23-1:狛治、青い彼岸花探索へ
猗窩座殿が俺の肩から手を離す瞬間、満足げに口角を釣り上げたのを見逃さなかった。
まるで、今までの仕返しだ、言わんばかりに──────。
その後彼は咳払いをすると、話し始める。
「・・・とは言え、穏便に済む方法があるのであればそれに越したことは無い。協会側で秘密裏に青い彼岸花探索チームを結成しよう。これで良いな?シエル」
「はい。ただし、彼(鬼)らが少しでも人間に危害を加えるようでしたら駆除対象になりますのでご承知おきを」
「分かっている。では、珠代とも話をつけてくる。俺は一度協会に戻るから、総耶・・・それと恋雪のことは任せたぞ、シエル」
「はい」
シエルちゃんが短く返答する。
すると猗窩座殿は俺たちに背を向け、どこかへ去っていった。
「さよなら猗窩座殿、さようなら!・・・あれ?でも猗窩座殿居なくなっちゃったら、暗示は?」
「私も出来ますのでご安心を、それと、そちらの方は・・・」
シエルちゃんが視線を移す。
その先には、気まずそうに腕を組む黒死牟殿。
「青い彼岸花の件については・・・考えておこう。また、猗窩座が帰ってくるまで、人を襲わないことを約束しよう・・・」
「では、暗示は受けますか?」
「必要ない・・・童磨と違い、力もそれほど使っていないため腹も空いていない・・・このまま一年はもつだろう・・・」
「分かりました」
すんなりと話が進む。
でも、見張りはどうするのか?
そんなことを思っていると──────
「見張りは別の者──────代行者ノエルに任せます。少しでも不穏な動きを見せたら私に報告が行くようになっていますし、彼女と連絡が取れなくなった、その時は・・・」
まるで機械のように、冷淡に言い放つシエルちゃん。
その言葉の続きは言われなくても分かった。
俺は手をひらひらと振りかざしながら、おどけてみせる。
「もちろんだよ。分かっているさ。そのノエル・・・さん?とやらと仲良くやれば良いんだろ?」
「はい。では今から代行者ノエルに電話しますので」
そう言ってシエルちゃんは板状の光る端末を取り出し、耳に当てた。
「代行者ノエル。・・・ええ。申し訳ありませんが、鬼を二人ほど。・・・はい」
シエルちゃんは板に向かって話しかける。
俺はその行為から、文明の進化を感じ取った。
(あれは、自働電話※ だろうか?それにしては随分小さいが・・・いやぁ、すごい世の中になったねえ)
狛治、青い彼岸花探索へ 完
※公衆電話のこと。