じゃしんに愛され過ぎて夜しか眠れない   作:ちゅーに菌

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なんだこのZ級映画みたいなタイトルは……(困惑)


みんな! 年1更新の小説の時間だよ!(挨拶)

いやぁ……2~3ヶ月ぐらいで更新しようと考えていたのですが、鬼太郎の6期が嬉しくて書いた"犬山さんちのハゴロモギツネ"が評価10件ぐらいの黄色バーでお気に入り300ぐらい行ったらいいかなと考えていたのですがそれよりかなり、無茶苦茶、超好評でして……そちらの方に力を入れていたらすっかりご無沙汰になったといいますか……(小説の投稿を考えている方はこんなクソ作者にはならないでください)



人造人間 VS 仮面魔獣

 

 

 

 

 後数日で冬休みが終わろうという頃。俺は久々にオシリスレッド寮に来ていた。今いるところはその食堂である。

 

 ガラス扉のヒビをテープで止めていたり、イスが畳めないタイプの簡素なパイプ椅子だったり、ストーブに金色のやかんが乗せられているものが唯一の熱源だったりと寒々しい光景はもう慣れたものであるが、これが寮というのは中々斬新であろう。

 

 見ての通り寒いからという理由で、オシリスレッド寮にはあまり来ないのだが、今日はここにいる。このわけは実に学生らしい理由だ。

 

「リック~、これわかんねぇよー」

 

「リックさぁーん……」

 

「お前らせめて新しい問題を10秒ぐらい見つめる努力はしろ」

 

 十代たちの冬休みの課題を見ているのである。まあ、流石に丸藤の方は基礎問題は一通り出来るようだが、応用に入った直後にこの様である。というか課題ぐらい早く終わらせとけよな。

 

「リックのはいつ終わったんだ?」

 

「冬休み入る前に先に出来る奴は全部。残りは2日ぐらいで終わらせたな」

 

「うへぇ……」

 

「ど、どうしてリックさんはデュエルが強い上に頭までいいんスかぁ……」

 

「そうなんだナぁ……」

 

 それを告げると三人はムンクの叫びのような表情をした。

 

 どうでもいいが、ムンクの叫びという絵は叫んでいるのは空であり、絵画の人は耳を塞いでいるのである。それらの様々な特徴が似ているため、ムンクは統合失調症だったと言われているそうな。それからムンクの絵は詩と絵のセットになっている絵画であり、そういうところを楽しむといいと思うぞ。それから今度の10月頃に日本でムンク展があるので行こうかと思っているところだ。

 

「しかし、レッド寮に入り浸るなんてリッククンも物好きですにゃ」

 

「残ってる全校生徒狩り(デュエルし)尽くしちゃったんです」

 

「ああ……」

 

 猫のファラオを抱えて近くに座っていた大徳寺先生は納得した様子ながら微妙に顔がひきつっているように見えた。

 

 後は戦っていないのは戻ってくる連中だが、そういうのは基本的に前日とかに帰ってくるであろうからアテにはしていない。俺だってそうする。

 

 しかし、この大徳寺という男。仮に俺が思った通り黒だというのならば、かなりの食わせものだろうな。まるで人畜無害な人間そのものだ。ここまで無害だと俺の判断が間違っていたのではないかと疑い始めてしまう。

 

 だからこそずっと警戒していられるんだがな。俺に言わせれば表裏の無い人間などは存在しない。大徳寺先生はあまりに無害過ぎるのだ。

 

 まあ、今はそれよりも……。

 

「うふ……うふふふ……ふふふふ……」

 

 背中に張り付いたまま離れないこの獏良了に激似の獏良天音ちゃんの方が異様な光景だわな。

 

 オシリスレッド寮の食堂はパイプ椅子とはいったが、簡素な丸椅子なので座ったままでも後ろから天音ちゃんに憑かれるのである。

 

「リ、リック……大丈夫なのか?」

 

「なんかもう慣れた」

 

 天音ちゃんに引いた様子の十代たちに俺はそう答えた。

 

 元々ヴェノミナーガさんに憑かれてた俺としては寧ろまだまだ序の口である。ヴェノミナーガさんはノリと流れで何でもやりたがり、たまに被害も出るので危ない。そのため適度な身体能力が必要だ。

 

 何よりこういう輩の一番の対処法はありのままを受け入れ、否定も肯定もしないことだ。対処法があるだけヴェノミナーガさんに比べればそれこそ可愛いものだろう。

 

「す、すごいッスね……」

 

「肝が座ってるんだナ……」

 

 それから獏良了の妹である彼女の話を聞いたところ、彼女は死んでから幽霊としてこの世に残り続け、俺の精霊であるヴェノミナーガさんが発掘した三邪神のイレイザーと出会い、こうして今ここにいるとのこと。因果なものだ。これも俺が蒔いた種であり、拒む理由はあるまい。

 

 それにレッド寮は寒いのでコイツは湯たんぽだと思えばそこまで気にならないな。人肌で暖まれるというのは本当らしい。

 

「可愛いだなんて……もう……」

 

「それよりだ。お前は俺の心配なんかしてる暇があったら目の前のモノを片付けろ」

 

 何やら頬を染めている天音ちゃんは一旦置いておき、俺は十代たちの目の前にあるプリントと問題集の山、冬休みの課題と呼ばれる物体を指差した。

 

「しかし、自分で言うのもなんだが、プロランクⅣナイトメアが同級生の課題を見てるなんて柄じゃ無さ過ぎて笑えてくるな」

 

「そうっスねぇ……リックさんはその……えーと……なんていうか……」

 

