31-1:上弦会議~無惨サイド~
無限城。
そこは、鬼の始祖が、配下である十二鬼月に重要な指令を言い渡す場として使用される。
そして、その場所は今回もまた──────。
「──────やはり、鬼というのは利己的な生き物なのだろうな」
だが、無限に広がる空間にとってそれはあまりにもちっぽけなもので、瞬く間に空気に溶けていく様が、一層
声の主もまた立ち尽くし、俯いていた。
その視線の先には、従者とおぼしき影が二つ。
一つは額に大きなこぶのある小柄な老人。
ヒイイと、怯えたまま、頭を守るようにひれ伏している。
もう一つは壺から身体を出す、蛇とも似た奇怪な者。
両目のあるはずの場所には口、口のあるはずの場所には瞳があった。
そんな彼らを見おろしたまま、無限城の主は再び口を開く。
「妓夫太郎も、ましてや黒死牟でさえも去っていった」
声に、怒気がこもる。
だが、それも一瞬で過ぎ去った。
もう何もかもがどうでも良い、ということだろうか。
瞳はどこか
「・・・死徒となり、呪いの力を失った私に対しても、変わらず
「無惨様!ご安心ください。この玉壺、あなた様を裏切ることなど決してございません」
玉壺と名乗る者から、反応があった。
身体の両側にいくつも生えた小さな手を身振り手振りで動かし、主に忠実さをアピールする。
だが、配下の献身ぶりを特にねぎらうわけでなく、始祖──────鬼舞辻無惨は淡々と続けた。
「代わりに、さらなる力を与えた。お前たちは
「では早速この力で、あなた様を裏切った上弦どもを粛清いたしましょう」
「・・・その必要は無い。去った者のことなど、もうどうでも良い。わざわざ出向いて殺すのも馬鹿馬鹿しい。お前たちがすべきことはただ一つ。真祖の姫を私の目の前に連れてこい。それか、真祖を模して造られた
「であれば、この玉壺、すぐ向かいましょう」
「決して、代行者には見つかるなよ。特に埋葬機関。アレは二十七祖すら──────狩る」
最後にそう言い捨て、無惨は無限城から姿を消した。
残った者は三名。
その内、主である無惨が居なくなっても跪いたまま怯える老人。
「ヒイイ、承知いたしました・・・」
「アァ・・・」
隣の玉壺は、余韻に浸り、頬を赤らめている。
そんな彼らから、少し離れた場所に座る琵琶の女は、べんっと弦を鳴らした。
すると、二つの影は消えた。
上弦会議~無惨サイド~ 完