリック・ベネットの出会いはそこそこ運命的なモノである。袖振り合うも多生の縁。誰にも言わないが少なくとも彼女はそう思っている。
そして、 その縁から数年来の交友を持つ。まあ、現代とは不思議なもの。Skypeなどで週に1~2回は通話をしており、チャットはほぼ毎日程度の凄まじく遠距離から繋がっているだけであるがそれでも交友があると言えるだろう。
彼女にとって彼は友人であり、恩人であり、憧れであり、そして初恋の人でもあったのだ。
だから彼には秘密だが、彼が日本にあるデュエルアカデミア本校に入ると聞いた瞬間、志望校を投げ捨て、デュエルアカデミア本校中等部をトップクラスの成績で入学したりした。
まあ、それは結果的に彼女の空回り……というか聞き足らずだったわけだが…。どちらが悪いかと問われればなんとも言えないだろう。
ちなみに彼との話題作りや通話出来る時間を伸ばすためだけにPS4を購入したという購入動機も彼には秘密である。意外とハマったのは地球防衛軍4.1と、トロピコ5である。
そして、いざ彼を前にして、彼女も何か一言言ってやろうと今日の今日まで色々と考えていた。
だが、数年振りに実物の彼を目にした時にその全てが飛んでしまったのだ。
一言で言えばデュエルリングに上がった彼はデュエリストで有り過ぎた。
怪物か何かと見紛う程肌で感じるだけで嫌悪感と焦燥感を覚えるオーラ、真っ直ぐで殺人的なまでに余裕を浮かべた瞳。 さらにコレだけの人の前に立とうとも震えひとつない芯の通った声と、常に威圧的な言動は"覇王"などと常人には些か過ぎた例えをしても違和感がまるでないだろう。
最早のろけ話か何かに聞こえるが、要するに数年振りに現実で見た彼はテレビの中で見る彼よりもずっとずっと格好の良いものに映ったのだった。
そして、デュエルも終わり食事時。デュエルリングに立っていた時とは対照的に朗らかで優しそうな青年に映らないでもないが、案の定誰一人として彼に寄り付く者は居なかった。彼は慣れているのか全く意に返した様子はないが。
そんな最中、生徒から小さな歓声が上がる。それは彼の隣にとある女子生徒が現れ、そこで食事を取り始めたからだ。
地雷源でタップダンスを決めるような偉業を成し遂げたのは、デュエルアカデミア本校でも有数の変わり者である藤原雪乃だった。
それを見た瞬間、どろりと彼女の胸に何か黒くて熱いものが込み上げ、更に激しい焦燥感が襲う。
しかし、如何に頭で考えようともそれが一向に縮まる事はない。
そんな中、半ば睨むような目付きで彼を時より見つめていると、ふと彼が立ち上がった。
そして、徐々に彼と彼女の距離が詰まり、それに比例するように彼女の周りから生徒達が捌けていった。
そして、次の瞬間……彼に軽く抱きしめられた。
「え…?」
彼女の思考が止まり、身体が硬直する。そのまま彼が何か言っているようだが全身の至るところで起きている感覚によって会話を認識するどころではない。
そんな中、彼女が最初に拾ったのは彼の声ではなく、周りの生徒の視線と黄色い声であった。
「うひゃぁぁぁぁぁぁ!!?」
脳の熱が限界を越え、彼女は彼の腕を取ると全力で放り投げた。
彼がお手本のような綺麗な受け身から流れるような動作で立ち上がった頃には、彼女は既にホールの出口の角を曲がる寸前だったという。
この後、頭が冷えた彼女が自己嫌悪に陥るのは言うまでもない。
◇◆◇◆◇◆
挨拶をしたらツァンちゃんに背負い投げをされた上で逃げられるという悲しみを背負い、場に謎の空気が漂った夕食後。俺は早足で自室の扉の前に来ていた。
嫌な事件だったね…。上司に叱られ、反骨心を抱えながらも言われた事は直そうと考えるサラリーマンのような気分で扉を開ける。
ちなみにヴェノミナーガさんは気付いたら消えていた。まあ、あの人はいつもの事なので気にすることもない。神だけに神出鬼没ってか…? へへっ…。
「たまごさん♪」
自室に入って扉を閉めた瞬間、待っていたかのような鈴の鳴るような女性の声が聞こえた。
