上弦の鬼たちは月姫世界に転生したようです。   作:白澄星火

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第26話:上弦の陸 新旧対決

26-1:上弦の陸 新旧対決

 

手で合図をすると、梅は少し離れたところへ。

妹には中~遠距離で支援に徹してもらう。

 

こちらの陣形が整ったところで、最初に仕掛けたのは獪岳だった。

 

「雷の呼吸 伍ノ型──────熱界雷」

 

漆黒の(いかずち)が走る。

それを俺は、真正面から二対の鎌で受けた。

 

が、しかし。

 

(──────押し・・・負け)

 

獪岳の技の威力は俺の許容範囲を超えていた。

 

単純な力負け。

俺の腕は、胸の前まで折りたたまれる。

地面に付けていた足は宙へ浮こうとするため、必死に押さえつける。

 

だが、抵抗虚しく壁の近くまで押しやられていった。

 

そして。

 

──────敵の力はさらに解放された。

 

ボゴンと勢いよく石が爆ぜる。

俺の身体は壁をぶち破り、隣の部屋に投げ出された。

 

土埃が立ち込め、視界は良好とは言えない。

そして瓦礫の奥からは、楽し気な声。

 

「ハハッ。穴埋めの上弦の陸ごとき、だっけ?」

 

言葉を終えた後、土埃をかき消す突風とともに獪岳の身体が現れる。

 

体勢は脇構え。

切っ先は、奴自身の真後ろを向いている。

間合いを悟らせないためか。

 

そして、俺との距離は2間(約3.7メートル)。

獪岳の持つ射程なら、そのまま刀を斜め上に振り抜くだけで届きうる。

 

だが、その直前に。

コンクリート造りの壁が豆腐のように斬り裂かれ、その隙間から帯が侵入する。

 

瞬く間に、その帯は獪岳の背後をあらゆる角度から包囲した。

 

対する獪岳は後ろを振り向くことも無く。

 

「雷の呼吸 参ノ型──────聚蚊成雷」

 

体を回転させながらの波状攻撃。

まさに、黒い雷(いかずち)の乱れ撃ち。

 

梅の攻撃は一瞬で無力化され、さきほどまで帯だった残骸(もの)がぱらぱらと舞っている。

 

俺も、あのまま同じ場所に留まっていたら獪岳の斬撃に巻き込まれていた。

だが、後ろに飛んで回避したため傷は負っていない。

 

退避の後の着地を終える。

そしてそのまま鎌を構え、反撃の動作に移る。

 

「血鬼術──────飛び血鎌」

 

五つ折り重なるように放たれた血の刃。

 

迎え撃つは。

 

「雷の呼吸 弐ノ型──────稲魂」

 

同じく五つ、黒い斬撃。

 

結果は相殺。

 

──────次。

少しの空白すら許すわけにはいかない。

俺と、どうやら梅も立て続けに攻撃を繰り出さんとする。

 

しかし、獪岳の技の出が一瞬だけ早かった。

 

「雷の呼吸 陸ノ型──────電轟雷轟」

 

まるで嵐だった。

部屋中を黒い閃光が走った。

 

視界の奥に映る堕姫はもろに攻撃を受け、手足が飛んでいる。

 

俺の方はというと、獪岳の態度でも分かる通り──────。

 

「・・・チッ。これでもかすり傷かよ」

 

彼は吐き捨てるように言った。

ボリボリと頭を掻き、ため息をつく。

 

確かに、頬に小さな切り傷。

にもかかわらず、治りが遅い。

 

手を当てると、傷口から広がるようにひび割れていた。

 

(・・・これはまともに食らったらまずいかもなぁぁ)

 

次の攻撃を警戒し、獪岳の姿を瞳で捉え続ける。

視界の先の彼は、不機嫌そうな顔でしばらく頭を掻いていたが、それも飽きたといわんばかりに手を頭から降ろす。

 

その瞬間、獪岳は不敵に微笑んだ。

 

「ま、ここまでは準備運動だよな。俺も身体が温まってきたし、あの技も出来そうだ」

 

そう言って、彼は納刀した後瞳を閉じる。

身をかがめながら、片足を後ろへ。

上下の歯の隙間からは、シイイイ という音が聞こえた。

 

その瞬間、俺は全身が強張るのを感じた。

 

──────来る。

何か、致命的な一撃が。

 

獪岳の、黒く濁った瞳と、愉悦に歪んだ口がゆっくりと開く。

 

「──────雷の呼吸──────漆ノ型」

 

上弦の陸 新旧対決 完

 

 

 

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