24-1:上弦の壱と弐、同居する
「では、私はロアの追跡がありますので。これにて」
シエルちゃんはそう言って、バタリと扉を閉めた。
コツコツと、靴底を叩く音が遠のいていく。
本当に手際が良い。
俺と黒死牟殿は、瞬く間に賃貸の一室に押しやられた。
それにしても、二人が住むには少し狭い気がする。
どうやらこの大きさの部屋は、1LDKと言うらしい。
ぐるりと、部屋の隅々まで見渡す。
すると、見知らぬ女の子がせっせと俺たちの生活環境を準備してくれているのが目に入った。
「大体、シエルがおかしいのよ・・・狛治とか言うガキの言葉をそのまま信じ込んじゃって・・・」
ぶつぶつと小声で独り
彼女が、シエルちゃんが言っていたノエルという娘だろうか。
布団を搬入し終えた後は、杭のようなものを打ち付けている。
そんな彼女の背を見ながら。
「俺は童磨。もう一人は黒死牟殿。よろしく」
「ひっ・・・はい。よろしくお願いします・・・これから隣人となります、ノエルです」
ビクリと肩を震わせて作業を一時中断した後、顔を引きつらせながら会釈をするノエルちゃん。
(・・・警戒されてるなあ)
まあ無理もない。
ただ、ここは信頼関係を気付いていた方が得だろう。
「君に手を出したりしないから安心しておくれ。流石に俺も懲りたよ。人間を殺せば、何倍もの仕返しを食らうからね」
これは、前世での教訓。
死徒といった化け物より、人間の執念がこの世界では一番恐ろしい。
ただ、そんなことを言ってもノエルちゃんの怯えた目は変わらない。
緊張を解いてもらうために、俺はニコリと笑って見せるが、そっと目をそらされた。
彼女は作業を再開する。
慣れた手つきで順調に進み、完了までには一時間もかからなかった。
その後、ノエルちゃんは逃げ出すように部屋を後にした。
必然と、俺と黒死牟殿だけが残った。
突然訪れた沈黙の中で、コトリ、と床を叩く音。
部屋の隅で、黒死牟殿が刀を置く音だった。
彼は
(黒死牟殿の六つ目、閉じるとこんな感じなんだ)
俺は、始めて見たその姿を食い入るように見つめる。
そんな中。
「・・・あまり凝視するな・・・」
黒死牟殿は気付いていた。
なぜ分かるのだろうか。
本当に不思議だ。
「いやあすまない黒死牟殿」
俺は頭を下げ、謝罪を口にする。
そして、そのまま腰を落とし、黒死牟殿と向かい合うように
「さて、そろろろ・・・──────方針を決めないかい?」
上弦の壱と弐、同居する 完