じゃしんに愛され過ぎて夜しか眠れない   作:ちゅーに菌

31 / 54
チラッ…

チラッ…

よし、今なら誰も見てません…ソロリ…ソロリ…更新してもバレません。






二人でただデッキを回しているだけ 前

 

 

制裁デュエルから数ヶ月経ち、その間に夏休みを挟みつつ現在はもう少しで冬休みと言ったところ。ヴェノミナーガさんの身体が入りづらいので一番後ろの廊下に面した席に座りつつ授業を受けている。

 

両隣りには最早慣れた光景の藤原と、何かといつも反応の初々しいツァンが座っている。両手に花と行きたいところだが、コイツら両方共に何処と無く残念な美人の香りがするので何とも言えない。ちなみにツァンは頭が沸騰すると物理攻撃が飛んで来て危ない。背負い投げしたのもほぼ無意識らしい。

 

少し遡り夏休みの思い出と言えばやたら泳ぎたがる藤原に促され、誘ったらついてきたツァンや、砂の魔女らや、暇そうな帰省していない生徒らを連れて3日に1度ぐらい行ったデュエルアカデミアの浜辺の事ぐらいか。

 

マイクロビキニやら、ブラジル水着やら、スリングショットやらとやたら際どいモノを着てくる藤原と、可愛い系の水着を着てくるツァンが対照的だったり、着痩せするタイプの購買のお姉さんこと砂の魔女の圧倒的なスタイルに二人が言葉を失ったりと中々珍妙なモノが見れた。

 

浜辺だけと言うのも味気無いので、材料費や、設備費は全て俺持ちでBBQをしていたら夏休みが終わる頃にはアカデミアに残っていたほぼ全ての生徒が浜辺に集合するようになり、軽いお祭りのようになっていたのも印象的である。まあ、それぐらいの費用なら聖なるバリアーミラーフォース1枚の値段にも遥か及ばないので俺の懐も安心である。

 

人が増えてきた夏休み中旬辺りでオシリスレッドの生徒たちを明らかに嫌悪しているオベリスクブルーの生徒らが出始めたりもしたが、それは俺が直ぐに穏便に解決した。

 

「……そりゃあ、その発端のオベリスクブルーとオシリスレッドの生徒までを1度のデュエルで全員のしちゃって、終わった後に"俺にとっては等しく見苦しいな"とか言われたら誰も君の前で問題を起こそうとする人なんて居なくなるでしょ…」

 

ツァンが若干呆れを含んだ半眼で俺を見ながらそう言ってきた。

 

それでいい。このアカデミアの格付け方式の寮体制的にそうなっているとも言えなくもないが、そもそもイジメというモノは人間が人間で有る限りは必ず発生する。思春期真っ只中の学生同士なら尚更だ。前世で多少人間発達学を学んでいた俺に言わせれば、全くイジメの無い事の方が人間社会としては異常だ。それは最早血の通った人間ではない。

 

だが、見てて気分の良いモノでもないから、俺の前でそういうイザコザが見えなければそれでいいんだ。

 

「本来は少し頑張ればラーイエローに上がれる筈なのに、オシリスレッドに留まり続ける生徒の学業態度にも問題がある。かと言ってオベリスクブルーにいる事を鼻に掛けるのも問題があるから両成敗しているって言いたいのよ彼は。相変わらず素直じゃないわねぇ」

 

「うるせぇ」

 

………そう言えば浜辺で時々海パン姿の鮫島校長が混じっている事もあったが、俺を含めて誰も突っ込まなかったな。あの人は小さなおじさんとかそういう類いの何かなのか。

 

秋はハロウィンのために砂の魔女の服装を奪ったヴェノミナーガさんが、例の人の姿になり、それを着て闊歩するという謎の事態が発生したぐらいで他に変わった事は特に無かったか。

 

『フィッシュ!!!』

 

突如、ヴェノミナーガさんの声が響き渡り、精霊の見える十代、藤原、俺はそちらを目を向ける。すると非常に長い尻尾を教卓まで伸ばし、今の講義を担当している冗長で特に面白くもない授業をする先生のカツラを尻尾の先端で奪い取っていた。

 

「ぶっほぉぉッ!!?」

 

「カツラが宙に浮いてるっス…」

 

「ミステリーなんだな…」

 

状況を理解出来ている為、噴き出す十代とカツラを眺めるオシリスレッドのふたりを他所に、ヴェノミナーガさんは開いている窓からカツラを放り投げた。人間を遥かに越えた大蛇の凄まじい筋力から放たれたカツラは、昼の星になるように彼方へと飛んでいった。

 

その光景に口の端をひくつかせていた藤原も机に突っ伏して笑い始める。

 

『つッッッッッッまんねぇぇぇぇんですよ!!!! こんなの私が授業した方が遥かにマシです! そもそもデュエルを座学で覚えさせる事自体が謎じゃねーですか!』

 

デュエルモンスターズの神様ご乱心である。まあ、言いたい事は痛い程にわかる。例え根本は闇のゲームだと言えど、ペガサスさんのデュエルモンスターズの原点は遊びなのだ。その授業が楽しめない等デュエルの神的にはNGだったのだろう。だが、鎮まりたまえ。

 

俺はブイサインを出した。その瞬間、拳を振りかぶったデスガーディウスの上半身がヴェノミナーガさんの真横の床から生える。

 

『ッ!? そう何度も同じ手は喰らいませんよ!』

 

学習したらしいヴェノミナーガさんはいつもデスガーディウスに殴られる腹部を両腕で押さえた。それを見た俺はブイサインを上下に小さく振る。

『ゲッゲッゲ…!』

 

その直後、繰り出されたデスガーディウスの拳はヴェノミナーガさんに当たる直前で開かれ、軌道が斜め上へと変わる。

 

そして、いつの間にか俺と同じブイサインとなっていたデスガーディウスの2本の鈎爪は全く無防備のヴェノミナーガさんの両目をコツンとそこそこ優しく小突いた。

 

