シャーレの居候は動かない   作:宇沢心経百面曼荼羅

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怪盗ごっこ①

 

やはり家というのはいい。どことなく安心感があり、疲れ切った身体を癒してくれる。

家、とは言ったものの、実際に私が今いるのはシャーレの大浴場だ。潮でベタついた身体を洗うことの何と心地よいか。

 

「先生はミレニアムに出向中だし、久々に羽を伸ばせる……!」

 

正義実現活動もしつつだが、最近では犯罪率も1000%から950%くらいには下がっていると聞く。

これも私が頑張っている成果だろうか?まぁ、出所不明の武器の売買を犯罪に含めるのなら依然として変わってはいないのだろうが。

 

「毎日シャワーだけって、やっぱり女の子的にはアウトだな……」

 

浴槽に浸かっていると、しみじみとそう思う。シャーレの大浴場は使っている人数と比べれば余分に過ぎるほどに広い。

なので、風呂場で泳いだりする事もできる。やらないが。

 

「ふぅ、さっぱりした。よし……コーヒー牛乳タイムだ!」

 

休憩室に置いてあるキンキンに冷えた甘いコーヒー牛乳を飲み干し、茶色いひげを舐めとる。やはり風呂上がりはコーヒー牛乳だ。

私自身がコーヒー党というのもある。トリニティでは異端な方だ。

 

実際、トリニティは生徒たちの性質上お嬢様が多い。かく言う私も育ちは悪くないのだが、政治屋の連中に比べれば全然だ。

そんな人たちが飲む物なんて、紅茶以外無い。なんなら、それに影響されて皆常に紅茶を飲めるようにティーセットを持っている。

真面目なツルギ先輩やハスミ先輩ですらそうなのだから、何も無い時はコーヒー粉末とフレンチプレス機と湯沸かしを持ち歩いている私は皆とはちょっと違うのだ。

 

「でも辞められないんですよねぇ、コーヒー」

 

私のやり方なら3分程度で作れて美味しいコーヒーが作れる。また、眠らない生活をしていると自然とコーヒーに手が伸びるようになる。

ヒナ風紀委員長だって、重度のカフェイン中毒者だと聞く。

 

「お、また盗聴器みっけ。今日はいい事あるかも」

 

シャーレにいる時間は基本的に、シャーレ宛ての重要ではない企業からの書類の整理や、先生の部屋の掃除などを行っている。

中でも、ちょっとハマっているのが盗聴器探しだ。一番多いのはやはり執務室だが、先生の部屋にも幾つかある。

誰が設置しているのか知らないし、興味もないがすごい根気だと思う。スパイ活動に余念がないのは、暴力組織に属する者としては好感度が高い。

 

「コハルちゃんでも誘って遊んでみようかな……あ、そうだった。スマホ海に落としたんだった」

 

マグロ漁の際、私はスマホを紛失していた。ミレニアム製の最新式で、何にでもBluetoothを繋げられる優れものだったのだが。

無くしてしまったものは仕方がないので、諦めた。今頃海の藻屑だろう。探す方がバカらしい。

 

「さてと、正義実現しますかーっと」

 

D.U.市内を練り歩き、道中の屋台で焼き鳥を食べつつ治安の悪そうな場所を羽を震わせてサーチしつつ見て回る。

ヴァルキューレの治安維持能力は相変わらずだが、やはり以前と比べて治安が良くなっている。

 

結局、今日は食い逃げ犯や万引きを捕まえただけだったが、あまり大々的に動く事が出来ない今ではこれが関の山だろう。

人助けのお礼にもらった食べ物をパクつきながらシャーレに帰ると、知らない大人が先生のデスク周りでウロウロしていた。不審者だ。

一気に戦闘スイッチをフルスロットルにして掴み掛かる。

 

「クックック……手を離してください。乱暴はいけませんよ」

 

「お前は誰だ?ここで何をしていた?」

 

黒いスーツを着た黒炎ゆらめく大人は特に何かをするでもなく、ただ私に掴まれて困っていた。大人の服をまさぐり、武器類がない事を確認してから手を離す。

 

「先生に手紙を届けようと思いまして。ですが私の送る手紙はいつも『暁のホルス』に奪われ、焼却させられてしまいましてね」

 

