じゃしんに愛され過ぎて夜しか眠れない   作:ちゅーに菌

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 皆さん一年更新の小説の更新のお時間ですよ! あれ? なんかいつもと違うような……まあ、この小説が更新されたということは一年経ったということですね!(ホモは嘘つき) では、お楽しみください。


デュエルキング 中

 

 

 

「俺のターン! ドロー!」

 

手札5→6

 

 当たり前のように神楽坂に先攻を持って行かれてしまったが、まあ向こうはぶっつけ本番なのだから、寧ろ俺が譲ってやるべきだったかもな。

 

 さて、あれだけの自信を見せたんだ。お手並み拝見といこうじゃな――。

 

「俺は手札から"融合"を発動! 手札の"幻獣王ガゼル"と"バフォメット"を融合し、"有翼幻獣キマイラ"を融合召喚!」

 

 は……?

 

有翼幻獣(ゆうよくげんじゅう)キマイラ

星6/風属性/獣族/攻2100/守1800

「幻獣王ガゼル」+「バフォメット」

(1):このカードが破壊された時、自分の墓地の、 「バフォメット」または「幻獣王ガゼル」1体を対象として発動できる。 そのモンスターを特殊召喚する。

 

有翼幻獣キマイラ

ATK2100

 

 荒々しい悪魔のような角が生えた双頭で、背には一対の白石翼が生え、鋭い爪を持つ四肢を地につけた獣がそこにいた。

 

『これマジ? 見た目の割に能力値と効果が貧弱過ぎるでしょう』

 

 まあ、昔から言われてるし、少なくとも2800ぐらいは攻撃力あっても――ってそうじゃないぞヴェノミナーガさん。

 

『はい、そうですね。確かあのデッキって、"幻獣王ガゼル"と"バフォメット"はピン刺しでしたよね? それに"有翼幻獣キマイラ"も武藤遊戯本人が、初ターンで出すことが比較的よくあったカードでしたね』

 

 そして、なにより特筆すべき点は自信に満ち溢れた神楽坂の顔である。一切、己のデッキに対して不安や恐れ、気の迷いを抱いていない理想のデュエリストのような風体だ。

 

 これは……想像以上の大物を引いてしまったかもしれん……。

 

「カードを1枚伏せて、ターンエンドだ!」

 

神楽坂

LP4000

モンスター1

魔法・罠1

手札2

 

 

「ん……? 悪いな神楽坂、少しだけ待ってくれ。観客が増えるぞ」

 

「え……? それはどういう――」

 

「おーい、リックー! ってやっぱりもう始めてるじゃねーか!」

 

 十代や藤原の精霊の力。そして、天音ちゃんの邪神の気配を感じたため、そう言うと、すぐに知った声が響いてきた。

 

「みぃつけた……」

 

「ほ、ホントにリックさんの匂いがするって天音さんが言った方向にいたっス……」

 

「とんでもない嗅覚を持っているのか……?」

 

「うふふ。いえ、それは愛よボウヤたち」

 

 声の方向を見れば、十代を先頭に友人たちがこちらに向かってくる姿が見えた。ふむ、もう見つけてくるとはな……デュエリストは惹かれ合うというものだろうか。それだとすれば十代らもデュエリストとして板についてきたようで喜ばしいことだな。

 

 その後すぐに、神楽坂の知り合いがいたため、何故そんなことをした等と三沢を中心に聞き始めた。また、話を聞く限り、十代らも知っていたようである。俺が止めたつもりだったが、少し待つ形になったなと思っていると、ヴェノミナーガさんが小声で話し掛けて来た。

 

『いや、現実を見ましょうよマスター。あの娘、当初私やイレイザーさんが考えていたより数段ヤバい娘ですって……』

 

『いやー、天音ちゃんったら、色んな意味で逸材だったねー! アハハハ!』

 

 いつの間にか、イレイザーまでヴェノミナーガさんの隣に湧いて他人事のように笑っている。

 