『イイッ↑タイ↓メガァァァ↑』

 

妙なニュアンスで叫びながら目を押さえてゴロゴロと床をのたうち回るヴェノミナーガさん。まだかなり余裕そうである。いつの間にか俺の足元で尻尾がバタバタしている。

 

「やり過ぎじゃないかしら…?」

 

「よく見ろ。喜んでる」

 

『ああ、もう少しで何か新しい扉が開けそうです…!』

 

こんなのがデュエルの精霊どころか、デュエルの神の中で、最強クラスの耐性を持つ事が売りの神のカードなのだから世も末である。というか基本的に耐性が反映されているのか現実でも何も効かないので質が悪い。

 

 

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 

 

 

「専用デッキが欲しい!」

 

ある腹立たしい程に晴れた日。部屋に引きこもる俺にラーがそんな事を言いに来た。陽だまりのような笑顔を振り撒く姿は完全に年相応に映る。

 

「自分用のデッキを作って欲しいのか?」

 

「そうなのだ!」

 

そう言えばラーだけは俺のデッキを転々としており、ラーデッキというものは存在しなかった事を思い出す。

 

まあ、確かに今までちょっと不公平かもしれないと感じないでも無かったが、急に言ってきたのは不思議だと思っていると、ふっふっふっ、とラーが可愛らしい声を上げながら目を瞑り、かっと目を見開くいた瞬間、俺の目の前に2枚のカードが出現した。

 

何やら誇らしげにその慎ましやかな胸を張るラーを横目に、俺はそのカードを受け取り眺めた。

 

「ほぉ…」

 

それを見た瞬間から感心を覚え、カードとラーを交互に見つめる。

 

どうやらラーはヴェノミナーガさんがやっていたようにカードを造ったようだ。その域まで力を高めたという事か。

「まだまだ"地祇(ちぎ)長様"には足下にも及ばないが、あたしのカードを生み出せるようになったんだ! それで精一杯だがな!」

 

カードを造るぐらいは高位の精霊ならば誰でも出来る事だが、その領域にただのコピーカードが足を踏み入れたのだから素直に喜ばしい事だな。

 

ちなみにラーが言う地祇長様とは三幻神、三邪神、時械神、ヴェノミナーガさん等の最高位の神格を持つ神の事を言っている。今の場合はラーの強化指導係りをしているヴェノミナーガさんの事だろう。ああ見えて、一応はスゴい神様なのだ。

 

まあ、突き詰めれば、その最高位の中でも神格に差があるわけだが、下のモノからすれば等しく見えるという畏敬を込めた呼び方だろうか。日々の態度のせいで忘れるが、ヴェノミナーガさんはあれでも一応は単独でその位にいる凄いカードの精霊だからな。

 

「偉いぞ、よくやったな」

 

「えへへ…」

 

褒める事となでなでを忘れない事が、このラーと上手く付き合う秘訣である。

 

早速、俺はデッキの構想を考えながら部屋のソファーに座り、2枚のカードをテーブルの上に置くと、1つのデッキケースから1枚のカードを抜き出す。

 

 

ラーの翼神竜

星10/神属性/幻神獣族/攻 ?/守 ?

このカードを通常召喚する場合、3体を生け贄にして召喚しなければならない。

(1):このカードの召喚は無効化されない。

(2):このカードの召喚成功時には(このカード以外の)魔法・罠・モンスターの効果は発動できない。

(3):生け贄召喚されたこのカードの攻撃力・守備力は、生け贄に捧げたモンスターのフィールド上での攻撃力・守備力をそれぞれ合計した数値になる。

(4):このカードは上級呪文であるカードの効果は1ターンのみ通じ、それ以外の効果は全て通じない。

(5):自分のライフポイントを100残すように払う事で、このカードの攻撃力・守備力は支払った数値だけアップする。

(6):自分フィールド場の他のモンスターを生け贄に捧げることで、そのモンスターのフィールド上でのステータス分の数値をラーの攻撃力・守備力に加算する。

(7):1000ライフポイントを払うことで、相手フィールド上に存在する全てのモンスターを耐性を無視して破壊する。

(8):このカードが「ラーの翼神竜-球体形」の効果以外で特殊召喚されている場合、エンドフェイズに発動する。このカードを墓地へ送る。

 

 

相変わらずOCGのヲーとは違い、神の名に恥じぬ性能である。だが、何と無くOCGっぽい効果も持っている辺りが、コピーカードらしさと言ったところだろうか。日々成長しているので能力(カードテキスト)がたまに変わるのも微笑ましい。

 

ちなみにこの何故か遊戯王R仕様の"このカードは上級呪文であるカードの効果は1ターンのみ通じ、それ以外の効果は全て通じない"という効果。範囲が広いチート耐性かと思いきや、三幻神の例に漏れず、何故か効くカードが多いので全く当てにならない。

 

正確には"このカードは上級呪文であるカードの効果は1ターンのみ通じたりする一方、ずっと通じる事もあり、それ以外の効果は全て通じないかもしれない"というのが妥当なところだろう。ヴェノミナーガさんのルール上の穴以外の全てに耐性を持つ効果を少しは見習って欲しいところである。

 

それとヴェノミナーガさんに"1000ライフポイントを払うことで、相手フィールド上に存在する全てのモンスターを耐性を無視して破壊する"という効果を使ってもラーでは絶対にヴェノミナーガさんを倒せないそうだ。ヴェノミナーガさんの能力であるその耐性は、本物のラーに神の進化を装備してのゴッドフェニックスですら耐えるレベルらしいので、コピーカードのラーには荷が重い。神という存在はこのように俺ルールを強いてくるので困る。

 

「それで、デッキの要望は?」

 

「太陽神たるあたしに相応しいデッキがいいな!」

 

「そうか……」

 

