27-1:火雷神
今、何て言った?
──────ほのいかづちの・・・かみ?
雷の呼吸のはずだが、初めて耳にする技だったため、よく聞き取れなかった。
俺の耳がおかしいのだろうか?
それになんだか、視界が定まらない。
獪岳はどこだ?
今、俺はどこを向いているのだろうか。
自分の事だというのに分からないなんて、不思議だ。
──────ゴトン
と言う音と、後頭部を打ち付けるような衝撃でやっと理解した。
俺は、首を斬られたのだと。
でも、大丈夫だ。
日輪刀で斬られたわけじゃない。
俺の身体に、自身の首を拾うよう信号を送る。
(俺のことより、梅・・・梅を守らないと)
そんな思考の中で。
確かに耳にした、妹の悲鳴。
瞬間、頭が沸騰しそうになった。
──────怒り。
いや、それだけじゃない。
傷口から広がるひび割れと、もう一つ。
灼熱の炎に焼かれるような痛み。
この型だけ何かおかしい。
そんな違和感を覚えつつ、頭部を持ち上げ、胴の上に首を置く。
天と地が正常の視界──────と、一緒に飛び込んできたもの。
それは、愛する妹が斬り刻まれているところ。
・・・今すぐ。
今すぐに獪岳を"終わり"にして、梅を助けに行きたい。
しかし。
(──────首が全然繋がらないんだよなぁぁ)
密着面が増えるように、ぐっと押し付けるが治癒が進まない。
正確には、確かに進んではいる。
だが遅すぎる。
俺がモタモタしている内に、大切な妹をバラバラにし終え、勝ち誇った表情で俺の方へ振り返る獪岳。
「首、つながらねえだろ?この技はな、生意気にも弟弟子が編み出した、前世の俺を殺した型だ。でも、確かに良い技でさ。なんでかな、根拠は無いが、"始まりの呼吸"に一歩近づいた、そんな気さえしてくる」
ペラペラとよく動く舌。
完全に勝利を確信しているようで、緊張感のカケラも無い。
俺は両手で側頭部を押さえつけながら睨む。
それを気にせず獪岳は続けた。
「俺の呼吸は血鬼術によって強化され、さらに死徒になったことで
天を仰ぎ、手で髪をかき上げる獪岳。
一方で、俺の身体は治癒が進んでいた。
「ありがとうなぁぁ。おしゃべりに夢中になってくれたおかげで首がくっついたんだよなぁぁ」
「ハハッ。そうかよ。まあ、夜明けまでお前をバラし続ければ関係ないけどな」
獪岳の言葉にハッとし、俺は窓に視線を移す。
夜空の黒は、そこには無かった。
代わりに広がるのは、美しい瑠璃色。
──────夜明けまで残り、約10分。
火雷神 完