 最近、あえて考えないようにしているんだが……俺は将来どうなっているんだろうな……。まあ、プロデュエリストとして既に社会に出てはいるが、デュエルアカデミアを卒業した後の話だ。

 

 何かは掛け持ちするかも知れないが、依然としてプロデュエリストは続けているだろう。また、父さんに孫を見せたいので結婚願望はある。そんなことを考えると、無意識に浮かんでくる――。

 

 自尊心と個性の塊の藤原(あのやべー)と、元幽霊の現ストーカー(ふたり)が黙っている気がしないのである。

 

 いや、二人には大変失礼だが、仮に結婚したと仮定する。そうしたときに、普通に結婚生活をしているビジョンが全く浮かばないのだ。

 

 流石に唐変木ではないというか、藤原に関してはかなり大胆かつ手段を選ばずにアプローチを掛けて来ており、天音ちゃんは既にストーカーというより憑依レベルである。好意に気づかない方が可笑しいというか、あの二人は別方面に目が据わっており、多少恐怖を覚える。

 

 ちなみに天音ちゃんに比べれば、藤原がマシかと思うかもしれないが、朝起きたら当たり前のように隣で寝ており、起きたら悪びれることもなく笑顔を浮かべ、朝食を作って一緒に食べるまでされたことが一度や二度ではないため、藤原も大概である。なにより、それに慣れ始めている俺がいるのが、若干悲しい。

 

『融合モンスターと、ユニオンモンスターかな?』

 

 あの二人を当てはめると洒落にならないから止めるんだ。

 

 とは言え、二人は友人であり、別に嫌っているわけではない。ただ、今後の対応に困っているというのが現状なのである。

 

『ちなみにマスターはどんな女性がタイプなんです?』

 

「デュエルが好きで、家庭的な人」

 

『うわ……衝撃的なハードルの低さ……やはりあのツンデレピンク頭は遠ざけなければ……ああ見えて料理上手で家庭的ですし……』

 

 何故か、小声でぶつぶつと独り言を呟き始めるヴェノミナーガさん。いつも他人に迷惑を掛けない程度に静かならいいのに。

 

『――っていうかー! そもそも、ハーレム展開も、個別エンドも認めませんよ! マスターはもう、メインヒロインの私のルートに入ってるんですからね! これがトゥルーエンドなんですよ!』

 

 ん? というか、藤原はヴェノミナーガさんが体を一時的に乗っ取った時からの関係で、天音ちゃんはヴェノミナーガさんが三邪神を神として復活させてからの関係だよな……?

 

 元を正せばほとんどヴェノミナーガさんが原因なような……。

 

『………………どうしたら皆さん幸せになれるんでしょうねぇ。あっ――神楽坂さんと他の方のお話がとりあえず終わったみたいですよ!』

 

 コイツ……まあ、今はいいや。改めてデュエルの再開である。

 

 

「じゃあ、改めて行くぞ神楽坂。俺のターンドロー」

 

手札5→6

 

 引いたカードを目にし、あまり引きに関しては人のことを言えないなと思いつつ、そのままモンスターカードゾーンに置いた。

 

「俺は手札から"ガーディアン・エアトス"を特殊召喚」

 

ガーディアン・エアトス

星8/風属性/天使族/攻2500/守2000

(1):自分の墓地にモンスターが存在しない場合、 このカードは手札から特殊召喚できる。

(2):このカードに装備された自分フィールドの装備魔法カード1枚を墓地へ送り、 相手の墓地のモンスターを3体まで対象として発動できる。そのモンスターを除外する。 このカードの攻撃力はターン終了時まで、 この効果で除外したモンスターの数×500アップする。

 

 そこに召喚されたのは、鳥の被り物を被り、背中に巨大な白い翼を持つ女性モンスターであった。ネイティブアメリカン風のへそ出しルックな衣装を身に纏い、良く見ると金髪なのが分かる。更にコレクターズレアのため、召喚からポージングまでの間だけ、彼女を引き立てる淡い虹色の光がキラキラと舞っていた。

 