"今日の晩御飯何作る?"という問いに、"何でもいいですけど最近食べたモノと嫌いなものは嫌です"と答えられたような返答に困る微妙な気分になった。ちなみにヴェノミナーガさんがよくしてくる回答である。

 

それは兎も角、なるべく作るデッキは精霊の居心地の良いデッキにする事も重要だ。俺のように精霊と対話出来るものは直接精霊から聞けばいい、そうでないならばテーマデッキにするのが良いだろう。テーマではないカードが精霊ならば、そのカードをコンボに組み込むデッキにするとよく回ってくれる筈だ。

 

そこから考え、ラーとしては他から崇められたいという背伸びを顧みてデッキにすることにしようか。なに、元よりラーのデッキを作るのならばどんなデッキにするかの候補は幾つかある。後はラーの好みにあったデッキを選ぶだけだ。

 

ラーと対話しながらじっくりとデッキを構築していると、何時しか時を忘れていた。

 

 

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 

 

 

休日だというのに人だかりが出来ているデュエルアカデミア本館のデュエル場。そこを偶々通り掛かった天上院明日香は、見れば立ち見している中に友人の浜口ももえの姿を見つけ彼女に話掛けた。

 

「あ! 明日香様丁度いい所に! 明日香も見て行きましょう!」

 

「いったい何が…」

 

若干興奮した様子のももえから目を離し、使用されているデュエルリングを目を下ろすと目を見開く。

 

そこにはデュエルリングに向かい合うように立つナイトメアと、藤原雪乃が居た。既にデュエルは行われている。

 

「驚いたわね。あの二人がデュエルしているなんて……」

 

「いつも一緒にいるのに何故かデュエルはしないですものねー」

 

このアカデミアに席を置くものならば、殆ど知られている事だが、ナイトメアと藤原雪乃は、リック・べネットとしての名で最後に挑んだI2カップの決勝戦まで勝ち残ったデュエリストなのだ。正に因縁の対決と言えるだろう。

 

ちなみに別にデュエルをしないわけではなく、藤原がいつもリックの部屋に入り浸る為、デュエルディスクを使わずに部屋でデュエルしていたり、気分転換に人気のない場所でデュエルをしていたりする為であるが、ここにいる者は知るよしもない。

 

明日香はデュエリストとしての好奇心と向上心を胸にそのデュエルを眺める。まずはナイトメアのフィールドだ。

 

 

ナイトメア

LP4000

手札2

モンスター1

魔法・罠2

 

 

ライフポイントは減っておらず、フィールドには一体のモンスターが出ている。そのモンスターを名前と姿を見て天上院は目を見開いた。

 

 

The supremacy SUN(ザ・スプレマシー・サン)

星10/闇属性/悪魔族/攻3000/守3000

このカードはこのカードの効果でしか特殊召喚できず、デュエル中1度でも「The supremacy SUN」と名のつくカードを通常召喚していない場合、このカードの効果で特殊召喚する事はできない。

自分のスタンバイフェイズ時、このカードが墓地に存在する場合、このカードを墓地から特殊召喚する。

 

 

The supremacy SUN

ATK3000

 

ナイトメアのフィールドには正に悪夢を具現化したかのような黒々と輝く太陽の化身が静かに佇んでいた。後光として揺らめく漆黒の光は全てを覆い尽くすのではないかと錯覚する程に暗く眩しく冷たく熱い。

 

「"プラネットシリーズ"……まさかこんなところで目にするなんて…」

 

明日香の呟きも無理はない。何せ惑星の名を持つプラネットシリーズのカードは、この世に1枚づつしか存在しない伝説級の激レアカードだ。そんな伝説を超えてカルト的な神話にも近いカードの生のソリッドビジョンを一目見れた事と、余りにも神々しい姿に拝み始める生徒も出る程である。

 

ちなみにシリーズ初入手かつ最強と謳われるプラネットカードに浮かれながらナイトメアが効果を確認したところ、"微妙に原作効果より弱体化してんじゃねぇか"と思ったとか何とか。まあ、愚かな埋葬やら天使の施しで捨てられ、次のターンのスタンバイフェイズに当たり前のようにフィールドに出てこられたら堪ったものではないだろう。妥当な調整と見受けられる。

 

「"The supremacy SUN(ザ・スプレマシー・サン)"。リックがI2大会から程無くして全米チャンピオンになった時に景品として贈呈されたカードらしいわよ。入手して満足したから暫くホコリ被っていたみたい」

 

戸惑う明日香にももえの居る方とは逆の場所から声が掛かり、そちらの方を向くと、ツァン・ディレが居た。

 

ツァンは明らかに他とは違い、ナイトメアが友人として接している数少ない学生のひとりだ。

 

明日香はいつものように自分の世界に入り、話が通じなくなり始めているももえから離れるとツァンの隣に立った。

 

「そうなの。あなたは今日は彼とデュエルしないのかしら?」

 

故にその言葉が出た。彼女に悪気も、気に触る事を言ったつもりも一切無い。寧ろデュエリストとして当然とも言えるだろう。

 

しかし、その発言によりツァンの瞳が急激に濁る。そして、暫く沈黙したかと思うとポツリと口を開いた。

 

私のデッキ(六武衆)じゃ…彼のあのデッキに敵わないのよ……うふふ…えへへ…うふふ…」

 

このデュエルアカデミアでも有数の実力者であり、根っからの負けず嫌いであるツァンがここまで意気消沈している事に明日香は面食らう。その上、なんだが不自然に笑い声が漏れており、端から見ても不気味である。

 

「そ、そうなの…」

 

ちなみにツァンがここまで可笑しくなっている理由は、真っ先に今ナイトメアがデュエルリングで使っているデッキの最初の餌食となり、試運転がてらちょこちょこカードを入れ換えながら10回程ボコボコにされたからだったりするが、明日香にそれを知る術はない。この世界のデュエリストの精神はデッキと直結しているので、寧ろここまで精神を保てているツァンは偉大である。

 

とりあえず、そんなツァンはそっとしておき、明日香は視線をデュエルリングに戻す。

 

ナイトメアの魔法・罠ゾーンには伏せカードが1枚と、自分の墓地に存在するモンスターが特殊召喚に成功した時、自分のデッキからカードを1枚ドローする事ができる永続魔法の"生還の宝札"が置かれていた。

 

「ちなみに…"The supremacy SUN"の効果は要するに1度通常召喚に成功すれば、墓地に存在する限り、何度でもスタンバイフェイズに蘇るって効果よ」

 

「凄い効果ね……それで生還の宝札と組み合わせれば倒される程にプラスになる」

 

「インチキ効果も大概にしなさいよ…」

 

そんな言葉を呟くツァンを他所に、明日香は相槌を打ち、今度は藤原のフィールドを眺める。

 

 

藤原雪乃

LP4000

手札3

モンスター1

魔法・罠2

 

 

邪精トークン

ATK ?