「それは難儀だな。失礼、お前の名前は?」

 

「そうですね────ブラックスーツとでも名乗りましょうか」

 

「そうか、変な名前だな。それで?そのブラックスーツさんはどんな手紙を先生に送ろうとしたんだ?見せてみろ、一応先生の部下だからな。検閲させてもらう」

 

ブラックスーツが差し出してきた手紙の内容は難しい言葉が羅列されていたが内容は至ってシンプルで、「今度大人の付き合いで飲みに行きましょう」程度のことだった。

そんな事を伝えるために「連続性」だの「普遍的恒久」みたいな小難しいワードを散りばめないでほしい。

 

「……しかし驚きました。先日のアビドスでの一件、静観を痛感する理解者の炉心爆発に巻き込まれて尚、健在とは」

 

「何で知っているんだ?お前やっぱり悪い奴だろう」

 

「アビドス付近に住んでいるんですよ。今はミレニアムに居を構えましたが」

 

それなら納得だ。それにしても、先生や柴関ラーメンの大将は普通の大人だと言うのに、なぜこの人は黒く燃えているんだろうか。

掴んでも熱くなかったし、むしろ少し冷たかった。真面目な生徒としては気になるところだ。

 

「では私はこれで。ミレニアム方面に大切な用事がありますので、これにて失礼します」

 

「気をつけて帰りなよ、この辺は大丈夫だけど、未だにキヴォトスは危険なんだから」

 

「ご忠告ありがとうございます」

 

ブラックスーツが出ていった後、受け取った手紙にサーチをかける。やはり、二重構造になっている。

剥がしてみると、マイクロチップが入っていた。早速自前のオフライン化されたパソコンに入れて内容を精査する。

 

「………何だこれ、仮想Divi:sionシステムプロトタイプ?これが何だって─────ぬわっ!?」

 

パソコンからバチっと電流が流れ、私に向かって襲いかかってくる。ちょっと痛かったが、傷にもなりはしない。

ただ、先生には危険物なのでパソコンをシャーレに置いてあったハンドガンで破壊し、マイクロチップを抜き取る。

 

「いったい何なんだ……?このマイクロチップは。それにさっきの仮想Divi:sionとかいう変なシステムも……」

 

残念なことに、ハイテク技術は軍事用品以外詳しくはない。SNSのコラムで変なモノを見る時はオフラインPCを使うようにするというのは分かるのだが。

こんな時はやはり誰かに相談するのが一番だ。出来ればトリニティ以外の情報系のエンジニアだ。

 

「────それで、私たちのところに忍び込んだって訳?言い訳はそれで良いのね、怪盗ごっこ」

 

「どうしてこう、信じてもらえないかな」

 

私は今、ゲヘナの情報部に忍び込みそれらしい情報が無いか漁るためにメインシステム室に入ったところをヒナ委員長に見つかっていた。

慌てて逃げたのは良いが、ゲヘナの学生ホールのエントランス……そこに吊るされたシャンデリアまで追い詰められるとは。

 

「見たところ、ヒナさん。貴女一人だけだろう?仕事熱心なのは良いが、夜中まで働き詰めだと健康に悪いぞ?」

 

「あなたが捕まってくれたら休めるんだけど」

 

「なら申し訳ない、今日は寝れそうにないな?」

 

ヒナ委員長が銃弾をばら撒いて来るのに対してステンドガラスを頭で破りつつ外へ脱出。力技だけど、一番速いルートだった。

まぁ、見た目だけなら華麗に脱出出来たように見えるだろうし、モーマンタイだ。

 

「さようなら、ヒナさん」

 

「全部隊に通達─────!」

 

結局、その夜は一晩中風紀委員会と追いかけっこをする羽目になった。仮面で顔を隠していたため、正体が一切バレずに済んでよかった。

こうなってしまうと、もう残された手段はトリニティの古書館や情報部を漁るかミレニアムの技術者連中を頼るしかない。

 

「次はー、セントラル・カテドラル。降りる際は────」

 

朝方、始発のバスに乗りながらミレニアムへ訪れる。トリニティとは違うタイプの空気が私の頬を撫ぜる。機械による空気洗浄によって、殆ど自然そのままのトリニティとは違う綺麗な空気を醸し出しているのだろう。