「悪役とかヒールとか覇王とか言っても良いぞ。自覚してるし、そういうキャラで通ってるからな」

 

 俺は小さく笑いながら丸藤のいらぬ気遣いを振り払った。元々の性格でもあるし、今更否定する気も起きない。

 

「天音ちゃん、お茶頼む」

 

「ええ、淹れてくるわ」

 

 全員で使っている大きめの急須にお茶が無くなったので天音ちゃんに頼んだ。彼女はそれを嫌な顔ひとつせずに受けると、急須を取り食堂の流し台の方へと消えていった。

 

 ちなみに話は変わるが天音のデッキだが―――

 

 そこまで言おうとした次の瞬間、食堂の出入り口のガラス扉が勢いよく外れ、それに続いてガラスが割れる音が響いた。

 

 当然、俺を含めた皆の視線はそちらに集中する。

 

 そこにはオベリスクブルーの男子生徒が何かにすがるように手を伸ばしながら床に倒れている光景が広がっていた。

 

「サ、サイコ・ショッカーが僕を追いかけて…!」

 

 ………………なんて?

 

 『えーと、確かデュエルオカルト研究グループの高寺さんですね』

 

「うぉぉ!?」

 

「ど、どうしたんスかアニキ?」

 

 何故か俺の隣にある壁の中からヴェノミナーガさんの上半身の胴体部だけがせり出してきて、胸像のような状態で止まると、そんなことを言い出した。

 

 オシリスレッド寮は狭いので、場所を取るヴェノミナーガさんはこのように奇っ怪なところにいるのである。まあ、俺の精霊はいつもこのように壁抜けしたり地面抜けしたりしているので慣れたものだが、十代がビビるので極力止めて欲しいものだな。

 

『私のお茶はそれですね』

 

 そう言うとヴェノミナーガさんはしゅるしゅると天井を伝ったまま、俺らのいる机の端に上半身を移すと、ひとつだけ不自然に置いてあるお茶を持ち上げて飲み始めた。ちなみにこれが見えない人にどう見えるかと言えば、お茶がひとりでに宙に浮き、傾いて中身が何処かへと消滅するように見えるのである。軽いホラーだろう。

 

「あ、なんだ。リックさんの精霊が来たんだね」

 

「精霊さんなんだナ」

 

 ヴェノミナーガさんが見ての通り十代たちにまるで存在を隠す気が無いので、最初の方こそ怯えていたが、今では二人の反応はこの通りなのである。ヴェノミナーガさんに関しては見た目はアレだが、行動だけは可愛らしいので案外見えない方が良いのかもな。

 

「君は確かオベリスクブルーの高寺君だにゃ」

 

「大徳寺先生! それに精霊に憑かれていると公言しているリックさん! あなた方ならきっと分かってくださいますね!」

 

 大徳寺先生が高寺とやらに近付くと、急に元気になった高寺君とやらは大徳寺先生にすがりついた。

 

 なんだか、既にとても嫌な予感がするが、俺はとりあえず静観を決め込むことにしよう。

 

「お、落ち着くのだにゃ高寺君、最初から落ち着いて話してみるのだにゃ」

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 

 

 

 

 彼の話を要約するとこうだ。

 

 冬休みに入る前に、彼ら高寺オカルトブラザーズことデュエルのオカルト研究グループ3人、向田、井坂、高寺はウィジャ盤を使ってデュエルの起源である精霊の呼び出しをしようとしたらしい。選んだのは何故か人造人間-サイコ・ショッカー。

 

 それでウィジャ盤が示した文字は、三体の生け贄を捧げろとのこと。そして、向田と井坂は既にサイコ・ショッカーの手に掛かり行方不明になったんだそうな。

 

「デュエルの精霊と心霊学を一緒にッひぃ!?」

 

「バカかテメェらは……?」

 

「ひぃぃぃ!?」

 

 俺は大徳寺先生の言葉を遮って言葉を吐きながら高寺の胸ぐらを掴むと片手で持ち上げた。

 

「精霊と心霊学を合わせるのも最低だが、それ以前に何故1人目が消えた時点で教員に頼らなかった? その上、2人目が消えた後は実家に帰ろうとしただと? 」

 

「は、はい……ッ!」

 

「はいじゃねぇよ。何でかって聞いてんだよこのスカタン……」

 

「が、がっこッ! 学校に! バレるのが怖かったからですぅ!」

 

 そんなこったろうなぁ。仮に校舎か、オベリスク男子寮にいる父さんに話していたのなら父さんが既に解決してくれているところだろうよ。

 

「馬鹿野郎が……」

 

 俺は捨て台詞と共に床に高寺をやや強く叩き付けた。

 

「うぐっ!」

 

「テメェ仮に帰れたとして親元までサイコ・ショッカーが着いてきてたらどうする気だった?」

 

「そ、それは……」

 

「お前一人っ子か?」

 

「え? 何で急に……」

 

「いいから答えろ」

 

「は、はいそ、はいそうですッ!」

 

「そうか。じゃあ、お前が自宅に招待したサイコ・ショッカーの気が変わって生け贄を3人から5人に増やそうとしたらどうする気だった?」

 

「え……そんな……」

 

「更に言えばお前が逃げられたとして、この島に取り残されたサイコ・ショッカーがお前以外の人間を生け贄に選ばないと何故思った?」

 

「あ……うう……その……」

 

「いいか? 精霊はテメェの玩具じゃねぇんだよ。温厚な精霊もいるけどな、上級の精霊ともなればこうやって簡単に人命を奪える力を持っているんだ。無論、人間の命なんて毛ほども考えちゃいやしない。むしろそのサイコ・ショッカーは少食で謙虚なものさ。他の人間には1人も被害を出してないんだからな。もし、まだ精霊を召喚する気があるんなら次は星1のバニラモンスターから喚べ。テメェらにはそれが似合いだ」