 

「邪精トークン…?」

 

聞き慣れないトークンに明日香は首を傾げる。

 

「罠カード"フリッグのリンゴ"で特殊召喚されるトークンよ。自分フィールド上にモンスターが存在しない場合、自分が戦闘ダメージを受けた時に発動する事ができる。自分が受けた戦闘ダメージの数値分だけ自分のライフポイントを回復し、自分フィールド上に"邪精トークン"(悪魔族・闇・星1・攻/守?)1体を特殊召喚するっていう効果。このトークンの攻撃力・守備力は、この効果で自分が回復した数値と同じになるわ」

 

「と、言うことは…」

 

邪精トークン

ATK3000

 

「今のところは互角の戦いをしているのね」

 

そして、どうやら今は藤原の切り返しのターンらしい。藤原は手札からカードを発動する。

 

「私は手札から装備魔法"光学迷彩アーマー"を"邪精トークン"に装備するわね。このカードはレベル1のモンスターのみ装備可能。装備モンスターは相手プレイヤーに直接攻撃する事ができるわ」

 

すると邪精トークンの姿が跡形もなく消える。その直後、ナイトメアが何かに攻撃され、身体が多少浮き、ライフポイントが激しく減少する。

 

ナイトメア

LP4000→1000

 

「フィールドから"The supremacy SUN"を対象に速攻魔法カードを発動。"神秘の中華なべ"。選択はどちらでも同じだが攻撃力」

 

ナイトメアのフィールドに巨大な中華鍋が出現し、The supremacy SUNが吸い込まれる。暫くすると最高級のフカヒレスープがフィールドに並び、それが消えるとライフポイントが回復した。

 

ナイトメア

LP1000→4000

 

プラネットカードに対しての余りにもぞんざいな扱いにデュエル場にいる生徒らは顔を引きつらせているが、この自身のカードを使い潰すが如くのデュエル姿勢こそがナイトメア足る由縁の為、所々から歓声も同時に上がった。

 

「ふふ、それでこそ私の焦がれる人。ターンエンドよ」

 

藤原雪乃

LP4000

手札2

モンスター1

魔法・罠3

 

 

「ドロー」

 

手札2→3

 

「スタンバイフェイズに墓地に"The supremacy SUN"が存在することで自身を特殊召喚する。RESURRECTION(リザレクション)

 

ナイトメアの後方に黒い爆炎が発生し、それが収束して形を結ぶと、鍋で調理されたという事を一切思わせない風格を持つThe supremacy SUNが現れた。

 

The supremacy SUN

ATK3000

 

「墓地から蘇生した事により"生還の宝札"の効果でカードをドロー」

 

手札3→4

 

「手札から"ラーの使徒"を召喚」

 

ラーの使徒

星4/光属性/天使族/攻1100/守 600

(1):このカードが召喚・反転召喚・特殊召喚に成功した時に発動できる。手札・デッキから「ラーの使徒」を2体まで特殊召喚する。

(2):このカードがモンスターゾーンに存在する限り、自分は「ラーの使徒」の効果以外ではモンスターを特殊召喚できず、このカードは「オシリスの天空竜」「オベリスクの巨神兵」「ラーの翼神竜」のアドバンス召喚以外のためにはリリースできない。

フィールドにラーを象った装いに身を固めた浅黒い肌の男性が召喚される。

 

ラーの使徒

ATK1100

 

「"ラーの使徒"の効果発動。手札・デッキから"ラーの使徒"を2体まで特殊召喚する。無論、2体の"ラーの使徒"を新たに特殊召喚だ」

 

ラーの使徒

ATK1100

 

ラーの使徒

ATK1100

 

「更に手札から"二重召喚(デュアルサモン)"を発動し、召喚権をもう一度だけ得る。さあ、来い。俺だけの太陽」

 

ラーの使徒達が手を合わせ、祈りを捧げると彼らは光となり、ナイトメアの上空で交わる。

 

「来るわ…」

 

「来るわね…」

 

ツァンも明日香も食い入るようにその時を待った。これより喚ばれるカードは模造であれ、世界で最も知名度のあるカードと言っても過言ではないモノだ。

 

光は閃光を上げて辺りを染め、それに続くようにソリッドビジョンを逸脱した熱風がデュエル場を包み、光は巨大な黄金のホルスの形を取った。

 

ラーの翼神竜

ATK3300

 

「終わったわね……」

 

相変わらず死んだ目でそんな言葉を漏らすツァン。返事はしなかったが、明日香も同じような感想を持っているのだろう。その言葉に否定も肯定もしていない。

 

「私の時みたいにゴッドフェニックスでフィールドを一掃して終わ…」

 

「"ラーの翼神竜"の攻撃。ゴッド・ブレイズ・キャノン」

 

「え…?」

 

ツァンはナイトメアが、効果でモンスターを一掃してからのダイレクトアタックではなく、普通に攻撃をしてきた事に目を丸くした。明日香にしてみれば1ターンで決着がつく事をしなかった事に少し不自然に思う程度だが、10回程ゴッドフェニックスで焼かれてダイレクトアタックで止めを刺されるという展開を味わったツァンにしたら堪ったものではないのだ。