それに、ミレニアムでは銃撃戦による犯罪件数もさほど多くはないのか、トリニティでは微かに香る雷管の匂いが少し懐かしい。

 

「君、少し良いかな?」

 

どことなくカタルシスに酔っていると、ふと声をかけられた。怪盗クローバー仮面の格好───もちろん仮面は半分脱いでいるが───で景色を眺めていたら怪しまれるのは当然か。

 

「フッ、このボクに何の用かな?」

 

シャーレにおいてあった漫画の中に、怪盗クローバー仮面が出て来るものがあった。せっかくその格好をするのなら、それらしく振る舞おうと思う。

作中では、とてもキザだったのを思い出しながらしゃべる。

 

「見たところ君は怪盗のようだ。私はエンジニア部という部活に所属していてね。丁度さっき怪盗用の発明をしたところなんだ」

 

「セールスかな?ボクに合うものであれば買い取らせてもらうよ」

 

「ふむ。セールスか、ならそれらしく行こう。今回君に紹介するのは、この超小型ワイヤー射出装置だ。0.01ミリの極細ワイヤーを300メートルほど収納することに成功してね。射出力、巻き取り性能も折り紙付きだ。ただ難点は、使用者の身体に大きな負担が掛かってしまうってところかな」

 

………やはり、技術者連中は話が長いから苦手だ。話を聞くのが苦手とかではなく、彼らの開発品に対する熱量に押されて、ついつい要らないハイテク品を買ってしまうのだ。

ただ、流石はキヴォトスで最も優れたエンジニア集団と言ったところか。デメリットらしいデメリットが無いように思える。

 

「使ってみてもいいかな?」

 

技術者から機械を受け取り、腕に装着する。

 

「勿論だとも、ただ……かかる負荷は最大1トンを超えるから気をつけてくれ」

 

「はぁ?ちょ、待っ─────折れる折れる折れる!」

 

「安定する体勢を探してくれ!一応、非力な私でもビルは飛び回れた!」

 

「ぬっ、ぐぐぐ……!何とか、してみせるとも!」

 

空中で飛び回りながら一番安定する体勢を模索する。何度かしてはいけない音が身体から鳴った気がしたが、気にしないことにした。

10分ほど悪戦苦闘して漸く、楽なポーズを見つけることが出来た。一度コツを掴んでしまえば、あとは簡単だ。

 

「ヒューッ!こいつは良い!最高だ!」

 

空中立体起動なんて、ジェットパックでもつけないと無理だと思っていた。案外ワイヤーと腕力だけでどうにかなるものだ。

一通りビル街を飛び回り、元いた場所へ帰って来る。技術者は戻って来るなり拍手で私を迎えた。

 

「凄い身体捌きだね。コトリはこれで全治四日の怪我を……ああ、コトリというのは私の後輩でね。この『マキ雷神(トール)くん一号』を使った時に高度300メートルから落下してね」

 

「よく全治四日で済んだな……まぁ良いや、これは買わせてもらうよ。指定の口座は?」

 

「あぁ────いや、やっぱり良い。エンジニア部まで来てくれないかい?この間口座をセミナーに凍結されたばかりなんだ」

 

「何したんだよ」

 

「ちょっとね。セキュリティには白石ウタハの客人って言えばミレニアム・サイエンススクール内部まで通してくれるはずだよ」

 

「分かった、丁度良いしこのワイヤー装置で向かわせてもらうよ」

 

白石ウタハと名乗った技術者と別れてから、私は再び空を舞う。ついでに武器をどこかで買っておきたい。元々持っていた武器はアビドス砂漠に打ち捨てられているだろうから。

高層ビルに映る私の飛んでいる姿を改めて見ると、やはり怪盗服は目立つ。

 

怪盗クローバー仮面は純黒のタキシードのようなデザインで、高潔を示す白い手袋と情熱的な赤い瞳がトレードマークのキャラクターだ。

クローバー仮面の髪色は金色だったが、私は濡羽色だ。真昼間から黒い影がビル街を飛び回っていたら、そりゃあ怪しい。

道路を見ると、ヴァルキューレが凄い形相で追いかけてきている。何かと勘違いされているのか、はたまた別の理由か。

 

「何もしてないんだけどなぁ」

 

