上弦の鬼たちは月姫世界に転生したようです。   作:白澄星火

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第10話:氷の上弦 VS 炎の死徒①

10-1:上弦の弐&肆 VS 死徒二十七祖十九位

 

先に仕掛けたのは憎珀天殿──────いや、一人にまとまったのだからもう半天狗殿と呼んでも差し支えないだろう。

 

「血鬼術 無間業樹」

 

その言葉と共に、両手に握る動物の牙のようなバチで背中の太鼓を鳴らすと、木竜が現れる。

それも一気に10体。

 

そして、喧ましい音が竜の口から放たれれば、空気を激しく揺らし、6間(約11メートル)先の敵を襲う。

 

すると炎の死徒は鼓膜を抑え、身をかがめた。

その隙をみて、木竜が大きくく口を開け地面を這いながら敵に迫る。

 

──────ぱくん

あっさりと敵は飲み込まれた。

 

あとは木竜の中で圧死──────とは言っても、殺してはいけない。

 

人間だったら死ぬ程度の圧力で死人使いの身体を締め上げる。

相手は死徒。不死身の化け物だ。このくらいで死にはしない。

 

「でも、念には念を、だね」

 

俺は木竜の開かれた口の目の前に立ち、扇を振る。

すると、中に粉氷が送り込まれ、冷気が満ちていく。

 

「よし、あとはこの木を斬って、無惨様へ献上しようか」

 

終わってみれば、あっさりとした決着。

 

ざんっ、と木竜を輪切りにし、持ち運びやすいようにする。

しかし、なんだか焦げ臭いな、と断面を見てみると、ぷすぷすと煙を上げる黒色。

 

(──────炭化・・・?まずい)

 

と思った時には遅かった。

赤い光を漏らしながら木竜が急激に膨らみ、自身の膨張に耐え切れず一気に爆ぜた。

 

炎は俺と半天狗殿を一瞬で包み込む。

 

「──────!──────がっ・・・」

 

眼球内の水分が一瞬にして蒸発した。

灼熱を吸い込んでしまったことで、肺が燃え尽き、息が出来ない。

 

ただ、俺の血鬼術なら対応できそうだ。

血液を凍らせ散布できるということは、自身の筋肉や骨、さらに脳や内臓までも冷却できるということ。

 

加えて上弦の鬼に許された超速再生。

それらのおかげで、炎で身を焦がされつつも、なんとか堪えている。

 

(半・・・天狗殿は)

 

眼球に再生能力を回し、隣を見る。

そこには、幾重にも巻き付けただろう木竜と共に、炭と化した上弦の肆の姿。

 

つまり敵は、もはや俺だけに注力すれば良い状況か。

・・・ならば。

 

「血・・・鬼術」

 

霧氷・睡蓮菩薩と結晶の御子が俺を取り囲むようにして出現する。

 

そして、俺の身体めがけて凍てつく空気を送り込む。

 

すると、熱は冷気で相殺され、身体が焼かれるよりも、再生能力の方が上回る。

 

そして、熱傷が完全に回復する前に、俺は上空へ飛んだ。

 

敵もそれに気づいたのか、炎の手は三つ同時に俺の元まで伸びてくる。

 

(──────でも、遅いよ)

 

睡蓮菩薩が下から潜り込むように俺の目の前に現れ、炎の手から庇いきる。

 

そしてそのまま足場とし、一気に敵の元へ踏み込む。

 

狙うは近接戦闘。

両手に扇を構える。

一方で敵に手には無骨な凶器が握られていた。

 

(・・・鉈?)

 

太刀よりも大きなその得物。

しかし、全貌を視認する前に俺の二対の扇と交差し、激しい衝突音が響いた。

 

だが、得物が何であろうが関係ない。

俺はすぐに、次の攻撃に入る。

 

「──────血鬼術 枯園垂り」

 

高速で繰り出される扇の連撃。

しかし、炎の死徒は達人の如き剣さばきで難なくしのぎ切る。

 

(でも、これはどうかな?)

 

「──────血鬼術 散り蓮華」

 

今度は刃のような花弁が吹き荒れる。

 

すると、敵の身体中の皮膚が裂け、鮮血が舞う。

しかし、あふれ出た血液によって、傷は癒えていく。

 

だが、今の攻撃を食らってくれたのはうれしい誤算だ。

 

(無限城で最期に戦った二人は俺の血鬼術をちっとも受けてくれなかったからなあ)

 

なぜ、自分にとって取るに足らない人間二人が完璧に回避でき、目の前の死徒はそうでないのか?

 

──────答えは彼の表情から分かった。

完全に冷静さを失っている。

いや、失い始めている。

 

あれではいくら人間を超越した身体と動体視力を持っていたとしても、俺の”初見殺し”は防げない。

そして何より、俺の血を凍らせて散布する粉氷は不死の存在に対しても効果はある。

肺で呼吸をするのなら例外は無い。

あせらず、ゆっくりと削れば良い。

 

──────しかし。

 

「ク──────アァァァァァア!」

 

敵が吠える。

彼の怒号に応じて炎が燃え盛る。

 

劫火の高さは3間(約5.5メートル)以上。

その河は何十にも枝分かれする。

 

左右と真後ろに、逃げ道を塞ぐように伸びていく。

敵が炎を出してきたときに対応できるよう、後ろで待機させておいた霧氷・睡蓮菩薩と結晶の御子も、流石の物量に耐え切れず溶け始めた。

 

そして、正面からは、瓦礫を溶かしながら、かつてない高温の手が迫ってくる。

 

(・・・これはまずいかもね)

 

俺はすぐさま後ろに飛び、睡蓮菩薩と結晶の御子の背後に身を隠す。

 

そして、俺の扇の一振りで、氷の像から凄まじいほどの冷気が放たれた。

 

すると炎の手と衝突し再び相殺される。

 

しかし、周囲を囲む炎が灼熱空間を作り出し、睡蓮菩薩と結晶の御子を徐々に溶かしていく。

 

当然、氷の像の身体が崩れ始めれば氷の息吹も弱まる。

それと対照的に、炎の手は勢いづき、さらに氷を解かす。

 

──────負の連鎖が、始まる。

こうして、氷と炎の対決は、単純な物量によって勝負が決まった。

 

氷の上弦 VS 炎の死徒②へ続く

 

 

 

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