上弦の鬼たちは月姫世界に転生したようです。   作:白澄星火

35 / 67
第35話:上弦の壱、弐、陸、集結する

35-1:上弦の壱、弐、陸、集結する

 

俺は梅に移動を任せ、妹の身体の中で休息をとる。

 

すぐ前を歩くのは代行者──────名はノエルというらしい。

 

道中、俺たちの会話は無く、二人分の足音だけが響く。

 

梅の背中から眼を出して空を見れば、霞一つ無く鮮明な月。

 

それにしても、ここは本当に良い場所だと思う。

元々居た世界より豊かで、清潔で、静かだ。

 

だからこそ、俺たちのような存在は、世間からすれば場違いに映るのだろう。

それは、ノエルの態度からも分かった。

 

梅もそれを感じ取っているようで、機嫌はなかなか戻らない。

 

そんな時間がしばらく続いた。

そして。

 

ノエルの足が突然止まる。

 

「ここよ」

 

彼女は振り返らず、短く言った。

目の前には、二階建ての集合住宅。

 

ノエルが再び歩き出したため、後ろに続く。

そのまま2階まで階段を上ると、右手側にはずらりと扉が並んでいた。

 

一つ、二つと通り過ぎ、三つ目の扉の前に立つと、カバンから鍵を取り出し、開錠した。

ドアノブを回し、がちゃりと扉を開けると、ノエルが最初に玄関に足を踏み入れる。

 

続けて、靴を脱ぎ揃えた後、俺たちに向けて手招きした。

 

「上がって」

 

彼女の言葉にうなずき、玄関まで入った梅に対して、靴は脱ぐように、と小声で背中の口からくぎを刺す。

すると妹はぷりぷりと怒り出した。

 

「もうっ、分かってるってるわよう」

 

とのこと。

 

妹の可愛さに、一人でほっこりしていると、効いたことのある声が部屋の奥から響いた。

 

「おや?ノエルちゃん、それと梅の声がしたね?」

 

仲間というのは童磨さんのことだったか。

 

なぜか、ほっとした。

まあ確かに、上弦で頼りになるのは童磨さんか黒死牟様、それと今は人間になってしまったが猗窩座様ぐらいで、その内の一人を引き当てたことは幸いだ。

 

梅も安堵を覚えたのか、歩調が速くなる。

そして、踏み入れた一室。

 

そこには、童磨さんの他にもう一人。

──────上弦の壱、黒死牟様。

 

その光景が、信じられなかった。

あの上弦の壱が、無惨様の元ではなく、ここに?

 

その違和感は、少しだけ梅も感じたようで。

 

「わっ、黒死牟様もいたんだ。てっきり無惨様の方に行ってるかと思ってた。それに童磨じゃん、元気?」

 

梅が軽い口調で言うと、童磨さんはひらひらと手を振ってきた。

一方、黒死牟様は目をつぶり、ピクリとも動かない。

 

──────序列の乱れ。

 

などと、怒られるかと思いヒヤリとしたが、何事も無かった。

 

黒死牟様は妙に女に優しい。

・・・お侍ってのはみんなそうなのだろうか。

 

上弦の壱、弐、陸、集結する 完

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。