 

「うう……ひぐっ……うっ……ごめんなさい……」

 

「泣くんじゃねぇ、自分で蒔いた種だろうが」

 

 まあ、こんなものか。この手合いは1度痛い目を見ないとわからないだろうからな。

 

 すると突然食堂の電灯の調子が可笑しくなり、チカチカとついたり消えたりし始める。

 

「ひっ!? いったいなんで!?」

 

「ああ、サイコ・ショッカーもう近くに来てるなこれ」

 

 心霊で呼んじゃってるからな。そういった現象として影響を及ぼしているんだろう。

 

「ひい!? た、たたた、助けてください!」

 

「え? やだよ。なんで無関係な俺がテメェらの尻拭いなんかしなきゃならないんだ?」

 

「え……?」

 

「あのなぁ……俺は聖人でも悪魔払いでも僧侶でもないんだ。それどころかナイトメアだぞ? あ、ここ笑うとこね」

 

「そ、そんな……」

 

「だから助けて欲しけりゃせめて出すもん出せ。1枚でいいからさ。お前オベリスクブルーなんだならそこそこいいモノ持ってるだろ?」

 

 俺は指でお金……ではなく、カードを求めるジェスチャーをした。

 

『マスターのそういうところ私好きですよ?』

 

 なんだよ褒めるなや。

 

「ど、どうぞ……」

 

 高寺がデッキケースを差し出してきたのでそれを受け取った。だが、その瞬間に食堂の電灯が完全に消える。

 

 ちっ、もう少し待ってろ。

 

「デスガーディウス」

 

 『ゲッゲッゲ……』

 

「ちょっとお客さんと遊んでやれ。死なせない程度に手加減してな」

 

 その言葉と共にデスガーディウスの気配が俺の近くから消え、寮の外で何かと何かがぶつかり合う轟音が響き始める。

 

 

『ゲッゲッゲッ!』

『な、なんだ貴様!? ええい! 邪魔をするな!』

「うわっ!? リックのデスガーディウスじゃん!」

「アニキまたそんなこと言…………うわぁぁ!? 本当に見えるぅ!?」

「さ、サイコ・ショッカーと闘ってるんだナ……」

「せ、先生精霊は初めて見ますにゃ……」

 

 

 何やら表が騒がしい。ほぼ実体化している精霊が相手だからデスガーディウスも実体化しているのだろう。しかし、今はそれどころではないな。

 

 俺が精霊の力を込めて電灯に手を触れると、電灯は思い出したかのように灯りを灯す。そして、近くの椅子を引っ張ってきてそれに座ってデッキを眺めた。

 

「お茶が入ったよ……」

 

「ああ、ありがとう天音」

 

「ええ……うふふ……」

 

『私が言えることではないですけどあなたたち緊張感ゼロですね』

 

 ヴェノミナーガさんの暴言を聞き流しながら俺は、高寺のデッキを確認していると、ふと手が止まった。

 

 

デスサイズ・キラー

星8/風属性/昆虫族/攻2300/守1600

(1):このカード以外の自分フィールドのモンスター1体をリリースして発動できる。このカードの攻撃力はリリースしたモンスターの元々の攻撃力分アップする。この効果は相手ターン中でも発動できる。

 

 

『ぐ……小癪な、喰らえ!』

『ギイヒヒヒッ!』

『何ぃッ!?』

「すげー! デスガーディウスが電脳エナジーショックを弾いたぞ!」

「流石リックのエースなんだナ……」

 

 

 うわなんだこのクッソ悪用の効きそうなフリーチェーン見たことねぇぞ。って……漫画版のデスサイズ・キラーじゃないですかやだー。存在するんだろうなとは思っていたけどまさかこんなところで見つけるとは……やっぱりデュエルアカデミア凄いなぁ。

 

「気が変わった」

 

「え……?」

 

「コレくれたら助けてあげる」

 

「そ、それは……」

 

 高寺はすぐに首を縦には振らなかった。まあ、これ見るからに高そうだもんな!

 

 

『タヒネ!』

『がぁぁぁ!?』

「アッパーカットだ!」

「うわ、痛そう……」

「アレは全治2ヶ月は掛かりそうですにゃ……」

 

 

 いかん、そろそろデスガーディウスが勝ちそうだ。手加減しろって言ったのに……いや、手加減してアレなんだな多分。

 

「くれなかったらサイコ・ショッカーに突き出す。テメェらのケツは自分で拭け」

 

「さ、差し上げます! どうか助けてくださいッ!!」

 

「デスガーディウス。ダーク・デストラクション」

 

 

 『ゲヒャハハハハ!』

 

『がはぁっ!!?』

 

 

 その言葉と共にデスガーディウスの闇を纏わせた鉤爪による振り下ろしにより、サイコ・ショッカーの身体は後方に吹き飛ばされた。

 

 「ん? 逃げたか」

 

 するとサイコ・ショッカーの気配が遠退くのを感じ、少々面倒なことになったことで溜め息を吐く。まあ、追わないわけには行かないわな。

 

 高寺を立たせつつ渋々椅子から立ち上がった俺は、立ち上がってから背中にピタリと張り付き始めた天音ちゃんに声を掛けた。

 

「ところで天音ちゃんはあの精霊欲しいか?」

 

 天音ちゃんのデッキなら全然採用ラインだろう。無論、見た目的にである。

 

「サイコショッカー……凡骨……馬の骨……いらない……」

 

 辛辣だなぁ、オイ。取り付く島もない。

 

 しかし、俺は天音の返答を聞いて口の端を歪めた。

 

「そうかい……」

 

 ああ、楽しみだなぁ……。

 

「んじゃ」

 

 サイコ・ショッカーはサイバー流に呑まれはしたが、依然として伝説級のレアカード。その上、小回りの効く人型で強い力を宿した精霊なんて……。

 

「俺が貰うな」

 

 俺のものにしない理由がないじゃないか。いやぁ、向田と井坂だっけ? 君たちの犠牲は無駄にはしないよ。くふふふ……漫画版デスサイズ・キラーにサイコ・ショッカーとは今日はなんていい日なんだ!