暫く飛んでいると、遠くの方に巨大なタワーが見えてきた。ウタハさんの言っていたエンジニア部とやらがどこにあるかわからないので、この辺りの地理に詳しそうな人がいそうな所へ行くのが一番だ。

 

「しかし……ヴァルキューレのスズメ達は何を言っているのやら。聞いてみるか」

 

「────りろ!降りろ!白昼堂々と泥棒か、『慈愛の怪盗』!」

 

「良い加減にしろ!故郷で親が泣いてるぞ!」

 

「馬鹿者、適当言うんじゃない!降りてこい、貴様の正体は割れているのだぞ『慈愛の怪盗』!貴様も『狂犬』の名は聞いたことがあるだろう!?」

 

高度を落として耳を澄ませると、何やら見当違いの罵声大会が開かれていた。『慈愛の怪盗』なら私も知っている。

キヴォトス各地を転々とする美術品などをターゲットにしているコソ泥だ。何度か対峙したことがあるから分かる。

あのコソ泥と正義の一般コスプレイヤーである私を同一視するなんて、無礼千万だと思う。

 

「あっ!また高度を上げやがって!もう良い!撃て撃て!どうやって浮いているかは分からないが、気絶させてしまえ!」

 

「じゃあな、スズメさんたち!」

 

高度を上げて更に加速して超高層タワーまで一気に抜ける。後ろから弾丸が飛んでくるが、ヴァルキューレの貧弱な装備で私を撃ち落とせるわけがない。

万が一当たっても痛くも痒くもない。いや、ちょっと痒いかもしれない。

 

「凄い高いなこのタワー……何メートルあるんだ?」

 

「この世にある建物ン中でも一番高えんだと。凄えよな」

 

「確かに……流石は技術が───誰?」

 

気がつくと、私の背中に私と同じぐらい……いや、すこし小さいくらいの子が掴まっていた。いつの間に?と思ったが、飛んでる最中はそれだけに集中しているので気づかないのも無理はない。

それにしても、メイドの格好とは。これが制服だとすれば、ミレニアムのセンスを疑うが。

 

「あたし?あたしの事はどーだって良いだろ。何でこんな事してんだ?」

 

「調べ物をしてもらおうと思って……あ、そうだ。エンジニア部ってどこにあるか知ってるかな?ボクはそこを目指しているんだ」

 

「調べ物ぉ……?オイお前、そこの窓ガラスぶち破って良いからよ、ちょっと話そうや」

 

ちびっこヤンキーメイドか。業が深いな。

許可も出たのでタワーに登る途中で窓ガラスを叩き割ってタワー内部に降り立つ。丁寧に着地出来たので、メイドちゃんには怪我がないようだった。

 

「………んで。何でお前エンジニア部目指してンだよ?つーかミレニアム敷地内に変な手段で入んのダメって知らなかったか?」

 

「すでに敷地内だったか。白石ウタハさんの客としてきているんだ、真偽の程は本人に会えばわかるよ」

 

「あの技術屋の?つーことは、そのワイヤーとかもアイツらのか。試運転中ならそう言えよな」

 

何やら勝手に納得してくれたようなので、折角だからとエンジニア部まで連れて行くついでにミレニアムを案内してもらうことにした。

途中でどこかに寄ったかと思えば、メイドちゃんはメイド服を渡してきた。

 

「お前のそのカッコ、ちょっと目立ちすぎだな。コレ貸してやっから着とけ」

 

メイドちゃん以外に誰もいなかったのでその場で着替える。仮面を外すと指名手配的にアウトなので、サングラスをつけて髪を頭の上らへんで留める。

これで裏路地によくいる不良だ。ちびっこヤンキーメイドちゃんと一緒にいても恥ずかしくないくらいの塩梅になっている。

 

「やけにサマになってんな。元々不良か何かだったりするのか?」

 

「そんな事……ンなこた無えよ。よく見てるだけだゼ」

 

「………お前が良いなら良いけどよ。あんま居ねえよ、そういう不良」

 

「よく見るんだけどな。行きましょう」

 

タワーから出ると、たくさんのヴァルキューレ警察と大量の報道陣がヘリまで持ち出して待ち構えていた。

メイドちゃんの方を見ると、「任せとけ」とでも言うかのように私の胸を軽く叩く。

 

