上弦の鬼たちは月姫世界に転生したようです。   作:白澄星火

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第3話:無限城に再び集う②

3-1:新たなる指令

 

「下らぬ」

 

突如吐き捨てられた言葉。

気付いたらひとりでに俺のこうべは垂れていた。

感情も恐怖も俺には存在しないのに、全身が硬直した。

 

そう、鬼ならば決して逆らうことのできないその声。

 

そしてさらに、今度は呆れたように、言葉は続けられる。

 

「もう一度生を受ける機会が有るのなら素直に享受すれば良いものを」

 

その言葉とともに、俺の前に現れた鬼の王。

 

彼を前にして、こういう時は挨拶が先だろうか?それとも、鬼狩りとの戦いで大失敗した件を謝るのが先か。

などと、思案する。

 

(・・・いや、まず謝ろう。無惨様怒ってるし。)

 

と、第一声をどうするかが決まったため、俺は口を開く。

 

「無惨様!申し訳ございません。俺のせいで無惨様までお亡くなりになるとは・・・お詫びとして、俺の臓腑(ぞうふ)すべてをこの手で一つ一つ引きずり出して見せましょうか?」

 

「黙れ役立たず。鬼狩りとの戦いで貴様は本当に無能だった。そもそも、貴様が最初から本気を出していればあの連中など・・・もう良い。──────だが、今度こそ役に立ってもらう。これが最後と思え。」

 

「俺に挽回の機会を与えて下さるとは!して、どのような命令でしょうか?」

 

「日光を克服した死徒を私の前に連れて来い。だがくれぐれも、"教会"にだけは勘付かれるな」

 

述べられた無惨様の言葉。だが俺は、知らない単語が多すぎてイマイチ理解できなかった。

しかし特に補足も無く、無惨様の前に扉が出現し、瞬く間に姿を消してしまった。

 

俺は困り果てていた。

そんな中、妓夫太郎が助け舟を出した。

 

「・・・俺たちが生を受けたこの世界、どうやら"死徒"と呼ばれる鬼と似た生物が居るみたいだなぁぁ。そして、その中には日光を克服した存在がいる。でも、中々手強くて俺と梅でも簡単には倒せなかったなぁぁ」

 

「おお、妓夫太郎はなんでも知っているな」

 

「まあ、俺たちが一番最初に死んだからなぁぁ。だから童磨さんよりもこの世界では先輩だぜえ」

 

「なるほど。して、教会とは?」

 

「聖堂教会のことだなぁぁ。簡単に言えば、"異端の排除を目的とした組織"で、その異端ってのは俺たち鬼も当てはまるみたいだなぁぁ。そして、特に俺たちが注意しないといけないのは代行者ってやつらだ」

 

「おお、代行者か。たしか修道着の女の子がそう名乗っていたな」

 

「童磨さん、代行者と会ったのかぁぁ?」

 

「強かったよー。なんせ、結晶ノ御子を6体と睡蓮菩薩を出さないといけないほどだからねえ」

 

「やべえな・・・それは」

 

「そんなことより、そっちこそ日光を克服した死徒とはどんな風貌だったのだ?」

 

「ああ・・・まず身体がデカくて妬ましかったなぁぁ。俺は肉が付き辛いからなぁぁ。」

 

その後妓夫太郎の口から述べられた死徒の特徴はこうだ。

まず見た目について。

灰色の髪が特徴的な大柄な壮年男性。

瞳は生気が感じられない、無機質な印象を受けたとのことだ。

 

そして能力。

真っ黒な鳥や狼を際限なく召喚、使役し、妓夫太郎曰く"底無し"。

 

ただ、戦ったのは夜でありお互い不死のため、決着は着かなかったらしい。

とは言え、夜明けとともに、俺たち鬼は戦いを中断せざるを得ない。

 

ここで重要なのは、相手の死徒は夜明けでどんな行動をとったか、だ

その疑問については、俺が問うまでもなく、妓夫太郎から説明された。

 

「日光が出ても少し不機嫌そうな顔をするだけで、俺たちみたいな必死さは感じられなかったなぁぁ」

 

「・・・ちなみに、どうやって会えたんだい?」

 

「実は、会ったのは昨日なんだよなぁぁ」

 

続けて、妓夫太郎は経緯を話した。

この世界に来てから、妓夫太郎と堕姫は人を食べずに世間の様子を伺っていたらしい。

 

そして彼は気づく。

それは、この世界は監視の目が行き届いているのに加え人間の命がとびきり重く、人一人死ぬだけで大騒ぎするということだ。

 

よって、妓夫太郎は"死体を食べる"ことにした。

案の定堕姫は猛反対したが、なんとか宥め込んでいたらしい。

 

そんな時だった。

体中の血液を抜き取られ殺される人間が出始めた。しかも立て続けに。

さらにその事件はやがて、吸血鬼の仕業ではないかと噂されるようになった。

 

それに対して、妓夫太郎は強い興味を持ったという。

理由は、これだけ騒ぎになっているのにもかかわらず手がかりすら掴ませない犯人の手口、これを盗み取りたかったからだ。

 

早速、妓夫太郎は"吸血鬼"を追った。

そして遂に昨日、ホテル(宿屋)で出会った。

 

──────死徒に。

 

だが、その死徒は血を吸わなかった。

肉も骨も、丸ごとバリバリと食べてしまうからだ。

 

だから妓夫太郎は帰ろうとした。

しかし、死徒はそうさせなかった。

 

どうやらその死徒は、ホテル内の人間を皆殺しにするつもりだったようで、最後に残った妓夫太郎と堕姫に牙を向けた。

 

そして夜明けまで殺しあった、といった感じだそうだ。

 

つまり要点は三つ。

吸血鬼事件・・・これは優先度が低い。今のところ、我々の目的と無関係と言えそうだからだ。

妓夫太郎と戦った死徒・・・日光を克服した存在のため、最優先事項。

食料調達・・・これも大変だ。ひとまず妓夫太郎を頼って死体漁りが利口かも。

 

また、妓夫太郎が後で鬼たちに向け、この世界に来てからの記憶と、死徒と戦った時の戦闘記録を共有してくれるそうだ。ありがたいことだ。

 

「よし、なんとなく分かってきたよ。では鳴女ちゃん。俺は早速調査を始めるから、飛ばしておくれ」

 

俺の言葉に、彼女は軽く頷くと、べんっと琵琶を鳴らした。

 

すると、降り立ったのはさきほど修道着の女の子と戦った場所。

・・・そして、俺のせいで氷漬けになった家。

 

騒ぎになると面倒なので、俺はそそくさとその場をあとにした。

 

無限城に再び集う 完

 

 

 

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