じゃしんに愛され過ぎて夜しか眠れない   作:ちゅーに菌

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デュエルをしよう1

 

 

 

「うーん……」

 

 ヴェノミナーガさんが来てから結構、経ったが、相変わらずデッキ作成の段階で頭を抱えていた。

 

 竜騎士ブラック・マジシャン・ガールが出たせいで下手にトライホーン・ドラゴンを手放すのは得策では無くなったし……。

 

 結局、なんも変わっとらん。

 

 だが、クズなどと呼ばれるカードから一応デッキらしきモノは出来た。

 

 いや、出来たのだが……本当にこれで良かったのか疑問だ……。

 

『まだ、唸ってるんですか?』

 

「そんなこというならヴェノミナーガさんは俺の持ってるカードでこれ以上のデッキ作ってよ?」

 

『そうだマスター! デュエルしようぜ! YATTA!』

 

 コイツ……露骨に話を……。

 

 まあ、デュエルならいいけど。

 

『デュエルディスク持ってくださいよ』

 

「デュエルディスク?」

 

 えーと、どこだったかな……。

 

 確か4年ぐらい前に父さんから誕生日プレゼントに貰って……あ、クローゼットに仕舞ってあるわ。

 

「あった、あった」

 

 これこれ、鋭利でカッコいいんだよなー。

 

 あー、使ってデュエルしたい。

 

『おー、青銅器みたいに綺麗なデュエルディスクですねー……って』

 

 ヴェノミナーガさんは俺からデュエルディスクを奪い、掲げた。

 

『"ドーマのデュエルディスク"じゃねーですか!? 一体、お父様はこれをどこで!?』

 

「こら、結構、気に入ってるんだぞ?」

 

 えーと……? 確か……父さんが昔、仕事先でデュエルを吹っ掛けてきた奴を逆に返り討ちにして入手したと言っていた。

 

 へっ……父さんに正面から挑むなんて恐れいるぜ。名もないドーマはそれはそれは酷い目にあったんだろうな……。

 

 ちなみに父さんはヴォルカニック使いで様々なデュエル学校の臨時教員などをしている。無茶苦茶、強い。

 

『それを丸々息子にプレゼントですか……いやはや知らないとは怖い……ん?』

 

 ヴェノミナーガさんはデュエルディスクを弄り始めた。

 

『なんで起動しないんでしょう? いや、待てよ?』

 

「?」

 

『まさか!』

 

 ヴェノミナーガさんが隅のスイッチを押し、確かフィールド魔法カードを入れる場所が開かれた。

 

『………………』

 

 ヴェノミナーガさんがカードを見たまま止まったので、そのカードを横から覗き見た。

 

 六芒星のような緑色の魔法陣が描かれたカードだ。はて? 凄く見覚えがあるような……ん?

 

 

 

The Seal of Orichalcos

This Spell Card is impervious to negation, destruction, and removal. Increase the ATK power of all your monsters by 500.You control a back row of monsters that cannot be attacked while a monster is in the front row.Send this card from your hand to the Graveyard to negate and destroy any card.The soul of whichever Duelist loses this Duel is forfeit to the winner.

 

 

 

 ぬう? 英語じゃないか。全く……遊戯王の世界は世界標準語が日本語だというのに……。

 

 最近は日本語は読み書き話出来るが、英語を書いたり、話すことの出来ないアメリカ人とか普通にいるんだぞ。ふんす。

 

 訳すか……えーと。こうだな。

 

 

 

オレイカルコスの結界

このカードはいかなる場合にも無効にならず、破壊および除外することもできない。自分フィールド上に存在するモンスターは攻撃力が500ポイントアップする。自分フィールド上に前衛モンスターが存在する限り、後衛モンスターを攻撃することはできない。このカードを手札から墓地に送る事で、あらゆるカードを無効にし破壊する。このデュエルに敗北したデュエリストは勝者に魂を奪われる。

 

 

 

 なんだ。オレイカルコスの結界か、どうりで見覚えがあるわけだ。

 

 相変わらず、チート染みた効果だ。でも魂だけは勘弁な。

 

 ………………ん? オレイカルコス?

 

 オレイカルコスの結界!?

