上弦の鬼たちは月姫世界に転生したようです。   作:白澄星火

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第39話:上弦の肆 VS 遠野秋葉②

39-1:本体

 

「・・・何かカラクリがある。そうに違いないわ」

 

秋葉はそう言うと、糸のようなものを周囲に張り巡らせた。

その範囲は、遠野邸の敷地すべてを呑み込むほど。

 

そして。

 

「──────そこにいたの」

 

秋葉がニヤリと笑う。

 

それを受けて、積怒が表情を一変させた。

 

「マズい!本体を守れ哀絶!」

 

しかし遅かった。

屋敷の外で、ボゴン、と爆発音が鳴った。

 

それも一回ではない。

続けて、絨毯爆撃のような音が鳴り響く。

 

すると、積怒と可楽の身体がボロボロと崩れ落ちていった。

 

それを見て、秋葉の顔に安堵が宿る。

 

「・・・やはり本体がいたようね。──────そうだ。早く兄さんのところへ」

 

秋葉が髪色を黒に戻し、踵を返して歩いていく。

だが、数歩進んだところでピタリと歩みが止まった。

 

動揺で揺らぐ瞳。

 

彼女はゆっくりと振り返る。

 

そこには、額に二本の角を生やした少年がいた。

 

雷神を思わせる衣装と連太鼓。

ひとつひとつの太鼓には、"憎"の文字。

 

少年は、仁王立ちのまま、秋葉を睨みつける。

 

「のう。さきほど貴様は、手のひらにのるような"小さく弱き者"を焼いて炙った。なんという極悪非道。これはもう、鬼畜の所業だ」

 

ズン、と空気が重くなる。

 

窮地に追い込まれ、爆発的に力を発揮するのは人間だけではない。

この少年の本体──────半天狗という鬼は、これまで何度も何度も、窮地に追い込まれた。

 

そして、その度に、己の身を守ってくれる強い感情を、血鬼術により具現化・分裂し、勝ってきた鬼だ。

それは、死徒となった現在においても変わらない。

 

むしろ超抜能力となり、一層強化されている。

 

そのため、生み出される分身の強さは、未知数。

雷神を思わせる姿の少年──────憎珀天の他に、もっと強力な分身が生まれる可能性だって十分にある。

 

現に。

 

ドン、と憎珀天が連太鼓を叩くと。

 

──────空が割れた。

その隙間から、赤色の竜が顔を出す。

 

憎珀天は満足気にそれを眺めていると。

 

「新たなる我が分身。苦竜(くりゅう)よ。玉壺より先に、真祖の姫を捕まえろ」

 

その言葉の後、苦竜は赤い鱗をしならせ、地に降り立つ。

ズン、と地面が揺れた。

竜の身体を中心にして、周囲は瞬く間に凍り付く。

 

「アァ・・・クルシイ──────サムイ──────シンソ──────ハヤク」

 

さらに翼を目いっぱい広げれば、浸食は一気に加速。

 

一瞬で、遠野邸の敷地のおよそ半分が氷土となった。

 

それを見ていた秋葉は絶句している。

 

「よくも・・・こんな・・・」

 

強い憤りで身体が震える。

再び、髪色は真っ赤に染まった。

 

「すぐに消してあげるわ。あなたも、あの竜も」

 

上弦の肆 VS 遠野秋葉 完

 

 

 

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