 

『マスターも相変わらず現金ですねぇ、最初から無償で助ける気だったでしょう?』

 

 そりゃこのデュエルアカデミアで俺の目の前で誰かが死ぬことを許すほど、薄情でも人間を捨ててもないからな。でもほら? こっちの方がやる気出るじゃん?

 

『マスターのそういうところ私大好きですよ?』

 

 よせや褒めるなや。

 

 外に出ると十代たちが実体化しているデスガーディウスを中心に広い円を囲むようにしていた。いや、よく見れば十代だけはデスガーディウスにかなり近付いているな。

 

「すげぇ! 本当にリックのデスガーディウスだ!」

 

 元からデュエル中よく俺のデスガーディウスを目にする十代は違いがわかるんだろうな。まあ、この島どころかプロデュエリストでも俺以外にデスガーディウス使う奴知らないけど。

 

「なあリック!」

 

「なんだ?」

 

「アイツとデュエル出来るか!?」

 

「アニキ流石にそれは無理があるでしょう……」

 

……………………あー。

 

「今は止めとけ、それより逃げた人造人間を追わなきゃな」

 

 俺はこちらを向いて微動だにしないでいるデスガーディウスの目の前に移動すると、デスガーディウスに語り掛けた。

 

「追えるか? デスガーディウス」

 

『ゲッゲッゲ……』

 

 デスガーディウスは自身の胸に片手を当ててから笑い声を上げると、片方の掌を開いて俺の前に置いた。

 

 それを確認してから十代たちの方に振り向き、笑顔を作り、高寺を摘まみ上げて肩に担ぐと、デスガーディウスの掌に乗った。

 

「え……?」

 

「じゃあ、ちょっとデュエルして来る。着いてきたいならお好きにな」

 

 デスガーディウスはその巨体からは想像も出来ないような瞬発力によって夜空へと飛翔し、森へダイブすると草木を激しくざわめかせる。背後に驚きを上げる十代達の声が遠ざかって行くのを感じた。

 

 俺とデスガーディウスは、高寺の悲鳴を聞きながらサイコショッカーを目指した。相変わらず、デスガーディウスはサイレントヒル出身の化け物みたいである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『くっ……もう来たか……』

 

 案の定、創作物の刑事と銭形幸一ぐらいしか着ていなそうなコートを着た姿のサイコ・ショッカーは簡単に見付かった。どうやらこの島にある変電所のひとつを根城にしていたらしい。

 

『申し訳程度の機械族要素ですね』

 

 言ってやるな。それよりも嬉しい誤算がある。

 

「向田! 井坂! 生きてたのか……!」

 

 サイコ・ショッカーの生け贄にされたと思っていたオカルト研究会のメンバーは、サイコ・ショッカーの足元で眠らされていたことで高寺は感極まって膝を落として喜んでいた。一度に三人を生け贄にしようとしかしないなんて、中々紳士的じゃないかあのサイコ・ショッカー。

 

『紳士…的……?』

 

「おい、サイコ・ショッカー。デュエルしようや」

 

『なんだというのだこの人間は!?』

 

「賭けるものはそうだな。そこの高寺を賭けてやろう。ただし、俺が勝ったら言うことをひとつ聞け」

 

「え……?」

 

『何……? ふむ……ならばよかろう。吐いた唾は飲めんぞ』

 

 隣にいるそのために連れて来た高寺が親に身売りされた子供のような表情で俺を見て来た。

 

 サイコ・ショッカーはすぐにやる気になったようなので成功である。

 

「ま、まま、待ってください! どうして!? 助けてくれるって言ったじゃないですか!?」

 

「言ったさ。だからサクッとデュエルでブチのめして解決する。メリットの無いデュエルなんてしたがらないだろ? それは俺が負けると思っているのか? それともなんだ。お前がアイツとデュエルしてもいいんだぞ?」

 

 俺が手で示した方向にいるサイコ・ショッカーは既にやる気満々であり、デュエルディスクを構え、静かにこちらを待っている。

 

 さっきはデスガーディウスに劣りはしたが、伊達に攻撃力2400の壁を作ったというある意味伝説の精霊は伊達ではなく、デスガーディウスとはまた違った凄みがある。並のデュエリストならば相当な覚悟が無ければ前には立てないだろう。

 

「………………よろしくお願いします」

 

「おう」

 

 デュエルディスクを構えて、早速デスサイズ・キラーを投入した昆虫デッキを使おうとすると、肩をツンツンと触られる。

 

 何かと思って振り向くと、デスガーディウスが器用にもその爪の一本で俺をつついていた。

 

「どうした?」

 

『グギッギッ……』

 

 デスガーディウスは声を上げると、俺を制してサイコ・ショッカーと丁度逆の位置。すなわち、デュエリストが立つべき場所に立った。

 

『なんだ? 貴様に用はない』

 

『ゲッゲッゲ……』

 

『なんだと……!』

 