 実際にソリッド・ビジョンで見てみると、女神のように美しい女性であり、これだけでも草の根を上げて買った価値があるというものだ。

 

ガーディアン・エアトス

ATK2500

 

「"ガーディアン・エアトス"は、自分の墓地にモンスターが存在しない場合、 手札から特殊召喚できる。更に装備魔法、"女神の聖剣-エアトス"を装備。効果によって攻撃力500ポイントアップ」

 

 そして、出現したエアトスの手に細身の直剣である聖剣が握られた。

 

ガーディアン・エアトス

ATK2500→3000

 

『聖剣……重打聖剣……地底人……うっ……頭が……』

 

「――な、なな、なんなんスかあのお美しいカードは!?」

 

 案の定、反応した丸藤の声を聞き、そう言えば入手時期が最近のため、十代らに対しては使ったことがないことに思い当たった。

 

『………………』

 

 丸藤の少々あれな反応にエアトスも眉を顰めて困り顔な様子だった。まあ、顔には眉以外出さないだけ優しさがあろう。

 

「ははは、スゴいだろ?」

 

 まあ、言わぬが華だが、所有者の収集家が手放したくないとのことだったので、所有者の会社の決定で重要なデュエルの助っ人になったり、想像以上に吹っ掛けられたので、ヴェノミナーガさんをけしかけたりと、それはそれは大変な値切り交渉の末――。

 

『結局、デスサイズと同様に新効果の方のエアトスは1枚しか存在しなかったので、所有者との密な交渉の末、5億もしましたからね』

 

「言うな」

 

「5億ぅ!?」

 

「え? なんスかアニキそれ?」

 

リックの精霊(ヴェノミナーガ)が言うには、あの"ガーディアン・エアトス"は5億円で買ったらしいぜ!?」

 

「へー…………へ? えぇぇぇぇぇ!?」

 

 俺の部屋に入り浸っているため、知っている藤原と天音ちゃん以外の面々は神楽坂を含めて酷く驚いた様子だった。神楽坂に関しては、時々教員のコピーデッキを揃えれる程度には家が金持ちだった気がするが、それでも1枚で3億レベルは早々ないのだろう。

 

 まあ、そうは言うが、まだ入手しやすい方のアニメのエアトスの効果って――。

 

ガーディアン・エアトス

星8/風属性/天使族/攻2500/守2000

(1):「女神の聖剣-エアトス」が自分のフィールド上に存在する時のみ、 このカードは召喚・反転召喚・特殊召喚する事ができる。

(2):墓地にモンスターがいない場合、このカードは生け贄無しで特殊召喚する事ができる。

(3):このカードに装備された「女神の聖剣-エアトス」を破壊する。 相手の墓地のカードを上からモンスターカード以外のカードが出るまで モンスターカードを取り除く。 取り除いたモンスターカードの攻撃力の合計値をこのカードの攻撃力に加える。

 

 ――なのである。流石にデスガーディウスのデッキに入れるには、使いにく過ぎるんだよなぁ……それだったら是が非でもOCG化した方を入手したいと思うだろう。

 

 …………まあ、高い買い物のついでにOCG化の方の女神の聖剣-エアトスと、死神の大鎌-デスサイスを探したら、それぞれ1億ほど掛かったが、それもまた言わぬが華だろう。こうして俺のプロ野球選手もビックリなファイトマネーは湯水の如く散財されるのである。

 

 そんなことを考えていると、何故か丸藤はエアトスを仏か何かのように拝み始めたため、エアトスは頬をひくひくさせていた。

 

「人気者だなデスサ――おっとエアトス」

 

『チッ…………さっさと私を殺しなさいよッ!』

 

 そういうと、エアトスは召喚時点からずっと作っていた凛々しい表情をぷるぷると強張らせ、遂に小さく舌打ちを打って物騒なことをいい始めるエアトス――もといデスサイス。

 