 

「何で…?」

 

ひょっとしたら手加減しているのではという疑問がツァンの中で生まれる。それはツァンの中の彼の堂々たるデュエル像を激しく歪めかねなかった。

 

「彼は手加減などしていません。ツァンさん」

 

落ち着いた声色の女性の声が後ろから掛かり、ツァンと明日香は振り返る。

 

するとそこには藤色の長髪を毛先で纏め、眼鏡を掛けた背の高い女性がいた。教員服を着ているところからデュエルアカデミアの教員なのだろう。

 

彼女の名はメデューサ。最近カツラが吹き飛んでから転勤した教師に替わり、コブラの推薦でデュエルアカデミアの教師になった先生である。 メデューサ先生、蟹の人、カニパン先生、カニパンマン等と生徒からは呼ばれている。

 

少し前に、ハロウィンの日と前日の2日間で魔女の仮装をした謎の美女により、手当たり次第に生徒へデュエルかお菓子を要求して、120人以上が圧倒的なデュエルで叩き潰されるという被害にあった事件を起こした張本人だったりするが、生徒からは大それた宣伝だと思われ、故に極めて実力の高く、冗談の通じる教師という事である意味信頼されているのだ。

 

更に彼女が働き始めた理由について。"マスターのお金を使い込んでいつも星5の宝具Lvを5にしてたのがバレてお小遣いが……こほん秘密です♪" 等と宣っていたりもするが、なんの事だかは不明である。

 

「そうなんですかメデューサ先生…?」

 

「ええ、見ていれば直ぐにでもわかります」

 

そう言うとメデューサは明日香の隣の場所に立ち、デュエルの行く末を眺めた。

 

明日香の視線がデュエルに戻ると、輝かしい雷球がラーの翼神竜の嘴に灯り、既に発射態勢に入っている。顕現してしまった神を止める事など出来る訳がない。それが大概のデュエリストの見解というものだろう。

 

「うふふ、ダ・メ。永続罠カード発動、"強制終了"。自分フィールド上に存在するこのカード以外のカード1枚を墓地へ送る事で、このターンのバトルフェイズは終了よ。私は"光学迷彩アーマー"を墓地へ送るわ」

 

精邪トークンに掛けられていた迷彩が解けると、ラーの翼神竜の嘴に収束していた光が急激に収縮すると最後には消えてしまった。

 

ラーの翼神竜が少し渋い顔をしているようにも見受けられる。それに引き換え、ナイトメアの表情は何故か晴れやかでその瞳には歓喜すら含んでいた。

 

「そうだ。デュエルはそうでなければ面白くないな」

 

驚愕の渦に飲まれ、静まり返っているデュエル場にナイトメアのそんな言葉が響き、それを皮切りに生徒同士の会話が再び始まる。

 

「神が……止められた…?」

 

ツァンはそう言って固まっているが、隣の明日香も似たようなモノだ。正直なところ、あの強烈な耐性の壁を容易く越えられるとは、全く想像もしていなかったというのが本音だろう。

 

そんな二人を見たメデューサは何処か嬉しそうに口を開いた。

 

「確かに"ラーの翼神竜"は三幻神の中でも最高の耐性を持つ強力なカードです。それならば初めから破壊することなど考えなければ良いのですよ」

 

「直接、"ラーの翼神竜"に効果を与えない効果なら効くのね…」

 

「そういうことです。……まあ、ここだけの話、神もルールには勝てないのでそこを突けば私でも普通に倒せるんですけど…」

 

「先生何か言いました?」

 

「いえ、なんでもありません」

メデューサはそう言った為、明日香とツァンはその時は疑問符を浮かべながらも直ぐにナイトメアと藤原のデュエルへと意識を戻した。

 

 

「私のターンね。ドロー」

 

手札2→3

 

「手札から"強欲な壺"を発動。カードを2枚ドローするわ」

 

手札2→4

 

「そして、"儀式の下準備"を発動。デッキから儀式魔法カード1枚を選び、さらにその儀式魔法カードにカード名が記された儀式モンスター1体を自分のデッキ・墓地から選んで、そのカード2枚を手札に加えるわ。私はデッキから"イリュージョンの儀式"と、"サクリファイス"を手札に加えるわね」

 

「おい、"儀式の下準備"ってお前」

 

「勿論、ヴェノミナーガさんから貰ったカードよ」

 

「やっちゃえ、ゆきのんさん!」

 

何故か急にメデューサ先生が大きな声援を送ったが、明日香とツァンも彼らのデュエルを手に汗握る面持ちで見ている為、特に疑問には感じなかった。

 

手札3→5

 

(なんて下準備の名に違わない汎用性の高い効果のカード……欲しいわ…)

 

ちなみに明日香が、儀式の下準備はサイバー・エンジェルには対応していないという事を知り、ブルーになるのは割りとすぐ先のお話である。

「私は1ターン目に"天使の施し"で墓地に送った"儀式魔人プレサイダー"を除外して"イリュージョンの儀式"を発動するわ」

 

儀式魔人プレサイダー

星4/闇属性/悪魔族/攻1800/守1400

儀式召喚を行う場合、その儀式召喚に必要なレベル分のモンスター1体として、

自分の墓地のこのカードをゲームから除外できる。

また、このカードを儀式召喚に使用した儀式モンスターが戦闘によってモンスターを破壊した場合、その儀式モンスターのコントローラーはデッキからカードを1枚ドローする。

 

フィールドに瞳の紋様の彫られた壺が現れ、そこに儀式魔人プレサイダーが吸い込まれ、壺から黒紫色の煙が巻き起こった。

 

「うふふ、行くわよ。手札から"サクリファイス"を特殊召喚よ」

 