「下手人はあたしとコイツが始末した。ゴシュジンサマへの奉仕中に現れたからな。今頃67階あたりでくたばってんじゃねぇの?」

 

「でかした!警察へのご協力感謝します!行くぞお前らァ!必ずホシを挙げてやる!」

 

雄叫びを上げながらタワー内部に突撃していくヴァルキューレ警察。それを尻目に私たちはミレニアム内をタピオカミルクティー片手に歩く。

メイドちゃんは「ンなカワイーもん飲めっかよ!?」と反発していたが。

 

「そういやアンタ、名前を聞いてなかったな。なんて言うんだ?」

 

「諸事情で本名は名乗れない。とりあえず『ジャスティス』とでも呼んでください」

 

「………へえ!カッコいいじゃねえか。ならあたしの事は『ダブルオー』って呼んでくれよな」

 

「良いセンスだ。だから気に入りました」

 

ダブルオーちゃんと連れ立って歩いていると、不良ルックが功を奏したのか誰も私たちと顔を合わせない。

マジマジと見られる事もないので、指名手配されている身からすれば好ましい限りだ。全く、ハスミ先輩はどれぐらい本気なのだろうか。

「生死問わず」だなんて、本気で私を消すつもりなのだろうか。だとしたら、謝れば許してくれるだろうか?

………怖いので、やはり帰らないでおこう。

 

「ジャスティス、お前の武器はそのハンドガンなのか?」

 

「いや、普段はアサルトライフルを使ってますね。無くしてしまったのでこれは間に合わせです」

 

「そうか、なら良い店があるんだ。ついて来い」

 

ダブルオーちゃんに連れられて来たのは、武骨な雰囲気が特徴のガンショップ。値段はちょっと張るが、中々良いデザインの銃ばかりだ。

一番気に入ったのは、軽量化の施された対神秘弾、対重装甲弾対応のマルチマガジン付きアサルトライフル。

普段使っているのは対神秘弾なので、たまには対重装甲弾を使ってみるのも悪くないかもしれない。

 

「それにするのか?……ってマジか!300万もするじゃねえか!お前金あんだよな?」

 

「預金残高には割と自信があってね。このくらい安い買い物だ」

 

銃の値段が比較的高いトリニティでは、このぐらいの銃はお嬢様連中は軽く買っているらしい。金持ちほど強いのは、どこでも一緒だ。

ガンショップを出た私たちは、エンジニア部まで駄弁りながらゆっくりとショッピングを楽しみつつ向かった。

 

「おや、来たんだね。ネルと一緒とは幸運だ。丁度彼女に渡したいものがあったんだ」

 

「オウ。銃の修理頼んどいたの、終わってるんだな」

 

「それで────えっと、そういえば名前を聞いてなかったね。怪盗さん、君は?」

 

「ジャスティスと呼んでください。」

 

「ジャスティス。覚えたよ。それで、君の要件は何かな?マキ雷神一号くんの代金支払いの他にもあるんだろう?」

 

「ああ。そうです、このマイクロチップについて調べてほしくて」

 

懐からマイクロチップを取り出し、ウタハさんに渡す。ウタハさんにこのマイクロチップの概要と危険性を説明する。

するとウタハさんはぬいぐるみにマイクロチップを持った手を突っ込むと、そのままにしてしまった。

 

「すまないけど、こういうのは私の専門ではなくてね。ソフト面に強い子達がいるから、そっちに回すことにするよ。それまでは仮想Divi:sionシステムとやらの性能テストだ」

 

暫くするとぬいぐるみは立ち上がり、ウタハさんに向かってパンチを仕掛けようとするが、それはダブルオーちゃんのキックで止められる。

凄いスピードの蹴りだ、ツルギ先輩に匹敵するほどの速さ。

 

「ともかく、結果は追って連絡しよう。連絡先は?」

 

「シャーレオフィスにかけてください。スマホは失くしました」

 

「あ?お前シャーレの生徒だったのかよ。先生には世話ンなってっからな……何かあったらあたしからも連絡飛ばすからよ、シカトすんじゃねぇぞ?」

 

ひとまず、今日のところは解散する運びとなった。そういえば、何かを忘れている気がするが……何だろう?

 

 

 

ハスミ先輩と出会うまで、あと1日────。

 

 

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