 彼女はガーディアン・エアトスの精霊というより、ガーディアン・デスサイスの精霊なのである。要するにガーディアン・デスサイスが脱いで、エアトスの服を着ている状態なのだ。地はひねたヤンキーのような性格をしているので、当人的にエアトスであることにかなり無理をしているらしい。

 

 ちなみに精霊として覚醒したのは、エアトスが揃った瞬間であり、今年の冬休みだったため、うちではヴェノミナーガさんよりも古参(最古参)にも関わらず、精霊としてはピカピカの新参者という妙な扱いをされている。

 

『……エアトス・オルタ』

 

 また、ヴェノミナーガさんがよく分からないことを言っているが、デュエル中なので無視である。

 

「"ガーディアン・エアトス"で、"有翼幻獣キマイラ"を攻撃。精霊のオペラ」

 

「ぐっ……キマイラが!?」

 

『喰らえ!』

 

 エアトスはキマイラの懐に飛び込むと剣で一閃し、更にキマイラの頭に回し蹴りを入れて戦闘破壊した。オペラ要素がまるでない。

 

神楽坂

LP4000→3100

 

「だが、有翼幻獣キマイラの効果を発動! 墓地から"幻獣王ガゼル"か、"バフォメット"を特殊召喚出来る! 出でよ! "幻獣王ガゼル"!」

 

幻獣王ガゼル

星4/地属性/獣族/攻1500/守1200

走るスピードが速すぎて、姿が幻のように見える獣。

 

幻獣王ガゼル

ATK1500

 

 相変わらず、名前のわりに400ポイントほど足りなそうな能力値ですね……。せめてガゼルがもう少し強かったらなぁ……。

 

「俺はカードを2枚セットし、ターンエンドだ」

 

リック

LP4000

モンスター1

魔法・罠2

手札3

 

 

 

「俺のターン! ドロー! 手札から"強欲な壺"を発動!」

 

 いつもの。

 

神楽坂

手札2→4

 

「更に"天使の施し"を発動! デッキから3枚ドローし、2枚捨てる!」

 

 相変わらず、イカれた効果だなぁと考えていると、神楽坂が"フッ……"とどこかで見たような声を漏らした。

 

「俺が引いたカードの内、1枚は"ワタポン"だ! このカードは効果によりデッキから手札に加わった時、特殊召喚出来る! 来い! "ワタポン"!」

 

ワタポン

星1/光属性/天使族/攻 200/守 300

このカードがカードの効果によって自分のデッキから手札に加わった場合、このカードを手札から特殊召喚できる。

 

 クリクリとした目が特徴的な毛玉が現れる。

 

ワタポン

ATK200

 

「そして、"幻獣王ガゼル"と"ワタポン"を生け贄に――"ブラック・マジシャン"を召喚!」

 

ブラック・マジシャン

星7/闇属性/魔法使い族/攻2500/守2100

魔法使いとしては、攻撃力・守備力ともに最高クラス。

 

 紫色の薄い鎧を持ち、緑の杖を持ったデュエリストの間では最も有名な魔法使いが現れる。

 

ブラック・マジシャン

ATK2500

 

 懐かしいなぁ……個人的にはパンドラの方のブラック・マジシャンもカッコよくて好きだな。

 

「まだだぜ! リバースカードオープン! 永続罠、"永遠の魂"!」

 

「……!? そのカードは――」

 

『マスターがI2社の絵師兼カードデザイナーとして、お仕事で作ったカードですよね』

 

 しまった……あのデッキは一般公開用の遊戯のかつてのコピーデッキではなく、特別な方のコピーデッキか……。

 

 と言うのも、遊戯デッキとは言っているが、海馬社長の意向として、"仮にあの遊戯が今もいれば、デッキの中身が同じハズがない"。という、今も尚拗らせ続けている自称永遠のライバルかつ男のツンデレ理論により、俺に遊戯デッキを強化するようにという無茶振――依頼が来たため、俺の知るOCG化した遊戯デッキに使えそうなカードを何枚か入れておいたのである。

 