 

『これは……あれ? でも……』

 

 そう言うとヴェノミナーガさんは首を傾げた。

 

『どうやらこれは最早、脱け殻ですね』

 

「脱け殻?」

 

『ええ、このカードは"オレイカルコスの神 リヴァイアサン"という、デュエルモンスターズの神々の中でもトップクラスの力を誇っていた神と誓約を結ぶ事で手に入るカードなんです。そして、大災害の1歩手前まで行ったドーマ事件の首謀者でもあります。なのですが、どうもこのカードには力が無い。どうやらリヴァイアサンは完全に眠りについたか、封印でもされたようですね』

 

 流石神様何でも知ってやがる……。

 

『まあ、マスターに言ってもわかりませんよね。まあ、とりあえず……』

 

 そりゃ、ヴェノミナーガさんは俺にうろ覚え程度の遊戯王の知識があることを知らない訳だからなー。

 

 って言ってもアニメは幾つかあるのは知ってるがATMの遊戯王以外はあんまり見てないんだよな。

 

 でもカードは結構、知ってるぞ? アニメは見なくとも友達とやったりするためにパックとかは出る度に箱買いとかしてたから。

 

 それよりさ。

 

 ヴェノミナーガさんはオレイカルコスの結界をなんで俺に差し出してんのさ?

 

「?」

 

 いや……ん? ヴェノミナーガさんはいったい何がしたいんだ?

 

 その次の瞬間、俺は耳を疑った。

 

 

 

 

『"折角ですから作ったデッキに入れましょう"』

 

 

 

 

 

…………………………。

……………………。

………………。

…………。

……ふう。

 

「腐ってやがる……遅すぎたんだ…」

 

『ちょ……如何に温厚な神のカードの私でも正面からの罵倒は流石に傷付きますよ!? あ、でもそれはそれで悪くないと言うか…マスター……何か酷い言葉で何度が罵ってくれませんか? 新しい扉が開けそうな気がします……はあはあ……!』

 

 ……ダメだこの神、早くなんとかしないと……。

 

『真面目な話。たぶん、使っても大丈夫です。だって魂を捧げる神が不在では最後の効果は不発になりますからね。デュエルモンスターズでいう、条件を満たしてないってヤツですよ』

 

「だとしても、もし復活したのを知らずに使ったりしたら危ないだろう」

 

『それは少なくとも数千年はありえませんし、復活すれば神である私が直ぐに気がつきますよ。まあ、それでもダメだと言うのなら……』

 

 ヴェノミナーガさんがオレイカルコスの結界を右手で飲み込んだ。

 

『少々、お待ちを……』

 

「おう……?」

 

 暫くするとヴェノミナーガさんの左手からカードが出てきた。

 

 ……どうなってんだ?

 

『出来ました』

 

 そのカードをヴェノミナーガさんから受け取り、とりあえず読んでみた。

 

 ん? テキストが日本語に書き変わってる? いや、これは……。

 

 

オレイカルコスの結界

このカードの発動時に、自分フィールド上の特殊召喚されたモンスターを全て破壊する。このカードがフィールド上に存在する限り、自分は融合モンスターを特殊召喚できず、自分フィールド上のモンスターの攻撃力は500ポイントアップする。1ターンに1度、このカードはカードの効果では破壊されない。自分フィールド上にモンスターが表側攻撃表示で2体以上存在する場合、相手は攻撃力の一番低いモンスターを攻撃対象に選択できない。「オレイカルコスの結界」はデュエル中に1枚しか発動できない。

 

 

 

 OCG化しやがった……!? 定期の更新じゃねーんだぞ!?

 

『これなら使えますね!』

 

「いや、使える使えないとかでは無くて……これ、ルール上問題ないのか?」

 

『まだるっこいですね……』

 

 ヴェノミナーガさんは手から2枚のカードを取り出した。

 

「それは……?」

 

 

クリッター

星3/闇属性/悪魔族/攻1000/守600

このカードが墓地におかれた時、自分のデッキから攻撃力1500以下のモンスターを1枚手札に加え、デッキを切り直す。

 

クリッター

星3/闇属性/悪魔族/攻1000/守600

このカードがフィールド上から墓地へ送られた時、デッキから攻撃力1500以下のモンスター1体を手札に加える。

 

 

『両方とも同じカードです。片方は旧クリッター、もう片方は新クリッター。ですが、この2枚は別の効果を持っています。さて、問題でーす。どちらの効果を公式のデュエルで使えるでしょう?』

 

「新しい方?」

 

『ブッブッー、正解は両方です』

 

「は?」

 

 両方……?

