上弦の鬼たちは月姫世界に転生したようです。   作:白澄星火

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第42話:新たなる分身

42-1:新たなる分身

 

──────それは突然、アルクェイドと玉壺のはるか上空に現れた。

 

全身、真っ赤な鱗に包まれた竜。

大きさは、以前総耶の街に現れた悪竜──────ファブニールと同等。

 

そして赤い竜は、遠野邸の敷地目掛けて降下した。

 

その足を地に付けると、大きな揺れが発生する。

さらに、竜の身体を中心にして、周囲は瞬く間に凍り付く。

 

「アァ・・・クルシイ──────サムイ──────シンソ──────ハヤク」

 

さらに翼を目いっぱい広げれば、浸食は一気に加速。

 

一瞬で、遠野邸の敷地のおよそ半分が氷土となった。

 

当然、近くにいたアルクェイドと玉壺は巻き込まれている。

だが、アルクェイドは何事もなくその場に立っていた。

玉壺は身体の所々が凍り付いているが、戦闘を継続するには問題ない状態。

 

そんな彼らの様子に、竜は首を傾げた。

 

「アレエ?キイテナイノ?ジャア・・・」

 

竜は再び翼を広げ、一気に冷気を放つ。

それは、先ほどとは比べものにならないほどの低温で、かつ広範囲だった。

 

対するアルクェイドは、何かを守るように手を突き出す。

それにより、彼女に生まれた一瞬の隙。

 

──────竜は決して、その瞬間を見逃さなかった。

 

「ゲキルイ──────シトツ!」

 

真祖の姫の身体を、巨大な爪が突く。

 

すると、凍り付いた樹木をなぎ倒しながら、アルクェイドは何十メートルも吹き飛ばされ、そして倒れ込んだ。

 

さらに追い打ちをかけるように、金切り声を上げながら彼女の身体を痛めつける冷気。

それはもはや、アルクェイドの周辺だけでなく、遠野邸の敷地を丸ごと覆うほど広がっていた。

 

一方、玉壺はと言うと。

 

「どなたかは存知上げませんが、早くこの氷をどうにかしてくだされ」

 

氷漬けになった体で、口だけを動かして講義する。

対する赤い竜は、たどたどしく口を動かす。

 

「オレ・・・オレ・・・ワシ・・・?」

 

「何を訳の分からないことを・・・早くしていただきたいですねえ。真祖の姫が起きる前に済まさねばならないことがあるのですよ」

 

「ワシ・・・儂は・・・」

 

だんだんと、声が低くなっていく。

まるで、子供から大人になるように。

 

「儂の名は・・・苦竜(くりゅう)。この儂に指図できるのは・・・ただ一人のみぞ」

 

苦しみ、(うな)るような声でそう言うと、玉壺を置き去りにしたまま、アルクェイドの元へ歩いていく。

 

歩幅が大きいため、すぐにたどり着いた竜は、倒れたままのアルクェイドを見下ろして、こう独り()ちた。

 

「真祖の姫・・・ついにあのお方に献上できる」

 

新たなる分身 完

 

 

 

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