 まあ、ポリシーとして、なんかとなくそれはどうかと思うので、ペガサスさんみたいに露骨な自身のデッキ強化カードを作らないようにはしているのだが、未来の知識活用のツケを今支払うハメになっているのだ。

 

 何故、そんなことを忘れていたのかと言えば、その特別な仕様のデッキは社長を納得させるためだけに1年以上前にひとつ作った物だったため、今どうなっているのかなど知っている筈もなかったからだ。

 

「"永遠の魂"の効果発動! 1ターンに1度、以下の効果から1つを選択して発動できる! 自分の手札・墓地から"ブラック・マジシャン"1体を選んで特殊召喚する。デッキから"黒・魔・導(ブラック・マジック)"または"千本ナイフ"1枚を手札に加える! 俺は墓地の"ブラック・マジシャン"を選択し、特殊召喚するぜ!」

 

 どうやら、天使の施しで先にブラック・マジシャンを落としていたらしい。

 

 ちなみに、もう2つ効果があり、1つは、このカードが魔法&罠ゾーンに存在する限り、 自分のモンスターゾーンの「ブラック・マジシャン」は相手の効果を受けない。2つ目は表側表示のこのカードがフィールドから離れた場合に発動する。 自分フィールドのモンスターを全て破壊するである。

 

ブラック・マジシャン

ATK2500

 

 紫色のブラック・マジシャンの隣に、赤色の薄い鎧を纏って、浅黒い肌に白い髪をしたブラック・マジシャンが現れた。

 

 ちょっと待て、なんで2体もブラック・マジシャンが入って――あ……なんとなくパンドラの方のブラック・マジシャンも俺が入れたんだった。

 

『草』

 

「そして、自分のフィールド上に"ブラック・マジシャン"が存在することにより、手札から魔法カード、"師弟(してい)(きずな)"を発動! 自分の手札・デッキ・墓地から"ブラック・マジシャン・ガール"1体を選んで特殊召喚する。俺はデッキから"ブラック・マジシャン・ガール"を特殊召喚!」

 

ブラック・マジシャン・ガール

星6/闇属性/魔法使い族/攻2000/守1700

(1):このカードの攻撃力は、お互いの墓地の「ブラック・マジシャン」 「マジシャン・オブ・ブラックカオス」の数×300アップする。

 

 赤を基調とした魔法少女のような服装をして、白い杖を持った金髪の少女がハートを振り撒きながらフィールドに出る。そして、ポージングを決めた後は、キリッとした表情になったが、ほっぺのピンクの丸のせいで全く締まらない。

 

ブラック・マジシャン・ガール

ATK2000

 

『あ、マスターが作った別仕様のブラック・マジシャン・ガールですね』

 

 あ、うん。あのデッキ。悪ノリで製作した服装がパンドラ仕様の配色のブラック・マジシャン・ガールも入れてるから、ブラック・マジシャン・ガールも2枚入ってる。

 

「い、いい……色違いのブラマジガールだぁぁぁぁ!!!?」

 

 わかっていたが、今は丸藤を黙らせたい。他のメンツは神楽坂の怒濤のタクティクスを黙って見ているというのに。

 

「その後、デッキから"黒・魔・導(ブラック・マジック)"、"黒・魔・導・爆・裂・破(ブラック・バーニング)"、"黒・爆・裂・破・魔・導(ブラック・バーニング・マジック)"、"黒・魔・導・連・弾(ブラックツインバースト)"のいずれか1枚を選んで 自分の魔法&罠ゾーンにセットできる。俺は"黒・魔・導・爆・裂・破(ブラック・バーニング)"を選択し、そのまま発動!」

 

 空高く飛び上がったブラック・マジシャン・ガールの杖の先に、大きな魔弾が形成される。

 

「"ブラック・マジシャン・ガール"! "黒・魔・導・爆・裂・破(ブラック・バーニング)"だ! 効果により、相手フィールド上の表側表示のモンスター全てを破壊!」

 

 そして、ブラック・バーニングがエアトスに向けて放たれ、フィールドごと派手に吹き飛び、一面をピンク色の光で染めた。

 

