上弦の鬼たちは月姫世界に転生したようです。   作:白澄星火

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遠野邸編
第37話:遠野邸に集う怪物たち


37-1:遠野邸

 

街の中心部から外れた位置にある高級住宅街。

 

そこには、混血の名家としてごく一部の者から知られる、遠野家の邸宅があった。

 

そして今夜──────遠野邸には、怪物たちが集うことになる。

これは、アパートの一室に上弦の壱、弐、陸が集結した一夜から、約24時間後の出来事である。

 

 

37-2:集う怪物たち

 

「ようやくお帰りになったようですね。・・・ふん。あと1分遅かったのなら、どうなっていたか分からなかったところです」

 

豪邸の一室で、ソファーに座る黒髪ロングの正統派美少女は屋敷に足を踏み入れた来訪者に向けて言い放つ。

さらに、その言葉に続けたのは、肩にかからない短さまで切りそろえられた金髪の西洋系美少女。

 

「あ、やっと帰ってきたな、こいつめ。妹さんばかりかわたしまで待たせるとか、やっぱり普段から横暴なのね」

 

一方は刺々しく糾弾するように、もう一方は慣れ親しんだ者へ向けるように。

それぞれが、正反対の声色を発する。

 

共通するのは女性ということぐらいだろうか。

 

前者はソファーに座ったまま、もう一方の女に敵意を向ける。

後者はそれを歯牙にもかけない・・・というより気付いていないのか、自然体に振る舞っていた。

 

そんな彼女らと、三角形を築く場所に男が立つ。

それは物理的なものだけなのか、それとも関係性も含まれるのかは定かではない。

 

そんな男を、流し見るエメラルド色の瞳。

 

「どうしたんですか兄さん。そんなところに立っていないで、どうぞこちらに来て座ってください」

 

黒髪の女の台詞から、その男との関係は兄妹ということが分かる。

しかし、当の兄はと言うと委縮した様子で、年長者の威厳のかけらもない。

 

「こ、ここでいいです。それより秋葉、こいつはだな、その──────」

 

ぎこちなく、男の声が響き渡る。

すると、妹──────秋葉は口角を下げながら、言葉の続きははまだかと言わんばかりに。

 

「その、なんですか?」

 

容赦ない視線と共に、言葉を兄へと突き刺した。

そんな兄妹の様子を、我関せずと横からニコニコ笑いながら見つめる金髪の女。

 

男は、その女を(いぶか)し気に見つめた後、話題を変えようとする。

 

「・・・その前に、いいかな。コイツ、なんて言ってやってきたの?」

 

「・・・兄さんのご友人ではないんですか?この方はそう自称しましたが」

 

「ああ、うん、友人といえば、友人」

 

「そうですか。私にも紹介していただけると嬉しいわ。兄さんのご友人でしたら、無下にお帰りいただくわけにはいきませんし」

 

「あの、それはですね、秋葉さん」

 

ムニャムニャと言葉を濁す男。

それに対し。

 

「ふーん。友人、ねー。ふーん」

 

不満気に、金髪の女は兄妹水入らずの会話に割って入ってくると、

 

「あんな酷いコトしておいて、そういうコト言うんだ。わたし、まだ体が痛いんだけど」

 

「な──────」

 

その言葉に、秋葉が絶句する。

 

少しの空白を開け、深呼吸。

しかし、動揺が収まらないまま、秋葉はあんぐりと開いた口を動かし始めた。

 

「・・・それはどういった意味でしょうか。私の兄が、身体面、あるいは精神面において貴女に危害を加えたとでも?──────失礼ですが、ご自分がどれほど信ぴょう性のない発言をしているか、理解していますか?」

 

「ええ、バッチリね。でも安心して、そんなのもう気にしていないから。ちゃんと体で返してもらったし。なので、どうぞおかまいなく。わたしは志貴を誘いに来ただけだもの。すぐに出かけるわ。ね、そうでしょ志貴?」

 

「いやあ、あははははは!」

 

やけくそ気味に笑いながら、男──────志貴は金髪の女に走りより、強引に腕を掴む。

男女のもつれなのか、はたから見れば微笑ましいやり取り。

 

しかし、突如として屋敷に入り込むナニカ。

それに気づく一同。

 

「んっ?」

 

最初に声を上げたのは金髪の女。

続けて志貴が部屋の扉の方へ振り向きながら屋敷の主に尋ねる。

 

「・・・秋葉、他にも誰か呼んだのか?」

 

「いいえ?もう時間も時間ですし」

 

そう言って、秋葉は首を振る。

 

すると、扉が──────ぎぃ、と開いた。

 

「ヒイイイイイイ」

 

ぬらり、と、はいずりながら入ってきたのは──────

 

額に大きなこぶ。その両わきに短い二本の角。

とがった耳。

 

見る限り、人の特徴とはかけ離れた、老人。

 

突然の来訪者。

呆気にとられる一同。

 

驚異的なほどの、気配のとぼけかたのうまさ。

秋葉は1万年の1人クラスの逸材で、片や金髪の女は真祖の姫であるにもかかわらず、来訪者は彼女らを欺いたのだ。

 

ただ、すぐに戦闘態勢に入るのは流石という言うべきか。

早速、金髪の女が爪を鋭く伸ばし、扉の方へ飛んだ。

 

すると、まばたき一度にも満たない時間で、老人の首と胴は泣き別れとなった。

 

ドッ、と頭が床に落ちて、跳ね返る。

その首の切断面から──────メキ、と。

胴体が生えた。新しい胴体が。

 

同時に、床に倒れ伏していたはずの胴体も立ち上がる。

その体には、無いはずの頭が生えていた。

 

そうして現れたのは、二人の青年。

豊かな黒髪と、たくましい体つき。

 

それを間近で見ていた金髪の女は一瞬目を見開くが、すぐに戦闘モードに切り替わり腕を振りかぶる。

しかし、頭だったほうの青年は、その手にヤツデの葉の形のうちわを持っていた。

 

そのうちわが、フオッ、と、金髪の女にむかって振り下ろされた途端──────。

 

バギャ、と爆発するように、屋敷の壁が吹き飛ぶ。

 

あおりをくらい、壁ごと宙へ吹き飛ばされそうになった志貴は、かろうじて外壁の破断面につかまる。

片手には秋葉の手が握られており、二人はなんとかしのいでいた。

 

しかし。

 

「アルクェイド!」

 

志貴は叫ぶ。

金髪の女──────アルクェイドは屋敷の外まで吹き飛ばされていった。

 

遠野邸に集う怪物たち 完

 

 

 

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