 なんか会話してるぞアイツら。

 

「タイマンではコチラに勝てもしないのだから、次はデュエルで遊ぼうか。先輩? って言ってますね」

 

 煽りおる。

 

 そういや、バトルシティでは微妙にサイコ・ショッカーの方がデスガーディウスより先輩だったな。

 

 ふと横を見ると、いつの間にかメデューサ先生の姿になっていたヴェノミナーガさんが立っていた。

 

「何してるんですか?」

 

「今日は折角ですから面白そうなので翻訳係です。後、同じ枠が多いと見辛いですからね。私なりの配慮ですよ」

 

 わけがわからない。いや、恐らくヴェノミナーガさんにしかわからないと思うが、そういうことらしい。時々ヴェノミナーガさんは宇宙悪夢的な思考に至るから困る。

 

『よかろう……まずは貴様から叩き潰してやろう』

 

『ゲッゲッゲ……』

 

「デュエルディスクを貸して欲しいそうですよ」

 

 特に異論はないので、俺はデスガーディウスにデュエルディスクを渡した。

 

 デスガーディウスは念力のようなもので宙にデュエルディスクとデッキを浮かせると、デュエルディスクにデッキが出現してデュエルディスクを起動した。

 

『デュエル!』

『キヒッ…』

 

デスガーディウス

LP4000

 

サイコ・ショッカー

LP4000

 

 

『私のターンドロー』

 

手札5→6

 

『私は"怨念(おんねん)のキラードール"を召喚』

 

怨念(おんねん)のキラードール

星4/闇属性/悪魔族/攻1600/守1700

このカードが永続魔法の効果によってフィールド上から墓地に送られた場合、自分のターンのスタンバイフェイズ時に墓地から特殊召喚する。

 

 歪な男の子の木製人形が召喚される。

 

怨念のキラードール

ATK1600

 

『更に永続魔法"エクトプラズマー"を発動する。そして、私はターンを終了。この瞬間、"エクトプラズマー"の効果が発動。 お互いのプレイヤーは、それぞれ自分のエンドフェイズ時に1度だけ、自分フィールド上に表側表示で存在するモンスター1体を選び、そのモンスターを生け贄にし、生け贄にしたそのモンスターの元々の攻撃力の半分のダメージを相手ライフに与える』

 

 怨念のキラードールが消滅すると思念だけがそこに留まり、デスガーディウスの身体を貫いた。

 

デスガーディウス

LP4000→3200

 

 サイコ・ショッカーはエクトプラズマーデッキか。恐らくサイコ・ショッカー主体の魔法軸デッキと見える。破壊できないとかなり厄介なカードでもあるからな、エクトプラズマーは。

 

サイコ・ショッカー

LP4000

モンスター0

魔法・罠1

手札4

 

 

「おーい! リックー!」

 

「なんだ、随分早かったじゃないか」

 

「まあな! それよりデュエルだ!」

 

「や、やっと着いた……」

 

「運動はしんどいんだにゃ……」

 

 そのタイミングで十代達が追い付いた。十代だけ来るかと思ったら他も来ているらしい。

 

「おわ!? デスガーディウスがデュエルしてるのか!?」

 

「ええ……どういうことなんスか……」

 

 十代達は困惑しているが精霊の世界は現実以上にデュエルの強さが全てを左右するので別段不思議なことではないのだが、彼らにはまだ早い話であろう。

 

『ゲッゲッゲ…』

 

『減らず口を…』

 

「なんて?」

 

「たったそれだけか? だそうです」

 

 まだまだ煽りおる。

 

  真のデュエルのためライフポイントの減少に伴いデスガーディウスの身体が若干薄れているが、その程度でどうこうなるデスガーディウスではない。寧ろ愉しそうな様子だ。

 

 精霊をよくは知らない十代達からは何が起きているかもわからないであろう。まさか、命のやり取りをしているとは夢にも思うまい。いや、デュエルモンスターズは現代ではただのゲームなのだ。ならばそのように認識出来ていればそれでいいだろう。無知は罪とはいうが、知らぬが仏という言葉もある。

 

「あれ!? どうしてメデューサ先生がいるんですかにゃ?」

 

「デュエルあるところに我あり。つまりはそういうことです。デュエルの匂いを嗅ぎ付ければ私はどこにでも現れますよ」

 

「リックと同じってことか」

 

 おい、十代お前それどいういう意味だ。

 

 デスガーディウスはカードをドローした。

 

手札5→6

 

 そう言えばデスガーディウスがデスガーディウスのままでデュエルしているのって初めて見る――。

 

アトラの蟲惑魔(こわくま)

星4/地属性/昆虫族/攻1800/守1000

このカードは「ホール」または「落とし穴」と名のついた通常罠カードの効果を受けない。このカードがフィールド上に表側表示で存在する限り、自分は手札から「ホール」または「落とし穴」と名のついた通常罠カードを発動できる。また、このカードがフィールド上に表側表示で存在する限り、自分がコントロールする通常罠カードの発動と効果は無効化されない。

 

 マジか欲しい。

 

 デスガーディウスは手札から、赤い玉の髪飾りが6個ついた紫色の髪をしており、どことなく蜘蛛っぽい印象を受ける薄着姿の少女を召喚した。

 

アトラの蟲惑魔

ATK1800

 

「な、なな、なんなんスかあの可愛いカードは!?」

 

「蟲惑魔は落とし穴の精霊みたいなものだな」

 

「そ、そんなカードもあるんスか!」

 

 だいたいあってる。

 

「蟲惑魔にも穴はあるんだよなぁ……?」

 