「たまごさん~♪」
またかと思いながら部屋を進むと、キッチンで微妙に見覚えのある後ろ姿を発見する。
「まぜまぜしましょ♪ まぜしましょ♪」
装いは紺のロングパンツに黒のロングセーター。背後からは見辛いが眼鏡のつるから察するに黒縁眼鏡を描けているのだろう。
「えーっと……うふ♪」
そして、紫陽花のような薄い藤色の長髪をポニーテールに纏め、エプロンを着けている。
「今日のケーキはどんな味♪」
身長は172cmぐらい、体重は57kg程。スリーサイズはたぶん上から88/56/84。というか間違いなく本人が狙って見た目だけは完全再現しているのでこれで合っている。
「ひっとさじふったさじ甘い味♪ あなたと私の……恋の味♪」
どうやら更に図っていたかのように手元のケーキ作りも終了したらしく、銀のお盆に平皿を乗せるとそこに綺麗に盛り付けた。
「ルルル ルルル……」
小癪な事に凄まじく手際が良いらしく、キッチンに汚れどころか既に製作道具の洗浄まで殆ど終わっている。
「たまごさんっ♪」
女性はお盆に乗せられたケーキを片手にクルリと振り返った。
それによりエプロンにはPIYO PIYOの文字と、ひよこが描かれている事がありありと見せ付けられる。
「はぁ………」
全てネタに走りながらそれらに全く鮮度がない。もう、こんな矛盾塊かつ残念な物体はこの世に一柱しか居ないだろう。他に居て堪るか。
「それで"ヴェノミナーガ"さん?」
そう、このどっかのエロゲ出身のサブキャラ(人気投票相方のヒロインより上)の容姿を丸パクりし、某女神様の呟きをしながら、某管理人のエプロンをしている小癪なバリエーションに富んだ遊星からの物体Xはヴェノミナーガさんその人なのである。
まあ、神の贋作の家のラーは基本的に人間形態でしか居ないため、今更驚くような事でもないな。ヴェノミナーガさんが人の姿をしている事は滅多にない……というか俺でさえ数ヵ月ぶりに見た。
ヴェノミナーガさん曰く、長生きをした精霊は人間に化ける事が出来るらしい。猫又か何かかお前らは。
確かに猫に出来て精霊に出来ないというのも可笑しな話のため、わからんでもない。だが、なんか納得出来ねぇ…。
ちなみにヴェノミナーガさんが製作したのはバターケーキなようだ。こんなところまで地味に古い辺り、最早天然なのかもしれない。
いや、それとも超古代神がさとり世代まで思考が進化しているのを褒めるべきなのだろうか…?
「はい! なんでしょうか?」
とは言え、ヴェノミナーガさんが人化しているとなると少々話が変わってくる。
ぶっちゃけ言おう。ヴェノミナーガさんが下手に出る理由なんて一つしかない。
俺は盛大に溜め息を吐いてから眼鏡の奥でにこやかな笑顔を浮かべているヴェノミナーガさんに質問を投げ掛けた。
「今度はいったい何を買って欲しいんですか?」
するとヴェノミナーガさんは顔を赤く染め、視線を手元に下げながら暫くモジモジと指を遊ばせてからポツリと呟いた。
「"DARKS○ULSⅢ"を買ってください…」
「そんなことでしょうねぇ…」
余談だがヴェノミナーガさんは卵を使う料理しか作らない。というか今のところ卵を使う料理以外を作っている光景を見た事がない。何でも料理を作るなら卵が無いとテンションが上がらないとか何とか。
ちなみに更に蛇足だが、買って貰う事の決まったヴェノミナーガさんは、"買ってくれるんですね。やったー!!"と一声上げると即行で元の姿に戻った。そして、嬉しげにPS4を立ち上げるとBloodborneの聖杯で地底人に戻りましたとさ。
『いやァァァァァ!? 愚者形状変化ゼンマイいやァァァァァァァァァァ!!!?』
また、ひとり地底人が獣に堕ちたか……こういう時の為に狩人がいるんだろ!?
そんなこんなで俺のデュエルマシマシの学園生活はスタートしたのであった。
ちなみにヴェノミナーガさんはDL購入組。作者はヤマダ電機で購入組。
ヴェノミナーガさんのネタはいくつわかったかな? 全部正確にわかった君にはオプーナを買う権利をやろう。