16-1:最後の攻防
今までの三倍以上大きな木竜が、口を開ける。
俺がそっと手を添えると、表面に赤い鱗が形成された。
よく見れば、一つ一つが花びらのようだ。
こうして彼岸花をまとえば、木竜も極寒の環境に耐えることが出来る。
また、俺と半天狗殿が血鬼術を発動している間に、平行して作戦会議を実施した。
そして、二人で認識を合わせた後、最後に頷き合う。
「作戦は以上だ。では半天狗殿、思いっきりかましておくれ」
「言われなくとも」
半天狗殿はそう言って、再び太鼓を鳴らす。
「鬼血術──────狂鳴雷殺」
木竜から、雷撃と超音波が放たれる。
半天狗殿も、この一撃で決めるつもりだろう。
いつもより高威力かつ広範囲だ。
さらには俺の粉凍りも上乗せされている。
当たれば死徒とはいえ、ひとたまりも無いはずだ。
周囲の建物を破壊しながら敵に迫る光景から、凄まじい威力なのが分かる。
発射地点から25間(約46メートル)先のヴローヴの元へ。
そして、直撃の寸前。
ヴローヴが槍を大きく振る。
すると、俺と半天狗殿の合わせ技は容易くかき消された。
まさに一蹴。
二人がかりでも、届かない。
──────しかし。
ドスン、と音を立てて、ヴローヴは鋼鉄の槍を地面に落とした。
効果はあったのだ。
左手で右前腕を押さえつけ、肩を上下させるヴローヴ。
それを見て、俺は半天狗殿と目合わせをする。
半天狗殿が太鼓を叩くと、木竜はヴローヴの元へ勢いよく飛び出した。
俺は鱗につかまり、同じ方向へと共に向かう。
だが、ヴローヴも接近を許すはずは無く、自らの背後に氷の槍を出現させ、一斉射出を行った。
それらは折り重なるように、俺の身体を貫かんと殺到する。
対する俺は、氷の槍を扇でひたすら砕く。
砕き損ねたものは身体を斬り裂いていくが気にする余裕はない。
ただ、着実にヴローヴとの距離を詰めていく。
そして、ヴローヴとの距離が5間(約9メートル)になった、その瞬間。
俺は木竜の前に飛び出す。
すると、背中に風が伝わる。
ただ、それは突風と言えるほどの威力。
血鬼術の緻密な制御がなければ、あらぬところに飛ばされてしまいそうだ。
だが、そんな心配はない。
半天狗殿は俺と同じ上弦だからだ。
風と共に、一気に加速する。
しかし、2間(約3メートル)のところで、ヴローヴはコートの下から鉈を取り出し、構えた。
地面に落ちている巨槍よりも、取り回しが良いと判断したのだろう。
(──────間に──────合え)
鉈の横薙ぎと俺の身体の直進運動、どちらが速いか。
この一瞬で、決着が着く──────。
最後の攻防 完