 人前で俺以外にも聞こえるから少し黙ろうかヴェノミナーガさん。

 

「それにしてもサイコ・ショッカー相手に蟲惑魔とは……随分皮肉が聞いていますね」

 

「ひでぇことしやがる……誰に似たんだか」

 

「ツッコミ待ちかな?」

 

 まあ、一応蟲惑魔の弱点でもあるんだがな。

 

 そうしているとデスガーディウスは二重召喚を発動し、更にモンスターを召喚した。

 

召喚僧(しょうかんそう)サモンプリースト

星4/闇属性/魔法使い族/攻 800/守1600

(1):このカードが召喚・反転召喚に成功した場合に発動する。このカードを守備表示にする。

(2):このカードがモンスターゾーンに存在する限り、このカードはリリースできない。

(3):1ターンに1度、手札から魔法カード1枚を捨てて発動できる。デッキからレベル4モンスター1体を特殊召喚する。この効果で特殊召喚したモンスターはこのターン攻撃できない。

 

 シンクロ時代にダーク・ダイブ・ボンバーを筆頭としてレスキューキャットと共に大暴れしたあの方である。こいつといい、あるカードバトルのビショップのハゲといいどうして僧侶のクセに暴れたがるんだろうか。

 

召喚僧サモンプリースト

DEF1600

 

 デスガーディウスは手札から魔法カードを墓地に送り、モンスターを特殊召喚した。

 

トリオンの蟲惑魔(こわくま)

星4/地属性/昆虫族/攻1600/守1200

(1):このカードが召喚に成功した時に発動できる。デッキから「ホール」通常罠カードまたは「落とし穴」通常罠カード1枚を手札に加える。

(2):このカードが特殊召喚に成功した場合、相手フィールドの魔法・罠カード1枚を対象として発動する。その相手のカードを破壊する。

(3):このカードはモンスターゾーンに存在する限り、「ホール」通常罠及び「落とし穴」通常罠カードの効果を受けない。

 

 次はどことなくアリジゴクを想起させる小さな二本角のような髪型をした少女が特殊召喚される。

 

「あ、また蟲惑魔ちゃんッス!」

 

 と、丸藤が言った瞬間にトリオンの蟲惑魔が消えた。

 

「え? ど、どこに行ったんスか?」

 

『なにぃ!?』

 

 サイコ・ショッカーから悲鳴が上がり、そちらに全員の意識が向く。

 

 そこにはサイコ・ショッカーのフィールドに突如として巨大なアリジゴクの巣が出現していた。

 

 次の瞬間、巣に比例する巨大さのアリジゴクが出現する。それによりエクトプラズマーは吸い込まれ、アリジゴクの大顎により両断された。

 

 そして、アリジゴクと巣は何事もなかったかのように消え、いつの間にかデスガーディウスのフィールドにトリオンの少女が戻っていた。

 

「トリオンの蟲惑魔の効果は特殊召喚に成功した場合、相手フィールドの魔法・罠カード1枚を対象として発動する。その相手のカードを破壊します」

 

「え……? 今のはなんスか……?」

 

「多分、あれがトリオンの本体なんじゃないかな。蟲惑魔の少女は言うなれば疑似餌なのだろう」

 

「嘘ォォ!?」

 

 なるほどなぁ……。まさにデスガーディウスにピッタリのカードたちというわけか。

 

「そう、あれがデスガーディウスさんの本当のデッキですよ」

 

『ゲッゲッゲッ……』

 

 デスガーディウスはアトラの蟲惑魔でサイコ・ショッカーにダイレクトアタックを行った。少女の姿のアトラの蠱惑魔が煙のように消えると、フィールドの中央から巨大な地蜘蛛が飛び出し、サイコ・ショッカーを襲った。B級パニックホラー顔負けである。

 

『ならん! 私は手札から"バトルフェーダー"を特殊召喚する』

 

バトルフェーダー

星1/闇属性/悪魔族/攻   0/守   0

(1):相手モンスターの直接攻撃宣言時に発動できる。このカードを手札から特殊召喚し、その後バトルフェイズを終了する。この効果で特殊召喚したこのカードは、フィールドから離れた場合に除外される。

 

 風車かやじろべえのようなフォルムをした小さな悪魔が現れ、バトルフェーダーがひとつ鐘を打ち鳴らすと、バトルフェーダーの目前でアトラの蟲惑魔が急ブレーキを掛けて止まり、イソイソとフィールドの中央に帰ると地面に潜った。そしていつの間にか何事もなかったように少女の姿のアトラの蟲惑魔が元いた位置に立っている。

 

 なんだこのシュールな絵面。

 

 流石にエクトプラズマーを使う以上、がら空きのフィールド対策はしているというものか。

 

『効果によりバトルフェイズは終了だ』

 

『ケッ!』

 

 あ、ちょっとデスガーディウス悔しそう。

 

 デスガーディウスはカードを2枚魔法・罠ゾーンに伏せてターンを終了した。

 

デスガーディウス

手札0

モンスター3

魔法・罠2

 

 

『私のターン』

 

手札3→4

 

『この瞬間、"怨念のキラードール"は私の元に戻る!』

 

怨念のキラードール

ATK1600

 

 歪な男の子の木製人形が再び召喚された。

 

「私は"バトルフェーダー"を生け贄に"人造人間-サイコ・ショッカー(わたし)"を召喚する!」

 

 精霊だとそりゃそうなるのが当然だが、改めて聞くと凄い言葉だな、おい。

 

人造人間(じんぞうにんげん)-サイコ・ショッカー

星6/闇属性/機械族/攻2400/守1500

(1):このカードがモンスターゾーンに存在する限り、お互いにフィールドの罠カードの効果を発動できず、フィールドの罠カードの効果は無効化される。

 

