32-1:上弦会議~黒死牟&童磨サイド~
「──────と、いうことだ。ここまでは黒死牟殿も認識してくれているかな?」
俺は賃貸の一室で、対面に座る六つ目の侍──────黒死牟殿に問いかけるが、彼は難しい顔をして俯いていた。
「・・・さきほど街で猗窩座が言った通り・・・青い彼岸花と・・・場合によっては暗示によって我々が人間を食わずとも・・・生き長らえることが出来るのは分かっている・・・だが、一つ気になることがある・・・」
「聞かせておくれ?」
「・・・もし仮に・・・鬼としての成長が止まるとしたら・・・それだけは許容できない・・・私の目標は・・・我が弟と同じ高みに上ることだからだ・・・」
「そうかそうか、見落としていたよ。黒死牟殿の場合、死活問題だねえそれは。弟がいたのは初めて知ったが」
「そのため・・・シエルというおなごから受けた問いには・・・"猗窩座が帰ってくるまで、人を襲わない"、と・・・答えたのだ・・・青い彼岸花を手に入れた後のことは回答していない」
「そこまで見越していたんだねえ。さすが黒死牟殿だよ」
「童磨・・・お前は・・・良いのか・・・これ以上強くなれないとしても・・・」
黒死牟殿は顔を上げ、六つの目がまっすぐと俺を捉えていた。
彼にとって、その問いは大事なことなのだろう。
だが、俺にとっては──────。
「俺は構わないよ。自分の身を守り切れるだけの実力はあるつもりだからね」
「・・・そうか」
そう言って再び目線を下げる黒死牟殿。
なんだか悲しそうな表情だ。
(それもそうか。猗窩座殿は人間になっちゃったし、黒死牟殿ほどの実力者に近しい者はもう俺しか残っていないんだもんね。彼も寂しいのかもしれない)
重苦しい雰囲気が部屋を包む。
俺は人間味が無いとは言われるが、快と不快は感じ取れる。
だから、この状態を一変させようと、パチンと両手を叩いた。
「まあまあ黒死牟殿。聞いておくれよ。俺もここにきて、新しい血鬼術を習得したんだぜ?今度見せてあげるよ」
俺がそう言うと、黒死牟の瞳に光が灯ったように見えた。
「・・・では今度・・・視てやろう・・・どれほどのものであるか・・・」
彼の口元は少しだけ緩む。
いつもの厳格な表情からはガラリと変わって。
合わせて俺もニコリと微笑んで見せた。
「ぜひよろしく頼むよ。それと、方針の話に戻るが、"猗窩座が帰ってくるまで"我々の向く方向は同じだね。少なくともそれまで、仲良くしようじゃないか。黒死牟殿」
「・・・よろしく頼む・・・」
両拳を床に付け、礼儀正しく礼をする黒死牟殿。
なんだか、以前よりも黒死牟殿との距離が近くなった気がするよ。
やはり二人きりで話すのは良いものだ。
上弦会議~壱と弐サイド~ 完