 

『ナメるんじゃないわよ……』

 

 

 そして、ピンク色の光が晴れた時、俺のフィールドには肌が一切出ないように包帯を纏い、黒いプレートメイルを身につけ、煤けた黒い髪の生えた白い面を被った死神のような女性が佇んでいた。

 

ガーディアン・デスサイス

星8/闇属性/悪魔族/攻2500/守2000

このカードは通常召喚できず、このカードの効果でのみ特殊召喚できる。

(1):「ガーディアン・エアトス」が戦闘・効果で破壊され自分の墓地へ送られた場合に発動できる。このカードを手札から特殊召喚する。

(2):このカードが特殊召喚に成功した時に発動できる。デッキから「死神の大鎌-デスサイス」1枚をこのカードに装備する。

(3):このカードがモンスターゾーンに存在する限り、 自分は召喚・特殊召喚できない。

(4):このカードがフィールドから墓地へ送られた場合に発動する。 手札を1枚墓地へ送り、このカードを墓地から特殊召喚する。

 

ガーディアン・デスサイス

ATK2500

 

 ああ……ずっと使えなかったカードを使える感覚は筆舌に尽くしがたいなぁ……。

 

「な、なんだそのモンスターは……!?」

 

「"ガーディアン・デスサイス"は、"ガーディアン・エアトス"が、戦闘・効果で破壊され自分の墓地へ送られた場合に発動でき、このカードを手札から特殊召喚する」

 

「めちゃくちゃ、リックっぽいな」

 

「そうっすね……エアトス様が……あっ、でもデスサイス様もなかなか――」

 

 十代と丸藤の言いたいことはとてもわかる。キャラに合っているので、是非とも使いたかったのだ。丸藤はそろそろ戻ってきて欲しい。

 

「さ……どうする神楽坂? ブラック・マジシャンと同じ攻撃力だが……攻撃するか?」

 

「…………ああ、行かせて貰うぜ! "ブラック・マジシャン"! 黒・魔・導(ブラック・マジック)!」

 

「迎え撃て、"ガーディアン・デスサイス"。フォビデン・レクイエム」

 

『上等よ!』

 

 赤い方のブラック・マジシャンが手を掲げて、ガーディアン・デスサイズにブラック・マジックを放つ。それに対して、ガーディアン・デスサイスはブラック・マジックを受けながらブラック・マジシャンに迫り、拳で胸を貫いた。そして、相討ちとなった両者は崩れるように消える。

 

 ごめんよ。今、死神の大鎌-デスサイスを装備させるのは得策じゃないんだ。

 

「これで、"ブラック・マジシャン"と、"ブラック・マジシャン・ガール"でダイレクトアタッ――」

 

「おっと、まだ俺のモンスターは残ってるぜ?」

 

 俺はデュエルディスクの墓地ゾーンに手札を1枚捨てながらそう言った。

 

手札2→1

 

 次の瞬間、俺のフィールドに怨念のような黒い霧状の何かが集まり、それはすぐに形を成して、ガーディアン・デスサイスになった。

 

ガーディアン・デスサイス

ATK2500

 

「デスサイスが生き返っただと!?」

 

「"ガーディアン・デスサイス"の効果。このカードがフィールドから墓地へ送られた場合に発動。手札を1枚墓地へ送り、このカードを墓地から特殊召喚する」

 

「なっ……!?」

 

「そういうことだ。そして、俺の手札は後は1枚だが……どうする? ちなみに、"ガーディアン・デスサイス"の自己再生は強制効果だ。デスサイスが破壊されれば俺に選択権はないぞ」

 

 残り1枚の手札をヒラヒラと動かして神楽坂に見せながらそう言うと、神楽坂は額に汗を浮かべながら少し考えた後、意を決した様子で口を開く。その姿に思わずこちらも嬉しくなって笑みを浮かべてしまった。

 

『あーあー……神楽坂さんったらうちのマスターに火をつけちゃって……』

 

