13-1:アッフェンバウムの原理
空気が歪む。
病想の青い熱が、街の気温を下げていく。
だが俺は、氷の死徒──────ヴローヴの異様な武器が自分を打倒しうるモノだと理解しながら、なお正面から飛び掛かる。
──────それを、
「貴様は知るまい。彼の領土はこの星の一部でありながら、"生きるに能わず"と除外された生命圏。
いかに不死身であろうと、この地獄に耐え切れるか・・・!」
ヴローヴを中心に広がる冷気。
最大限の警戒と共に、俺は急停止し、扇を振る。
「血鬼術──────凍て曇」
しかし、完全には相殺しきれない。
吹き荒び、金切り声をあげ、街を覆う絶対零度。
速度も威力も俺の血鬼術を上回る。
そして、その寒さによって硬直した俺の身体を、今まさに鋼の巨槍が貫こうとしていた。
胃袋から込み上げるような悪寒。
それはヴローヴの冷気か、それとも──────。
俺は、両腕を
そして、衝突の瞬間は予想よりも早く訪れた。
槍の先端が扇の中心に当たる。
何かがはじけ飛ぶ音──────。
威力を受けきれず、身体は後方へ。
「ぐっ・・・」
勢いよく吹き飛んだ俺の身体は、街の建造物に叩きつけられる。
バラバラと周囲に散っていくのは瓦礫、そして俺の身体。
会心の一撃をもらい、原形を留めることは出来なかった。
いくら上弦とはいえ、この状態で何事も無く再生できる鬼など存在しないだろう。
なにせ、すべての傷口が氷結しているのだから。
そう、誰がみても勝負は決した。
しかしそんな状況でも、ヴローヴは一歩も動かないまま、何かの合図を送るように右手をかかげた。
「その不死性どこまで通用するか、見定めてやろう」
ヴローヴの周囲の瓦礫が崩れていく。
その下から、何体もの死体が、うめきながら這い出てくる。
「男の身体を残さず食らえ」
ヴローヴに命じられ、死体たちが再生が間に合わない俺のもとへと歩み寄ってくる。
(はは・・・砂糖にたかる蟻みたいだ)
ボリボリと咀嚼音が聞こえる。
この音は、歯で氷を砕いているのだろうか。
ただ、満ちていく。
亡者の口に、胃袋に。
鬼だって消化、吸収されれば死ぬだろう。
陽光や日輪刀とならび、数少ない鬼の殺し方だ。
しかし俺は、この期に及んで達観していた。
しのぶちゃんに毒を盛られ、敗北したあの夜と同じ。
何も感じない。
俺は空っぽだった。
だからこそ、いつも全力を出せなかった。
二度目の敗北。二度目の死。
怖い。悔しい。
そんな感情は今も遠い場所にある。
(でも、なんでかな。死にたくないや)
散々口にしていた、人を救うだとか。
そんな理由じゃない。
もっと、人間臭い感情。
──────そうか。
俺は試したいんだ。
自分の性能を。
せっかくの二度目の人生だ。
持ってる力すべて出し切らないと、勿体ないだろ?
だから。
(血鬼術──────)
アッフェンバウムの原理 完