上弦の鬼たちは月姫世界に転生したようです。   作:白澄星火

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第19話:珠代の情報

19-1:珠代の情報

 

炎のような痣。

いかにも侍というような服装に、腰にぶら下げているのは日本刀。

柄の部分は目玉が並んでおり不気味だ。

 

男の周囲は重厚な空気が漂い、威厳を感じさせる。

 

そして、代行者や上弦が集うこの場においてもなお、圧倒的な存在感を放つ男はおもむろに口を開いた。

 

「・・・童磨よ。この度は手柄を上げたな」

 

「ありがとう黒死牟殿。だが、そんなことより見てくれよ。猗窩座殿がいるぜ」

 

俺がそう言うと、黒死牟殿は視線を移す。

しかし、特段驚いた様子は無かった。

 

「・・・猗窩座・・・なぜ鬼にならなかった」

 

「愛する人をこれ以上悲しませないためだ」

 

「・・・そうか・・・それは・・・残念だ・・・」

 

黒死牟殿は肩を落とす。

分かりやすく凹んでいる。

 

そんなやりとりを見ていたシエルちゃんの、困惑をにじませた声がぎこちなく響く。

 

「ええと・・・皆さん知り合いでしょうか?」

 

「ああ、そうだよ。元の世界では大切な仲間だったのさ」

 

俺は、猗窩座殿と黒死牟殿の方を交互に見ながら話す。

対する黒死牟殿は特に反応なし。

猗窩座殿はなぜか額に青筋を浮かべている。

 

だが、意外な反応を返したのははシエルちゃんだ。

元の世界?と独り言をぶつぶつこぼしながら、手を口に当てている。

 

先ほどの様子から、俺はてっきり猗窩座殿から共有されているものだと思っていた。

 

いや、そんなことよりもだ。

 

「そうだ、黒死牟殿、今回の俺の貢献に免じて、助けてくれまいか?この通り、俺は今殺されそうなんだ」

 

「・・・ふむ。そのようだな」

 

黒死牟殿は頷き、刀の柄に手を添える。

 

それに呼応するかのように、シエルちゃんは再び殺気を放った。

それは先ほどよりも濃く、さらに鋭い。

 

そして、杭のような切っ先の、まるで重機とも呼べる武器をガチャリと鳴らした。

 

二人は6間(約11メートル)ほど離れているというのに、対峙するだけで空気が一気に張り詰める。

この場所では並の人間、そして鬼でさえも窒息してしまいそうだ。

 

正に一触即発な状況。

 

(この娘、やっぱ只の人間じゃないよね?全力の黒死牟殿と正面切って戦えちゃうんじゃない?)

 

お互い刃を抜けば、周囲にいる俺と猗窩座殿は巻き込まれる。

 

勘弁してほしい。

黒死牟殿。ここは戦いを避けて、俺を連れて逃げてくれないだろうか?

 

そう心の中で愚痴る。

 

そんな状況下、猗窩座殿が二人の間に割って入った。

 

「待て待て。黒死牟も童磨も"こちら"に来たばかりだろう!?まだ人を食べていないはずだ」

 

それこそ、鬼であった頃の彼からは想像できないほどの慌てようだ。

しかし、シエルちゃんは譲らない。

 

「そこをどきなさい狛治。邪魔立ては許しませんよ」

 

「・・・猗窩座よ。これほどの人間は過去一人しか見たことが無い・・・。私は目の前の強敵に・・・胸が躍っている。水を差すのであれば、お前ごと・・・」

 

どうやら黒死牟殿に至っては、この状況を楽しんでいる。

こうなっては止められる者など、無惨様以外にいるだろうか。

 

だが、猗窩座殿も折れなかった。

 

「よく聞け。青い彼岸花と暗示によって、お前たち鬼は人を食わなくて済む」

 

それを聞いて、黒死牟殿は瞳を細める。

 

「・・・何を根拠に言っている?」

 

少しでも返答を間違えれば一瞬で首が飛ぶ。

そう思わせるほどの緊張感が漂う。

 

対する猗窩座殿は慎重に言葉を続けた。

 

「・・・珠代からの情報だ」

 

その単語が出てきた瞬間、黒死牟殿の表情が一変する。

 

「・・・今、珠代、と言ったか?」

 

押しつぶされそうな重圧。

ビリビリと地ならしが聞こえてきそうだ。

 

だが、黒死牟殿の態度の急変ぶりも無理はない。

珠代は、自身も鬼なのにもかかわらず、鬼狩りと共に鬼を滅ぼした女だ。

彼女の言うことを信じるというのか?と黒死牟殿は言いたいのだろう。

 

一方、俺は猗窩座殿の言葉に対して純粋な疑問を抱いていた。

珠代もこの世界に?

いや、そんなことより、青い彼岸花は存在するのか?

であれば、無惨様からすぐに指示が──────。

 

しかし、何も音沙汰は無かった。

今の話をお聞きになって、無惨様が反応をお示しにならないとは考えにくい。

 

その違和感は、流石に黒死牟殿も感じたようで、お互い目を合わせる。

 

(──────無惨様に異変が?)

 

珠代の情報 完

 

 

 

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