サクリファイス

星1/闇属性/魔法使い族/攻 0/守 0

「イリュージョンの儀式」により降臨。

(1):1ターンに1度、相手フィールドのモンスター1体を対象として発動できる。

その相手モンスターを装備カード扱いとしてこのカードに装備する(1体のみ装備可能)。

(2):このカードの攻撃力・守備力は、このカードの効果で装備したモンスターのそれぞれの数値になり、このカードが戦闘で破壊される場合、代わりに装備したそのモンスターを破壊する。

(3):このカードの効果でモンスターを装備したこのカードの戦闘で自分が戦闘ダメージを受けた時、相手も同じ数値分の効果ダメージを受ける。

 

煙が晴れると、やじろべえのような見た目で青い体色をしたモンスターが降臨する。その頭はとある千年アイテムのひとつをそのままくっ付けたかのように酷似していた。

 

サクリファイス

ATK0

 

「"サクリファイス"……」

 

「デュエルキングダム時代の古いカードね」

 

「"サクリファイス"には戦闘ダメージを相手にも与える効果があります。前のターンで1000LPを払ってゴッドフェニックスを使っていたら"サクリファイス"が"ラーの翼神竜"に自爆特攻すればそれで終了でしたね」

 

「だから彼は…」

 

「まあ、彼のあの様子だと大方藤原さんのデッキの中身は知らないですが、デュエリストの勘で何と無くゴッドフェニックスを撃たなかったのでしょう。デュエリストの勘もスゴいんですよ彼」

 

明日香とツァンは妙にナイトメアの事を良く知っている様子のメデューサに多少疑問を覚えたが、彼女の極めて高い実力から恐らく元プロデュエリストやそれに準じる仕事をしていたのだろうと考えた。ちなみにハロウィンの日に明日香とツァンはデュエルを吹っ掛けられて手も足も出ずに敗北している。今ではメデューサ先生は、二人のデュエリストの理想像のひとつである。

 

「"サクリファイス"の効果を発動。ダーク・アイズ・マジック」

 

黒い輪がThe supremacy SUNを呪縛した。

 

「"The supremacy SUN"を吸収。ターク・ホール」

 

The supremacy SUNはサクリファイスに吸い込まれるように吸収され、跡形もなく姿を消した。

 

「"サクリファイス"の攻撃力と守備力は吸収したモンスターと同じになるわ」

 

サクリファイス

ATK3000

 

「私は1ターン目に同じく墓地に送った"ヴォルカニック・バレット"の効果を使うわ。ライフポイントを500払ってデッキから"ヴォルカニック・バレット"を1枚手札に加える」

 

藤原

LP4000→3500

 

ヴォルカニック・バレット

星1/炎属性/炎族/攻 100/守 0

このカードが墓地に存在する場合、自分のメインフェイズ時に1度、500ライフポイントを払う事で、デッキから「ヴォルカニック・バレット」1体を手札に加える。

 

手札3→4

 

「ヴォルカニック…?」

 

「ふふ、あなたのお父さんに頼んで貰ったの。コストにとても良いわ」

 

「……お前俺の知らないところで何してんの?」

 

「ヒ・ミ・ツ。私は装備魔法"進化する人類"を"サクリファイス"に装備」

 

「げ…」

 

何故かそれを見たナイトメアは、多少なり動揺しているようにみえる。

 

「確かライフポイントが相手より多い時は攻撃力を1000。少ない時は2400にするカードよね?」

 

「なんで攻撃力3000の"サクリファイス"に使ったの…?」

 

「あー……貴女たちが知らないのも無理はないですね。"進化する人類"は珍しい元々の攻撃力を変化させる魔法カードなんですよ」

 

「えっと……」

 

「"サクリファイス"が先に相手モンスターを装備してから"進化する人類"を装備した場合は、装備した相手モンスターの数値に"進化する人類"の数値を加算します。"進化する人類"を先に装備してから相手モンスターを装備した場合は、"サクリファイス"の攻撃力を更新する効果により装備した相手モンスターの数値になります。その後、装備された相手モンスターがフィールドを離れた時は"進化する人類"の効果を再適用します。よって攻撃力は1000もしくは2400になります。要は、"サクリファイス"と中々相性の良い装備カードなんですよ。さて、今の"サクリファイス"の攻撃力は幾つでしょうか?」

 

「それって…」

 

「まさか…」

 

メデューサの説明を聞いた二人は、藤原のフィールドのサクリファイスの攻撃力を参照した。

 

 

サクリファイス

ATK5400

 

 

「激しくね? ILLUSION(イリュージョン) SOLAR(ソーラー) FLARE(フレア)

 

サクリファイスからThe supremacy SUNの攻撃であるドス黒い極光が放たれ、ラーの翼神竜は容易に呑み込まれた。

 

ナイトメア

LP4000→1900

 

「戦闘によってモンスターを破壊した事で、"儀式魔人プレサイダー"の効果により1枚ドロー」

 

手札3→4

 

「フフ、"進化する人類"の効果で"サクリファイス"の元々の攻撃力は1000になるわ」

 

サクリファイス

ATK5400→4000

 

「終わりかしら? 邪精トークンでダイレクトアタックよ」

 

その言葉と裏腹に藤原の声色は楽しげで、明らかに期待を含んだ表情をしていた。

 

それに答えるようにナイトメアのフィールドで、金色の旋風と炎の渦が巻き起こる。

 

「まだだ、太陽は沈まない」

 

そうナイトメアが呟いた直後、風と炎は像を結び、そこには太陽の名に相応しい輝きと熱を放つ火の鳥が顕現した。

 

 

ラーの翼神竜-不死鳥(ゴッドフェニックス)

星10/神属性/幻神獣族/攻4000/守4000

このカードは通常召喚できず、このカードの効果でのみ特殊召喚できる。

(1):このカードが墓地に存在し、「ラーの翼神竜」がフィールドから自分の墓地へ送られた場合に発動する。このカードを特殊召喚する。この効果の発動に対して効果は発動できない。

(2):このカードは他のカードの効果は全て通じない。

(3):1000LPを払って発動できる。フィールドのモンスター1体を選んで墓地へ送る。

(4):エンドフェイズに発動する。このカードを墓地へ送り、自分の手札・デッキ・墓地から「ラーの翼神竜-球体形」1体を召喚条件を無視して特殊召喚する。

 

ラーの翼神竜-不死鳥

ATK4000

 

「墓地からの特殊召喚により、"生還の宝札"の効果でカードをドロー」

 

手札

1→2

 

「…イイわ…ゾクゾクしちゃう……私はカードを1枚伏せてターンエンドよ」

 

「エンドフェイズ時に"ラーの翼神竜-不死鳥"の効果発動。このカードは墓地に送られ、"ラーの翼神竜-球体形"をデッキから特殊召喚する」

ラーの翼神竜-球体形(スフィア・モード)

星10/神属性/幻神獣族/攻 ?/守 ?

