22-1:状況整理
無惨様に何かあったのだろうか?
俺は首を傾げる。
一方黒死牟殿も、動揺を隠せていない。
そんな俺たちの様子に、
「・・・どうかしたのか?」
最初に声を上げたのは猗窩座殿だった。
すると、黒死牟殿が率直に現状を答えた。
「・・・"あのお方"に、何か起きたようだ。だが・・・生きておられるのは確かだ」
「なぜ分かるんだ?」
「"声"が聞こえない・・・からだ」
黒死牟殿が言うならそうなのだろう。
彼は嘘を付かない。
でも、俺には一つ疑問があった。
「そもそもだよ。黒死牟殿。声が聞こえないなら、生きているかも分からないのではないか?」
「我々鬼の命は・・・"あのお方"と一蓮托生・・・我々が今こうして生きていることこそ・・・"あのお方"のお命がご無事と言う何よりの証拠・・・」
「そうなのかい?それは良かったよ」
あーなるほどね。
俺は一息つき、安堵するような仕草を取る。
そこに、さっきから置いてけぼりのシエルちゃんが会話に入る。
「一体貴方達はさっきから何の話を?」
「我らの主が心配だという話さ」
「主・・・」
「まぁ我ら鬼の始祖というやつかな」
「つまり貴方達の"親"、ですか・・・」
などと、二人で話していると。
「私は・・・もう行くぞ」
黒死牟殿は、どうやら無惨様の元へ向かうようだ。
だが、俺は手のひらを掲げ、引き留める仕草をする。
「まあ待っておくれよ黒死牟殿。この状況、迂闊に動かない方が良いと思うぜ?」
「・・・何?」
黒死牟殿が眉を顰(ひそ)めると、重厚な覇気によってその場に一気に緊張感が漂った。
彼の態度も当然だろう。
主の危機に対して動こうとしたところ、水を差されたのだから。
だが、それでも俺は彼を止めなくては。
大切な仲間だからな。
「そうピリピリしなさるな。いやあ、そもそもだよ?"あのお方"は目的を果たされたということになる。であれば、我らはお役御免ではなかろうか?」
「何を言っている。まだ代行者が・・・」
そう言いかけたところで、黒死牟殿の表情が固まる。
どうやら、現状を正しく理解してくれたようだ。
「そうだよ。鬼狩りの時と違い、"あのお方"は代行者の殲滅など望んでいないのだよ。もちろん、飛んでくる火の粉は払うだろうがね。その上元々、同族を増やすことを疎ましく思っていた"あのお方"のことだ。むしろ身が危険なのは我々なのではないかな?」
俺が最後まで言うと、ぎり、と黒死牟殿の歯がなった。
・・・彼は侍だ。
主君に不必要とされているかもしれない、と考えれば悔しくてたまらないのだろう。
(──────可哀そうに)
「と、言うことで。シエルちゃんの知恵を借りよう。現状の分析にきっと役に立つだろう」
俺は話を切り替え、まずはシエルちゃんに鬼側の情報を提供した。
無惨様という鬼の始祖の存在、そして我々の計画までも。
シエルちゃんは食い入るように話を聞いてくれた。
「・・・なるほど、死徒に・・・と、なれば存在そのものが変異します。それこそ魂のラベルが貼り替わるようなものです。よって、鬼であったころの能力をすべて失ったか、それともより強い呪いによってかき消されたか、そのどちらかでしょう」
「なるほどね。であればもはや鬼ではない"あのお方"は我々の主なのか、というのが純粋な疑問だねえ」
「童磨・・・口を慎め・・・」
ギロリ、と六つ目がこちらを睨みつける。
だが、それほど怒ってはいないんじゃないかな?
代行者にこれほどの情報を提供しても見逃してくれたのがそもそもの証拠。
だから、俺はさらに踏み入る。
「つまり、我々は晴れて自由の身になったということだ。──────よし、珠代からの情報にあった、青い彼岸花を探しに行こうか。そうすれば人を食う必要は無くなり、代行者からも目を付けられずに済むんだろう?」
今度は他三人が一斉にこちらをみる。
「・・・そうは言いますけど、暗示とセットですからね?まあ、貴方が良ければそれで良いのですが・・・」
「・・・一応聞いておくが、人間に戻るつもりはないんだな?珠代は、お前たちを人間に戻すことも可能だ」
「う~ん・・・人間の寿命は短いからなぁ。申し訳ないが、お断りしておくよ」
「そうか。だが、青い彼岸花は夜には咲かない。つまり、お前たち鬼には一生探せないということだ」
「え・・・えぇ~・・・」
俺が肩を落とすと、猗窩座殿は肩に手を添えてくる。
──────憐みの視線と共に。
状況整理 完