 

『理由知りたいですか? 仕方ないですねぇ!』

 

 うわ、ウザイ。

 

『例えばですよ。それまでその効果でデッキを組んでいるプロデュエリストがいたとします。カード効果が改正されて効果が変わってデッキが機能しなくなってしまいました。どうなったと思います?』

 

「デュエル出来なくなる?」

 

『ブッブッブッー、正解はそのプロデュエリストが訴訟を起こしたんです』

 

 あ……そうか……プロデュエリストがデュエル出来なくなったらそりゃ、そうなるわな。

 

『そういった事例が何件か発生し、最終的にこう決定しました。"デュエルモンスターズはテキストに書いてある効果が全て"だと』

 

「な、なるほど…」

 

 公式が折れたわけか…。

 

『マスターも1枚そういうカードあるじゃないですか』

 

「え?」

 

『ほら、ソレですよ』

 

 ヴェノミナーガさんの差した方向にはガーディアン・デスサイスがあった。

 

『そのカードは本来はパラディウス社で1枚だけ製造されたカードなんですよ』

 

「へ、へー……」

 

 レの人のカードですねわかります。

 

『ですがマスターのカードはパックから出ましたよね? つまりはそのリメイク品です』

 

「あー……」

 

『パラディウス社のデスサイスは破壊耐性を持っていますが、逆に蘇生効果は持っていません。一方パックで出るデスサイスは破壊耐性を持ちませんが蘇生効果を持ちます。ちなみにですが……』

 

 ヴェノミナーガさんは邪神ゲーのストラップのついた青いスマホを取り出すと操作し始めた。

 

『これには驚きましたよ』

 

 なになに……ん? 公式サイトじゃないか。これに一体な……に……?

 

 

 

ガーディアン・デスサイス 枚数1枚

 

 

 

「1枚?」

 

『1枚ですね。どうやらとある会長の悪ふざけでリメイクされたカードらしいですよ?』

 

「1まい……」

 

『1枚です』

 

「1……」

 

『超レアレアですね』

 

「売れる……?」

 

『売ったら2度と戻っては来ないかと』

 

「ですよねー」

 

 これで1つハッキリした。例え、俺がデスサイスデッキを作れたとしてもデスサイスは1枚しかデッキに入れれないということだ…。

 

『ま、要するにテキストに書いてあればそれに従えって事です。マスターは全問不正解ですが参加賞としてこの旧クリッターをあげましょう』

 

「やったね!クリちゃん! サーチができるよ!」

 

『おい、やめろ。というかマスターの作ったデッキは打点が極めて低いんですから入れておきましょう』

 

「ヴェノミナーガさん……」

 

『はい?』

 

「俺の目は誤魔化されない」

 

 俺はオレイカルコスの結界の一番上のテキストを指差した。

 

「"このカードの発動時に、自分フィールド上の特殊召喚されたモンスターを全て破壊する"」

 

『な、なんのことでしょうか…?』

 

 ヴェノミナーガさんが目を反らした。

 

「これでヴェノミノンを破壊す『さあ、デュエルしましょうデュエル!』

 

 そう言いながらヴェノミナーガさんは何かのデッキの準備と片腕をデュエルディスクのように変えた。

 

『だったらデュエルで決めましょう! 私が勝ったらデッキに入れてくださいね!』

 

「仕方ない……」

 

 まあ、この人に何を言ってもムダだろう。

 

 俺はリビングの机を移動させてから、デッキをデュエルディスクにセットした。

 

『行きますよー』

 

 ヴェノミナーガさんのデッキは俺が持っているからあれはヴェノミナーガさんのデッキでは無いのだろう。多少、楽しみだ。

 

 

 

 

 

『「デュエル!」』

 

 

 

 

 

 まあ、まず俺に勝ち目は無いだろうな。うん。

 

 

 

 






 次回、リック君のデッキその1とヴェノミナーガさんのガチデッキが判明。

 先に言っておこう。99%ネタデッキです。相手を笑わせたらリック君の勝ちだ。

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