このカードは特殊召喚できない。このカードを通常召喚する場合、自分フィールドのモンスター3体をリリースして自分フィールドに召喚、または相手フィールドのモンスター3体をリリースして相手フィールドに召喚しなければならず、召喚したこのカードのコントロールは次のターンのエンドフェイズに元々の持ち主に戻る。

(1):このカードは攻撃できず、相手の攻撃対象にならない。

(3):このカードは上級呪文であるカードの効果は1ターンのみ通じ、それ以外の効果は全て通じない。

(2):このカードをリリースして発動できる。手札・デッキから「ラーの翼神竜」1体を、召喚条件を無視し、攻撃力・守備力を4000にして特殊召喚する。

 

ラーの炎は急激に鎮火し、その場に残っていたのは鈍い光を放つ月のような球体であった。

 

藤原雪乃

LP3500

モンスター2

魔法・罠5

手札3

 

「これでフィールドが硬直しました。彼は、"強制終了"と"サクリファイス"を破壊した上で、3500ポイントのライフを削り切らなければ勝てません。藤原さんは"サクリファイス"デッキのようですから例えゴッドフェニックスで破壊してもまたすぐに出てくるでしょう。そうなるとゴッドフェニックスの1000のライフ消費はそう易々と出来ません」

 

そう言ってから二人に聞こえないようにメデューサは言葉を溢す。

「さあ、マスター。どうしますかね?」

 

そう言うメデューサの表情は、悪戯をしている子供のように楽しげで、何処か嬉しそう映った。

 




おまけが本編

~ハロウィーンの日のヴェノミナーガさん(見た目は砂の魔女の服を着たfateのメデューサさん)~


VS丸藤亮

「あなたのフィールドに"トーチ・ゴーレム"を守備表示で特殊召喚します。バトルです、"KA-2 デス・シザース "で"トーチ・ゴーレム"を攻撃。ナノポイズン」

「くっ…何を…?」

「この瞬間、"KA-2 デス・シザース"の効果発動。このカードが戦闘によってモンスターを破壊し墓地へ送った時、
破壊したモンスターのレベル×500ポイントダメージを相手ライフに与えます。ちなみに"トーチ・ゴーレム"のレベルは8です」

「なん…だと…?」

「これこそが、初撃を当てさえすれば、超神速の爪に弾かれた空気と真空領域によって敵の行動を阻害し、まるで掃除機のようにプレイヤーを引き寄せ、特異な踏み込みによる強力な二撃目の爪で仕留めることが出来るという奥義。天翔蟹閃(カニパン)です」

丸藤亮
LP4000-(8×500)→0

KA-2 デス・シザース
星4/闇属性/機械族/攻1000/守1000
このカードが戦闘によってモンスターを破壊し墓地へ送った時、破壊したモンスターのレベル×500ポイントダメージを相手ライフに与える。



VS天上院明日香

「"サイバー・プリマ"を召喚! 効果であなたの"光の護封剣"と"強者の苦痛"を破壊よ! そして、"サイバー・プリマ"で"ニードルバンカー"とバトル! 終幕のレヴェランス!」

「ではプリマドンナにはこのような末路はいかがでしょうか? 永続罠、銀幕(ぎんまく)鏡壁(ミラーウォール)発動。相手の攻撃モンスターの攻撃力は半分になります」

サイバー・プリマ
ATK2300→1150

「ああ…ッ! プリマ!?」

「どうやら終幕は悲劇のようでしたね。"ニードルバンカー"の攻撃力は1700です。四の五の言わずにカニパンを喰らいなさい」

天上院明日香
LP3000-(550+6×500)→0

サイバー・プリマ
星6/光属性/戦士族/攻2300/守1600
(1):このカードがアドバンス召喚に成功した場合に発動する。フィールドの表側表示の魔法カードを全て破壊する。

ニードルバンカー
星5/闇属性/機械族/攻1700/守1700
このカードが戦闘によってモンスターを破壊し墓地へ送った時、破壊したモンスターのレベル×500ポイントダメージを相手ライフに与える。



VSツァン・ディレ

「"ギブ&テイク"で私の墓地の"トーチ・ゴーレム"をあなたのフィールドに守備表示で特殊召喚。更にそのレベルの数だけ自分フィールド上に表側表示で存在するモンスター1体のレベルをエンドフェイズ時まで上かります。私は"KA-2 デス・シザース"を選択、"トーチ・ゴーレム"はレベル8なので、これでカニはレベル12です。だが俺はレアだぜ!」

「ゲッ……ATK0!?」

スプリット・D・ローズ
ATK0

「さあ、カニパンの時間です。"KA-2 デス・シザース"で、"スプリット・D・ローズ"を攻撃。ナノポイズン」

「わぁぁぁぁぁ!!?」

ツァン・ディレ
LP4000-(1000+7×500)→0

スプリット・(デモン)・ローズ
星7/闇属性/植物族/攻 0/守1500
このカードが戦闘によって破壊され墓地へ送られた時、自分フィールド上に「D・ローズトークン」(植物族・闇・星3・攻/守1200)を2体特殊召喚する事ができる