 サイコ・ショッカーに何処からともかく飛来した雷が直撃し、変電所施設の何処かにも当たったのか、小さな爆炎がサイコ・ショッカーを包みながら辺りに派手な土煙が巻き上がる。

 

 土煙が晴れると、そこにはコートを脱ぎ去り、完全に実体化したサイコ・ショッカーがフィールドに立っていた。

 

 俺とヴェノミナーガさんと少し驚いているだけで楽しそうな十代以外の全員があまりにリアルな―――もといソリッドビジョンではない雷とサイコ・ショッカーに軽く腰を抜かしている。

 

 

人造人間(じんぞうにんげん)-サイコ・ショッカー

ATK2400

 

「強い強いとは常々思っていたが雷の直撃にも耐えるのか……デュエルディスク……」

 

「「「「「そっち(にゃ)(ッスか)(じゃないんだナ)!? 」」」」」

 

 やっぱりスゲーな、社長の技術。寧ろ他に何があるというのか。

 

「真のデュエリストは常識に囚われてはいけないのですね!」

 

 なんかヴェノミナーガさんが見てると少し腹が立つ顔文字になりそうな表情をしているが、そっとしておこう。

 

 ちなみに英語でのサイコ・ショッカーの名前は"Jinzo"の一言。ぶっちゃけこっちの方がカッコいいと俺は思うの。

 

 ん? 何故アトラがいるのにデスガーディウスはサイコ・ショッカーの召喚を許したのだろう。カードの精霊が手札事故なぞ起こすわけもないのだがな。

 

「まずはお前だ! 電脳(サイバー)エナジーショック!」

 

 サイコ・ショッカーの代名詞であるビリビリ球によって召喚僧は消し飛んだ。

 

「悪行はそこまでじゃ!」

 

 スゲーよなアレ。未だに現役なんだもの。

 

 それはそれとして何故アトラを倒さなかったのかと考えたが、アトラの効果を知っているのはここでは俺と隣のヴェノミナーガさんとデスガーディウスぐらいのものだろう。この世界じゃ試合中に効果の確認とか出来ないからな。

 

「私はカードを1枚伏せてターンを終了する」

 

サイコ・ショッカー

LP4000

モンスター2

魔法・罠1

手札2

 

 

『ゲッゲッゲ……』

 

手札0→1

 

『ググギ…… 』

 

 デスガーディウスは伏せていた悪魔の蜃気楼を発動した。相手のスタンバイフェイズ時に1度、

自分の手札が4枚になるまでデッキからカードをドローし、この効果でドローした場合、次の自分のスタンバイフェイズ時に1度、ドローした枚数分だけ自分の手札をランダムに捨てるという効果の永続魔法である。 無論、前世では極悪禁止カードの1枚だ。

 

 悪夢(あくむ)蜃気楼(しんきろう)……サイクロンとか、非常食とか、王宮の勅命とのコンボには前世でお世話になりましたねぇ……蟲惑魔ならどうあってもメリットしかないわな。

 

 まあ、アニメ仕様の宝札系カードが当たり前のように現役のこの世界では寧ろ使いにくい部類なのだがな。ちなみに当たり前というかなんというか、宝札系カードはどれもこれも1枚で家が立つ値段であり、下手すりゃマンションも立つ。勿論、俺はほぼ全て3枚ずつ持っている。ファイトマネーはこうして使われるのである。

 

 更にデスガーディウスは手札から強欲な壺を発動し、カードをドローした。

 

手札0→2

 

『キヒッ……』

 

 デスガーディウスのフィールドにモンスターが召喚された。

 

メルキド四面獣

ATK1500

 

 頻度的にいえば、親の顔より見たカードの1枚になりつつある俺のカードである。

 

「あ……(察し)」

 

 これはいつものパターンですねぇ……。

 

 メルキド四面獣とトリオンの蟲惑魔が生け贄にされ、デスガーディウスが立ち位置をアトラの蠱惑魔の隣のモンスターカードゾーンに変えた。

 

仮面魔獣デス・ガーディウス

ATK3300

 

 やはり当時としてはかなりのインチキ効果とお化けスタッツだなぁ。

 

「パパパパーンパパパパーン!(デンデン!) パパパパーン!(デンデン!)」

 

 改めて端から見てみると、デュエルリング1が脳内再生されそうな光景だなと心のどこかで考えていると、隣から言葉で流れてきた。ヴェノミナーガさんはひょっとして第四の壁とやらが見えているのではないかと最近思うことがある。

 

 というか今は一応教員の姿でまだバレてないんだからそういうのは控えなさい。

 

『ゲヒャヒャヒャ!』

 

 デスガーディウスはそのままバトルフェイズに入り、サイコショッカーに突撃した。基本的に後ろから見ているので新鮮だが、横から見ていても相変わらず、サイレントヒル出身の化け物の突撃は大迫力である。

 

「舐めるなぁ! "リミッター解除"!」

 

 サイコショッカーは伏せてあったカードを発動した。みんな大好きリミッター解除である。どうやらさっき現実の殴り合いで負けたことを根に持っていたようだ。

 

人造人間(じんぞうにんげん)-サイコ・ショッカー

ATK4800

 

「終わりましたね」

 

「終わったな」

 

 ただ、それはデスガーディウスに対してやってはいけない行動のひとつである。丸藤先輩もそれで俺に負けたことがある。後、こちらの世界では高いのであまり見かけないが、オネストもマズい。

 

「オォォォ! 電脳エナジーショック!」

 