「"ブラック・マジシャン"で攻撃! 黒・魔・導(ブラック・マジック)!」

 

「ああ……いい……。デュエルはやはり、そうでなくては面白くないな! もう一度迎え撃て、"ガーディアン・デスサイス"! フォビデン・レクイエム!」

 

『吹っ飛べ!』

 

 今度は紫色のブラック・マジシャンとガーディアン・デスサイスが交戦し、戦いの末、互いに消滅した。

 

「これで俺の墓地に"ブラック・マジシャン"が2体! "ブラック・マジシャン・ガール"の攻撃力は2600になるぜ!」

 

ブラック・マジシャン・ガール

ATK2000→2600

 

「これで、デスサイスを倒せるのか! 神楽坂すげぇじゃねーか!」

 

「神楽坂はデュエルキングのデッキを研究し尽くしたと言っても、初見でここまで使いこなしているのか……」

 

「うふふ、そう上手く行くかしら? 相手はリック・ベネット。最凶のプロデュエリスト、ナイトメアよ?」

 

 俺は手札を1枚墓地に送り、ガーディアン・デスサイスを蘇生させた。

 

ガーディアン・デスサイス

ATK2500

 

手札1→0

 

「行くぞ! "ブラック・マジシャン・ガール"! "ガーディアン・デスサイス"に黒・魔・導・爆・裂・破(ブラック・バーニング)"だ!」

 

 そして、最後に残ったブラック・マジシャン・ガールの杖先に魔力が迸り、魔弾が形成され、放たれたそれはガーディアン・デスサイスを貫く。

 

リック

LP4000→3900

 

「これで終わりだ!」

 

「ああ、おめでとう。だが、悪夢はまだ終わらない。と言うよりも……たった今始まったばかりだ」

 

 そう言った直後、再び黒い怨念のような霧が沸き立ち、俺のフィールド上で形になった。

 

ガーディアン・デスサイス

ATK2500

 

『それで終わりかしら? なら、ここがアンタの終わりね』

 

「な、何故"ガーディアン・デスサイス"がっ!?」

 

「俺が残り1枚で墓地に送ったカードはこれ、魔法カード"代償の宝札"」

 

 俺はカードの絵柄が描かれたカードを墓地から取り出し、それを神楽坂に見せつつ、話を続ける。

 

「"代償の宝札"の効果。このカードが手札から墓地に送られたとき、自分はカードを2枚ドローする。つまり、俺の手札は――後、1枚だ」

 

 俺はもう1枚残った手札を再び神楽坂に向かって振って見せる。 

 

手札2→1

 

「さあ……ここから本番だ神楽坂。久々に俺も……いつもに増して愉しくなってきた。もっと楽しもうじゃないか。倒したり、倒されたりしよう。もっともっと削り合おうじゃないか……!」

 

「くっ……ひとまずはここまでか……ターンエンドだ」

 

神楽坂

LP3100

モンスター1

魔法・罠1

手札1

 

 

「えへへ……リック……やっぱりいつ見ても、絞め殺す戦い方と、嘲笑うような雰囲気が、お兄ちゃんみたいで素敵……」

 

『アハハハ! 天音ちゃん、俺いつも思うんだけどさー。それって褒め言葉になってるの? 罵倒じゃない?』

 

 久々に新しいデュエルし甲斐のある人間をこんな形で見つけるとは……本当に嬉しい限りだ。しかも機会が今日この一戦しかないとなれば――貪り尽くすのがデュエリストの本懐だろう。

 

「俺のターン、ドロー」

 

手札1→2

 

 さあ、次はどうしてやろう? どうされるのだろう? ああ……楽しみだ……!

 

 

 

 

 

 






 まさか、神楽坂くんで3話引っ張ることになるとは……この海のリハクの目をもってしても読めなかった……。

 というか……デスサイスちゃんを精霊として出すまでに何年掛かってんだ……(5年2ヶ月と7日)

~QAコーナー~
Q:なんでデスサイスちゃんひねくれた性格してるの?

A:その長い期間中にグレました。


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