VS三沢大地

三沢大地
LP500

「初撃は許したが、これで君を打ち破る布陣は完成した! まず、永続罠、"グラヴィティ・バインド-超重力の網"を破壊しなければ"KA-2 デス・シザース"も"ニードルバンカー"も攻撃は出来ない! 更に"スピリット・バリア"と戦闘によって破壊されないモンスター達だ! 表示形式の変更すら意味はない!」

「じゃあ、"KA-2 デス・シザース"を生け贄に"邪帝ガイウス"を召喚します。効果で"邪帝ガイウス"を除外します。除外したカードが闇属性モンスターだったのであなたに1000ポイントダメージを与えますね? 喰らいなさい、形を変えて受け継がれるカニパンの意思を」

「な……!?」

三沢大地
LP500→0

邪帝ガイウス
星6/闇属性/悪魔族/攻2400/守1000
(1):このカードがアドバンス召喚に成功した場合、フィールドのカード1枚を対象として発動する。そのカードを除外し、除外したカードが闇属性モンスターカードだった場合、相手に1000ダメージを与える。



VSオベリスクブルー生徒

「カニパンは隙を生じぬ二段構え」

「ぎゃぁぁぁぁぁ!!!」

LP4000→0



VSラーイエロー生徒

「お前もカニパンにしてやろうか!」

「そんなぁぁぁぁ!!?」

LP4000→0



VSオシリスレッド生徒

トリック(悪戯)オア()カニパン()

「お菓子はぁぁぁぁ!!?」

LP4000→0



VS丸藤翔

「永続罠、"リミット・リバース"発動。自分の墓地の攻撃力1000以下のモンスター1体を選択し、表側攻撃表示で特殊召喚します。勿論、召喚するのは"KA-2 デス・シザース"です」

「また!? でもまだ僕のフィールドにはッ!」

「いいえ、ここまでです。手札のモンスターカードを1枚捨て、"KA-2 デス・シザース"を対象に罠カード、"共闘"を発動。このカードを発動するターン、私のモンスターは直接攻撃出来なくなります。その代わり、そのモンスターの攻撃力・守備力はターン終了時まで、このカードを発動するために捨てたモンスターのそれぞれの数値と同じになります。私の捨てたカードは"爆走特急ロケット・アロー"。その攻撃力は5000です」

KA-2 デス・シザース
ATK5000

「そんな…」

「健闘賞ですね。中々頑張りましたが、ここまでです。"KA-2 デス・シザース"で、"スチーム・ジャイロイド"に攻撃。ロケットカニパーン! またの名をメガネっ娘ナッコー!」

「うわぁぁぁぁぁぁぁ!!?」

丸藤翔
LP1000-(2800+6×500)→0

「翔ッ…よく頑張ったな。俺よりも長く持っていたぞ…!」

「兄さん…!」

爆走特急ロケット・アロー
星10/地属性/機械族/攻5000/守 0
このカードは通常召喚できない。自分フィールド上にカードが存在しない場合のみ特殊召喚できる。このカードを特殊召喚するターン、自分はバトルフェイズを行えない。このカードがフィールド上に表側表示で存在する限り、自分は魔法・罠・効果モンスターの効果を発動できず、カードをセットする事もできない。このカードのコントローラーは自分のスタンバイフェイズ毎に手札を全て墓地へ送る。またはこのカードを破壊する。

スチームジャイロイド
星6/地属性/機械族/攻2200/守1600
「ジャイロイド」+「スチームロイド」



VS遊城十代

「あなたのLPは残り500ポイントで、手札もゼロ。私のフィールドには"ニードルバンカー"と、"マシンナーズ・フォートレス"がいますよ。諦めます? カニパンになります?」

ニードルバンカー
ATK1700

マシンナーズ・フォートレス
ATK2500

「まさか! ここからが面白いんだ! 俺のターン、ドロー!」

手札
0→1

「よし! 俺は"E・HERO バブルマン"を特殊召喚! 効果でカードを2枚ドローするぜ」

手札
0→2

「"強欲な壺"を発動。カードを2枚ドロー! 来たっ! "融合"発動!」

手札1→3

「"E・HERO フェザーマン"と、"E・HERO バーストレディ"を墓地に送り、"E・HERO フレイム・ウィングマン"を融合召喚!」

E・HERO フレイム・ウィングマン
ATK2100

「"E・HERO フレイム・ウィングマン"で、"ニードルバンカー"を攻撃! フレイム・シュート!」

「マジかよ…夢なら覚め」

メデューサ
LP2100→0

「ガッチャ! 楽しいデュエルだったぜ!」



マシンナーズ・フォートレス
星7/地属性/機械族/攻2500/守1600
このカードは手札の機械族モンスターを
レベルの合計が8以上になるように捨てて、手札または墓地から特殊召喚する事ができる。このカードが戦闘によって破壊され墓地へ送られた時、相手フィールド上に存在するカード1枚を選択して破壊する。また、自分フィールド上に表側表示で存在するこのカードが相手の効果モンスターの効果の対象になった時、相手の手札を確認して1枚捨てる。

E・HERO バブルマン
手札がこのカード1枚だけの場合、このカードを手札から特殊召喚する事ができる。このカードが召喚・反転召喚・特殊召喚に成功した時に自分のフィールド上に他のカードが無い場合、デッキからカードを2枚ドローする事ができる。

E・HERO フレイム・ウィングマン
星6/風属性/戦士族/攻2100/守1200
「E・HERO フェザーマン」+「E・HERO バーストレディ」
(1):このカードが戦闘でモンスターを破壊し墓地へ送った場合に発動する。そのモンスターの攻撃力分のダメージを相手に与える。





・この件についてのマスターからコメント
LP4000でカニとか常識ねぇのかよ…。

・ヴェノミナーガからの返信
壊獣と月鏡の盾がこの世界にはまだ無いだけ温情ですよ。


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。