 さっきよりも二回り程巨大なビリビリ球がデスガーディウスを迎え撃ち、デスガーディウスは爪先から砕け散るように霧散した。

 

デスガーディウス

LP3200→1700

 

『ゲッゲッゲ……』

 

 倒されたデスガーディウスはいつの間にか元居た場所に立っていた。

 

『ウェヒッ……』

 

「なに……?」

 

 するとデスガーディウスは爪を一本立てて、ちょんちょんと上を指差した。それに従ってサイコショッカーと俺らは上を向く。

 

「なっ!?」

 

 次の瞬間、上から降ってきた遺言の仮面が、サイコショッカーの顔に綺麗に被さった。

 

「い、いったいなんだ!?」

 

『ゲッゲッゲ……』

 

 闇雲に手を振るうサイコショッカーを見ながら笑うデスガーディウス。サイコショッカーの手には再び電脳エナジーショックが作られると、それは狙いを付けられることはなく空の彼方へと放たれた。

 

 そうしているうちにアトラの蟲惑魔も動き、突如アトラの代わりに現れた巨大な蜘蛛が怨念のキラードールを糸で引き寄せ、大顎から消化液を流し込み戦闘破壊した。

 

サイコ・ショッカー

LP4000→3800

 

「な、なんだ!?」

 

「十代、"遺言の仮面"の効果は?」

 

「えーと、装備モンスターのコントロールを得るだよな?」

 

「そう、そしてデスガーディウスはタイミングを逃さない効果だからこちらのターンに戦闘破壊されるとな――」

 

 そして、電脳エナジーショックは大きく弧を描きながらサイコショッカー自身へと帰った。無論、リミッター解除を受けたままの電脳エナジーショックである。

 

「当然こうなる」

 

『タヒネ!』

 

 サイコショッカーは自身の電脳エナジーショックを受けて凄まじい爆発を引き起こし、爆散した。

 

「ぐぁぁぁぁぁ!?」

 

サイコ・ショッカー

LP3800→0

 

 やべっ……これ真のデュエルだったよな……? 死んでないだろうな?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 結論からいうとサイコショッカーは生きていた。真のデュエルで滅びのバーストストリームの1.5倍以上のダメージを受けておいて死なないとは中々タフな奴である。

 

 とはいえ、ギリギリだったのでさっさと契約しておいた。ダメージのショックでオカルトを合わせたものではなく、能力が比較的高い普通の精霊に戻ったようなので好都合だったといえよう。

 

 十代がデスガーディウスとデュエルしたいと目を輝かせていたが、そのうちすることになると思うのでその場はお茶を濁しておいた。

 

 それと、何故かサイコショッカーは残りのオカルト研究会の向田と井坂を生け贄にしていなかったので帰って来たが、無論、二人にも知識も無しにカード精霊を扱うのがどれだけ危険なのか、デスガーディウスをけしかけながら大徳寺先生が止めに入るまで力説しておいたので滅多なことは起こさないであろう。

 

 『相変わらず現金ですねぇ、マスター』

 

「その上、俺は偽善者だからな」

 

『もちろん、そういうところ大好きですよ』

 

 褒めても何も出ないぞ。

 

 俺は隣でふよふよ浮いているヴェノミナーガさんを尻目に、自室でニヤニヤしながらブラック・マジシャンより高く、マンションが建つ程のレアカードである人造人間-サイコ・ショッカーと、それほどではないが十分レアカードの原作仕様のデスサイズ・キラーを見つつ今日の収穫を噛み締めた。

 

 

 

 




この先のことは本編とは全く関係ない上、じゃあ買えよの一言で片付けられる愚痴のようなものなので、特に興味のない方は読まなくても大丈夫です。本当に特に興味のない方はすっ飛ばしてください。





ちょっとお知らせというかこの小説が数年クッソ遅い更新の最大の原因についてなのですが……。

えーと、ぶっちゃけた話、作者の手元に遊戯王GXの各話を見れる環境がありません。というのも再放送をしていた頃に録画を怠っていたということではなく、一応torneにしていたのですが、GXで容量が一杯になりそうだったのでPS3を容量の大きいものに切り替えて外付けHDDも繋いだところ中身のデータに互換性がないだけでなく、旧PS3に繋いでいたHDDのデータを見ることすら出来なくなるということが発生しまして、三期最後半より以前のデータを見れなくなるという事態になったのです。ちなみにこれ年単位で前の話ですね、はい。全くもってtorneを過信していた私の落ち度です。

となるともうGX自体を買うしかないのですが、あれ全て合わせると軽く4万円以上するんですよねぇ……なのでぶっちゃけ二次創作を書くためだけにそこまでの出費をするのも如何なものなのかと思いまして、全く更新が出来ていないというのが一番の理由だったりします。逆にハゴロモギツネの方がこちらに比べて異様に早いのはリアルタイムで録画を出来ているからですね、はい。

なのでこれ以上の更新をしようとするとぶっちゃけ買うか、他投稿者様の小説を拝見してそれと掠れた記憶を思い起こして本編の内容を想像して書くしかない次第なのです。前者はFGOで夏イベを控えている作者にはキツ……げふんげふん少し出費が難しく、後者はなんだかこうよく書き初めの作者様方が公表している二次創作を見ただけで小説の書いてみた状態になるのであまりやりたくはないというのが本心です。

しかし、後者を使えば急激に更新速度自体は上がると思われます。逆に使わなければこれ以上の更新はかなりキツいと言わざる負えません。

無論、じゃあ買えよそもそも二次創作自体お前の自己満足だろで片付けられる作者の愚痴のようなものでした。下らないことを書いてすみません。

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