上弦の鬼たちは月姫世界に転生したようです。   作:白澄星火

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第21話:鬼舞辻無惨、死徒と成る

21-1:失われた呪い

 

これは、童磨と黒死牟が異変に気付く少し前。

鬼舞辻無惨が別のモノへと変異し、鬼にかけていた"呪い"とも呼べるものを失った時の出来事。

 

 

廊下や広間が不規則に並べられた無限空間。

これを作り上げることなど、決して人の手では不可能だ。

 

そんな、上下すら分からない空間でひれ伏す少年。

額には角、背中には連太鼓と、その姿は雷神を思わせる。

 

「無惨様。死徒をお持ちしました」

 

「・・・よくやった半天狗。下がって良い」

 

受け答えしたその者の態度から主と言うことが分かる。

紳士服に身を包み、血のように赤い瞳を光らせるその男──────無惨。

彼の言葉の後に、べんと琵琶の音が鳴ると、少年は姿を消した。

 

今はこの場にいない少年が、無惨に差し出したのは──────人の形をしたナニカ。

 

眠るように瞳を閉じている。

しかし、肌は青白く、これでは生きているのか分からない。

 

それを見て、満足そうに口の端を釣り上げる無限城の主。

 

「・・・ついに、ついに私は太陽の下を歩くことが出来る。よくやった半天狗、童磨」

 

歓喜をにじませながら、腕をぼこぼこと膨れ上がらせる。

そして、蛇のような赤黒い肉の化け物が裾から現れる。

口には鋭い牙が光り、身体には眼球がいくつも付いている。

 

怪物は大きく口を開けると、横たわる生贄を丸呑みにした。

 

ごくり、と喉を通る音。

その後に続けて響いたのは捕食者である無惨のうめき声だった。

 

「ぐっ・・・ゔぅぅ」

 

胸を押さえつけ、身をかがめている。

 

そこに、揺らぎを持った女の声が聞こえた。

 

「無惨様・・・!」

 

声の主は、琵琶を持った一つ目の女。

声色と表情から、動揺しているのが分かる。

しかし、無惨は手のひらを掲げ、制止するような仕草を取った。

 

「・・・こんなものどうということは無い。必要な痛みだ。ならば受け入れよう」

 

「・・・無惨様」

 

切なく、女の声が漏れる。

だが、主が問題ないというのであれば、これ以上は何も言うまいと口を閉じ、ただ見守った。

 

──────しかし。

 

「ガ・・・アァァァァァァァ──────!」

 

無惨は雄たけびを上げる。

その声量は尋常ではなく、激しく空気を揺らし、無限空間はガタガタと音を立て始める。

 

無惨は苦しそうに、喉から胸のあたりを掻きむしる。

その中心には原理(ひかり)が浮かんでいた。

 

決して理解できぬもの。

血の煮ごこりのような赤い果実。

 

原理血戒(イデアブラッド)と名付けられた、世界を侵す力の結晶。

死徒二十七祖たらしめる王冠。

 

ゼリア・アッフェンバウムから、ヴローヴ・アルハンゲリへ。

そして今、ヴローヴ・アルハンゲリから鬼舞辻無惨へと引き渡された。

 

その瞬間──────。

 

鬼たちを支配する"呪い"はすべて打ち消された。

 

鬼舞辻無惨、死徒と成る 完

 

 

 

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